閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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第十一章 俺はもう迷わない

昨日、秘伝忍法書強奪の任務を受けた光牙達であったが

 

半蔵学院の罠にかかり、その関係で光牙が暴走し、焔たちを襲うという事態になってしまい

 

結局超秘伝忍法書は半蔵の忍たちにより奪え返されてしまい任務は失敗という形となってしまった

 

だが、そんな焔たちをさらに驚かせる事態が起こっていた

 

「えっ?光牙が行方不明!?」

 

「あぁ、連れ帰った翌日部屋を尋ねてみたらもうすでに行方を暗ませた後だった」

 

鈴音はため息を吐きながらそういった

 

「やはり昨日のことを気にしてらっしゃるのかしら?」

 

「…かもしれないわね。光牙くんあのあとすごく気にしていたみたいだしね」

 

「…あいつめ~!」

このままじゃ蛇女から逃亡した「抜け忍」として命を狙われかねない

「先生!お願いします。私たちに光牙を探させに行かせてください!」

 

「わたくしからもお願いします!」

 

「鈴音先生」

 

焔たちが必死に光牙詮索の許可を出すように願い出る

 

「……いいだろう、なんとかしてはみるが…おそらく私の勘ではよくて3日がリミットだろう。それまでに見つけ出さなければ上もそれなりの対処をとるだろう」

 

与えられた期限は3日のみ

 

それまでに光牙を見つければ上層部が最悪の形で動いてしまう

 

ことは一刻を争うものだった

 

「光牙を見つけられるかはお前たちにかかっているぞ」

 

そう言うと鈴音は部屋から出ていった

 

「よし、みんな!全力で光牙を探すぞ!!」

 

「「「「おーー(お~)!!!」」」」

 

こうして焔たちは光牙を探しに行くのだった

 

 

 

 

 

 

焔たちが捜索する中、行方をくらませていた光牙は街に建てられている大きなビルの上にいた

 

「……」

 

光牙の顔はいつもの自信に満ち溢れていた時のものではなく

 

後悔に苛まれる顔だった

 

「俺は…また過ちを犯してしまった。…この力を表に出してしまった」

 

事件のあった日、鈴音から聞かされた事実

 

自分が暴走し、全てを破壊しようとしたことを

 

「もう二度と使うまいと決めていたのに……俺は、未熟だ…」

 

血がにじみ出るまで拳を握り締める

 

しかしこれは単に自分が力を暴走させてしまったための後悔ではなかった

 

むしろここまで悔やんでいるのは暴走によって焔たちを傷つけてしまったことだ

 

かつて暴走して家族に危害を加えてしまったときの様に

 

鈴音が来なければ自分はあのまま暴走しつづけどうなっていたかわからなかった

 

「なんのために修行を重ねたのだ。この力に二度と取り込まれないようにするためではないか!…なのに、くっ…!」

 

後悔に苛まれる光牙だった

 

 

 

 

 

 

「光牙さん!!」

 

「っ?」

 

その時、自分を呼ぶ声が

 

「見つけたで、光牙さん」

 

「…詠、日影か」

 

そこに現れたのは仲間たちとともに自分を探しに来ていた詠と日影だった

 

「ふん。俺を探しに来たということは、上層部が俺を反逆者と見なし処刑させるためにお前たちを派遣したのだろうな?」

 

「ちゃうで光牙さん。わしらは光牙さんを連れ戻しにきたんや」

 

「なに?」

 

彼女たちから聞かされた言葉に光牙は驚く

 

「突然いなくなられてわたくしたち、いてもたってもいられずにあなたを探しに来たんですの」

 

「安心しいや。上層部には鈴音先生が手を回してくれとる。今戻ればお咎めもない」

 

「帰りましょう光牙さん。わたくしたちと一緒に、焔さんも未来さんも春花さんも待ってますわ」

 

詠が優しく手を差し伸べる

 

それを見た光牙の心が揺らぐ

 

「(なぜだ?…なぜこいつらはあんなことした俺に手を差し伸べるんだ?なぜお前たちを傷つけた俺にそんな優しい顔をするんだ?)」

 

震えながらも光牙の手が詠の手を取ろうとする

 

しかし、彼女たちを傷つけてしまった罪悪感がその手を止めた

 

「光牙さん?」

 

「どうしました?」

 

「…すまない。俺にとって、お前たちは眩しすぎる。…っ!!」

 

「「光牙さん!?」」

 

光牙はそう言うと二人が追うことが不可能なくらいの速さでその場から去っていった

 

「光牙さん。どうして?」

 

「詠さん。皆に知らせんと」

 

「そうですわね」

 

二人は光牙を見つけたことや光牙が自分たちの説得に応じず、自分たちの前から去ったことなどを今尚光牙を捜索中の焔たちに知らせるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「詠たちの話しから察するにここらへんを通るはずだ。光牙、どこに…?」

 

詠たちの報告を聞き、彼女たちが光牙と会った場所から逃走した方角からここらの場所を通過すると考えた焔はその辺を集中的に探していると

 

「っ!?」

 

