ある日の昼下がり、この日もまた焔は生活費を稼ぐために街に出て働いていた
といっても今回は昼のシフトの仕事ということもあり、丁度上がりの時間帯を迎えていた
「では先に上がります。お疲れ様でした!」
「はい、また今度もよろしくね焔ちゃん」
「えぇ、また近いうちに、では」
従業員の皆に挨拶を終えた焔は今日の分の給金の入った袋を手に店を後にした
仕事を終えた焔は店を出た後、街中を歩いていた
「さ~て、これからどうするかな~?」
街中をぶらぶらしながらこれからの予定について考えていた
せっかく街にいるので時間つぶしに回ってみるか、それとも早々に帰って修行でもするか
「う~む」ムムム
どうしようかと焔が軽く頭を悩ませている時だった
「そこにいるのは焔ではないか?」
「ん?」
ふと自分の名を呼ぶ声が聞こえ振り返ってみた
「奇遇だな、こんなところで会うとは?」
「雅緋じゃないか?」
焔に声をかけてきたのは雅緋だった
「どうしたんだこんなところで?」
「私は今バイトを終えたところだ。そういうお前はどうなんだ?」
「あぁ、私は野暮用があってな」
お互いに街にいる理由を説明し合い、方やバイトの買えり途中、方や買い物に来ていたことを教え合った
「で、お前はこれからどうするつもりなんだ?」
「私は…」キュルル
雅緋の質問に答えようとした時、ちょうど小腹が空いた様子で腹の音が鳴る
「…少し小腹も空いたみたいだしどっかの店で軽く何か食べようカと思う」
「ふむ…実は私もそんな感じがしてきたみたいなんだ」
「ならちょうどいいしどっかでお茶でもするか?」
「あぁ、そうだな。そうしよう」
お互いに小腹が空いたみたいなのでせっかくだから2人でどこかの店でお茶にしようということになった
それから少しして適当なファミレスに入った2人はそこでメニューを注文し、軽い食事を楽しんでいた
「…ふぅ、旨かったな~♪」
「あぁ、にしてもお前の食べっぷり、まるで飢えた獣のようだったぞ」クスクス
「なっ!そそそ、そんなことないわい!?」ハズイ
食べっぷりの様子に対して感想を述べる雅緋に焔が恥ずかしそうな顔をしながら否定するのだった
そんなこんなで食事を楽しみ会話に花を咲かせていたころの時だった
「あっ」
「ん?どうした?」
突然焔が何かを思い返したかのような顔を浮かべたことに気づいた雅緋が声をかけてみる
「あぁ、ちょっと思い出したことがあってな。成り行きだったとはいえお前とこうして一緒にいるわけだから丁度いい機会かなって思ってさ」
「なんだ?」
急に話題を振ってきて何やら自分に聞きたいことがあるのだということを察した
「前から聞きたいことがあったんだけどさ、お前って光牙の姉じゃん。だから光牙が小さい時の頃のこととか知ってるよな?もしよかったら教えてくれよ?」
「小さいころの光牙のことだと?」
「そうそう」
焔が光牙の幼少期のことを聞きたいと言い出した瞬間、雅緋が固まる
「…なぜそんなことを?」
「いや~、あいつってさ自分のことあんまり話したがらないからさ、だから小さかったころってどんな感じだったのかなってさ、詠たちもそこら辺気になっててさ。だからもしよかったら教えてくれよ?やっぱりあれか?昔からあんな感じなのか?」
単純な興味本位からの質問だった
紅蓮竜隊を結成し、ともに生活をするようになり今も家族のように過ごしている
だがその中で自分たちが過去どんな子だったかを話したりして知っている中で唯一
光牙のみあまり過去が語られることがないのである
もちろん、あらかたの経緯などは知っているが必要最低限しか教えてはくれないため
彼の過去に関しての話題は少し興味があった。故に今回のことを機に血縁関係である雅緋に話しを振ったのである
「光牙の小さかった頃か?…でへへ、そうだな~?まずいうとするならあの頃のあいつはとにかく可愛かったんだよ~」
「お、おう?」
「双子として生を受けて物心ついたころからとにかく仲良しでな、何をするにも一緒で特にあの頃は2人でよく遊んだり、寝たり、風呂にも入ったりしてたな。互いの誕生日の時なんて私のために手作りの品を送ってくれたりもしてな、その時に見せてくれる笑顔ときたらもう可愛くてかわいくて」ポッ
