抜忍として生活費を稼ぎながら日々忍としての修行をこなす光牙たち焔紅蓮竜隊
しかし彼らも人間、鋭気を養う日は必要である。これはそんな日にあったとあるお話し
焔紅蓮竜隊アジト 洞窟内
「ふんふんふんふん♪ふんふふ~ん♪ふふふ~ん♪ふんふんふふ~ん♪」
楽しそうに鼻歌を歌いながら手馴れた手つきで掃除をしているのは
光牙の弟子として紅蓮竜隊にお世話になることになった貧民街の出身の女の子、愛花であった
強い忍になって貧民街のみんなを守りたいという想いを胸に姉的存在である詠や焔達の支えもあり光牙の課題をこなしたことで晴れて弟子入りを認められた彼女は
それ以降毎日のように光牙達のお手伝いや忍としての修行に励み毎日を充実させていた
「愛花ちゃんいつもお手伝いありがとうございますね」
「えへへ、これくらい当然だよ詠お姉ちゃん。私、紅蓮竜隊のみなさんのお役に立てるようになっていつか師匠のもとで立派な忍になるんだから」
意気込みをいれながら掃除の手をさらに早める。
そんな彼女の頑張る様子を茶の間でくつろぐ他のメンバーたちが眺めていた
「張り切ってるわね愛花ちゃん」
「小さいのによう働くな~」
「あの年で家事全般出来るなんて本当すごいわよね」
「私たちが勝れるとしたらたぶん戦闘くらいしかないんじゃないか?」
彼女の幼い身体に秘められし家事スキルは焔達では到底勝ち目はなく
焔も言うように戦闘でなら勝てるが、それは当たり前のこと。彼女はまだ忍のなりかけ、云わば卵だ
そんな彼女に勝ったところで得られるものは何もない
むしろ待っているのは大人げないことをしたという罪悪感と避難の荒しが待ち受けている
完全に負けは必死なのである
何より最近、彼女たちにとっても愛花は妹のように愛らしい存在となってしまっていた
どうにも愛花の「お姉ちゃん」呼びがどうにも彼女たちの心に響いたらしく
主に一人っ子が多いこのパーティにとって妹ができたという感覚はそれくらい新鮮なのである
今や彼女は紅蓮竜隊のアイドル兼マスコット的な存在にほかならないのだから
「…ふふっ」
そんな彼女たちを横から眺め、今日も平和なのだと実感を覚えながら机の上に置かれたブラックコーヒーで一息入れる光牙だった
「それではわたくしはお洗濯ものを干してきますね」
「はい、愛花は残りの場所を掃除しますね」
詠は洗濯物を干すべく外へと出ていき、愛花は引き続き掃除に専念することにした
それからしばらく愛花は掃除を続け、次に取り掛かったのは本棚の整理だった
どうにも最近、本棚に本を戻さずそのままにしてることが多いのである
読んだらそこらに散らかってたりほったらかされてたりで本棚に仕舞われていることが少ないのである
そんなわけで愛花は四方に散らかされている本を一冊、一冊、本棚に仕舞いきちんと整理する
数分後
「ふぅ~…終わった」
愛花の手によって本たちは本棚にきちんと収まった
本棚に本がきちんと収まっている光景に愛花も満足気だった
だが、その時ふと愛花の目にあるものが止まる
「…これは?」
愛花が片づける…というか彼女がここに来る前から本棚の片隅に仕舞われていた他の本よりも分厚い本であった
好奇心からか気になった愛花が恐る恐るそれを取り出し手に取ってみる
表面は少しお洒落な加工がされており愛花はこれが詠が加工をしたものだということをすぐに理解した
そこにはこの本のタイトルが書かれておりそこには「わたくしたちの思い出」と書かれていた
「……」ゴクリ
気になって仕方がない愛花は表紙のページをめくる
「……うわぁ~」
開かれページにはかつての母校である蛇女子学園に通っていた頃の写真がいくつも載せられていた
「これが、師匠たちがいた学校…」
めくる度に驚きの顔を愛花は浮かべる
「どうしたの愛花ちゃん?」
「あっ、春花お姉ちゃん」
