ではどうぞご覧ください
目的地である駅のコージーコーナーに紫苑は無事に到着し
そこで自分を待っていたのは今回、彼を集まりに誘った湊とそのお連れとしてやってきていた湊とかねてよりの友人である「朝倉 千弘」とその千弘の友人である「月丘晶子」と「塚原いずみ」の四名だった
全員そろったということで紫苑たちは現在、千弘が働いているという店に行くため目的地にへと向かう
楽しさが心の中に湧き上がらせながら一行はおしゃべりに興じながら目的地に向かっていった。全員、内に秘めた絶対にバレたくない秘密を抱えながら
紫苑side
湊さんや千弘さんたちとの他愛ない話しに夢中になっていたらさっきまで駅にいたと思いきやもう街までついていた
いやはや、楽しい時間はあっという間というが、これもまたそうなのだろうと思わず納得してしまっていた
「ねぇ千弘さん、街についたみたいだけどお店ってどこにあるの?」
「もう近くまで来てますからご心配なく、到着したら皆さんのために腕によりをかけるつもりです」
「えぇっ本当!うわ~楽しみだな~千弘さんの手料理がまた食べられる~♪」
「私も、お店に着くのが待ち遠しくなっちゃうよ!」
千弘さんが手料理をふるまう、それを聞いた晶子さんといずみさんがとてもうれしそうな顔を浮かべる
話しからして2人とも以前に食べたことがあるようだ
「湊さん。少し聞いてもよろしいですか?」
「はい、なんですか?」
「千弘さんがコックをしてるとは先ほど伺いましたが、実際、どのくらいお上手なのでしょう?」
「実はボクも舞城にお邪魔した際に一緒にお料理をさせていただいたのですが、千弘さんのお料理の腕はボクなんかかなわないくらいでして、千弘さんの作ったお料理はどれもこれも素晴らしいものばかりなんですよ。…ボクも負けられないです」
湊さんも以前ご馳走になったことがあるようでその武勇伝を自分のことのように得意げに話してくれた
「(しかしここまで皆さんが絶賛する千弘さんの手料理か…なんだか僕も興味がわいてくるなぁ)」
あわよくばレシピなんかも教えてもらえたら最高かな
雪泉たちにふるまう料理のレパートリーが増える
そんな期待を抱きながら僕らは目的地までの道のりを進んでいった
街を歩いてから数分した時だった
ふと視線を逸らすといずみさんがそわそわしていることに気づいた
「いずみさん、どうかしたんですか?」
「あっ、すみません。その~…ちょっとおトイレに行きたいなって気がしてきちゃいまして」
申し訳なさそうに顔を赤らめながらいずみさんがそういってきた
「そういえば私もなんだかトイレに行きたくなって来たかも?」
「た、確かに」
「う、うん」
「い、言われてみれば」
いずみさんにつられたような形で僕らもおトイレに行きたくなった
「た、たしかこの近くにトイレがあったはず!」
「「「「よしいこう!」」」」
それを聞いた途端、僕らの思いが一つになった気がした
必死に我慢しながら僕らはトイレに向かっていった
「あぁ、あそこ!あそこですよみなさん!」
「はぁ~。よかった。これで何とかなった」
「一時はどうなる事かと」
「早く済ませちゃいましょう」
トイレが見つかって一安心…でも、そんな僕らをむごい現実が襲う
着いたトイレにはカンペが貼ってあった
そこには「紳士用」と書かれていた
「「「「「っ!?」」」」」
次の瞬間、世界が凍結したかのように固まってしまった
「あっ、あぁぁ!!すすすすすす、すみません!私ったらうっかりしてて!」
「い、いやいや、大丈夫ですって、うっかりなんて誰にでもありますし!」
「そ、そうですよ!だからそんなに謝らないでください!」
「う、うわ~。激しくデジャヴを感じちゃうな~」
我に返ったとともに千弘さんがものすごい勢いで誤ってきた
慌てた様子で晶子さんと湊さんが千弘さんをなだめ、いずみさんはその横で小さくなり頭を抱えていた
みんなの気持ち、僕も分かる。下からくるこのもどかしさですっかり気が緩んでいたけど
今の僕は「女性」だから紳士用に入るなんて言語道断だよ……
「(えっ?でもまって、と、といことは…)」
僕の脳裏に最悪の展開が浮かび上がる