「っ」アセアセ
自分で話題を振ったのは自分ではあったが
見事に地雷を踏みつけたかのように雅緋のブラコンスイッチを押してしまったようで
彼女のそのデレっぷりに思いっきり引いていた
しかしまぁ、自分で話題を振ったのにここで止めるのは無責任な感じもしたので
とりあえず話しを続けることにした
「そう聞くと昔のあいつって今とは少し違うって感じなのか?」
「まぁ、多少はな、でもしっかり者なところは今も昔も変わらないがな」
雅緋はそういいながら昔ことを思い出す
幼い頃昔から光牙はいろいろと気遣いができる子であり、優しい心の持ち主だったことを
「なるほどな。確かに私たちが知り合って間もないころもなんだかんだ言って世話を焼いてくれてたしな」
焔も焔で蛇女で光牙と一緒に学生として生活をしていた時のことを思い返す
始めの頃は抜身の刀みたくぎらついた眼をしていたしそんな彼に対して自分も何度も勝負をしては返り討ちにあっていたりもした
だが、その度に光牙はこりもせずに向かってくる自分の相手をなんだかんだいってもしてくれたり
怪我を負った際には手当てなんかもしてくれたりもした
雅緋がいった光牙が昔も今も変わらない優しい心の持ち主だということにも納得できるほどに
「あとはそうだな…幼少期の頃、父さんから修行や稽古をつけてもらってた時よく光牙と練習試合をしたんだが殆ど私が勝ち越してたっけな」クスクス
「えっ?そうなのか?」
今では想像できないような話しだなと焔は思っていた
「あぁ、何度も何度もな…だが、何度やられてもあいつは決して諦めたりはしなかった。どんな時でも、そんなあいつを見るたびにあいつのことを誇らしくも思ったさ、といっても記憶喪失になっていた間にいつの間にか追い抜かれてしまったけどな…でも、今のあいつはとても強くなったし、かっこよくもなったな。さすがは我が弟だ」ニヤニヤ
改めて光牙のことを語るうちに彼を誇る雅緋の思いは強まった
そんな雅緋の姿を見て焔は何か思うところがあるような顔を浮かべていた
しばらくして雅緋と別れた焔は帰り道を進んでいた
「弟…か」
最中、焔は先ほどの雅緋との会話を振り返る
「…少し羨ましいな」
一人っ子である焔に兄弟はいない、故に姉弟である光牙と雅緋に羨ましさを感じていた
そんな時だった
ブロロロロロロロ!
「っ?」
「よぉ、焔」
「光牙?」
帰り道を行く焔の元にたまたま光牙が通りかかった
「どうした浮かない顔して?」
「あっ、いや別に」
「まぁいい、お前も今帰るところだろ?…一緒に帰るか?」
「っ…」
光牙が優し気な笑みを浮かべて一緒に帰ろうといいながらヘルメットを差し出す
「…あぁ、頼む」
それを受け焔はヘルメットを受け取り、後ろに乗った
「つかまってろよ…っ!」
ブルン!ブロロロロロロロ!!
バイクのギアを入れて光牙が颯爽とバイクを走らせる
最中、光牙の腰に手を当てている焔の目に光牙の背が映る
とても大きく、立派な背中、そして何より安心する気持ちがする
「…なぁ光牙」
「なんだ?」
ふとここで唐突に焔が光牙に語りかける
「お前にとって私とはなんだ?」
「なんだいきなり?」
「ちょっと気になってな…」
なぜそんな質問をしたのかわからない光牙だったが彼女の様子から何かあったのではないかと察した
「…そうだな。俺にとってお前は手のかかる厄介者だ。負けてもしつこく何度も戦いを挑んでくる程にな」
「なっ!?」
光牙からのその一言に焔は驚く
「…だが、そんなお前に救われたからこそ俺は今こうしていられるんだ」
「っ?」
「あの時、お前が俺を絶望から救ってくれたんだ。…俺にとってお前は厄介な奴であるとともに、大恩人であり、そして…家族だ」
「っ…光牙」
自分のことを迷うことなく家族といってくれたことに焔は正直驚いた
「…まったく、こっぱずかしいことを」テレッ
「言わせたのは誰だ?」
「ふふっ、さぁな」ニコニコ
「…変な奴だな」
そんなやり取りをしながらも光牙は焔を連れてアジトへの道を進んでいくのだった
次回はお休み、そして次の投稿、京都編に先駆けた前日談ストーリー公開!