町から少し離れた山の中。その奥にある大きな洞穴では今日も焔紅蓮竜隊は平和な日々を送っていた
現在、時刻は午後13時を回っている頃
「さて…光牙さん、そろそろ買い物にいきましょう」
「少しまて詠……よし、いいぞ」
外が少し冷え込むということで2人とも暖かい格好に身を慎んでいた
今日、2人は日常雑貨の買い足しに出かけに行く日ということで商店街に出向くことになっていた
ちなみに他のメンバーは現在不在でありその理由も多種多様であるようだった
「では光牙さん、今日もよろしくお願いしますね」
「と言っても主に荷物持ちをするくらいだがな」
2人が買い物にくといつも光牙が荷物などを持ってくれるため詠としても大助かりだった
「さて、今日のお夕飯は何になさいましょうか…まずは今日採れた野草ともやしを使った炒め物に人参スープと~」
「ま、まて詠!にんじんだけは勘弁してくれないか?せめてほかのものに」アセアセ
「もう、光牙さん。いい加減ににんじんを克服なさったらどうですか?」
「すまん、これだけはどうにもならんのだ」
「うふふっ、光牙さんっていつもはクールで頼もしいのに変なところは子供みたいなんですから」
にんじんを食べれないことをからかわれ、光牙は恥ずかしそうに顔を赤らめ、そんな彼を見て詠も笑みが漏れた
2人は他愛ないやりとりをしながら洞穴を出て商店街に出かけていった
カサカサ、カサカサ…
「……」バッ!
そんな時、草むらの茂みから何者かが顔を覗かせる
何者かが向ける視線の先に映るのは光牙の後ろ姿だった
「やっとやっと見つけた。どうやらここで間違いないみたい。えへへ…」
2人が街に出かけるのを見計らい何者かはそおっと洞穴に入っていくのだった
◆
「少し遅くなってしまいましたね」
「仕方なかろう、まさか今日は特売の日だったとはな」
「でもおかげでいつもより多めに買い占められましたわ」
「そうだな」
あれから数時間が過ぎ、光牙と詠は商店街で沢山の買い物を詰め込んだ袋を両手いっぱいに抱えながら家路を進んでいた
そして2人はアジトの洞穴についた
「ただいま帰りまし…た?」
「今帰った…ぞ?」
しかし入った瞬間、光牙と詠は言葉を失った
理由は焔達が帰ってきていなかったとかそんな対したとかではない
2人が言葉を失ったのはアジトの中がとても綺麗に掃除されており、どこもかしこもピカピカだったからだ
「こ、これはいったいどういうことなのでしょう?」
「わからん」
自分たちが不在のこの小一時間の間に何が起こったか訳がわからない状態だった
とりあえず2人はアジトの中を見て回った
室内はどこもかしこも綺麗に磨かれており、本や雑誌、他の皆の私物に至るまで事細かに整理整頓されていた
こんなことをするのはせいぜい詠くらいで他の者ならここまですることはまずない、しかも詠はずっと自分と買出しに出ていたためそれは不可能だった
光牙が頭を悩ませる
そしてそのまま捜索を続けていると
「うん?」
「やはりどこも綺麗になってますわね。いったい誰が?…光牙さん、そちらはどうですか?」
「しっ!」
「っ?」
詠に静かにするよう合図を送りながら光牙が再び視線を向けた先
そこは兼ねてから光牙が自分の部屋としている場所であり、そこの方からなにか音が聞こえた気がした
光牙と詠はそ~っと聞き耳をたててみる
「……誰かが俺の部屋で眠っている?」
「…おそらくは?」
2人が聞いた音は誰かの寝息だった
すぅすぅという寝息が光牙の部屋から聞こえるのだ
「…」コクン
「…」コクン
互いにコンタクトを取りそぉ~っと光牙の部屋に顔を覗かせてみると
「」Zzz~
そこには光牙のベットで気持ちよさそうに寝そべる小さな女の子がいた
「…これは、どういう?」
「あら?…もしかしてこの子?」
「どうした詠?」
なぜ自分のベットに女の子が眠っているのかと考える光牙の横で詠が何か反応を示す
その時だった
「…う、ううん…ふぁれ?いつの間にか寝ちゃってたみたい?……うにゅ?」クシクシ
2人の話し声がうるさかったのか少女が目を覚ました
すると少女は光牙を目にした瞬間、眠気が一気に覚めたように瞳をキラキラさせた
「お帰りなさいませ!お師匠さま!」
「っ!?」アセアセ
少女のいきなりの発言に光牙は面を食らったような顔を浮かべる
「ちょ、ちょっと待ってください愛花ちゃん!」
「あっ、詠お姉ちゃん。お帰りなさい♪」
「はいただいまです♪…ってそうではなくて!?」
思わず詠がノリツッコミをかましてしまった
「コホン!……えっととりあえず挨拶はいいとして、君はいったい?詠と知り合いのようだが?」
「はっ!わ、わたくしとしたことが!?…うっうん、光牙さん、この子は愛花ちゃんと言ってわたくしと同じく貧民街で生活している子です」
「あぁ、詠の故郷の」
身寄りのない、路頭に迷った文無しの者たちが暮らす詠達にとって故郷と言っても過言ではない大切な場所、少女、愛花もまたその貧民街で育った者の1人だと説明する
「そうか貧民街の子か。…しかし貧民街の子がどうしてここに?」
「あ、あの…私のこと、覚えてくれてないんですか?」
「うん?」
光牙は愛花が自分のことを知っているような発言に思わず声を漏らす
「あら、光牙さん、愛花ちゃんとお知り合いだったのですか?」
「知り合いというか…ふ~む?」ウ~ン
愛花の指摘に光牙は記憶を辿った。話しを聞く限りこの少女と自分とは面識があるとのこと、しかしそれがどの時だったのか愛憎検討がつかなかった
「あ、あのあの!…前に悪い人たちが来てみんなを貧民街から追い出そうとして、師匠たちが貧民街を守ろうとしてくれた時に」
「…あっ!」
それを聞いた瞬間、モヤモヤしていた記憶の中から貧民街での出来事が蘇った
どこぞの輩が建築の土地の確保のために貧民街の土地を手に入れようと不良たちなどを雇い住民たちを追い出そうとしてそれを自分たちで救った時、確かに光牙はその最中、不良に果敢に立ち向かおうとし、襲われそうになった少女を助けた事があった
「なるほど、あの少女は君だったということか」
「はい!あの時は貧民街を、私たちの家を守ってくれてありがとうございました」
「そう畏まるな。詠にも言ったことだがあれは単に俺がやつらのやり方が気に入らなかったから詠に協力しただけで別に礼をいわれるようなことはしていない」
「まぁ、ご謙遜を」
頭を下げてお礼を述べる愛花に必要はないと言う光牙に詠はくすりと素直ではないなと思いながら笑みをこぼす
「…で、君のことは理解したが、なぜ俺を師匠と呼ぶんだ?」
「はい!…僭越ながら私!愛花は光牙師匠に弟子入りをしたく来ました!」
「えぇっ!?」
「…俺に弟子入り?」
愛花からの突然の言葉に光牙も詠も唖然とするのだった