「えっ、えっと、あっあっち…でしたね。あはは」
案の定といわんばかりに千弘さんが指示したほうにあったのは「淑女用」と書かれたカンペ
そう、女子トイレの方だった
「えっ、えっとでは私は後でということで皆さんお先に」
「い、いえ、ボクはまだ大丈夫だから皆さんこそお先に!」
「う、ううん。私こそ大丈夫だからお先に、っていうか先にいずみさん優先に、さっきから辛そうだし」
「あっ、い、いやそうでもないよ!私もまだ大丈夫ですから皆さんどうぞお先に!」
「な、なななななな!?いいい、いえ、私の方こそ大丈夫なんでどうか皆さんお先に!」
どうしてこんなことになってるのか訳が分からない
でも確実に言えるのは何故か皆で譲り合いをするという変な修羅場だった
キュルル~
「「「「「っ!?」」」」」
しかし、生理現象は僕らのそんな思いを他所に僕らに過酷な困難を強いる
「あぁもうダメ!」
「げん、かい!」
「も、もれちゃう~!」
「我慢できない!」
「お、おトイレ~!」
もはや後戻りできず、一斉にトイレに直行するのだった
我ながら情けない
ジョロロロロ~
「ふぅ~、スッキリした」
トイレを済ませ、満足感に浸りながら僕は洗面器で手を洗いだす
「ちょ、ちょっとやめてください!?」
「ん?この声?」
すると外からいずみさんの声が、このトイレは五つ小部屋があり、僕らは全員それぞれの入った
現在、ドアの開いているのは僕が出たのともう一つ、ずばり今外にいるのはいずみさんだけだということだ
「どうしたの?」
「今いずみさんの声が聞こえたような?」
「何かあったのかな?」
ドア越しからいずみの声を聴いた他のみんなも心配そうな声を上げる
「僕が様子を見てきますから皆さんは心配なさらず!」
そういいのこし、手を洗うのを中断し外に出る
「いずみさんは…あっ!」
見つけた先にはガラの悪い男数人に絡まれたいずみさんの姿が
「いいじゃん、俺らと一緒に遊びに行こうよ~」
「絶対後悔させないからよ~」
「い、いえその友人が待ってるので!」
必死に逃れようとするいずみさんだけど男たちは尚もしつこく言い寄る
「大変だ。いずみさんを助けないと!」
すぐさま向かおうとした時だった
「ちょっと、その人嫌がってるじゃないですか、やめてあげてください!」
「っ?」
僕よりも先にいずみさんを助けようとするものが
それは長い髪にスレンダーな体つきの子だった。身長差からして湊さんと同等くらいかな?
「お、なんだよこの子も可愛いじゃん?」
「そんな顔しないでさこの子と一緒に遊んであげるぜ~?」
「やめてください!」
「いてっ…ちょ、君~?少しおいたが過ぎるんじゃないかな~?」
突き出された手をはたかれたことにイラつく男たち
「ともかく、これ以上迷惑をかけるというならこちらもただでは済ませませんよ?」
「ほう、どうしようってんだ?」
「強がる程度ならだれでもできんだよ。いいから俺たちの言う通りに!」
そういって再び手を突き出そうとした瞬間を僕は見逃さなかった
すかさず男が伸ばした腕を掴んだ。男は一瞬、何事かと思ったようだけどもう遅い
僕が合気道を繰り出し、男はそれにより回転と同時に地面に激しく落下する
「い、いでぇ」
「お、おい大丈夫か!?」
「さっさとこの場から消えなさい、さもなくばもっと痛い目にあいますよ?」
少し脅迫めいた物言いをすると男たちは怯えて去っていった
「…大丈夫でしたか?」
「えっえぇ、ありがとうございます」
「いずみさんもお怪我は?」
「だ、大丈夫です。特にひどいことは去れなかったので」
無事で何より
「先ほどはいずみさんのことをかばおうとしてくれてありがとうございました」
「いえ、僕は別に大したことは」
「そんな、あなたがいなかったら私、今頃どうなってたか。本当にありがとうございました」
僕といずみさんは精一杯の感謝を込めて頭を下げた
「おーい、紫苑さーん、いずみさーん!」
「あっ、みんな!」
そこに遅れて他のみんなも駆けつけてきたのだった
「さぁ皆さん、いろいろありましたけど、今日は存分に堪能してってくださいね」
「「「「「うわ~!!」」」」」
