閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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第十二章 大丈夫か小僧?

ここはビル郡から徒歩10分ほど離れた場所にある貧民街と呼ばれる場所

 

詠が生まれ育った場所であり、故郷である

 

たとえかつては裕福でリストラやなにやらで一文無しになって行くあてがなくなってしまった新参人でも段ボールの住宅街は優しく迎え入れてくれる

 

ここはそんな場所なのである

 

泥道や腐ったバナナのような匂いが漂ったりと、そこは決していい景色ではなくても詠にとって住人たちの笑顔が溢れるこの場合は最高に素敵な場所なのである

 

「帰ってきましたわ。う~ん…この匂い、故郷に帰ってきたという感じがしますわ」

 

詠が故郷の空気を満喫しているとそれに混ざるかのように香ばしく美味しそうな匂いが漂ってきた

 

「なんなのでしょうか。この食欲を誘う香りは?」

 

鼻をヒクヒクさせながら匂いがする方に歩いていく

 

近づくにつれて子供たちの喜ぶ声が聞こえてきた

 

そして匂いがする場所に到着すると

 

「お兄ちゃんおかわりちょうだ~い♪」

 

「ずるい!私にもちょうだ~い♪」

 

「おれがさきだ~」

 

「えっ!?」

 

自分の目に映ったものを見て詠が驚く

 

「喧嘩はよせ。心配しなくてもまだまだたくさんあるから順番に並べ」

 

「「「は~い」」」

 

「光牙くん!?」

 

「ん?…詠か」

 

なんとそこにいたのは貧民街の大人や子供たちにスープを配る光牙の姿が

 

「あ~よみお姉ちゃんだ~!」

 

「わ~本当だ~」

 

詠の姿を見た子供たちが詠の周りに集まってきた

 

「なぜ光牙くんがここにいらっしゃるんですの?」

 

光牙に問いかける詠だったがその問いに光牙ではなく子供たちが答えた

 

「うんとね。よみお姉ちゃんがくるまえにねお腹がすいてたおれちゃったぼくの前にこのお兄ちゃんが現れてそしたらお兄ちゃんがぼくたちのためにこれ作ってくれたの~」

 

「これを…?」

 

「よみお姉ちゃんも飲んでみなよ。すっごい美味しいよ!」

 

「えっ?」

 

「…ふん」

 

子供たちに勧められると同時に光牙が詠の分のスープを器に注ぎ、それを渡した

 

「光牙くん」

 

「いいから飲め」

 

進められるがままにスープを一口飲んだ瞬間、詠は今までに食べたどの料理の味よりも美味しいという感覚に襲われた

 

そのスープには貧民街の人たちが取ってきた薬草や栽培した野菜などが入っていて味も申し分ないものだった

 

決して見ためなどは豪勢などではないものの、その味は高級レストランなどで出される料理に負けず劣らずの味だった

 

「光牙さん。これは…?」

 

「あり合わせの物で作ったのだ。こいつらが我慢できないというのでな」

 

光牙のその言葉に子供たちは申し訳なさそうに苦笑いしていた

 

「うまいか?」

 

「…はい。とても美味しいです。こんな料理今までに食べたこともありませんわ」

 

「…そうか」

 

「光牙さん。ありがとうございます。この子達やみなさんに料理を振舞ってくださって」

 

詠は感謝をこめてペコリと頭を下げた

 

「気にするな…俺はただ、単にこいつらが放っておけなくてやっただけに過ぎん」

 

「うふふ、お優しいですわね。光牙さんは本当に」

 

「ふん」

 

微笑ましい光景だった

 

「ねぇねぇよみお姉ちゃん」

 

「なんですの?」

 

「このお兄ちゃんって詠お姉ちゃんの彼氏?」

 

「なっ、なななななななにをおっしゃるの!?」

 

突然のことに詠は顔を真っ赤にする

 

「だって~二人とも仲良くしててまるでお父さんとお母さんみたいなんだもん」

 

この子の言うことはつまり自分と光牙が夫婦みたいだと言われているということだ

 

「わっ、わたくしと光牙さんが、夫婦だなんて、そんな」テレ

 

以前から光牙に対してその気があった詠は照れくさそうに体をくねらせた

 

光牙もまたそれを聞いた瞬間、少々照れくさそうにそっぽを向いた

 

するとセントラルパークと呼ばれる。貧民街の憩いの広場から、子供達の楽しそうな笑い声が聞こえてきた

 

