計3回やります。ではお楽しみ
未だ肌寒さが残るとある日のこと、街から少し離れた位置に顕在する洞穴
抜忍組織、紅蓮竜隊の面々が根城としている洞窟だ
「……っ」ガチャガチャ
そこでは今、光牙が1人で座椅子に腰かけながら武器の手入れを行っている真っ最中だった
他の面々については春花と未来、日影はバイトの日で今は仕事に出ており、焔は休みのため自室で眠っていた
光牙も今日は仕事は休みで自分の時間を過ごしていた
目の前には彼の専用武器である弓を始め、苦無や手裏剣、その他の忍具などが並べられている
「…よし」
手に持っている弓のパーツを眺めて一言そうつぶやいた
「ししょー」
「ん?」
後ろから声が聞こえたので振り向いて見るとそこには愛花と更にその後ろに詠が立っていた
「ししょー、愛花ただいま戻りました!」
「光牙さんただいま帰りましたわ」
「おぉ、買い物から帰ってきたか?ご苦労だったな」
愛花と詠は先ほどまで食品や雑品などを買いに出かけており、今戻ってきたところだった
「あら?ししょー、何してらっしゃるんですか?」
「見ての通り武器の手入れだ」
ふと愛花が何をしているのか興味津々な様子を見せてきたので光牙は自分が武器の手入れをしていた事を話す
「もう光牙さんたら、滅多にないお休みなのですからゆっくりされたらいいですのに」
「いついかなる時でも備えは必要だ。いざという時にメンテナンスが疎かになっているような武器で戦おうものならどんなアクシデントに見舞われるかわからんからな」
詠の意見に対して光牙は最もな事を言ってのける
その言葉に愛花も読も彼の真面目さに感服していた
「ふぁ~…おっ?詠に愛花じゃないか、帰ってたのか?」
「あっ、焔ちゃん。ただいま戻りましたわ」
「焔お姉さん、ただいまです」
すると奥の方から自室で眠っていた焔が起きてきたようで光牙たちの元にやってきた
「おっ?光牙は武器の手入れか?相変わらずこまめだな」
愛花と詠と挨拶を交わしながら光牙が手入れをしている様子を見て焔がそう呟いた
「それにしてもよく見ると結構年季が入ったものとかもちらほらあるな?」
最中、ふと焔が気づいたことを口にする
手入れの為に並べられた武器の幾つかはどこか年季が入っている物もあった
「あぁ、これらは俺が昔に使ってた物だ」
光牙はそう言うと小道具を入れるポーチや皮ベルトなどを見せる
「昔って言うと詠お姉さんたちと一緒に蛇女ッてところにいた頃からですか?」
「いや、これらはそれよりももっと前、俺がまだ未来と同じくらいの年の頃からだな」
「「「っ」」」ピクッ
蛇女よりも前という言葉を聞いた瞬間、3人は言い知れぬ好奇心に包まれた
「ししょー、ししょー!」
「ん?どうした愛花?」
「もしよかったらその話しもっと聞かせてください!」
「…はっ?」
唐突に服をつまんできたと思ったら自分の昔話しをしてほしいと言われ、光牙は一瞬鳩が豆鉄砲を食ったような気分になった
「ど、どうしたんだ唐突に?」
「むかしのししょーがどんなだったのか私、とっても興味があるんです!」
目を輝かせて言ってくる愛花に光牙は戸惑う
「だ、だが、俺の話しなんてそんな大して面白くなんか」
「いいや問題ない、話せよ光牙!」
「わたくしも是非お聞きしたいですわ!」
「っ!?」
あまり気が乗らない光牙は話なんてするだけ無駄と煙に巻こうとする
しかしそんなこと許さないと言わんばかりに焔と詠が話しに割り込んでくるとともに愛花同様に光牙の話しを聞きたいとせがんできた
「ししょー!」
「光牙!」
「光牙さん!」
「――……わかった。話す、話せばいいんだろう?」
ずんずんと詰め寄ってくる3人の圧に負けた光牙は観念したように自身の過去についてを話すことを承諾した
粘り勝ちした焔たちは3人でハイタッチをする。光牙はそんな三人を見ながらヤレヤレと溜め息を吐いた
♦手入れを終えてから少しして…
「はい光牙さん。どうぞ」
「あぁ、すまない」
場所を移した光牙たちは茶の間にて詠が用意してくれた温かいお茶で一服していた
「…ふぅ、さて。俺の過去についての話しだったな」
お茶を飲み、一息ついたところで光牙が3人に確認をする
「先に行っておくが、俺の過去は思っているようなものじゃないし、場合によっては話すのも躊躇われるような内容のものまである。それでもいいんだな?」
「問題ない、どんな内容だろうと構わないぞ」
「それを含めてわたくしたちは話しを聞きたいと思っております」
「だからししょー、お願いします」
「わかった」
念押しをしたが3人はそれでも自分のかつての話しを聞きたいというので光牙は話すことを決めた
――光牙side――
武器の手入れをしていたらいつの間にか自分の過去を話すことになってしまったが
あの状況では断ることもできなかったので俺は諦めて焔たちに自分の今に至るまでの軌跡を話すことにした
「ではどこから話すとしよう…俺の姉さんである雅緋がかつて記憶喪失だったのは知っているよな?」
「確か現れた妖魔にお袋さんが襲われて、その際に記憶喪失になっちまったんだよな?」
「まぁ、大まかな話しとしては大体そんな感じだ。当時俺はその時別件であの場にはいなかった。母が亡くなったと知ったのは父からの電話でだった」
俺の忍としての今に至るまでの原点、その1つが母の死だった
家に戻ってきた俺はその光景に絶句した
<『うあぁぁぁん!かあさぁぁぁん!!』>
そこには仏となって白装束を纏い、顔には布を被せられた母さんの遺体とそこに寄り添い、途方もない涙を流す父と姉さんの姿があった
<『かあ…さん…』>
今朝までいつものように生活をしていたはずなのにたった数時間離れただけでこの現状、思考がまるで追い付かず、俺は唖然としていた
恐る恐る俺が顔を覆う布を外すとそこには死化粧を施された母さんの顔があった
<『(……嘘だ、嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ)』>
死した母の顔を見る度、俺は心のそこから現実を否定しようとした
だがそれでも現実は変わらない。母は死んでしまったのだという事実は
<『…あっ、あぁ…ああああああああああ!??』>
その現実を直視した瞬間、俺はこの上ないほどに泣き叫んだ
愛する母を、家族を失った悲しみが俺の心に絶望を与えたのだった