あの後、何事もなかったように無事に千弘さんが担当するお店に到着し、コックのエプロンに身を包んだ愛らしさを醸し出す千弘さんが腕によりをかけたアップルパイと紅茶がふるまわれた
「これはまた…随分と美味しそうな」
「アップルパイの香ばしい香り~♪」
「この紅茶も絶品♪」
「本当に最高の組み合わせですね」
噂通りの腕前、みんなが豪語するだけあると思わざるおえなかった
「あ、あの~?」
「なんですか?」
「いえ、なんか僕、みなさんの集まりに便乗しちゃったみたいで申し訳ないな~って思うんですけど?」
「お気になさらず、椋さんのおかげでいずみさんを助けることができたんですから」
申し訳なさそうに訪ねてきたのは先ほど僕よりも先にいずみさんを守ろうとしてくれた「小野寺 椋」さん
あの後、合流した千弘さんたちにも事情を説明し、いずみさんを助けてくれたお礼もかねてこうして一緒に千弘さんのお店でティータイムを楽しんでいる
なんでもこの街に知り合いがいて、挨拶を終えて帰る途中に偶然出くわしたのだとか
「そうですか、では遠慮なく、あむっ…う~ん、なにこれとても甘くておいしい、こんなアップルパイ今まで食べたことがないです!」
「うふふっ、そう言ってもらえると作った甲斐があると言うものですよ」
椋さんや僕たちが自分の作ったアップルパイを美味しそうに食べて笑顔を浮かべている様子に千弘さんも笑みをこぼしていた
「にしてもこんなにおいしいお料理を作れるなんて、千弘さんはきっと素敵な奥さんになるんでしょうね」
「ええっ!?」
その時、椋の言い放ったその一言に千弘さんが驚く
「そ、そそそそそそ、そんなことあああありませんよ!私なんて全然!むしろそういうのは湊さんとかがぴったりですよ!」
「えっ!?」
「優しくて可憐で気配りもできるし料理の腕も私と変わらない、もうこれでも可ってくらいですよ!」
慌てた様子で千弘さんが湊さんに向けてそういい放つ
「いいい、いえとんでもありません!ボクなんかまったくですよ!それを言うなら紫苑さんだって当てはまると思います!」
「はわっ!?」
「気品があって上品でおおらかで、まさにそういうのにピッタリかと!」
湊さんが僕に話題を振ってきた!?
よりにもよって奥さんだなんて男の僕がなれるわけもないしなりたいわけでもない!
「い、いやだな~。私なんかよりもいずみさんなんか向いてると思いますよ!」
「えぇっ!?」
「歌も上手で素敵だし、可愛らしいし世の男の人たちが頬っておくわけがありませんよ!」
さっきまでナンパされてたし
「いいいい、いや私なんかまったくですよ!む、むしろ私なんかよりも晶子さんとかのほうが!」
「はいいっ!?」
「以前にも似た状況があってその時に助けてくれたのが晶子さんだったんですけどあの時の晶子さんかっこよかったから奥さんになったらぜったいだんなさんをリードするかも!」
いずみさんもまたあたふたしながらそう言い申す
「ちょちょちょちょ、何言ってるのかな~?おr、…ううん、私なんか全然だって、それを言うならさっきいずみさんを助けてくれた椋さんも当てはまるんじゃないかな~?」
「はにゃっ!?」
「紫苑さんたちの話しを聞いて思ってたけど、一歩も引かず勇敢だって聞いてたし、そんな頼れる人なら男の人はたちまちいちころだよ~」
晶子さんがそういうと椋さんが驚いた様子を見せる
「なななななな、何をおっしゃってるんですか!ぼ、ぼぼぼ、僕はそんなこと絶対にないですよ、だって僕はおt」
「やっぱり千弘さんが!」
「いいえ、湊さんが!」
「違う違う紫苑さんが!」
「いやいや、晶子さんが!」
「やややや、いずみさんが!」
「違う違う、椋さんが!」
互いに譲らぬ押し門戸が永遠のごとく続くのだった
ガタンゴトーン
「はぁ、今日はいろいろあったけど、楽しかったな~」
あれからその後もおしゃべりに花を咲かせたらあっという間に時間が過ぎ、惜しみつつもまた会う日を願いながら別れを告げた
そして僕の手にはみんなで撮った記念写真が…
「いつかまた会いましょう」
窓越しから夕焼け空を眺めながらつぶやきながら帰り電車に揺られるのだった