「今日はとってもいい天気♪お散歩、お散歩、 楽しいな♪」

 

広場のステージに、燕をモチーフにしたと思われる仮面を付けた、着物の女性が立っていて子供の演技をしていると

 

「うひひひ、お嬢ちゃん、お金をあげるから一緒に行こう?」

 

っともう一人の人が不審な人の役をこなしていました

 

「そこの女の子!そんな言葉に騙されちゃダメッ!」

 

「ぬぅ?なにもだ~?」

 

燕仮面は威勢のいい声に変わり、もう一人もそれに合わせて演技をする

 

そして足元にあったラジカセのスイッチを押すと、

 

どこかの泡吹くキツネの戦闘時にかかるような和風BGMが流れだしたw

 

「黒髪なびかせ今日も舞う!人呼んでKP仮面、参上!!」

 

「えぇい!KP仮面だかなんだからしらないがやっつけてやる~!」

 

そこからぎこちなくも素晴らしい演技で子供たちの目はそれに釘付けになっていた

 

そして

 

「ぬぅあ~や~ら~れ~た~!!」

 

不審な男の役をしていた人はそのままステージから退場していった

 

「みんな。最後まで見てくださってありがとう♪また必ず来るからね!それまでいい子にしてるのよ!」

 

「いいぞ~KP仮面~!」

 

「素敵~!」

 

子供たちに手を振りながらKP仮面もまたステージから退場していった

 

「詠、あいつらを追うぞ」

 

「わたくしも同じことを考えてましたわ」

 

ステージから去っていった二人を光牙と詠がこっそりと後をつけてみると

 

KP仮面は役場のポストの前に止まり、ポストに封筒を投函し、そのまま去っていく

 

詠はポストの中に投函された封筒を見てみると「寄付金3万円」と書かれていた

 

「律儀だな」

 

「わたくし、あの方にお礼を言わなければ!」

 

「そうか…」

 

そうして光牙と詠は再び二人を追った

 

そして再びKP仮面たちを見つけると会話の最中二人が被っていた仮面を取るとその正体は二人がそれぞれ知る人物だった

 

「あなたは…お嬢様!?」

 

「えっ?…よ、詠さん!?」

 

「それにとなりにいるのは…光牙くん!?」

 

「貴様らだったのか」

 

KP仮面と悪役の正体は斑鳩と佐介だったのだ

 

「…お嬢様ともあろうものが貧乏人を社会科見学とはいいご趣味だこと。さぞかし優越感が満たされたことでしょうね?パフォーマンスが好きなところは、まさに、あの父にしてこの子ありですね。だいたいKP仮面ってなんですの?」

 

「あっ…えっと~…その、KP仮面は…“黒髪パッツン仮面”の略称です」アセアセ

 

「なっ、なんだそのネーミングセンス?」

 

「ですよね~…かつ姉ったら、どうしてこんな名前になさったんでしょう?」

 

葛城がつけたこのネーミングに苦笑いをする斑鳩と佐介だが、今の詠にとってはそんなことどうでもよかった

 

「寄付に関しては言語道断ですわ!だいたいお金持ちのお嬢様が寄付なさってたった3万ってなんの冗談ですの?わたくしなんて学校の奨励金、月額30万を全部寄付してるんですのよ!?」

 

「確かに…あなたの言うとおりわたくしの行いは偽善だと言われても仕方ないかもしれません。言い返す言葉もありません。でも、以前あなたから貧民街の話しを聞いた時。わたくしは思ったんです。なにかわたくしにしてあげることはないかと…だからこそ」

 

すると斑鳩は詠に向かって深々と頭をさげる

 

「なっ、なにを?」

 

「お父様の言動があなたを深く傷付けたのなら、せめてこうしてあなたにお詫びしたいんです…ごめんなさい」

 

斑鳩の行動は心無い金持ちなら絶対にするはずもない行動だった

 

なにより彼女から感じられるのは心の底からの謝罪、さらにあの時のショーの時の様に彼女は心から子供たちに笑顔を与えていた

 

性根が腐ったものなら絶対にそんなことはしない、彼女は純粋な気持ちで今自分に頭を下げているのだ

 

「…るい」プルプル

 

「…詠さん?」

 

「ずるい…ずるい!ずるい!!お金があって心も綺麗なんてずるい!!」

 

忍転身した詠は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスウウウウウゥゥゥゥン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大剣を降り下とされものすごい音が響き渡るのだった

 


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