自分の頭上の方の建物から建物へと飛びながら移動する光牙を見つけた

 

「見つけたぞ!」

 

焔は光牙の後を追っていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「光牙ぁぁぁ!!」

 

「っ!?」

 

後ろを振り向いた光牙が見たのは自分の後を追って追いついてきた焔の姿だった

 

「待て、光牙!!」

 

「…焔、くっ!」

 

光牙は詠達の時と同様、まこうとする

 

「させんぞ!」

 

だが、焔も負けじとまかれぬように必死についていく

 

「なんだと!?」

 

「いかせないぞ!必ずお前を連れて帰る!!」

 

「ぐっ!」

 

焔を尚もまこうとする光牙だったが

 

「はあぁ!!」ダキ

 

「なっ!?」

 

ジャンプ中に不意をついて焔が勢いよく光牙にタックルし

 

それによって二人はとあるビルの上に落ちた

 

「「はぁ…はぁ…はぁ…」」

 

「もう、どこにも生かさないぞ光牙、さぁ一緒に帰るぞ。みんなが待ってる」

 

先ほどの詠たちと同じように自分を連れ戻しにきた焔に光牙は先ほど以上に同様を隠せずにいられなかった

 

「…なぜ?なぜだ!?」

 

「っ?」

 

「どうしてお前たちはそこまで俺に付きまとうんだ!?俺は蛇女から抜け出した抜忍だ。抜忍は速やかに排除するのが蛇女の掟だろうに!…なにより俺はお前たちを殺そうとしたんだぞ!?なのにあろう事かお前たちはそんな俺を、なぜ連れ戻そうとするんだ!?お前たちはなぜ俺を連れ戻そうとするんだ!?」

 

「そんなもの決まってる。なぜなら私たちはともに戦う仲間だからだ!」

 

焔の言葉を聞いた光牙は驚くように目を見開く

 

「それにあれはお前が本信でやったことじゃないのは知ってる。暴走した力を抑えられなかっただけなのだろう?それなら簡単なことだ。暴走したのならもう二度と暴走しないよう己を鍛え上げることだ!」

 

「簡単に言ってくれるな!俺はお前の言う修行をずっと続けてきたこの数十年もの間、ただひたすら己を鍛え上げた。…だが、結果はどうだ?あれだけ鍛えたにも関わらず結局、力を抑えるどころか飲み込まれ暴走しただけじゃないか!…なんでなんだ。俺が今までにやって来たことは全て無意味だったというのか?」

 

「光牙…」

 

「俺は…俺のしてきたことは……くそっ!」

 

唇を噛み締める光牙はビルの床に悔しさと後悔の思いで拳を振り落とす

 

その時だった

 

 

ギュッ

 

 

「っ…焔?」

 

「そうか。お前は今の今までそんなに苦しい思いを抱えたまま一人で頑張ってきたんだな」

 

「…っ」

 

焔が光牙の顔を胸によせて抱きしめる

 

「大丈夫、お前のしてきたことは無意味なんかじゃない、現にお前は強いし賢いし私たちをなんども助けてくれた。それはお前がこの長い月日のもと修行に明け暮れた結果身に付けた経験と知識がもたらしたもの。それらが全て無だなんて私は、いや。私たちには思えないな」

 

「…っ」

 

「それにお前は一人なんかじゃない。だって今のお前には私たちが、「仲間」がいるだろう。これからは私たちだって力を貸す。みんなで力を合わせれば恐れるものなんかないさ」

 

「っ!?」

 

焔はそう光牙に語りかける

 

「ほら、いつまでもしょげてないでシャキっとしろ!私たちの知る光牙は一度の失敗でめげるようなやつではない。何事にも恐れず、凛々しさと誇りを持ち、孤高を貫く、鋭く研ぎ澄まされた刃のような男。それが私たちの知る光牙という男だ!」

 

「っ!!」

 

焔の言葉で光牙は我に返る

 

かつての自分は修行に明け暮れ、ただひたすら目標を目指して頑張っていた

 

今のように後悔に苛まれへこたれてはいなかった

 

なにより、このまま逃げたら姉を守るという今までの自分の思いを否定することに、裏切ることになる

 

それをもう少しで自分はしてしまうところだった

 

「すまない焔、おかげで目が覚めた…お前の言うとおりだ。俺はこんなところで終わるわけには行かない。俺には果たさなければならないことがあるのだから!」

 

「そうだ。それでこそ私たちの知る光牙だ」

 

光牙が復活した瞬間だった

 

「いくぞ焔、帰ったらすぐに特訓だ。相手をしろ!」

 

「おう!望むところだ!今度こそお前を倒してやるぜ!」

 

「ふん。お前に俺が倒せるものか!」

 

「なにを~!!」

 

互いに罵りながらも笑い合いながら蛇女へと戻る二人だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(お前たちのおかげだ…俺はもう逃げない、俺は今度こそ真に強くなってみせる)!」

 

光牙は内心そうつぶやき、自分を救ってくれた彼女や仲間たちの存在に感謝するのだった


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