するとそこに急に動かなくなった自分を心配したかのようにやって来た春花が声をかける
「何を見てるの?」
「あの…これ」
「…あら、懐かしいわね。私たちが学園にいた頃の写真だわ」
手渡されたアルバムを見た春花の顔が懐かしさに浸る
「ねぇみんなこれ見て」
すかさず春花が愛花とともにアルバムを光牙達のもとへ持っていく
「おぉ、なんだなんだ?私たちが蛇女にいた頃の写真じゃないか!」
「うわ~懐かしい~!」
「お~、せやね」
抜忍となることを選び蛇女子学園を去ってからそれほど月日が経ったわけではない
しかしここに映る写真の数々を目にしてしまうとそう思いたくなってしまう衝動にかられてしまうのである
「これはどうしたんだ?」
「本棚の片隅に置かれてました」
「…そうか」
光牙の質問に愛花はそう返す
「お洗濯もの干してきましたよ……ってあらみなさん、どうなさいました?」
そこに洗濯物を干し終えた詠が戻ってきた
いつの間にか茶の間で全員がまじまじと何かを見ている光景を不思議と感じた詠が恐る恐る上から覗き込む
「そっ、それは///!?」
詠は思わず焦ったかのような声をあげる。無理もない光牙達の読んでいるのが自分の作ったアルバムなのだから
「あっ、詠お姉ちゃん…ご、ごめんなさいつい見つけてしまったもので」
「…木を隠すなら森の中、本を隠すなら本の中と思ってあえてあそこに隠していましたのに…見つかっちゃいましたか」
他のみんなは気づかなかったのに愛花にはバレてしまったのかと少し恥ずかしそうな顔を詠は浮かべる
「でもひどいわよ詠ちゃん、どうしてこんなものを隠してたの?」
「い、いえ…まだそのアルバムは未完でして」
よく見てみると途中で写真が途切れていた
「完成させたらお披露目しようと思ってたんですが家事やバイトなどで作る暇が無かったので暇な時にこっそりと…」
指をちょんちょんとしながらそう呟く
「もう、水臭いわね。言ってくれれば手伝うのに?」
「申し訳ございません」
頼ってくれなかったことに不満気な顔をする未来たちに詠は深々と謝る
「よし、なら今から私たちも協力するぞ!これは私たち全員の思い出のアルバムだからな」
「焔さん…わかりました。待っててください、直ちに残りの写真を持ってまいります」
詠は嬉しそうな顔を浮かべ、アルバムを完成すべく残りの写真を取りに向かった
数分後、戻ってきた詠がアルバムに入れるための残りの写真を持ってきた
それらの写真にも全員が懐かしさを抱き目を光らせた
「ねぇねぇ、見てこれ」
ふと未来が一枚の写真を手にしそれを全員に見せる
そこに写っていた写真はかつて選抜メンバーとしての自分たちが揃った記念として撮った集合写真だった
「懐かしいな!」
「うん、この時のこと今でも覚えてるよ!」
写真を見ていた焔と未来が過去の思い出に酔いしれる
「…ふふふ」
「どうしたの春花お姉ちゃん?」
すると写真を見ていた春花が突然ぷぷっと笑いだしたのに気づいた愛花がなぜそうしたのかを尋ねる
「いえ、ただ…今にして思えば私たちの中で一番変わったのって光牙くんよねって思ってね」
「っ?」
いきなり話題を振られた光牙が若干驚きの顔を浮かべる
「あ~、確かに言えてるな」
「うんうん。始めてあった頃とはえらい違いよね」
「せやね」
「…お前らな」
春花に同感するようにうんうんと頷き出す
「そんなに違うんですか?今のししょーと昔のししょーって?」
「えぇ、そうよ……あっ、そうだ。ねぇ愛花ちゃん。もしよかったら話してあげようかしら?まだ蛇女子学園にいた頃の私たちの話し」
「いいんですか!聞きたいです!」
目を光らせ興味深々そうな顔を浮かべる
「ふふっ、いいお返事ね…じゃあ聞かせてあげるわ。私たちの話しを」
そう言いながら春花は語りだす。かつて選抜メンバーとして悪忍の道を極めていた自分たちの武勇伝を……