ドスウウウウウゥゥゥゥン!!!!
「斑鳩さん!?」
大剣が地面に突き刺さり、地響きと砂煙が舞う中、佐介は斑鳩の身を案じた
砂煙が晴れると詠の大剣を光牙が光刃で機動を変え、斑鳩の頭から僅か数センチの地面に、深く突き刺さっていた
「光牙くん!?」
「…落ち着け、少し頭を冷やせ」
肩をぽんと叩き、光牙の言うように詠は荒々しく息を吐く自分を少しずつ落ち着かせた
そして少し沈黙すると斑鳩に語りかける
「なぜ…逃げなかったんですの…?」
「わたくしを切ることであなたの憎しみを消すことが出来るならばと」
「どうして…どうしてあなたはそこまで…」
「…詠さん」
「うぅ…うはぁぁぁ〜、うわぁぁ〜ん!」泣
斑鳩の純粋な心と眼差しに詠はその場に倒れ込み涙を流す
そんな彼女を斑鳩は優しく抱きしめた
「詠さん。よければ教えてくれませんか、あなたがどうしてそこまでお金持ちの人を恨むのか?」
「…あれは、わたくしが小学校を卒業する直前の事でした」
「っ?」
「でもその日、わたくしの両親が…わたくしの前から姿を消した日でした…」
詠は語る。自身の過去を
大好きだった両親がその日をさかえに突然、自分の前からいなくなってしまった
自分は両親に捨てられてしまったのだと、学園に入るまで両親に対する憎しみをバネに自分は生きてきた
だが、真相はまるで違った
両親は、自らの命を切り売りしてまで、自分のために、愛してくれていた自分の将来の為に自らの命と引き換えにお金を残したのだ
それに気付いた時には、もう全てが手遅れだった
両親に感謝したくても、疑った事を詫びたくても、両親はもうこの世にいない
「お金なんかのせいでお父さんとお母さんは死ぬハメになってしまった…どうして?どうしてお金なんかのために二人は死ななければならなかったの!?」
「詠さん…」
「だからこそ許さない!そんな人たちの苦労も知らないお金持ちの人が許さない!」
詠は怒りのあまり斑鳩の持っていたバッグを弾き飛ばした
荷があたりに散らばる中、ふととあるものが自分の目の前に落ちてきた
それを手に取るとそれは斑鳩の家系図だった
「えっ…?」
その家系図を見た詠は驚く
「…あなた…養女だったのですか…?」
詠が恐る恐る問いかけると斑鳩は静かにうなづく
その時、斑鳩と最初にあった大食い大会での出来事を思い出した
あの時、彼女が兄とよんでいた人が彼女に冷たくしていたのはこれが理由だったのだと詠は気づいた
「養女なら…少しぐらい言い訳したって…」
「言い訳したところで意味はありません。皆に変わり、本当に申し訳ございませんでした」
そう言うと斑鳩は再び土下座する
「詠…」
「光牙くん…」
光牙は詠の肩を掴み静かにうなづく
詠は斑鳩の行動を見て今までの自分の考えを改める
お金を持ち裕福な人たちはみんな自分立ちのような人を差別してるだけだと思っていたが
彼女のような優しい人も中にはいるということを知ったのだから
そう感じた瞬間、詠のなかから斑鳩に対する憎悪が消えた
「もう結構です。お立ちください」
「詠さん…」
詠は斑鳩の手を取り一緒に立ち上がる
「わたくしお金持ちは嫌いです。それは今も変わりません。…でも、お嬢さまとなら仲良くなれるかもしれません」
「いいのですか?…わたくしの行いを…偽善も許せるんですか?」
「構いません。たとえ偽善だろうと…それでも善は善です」
それを聞いた瞬間、二人は笑い合い和解を遂げた
「(よかったな詠)」
「(よかったですね斑鳩さん)」
そんな二人を暖かく見守る二人だった
だがその刹那、そんな笑顔溢れる一時が一瞬で終わる出来事が怒った
ドンガラガッシャーン!
「「「「っ!?」」」」
「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」
「助けてーーー!!」
貧民街の方からものすごい音と悲鳴が聞こえた
4人が行ってみると
「あれは!?」
「詠さん。あの方たちは?」
「あの方たちは地上げ屋が雇った不良です!貧民街のあちこちで暴れて土地を安く買い叩こうとしているのです」
どうにもここ最近、地上げ屋たちがこの貧民街を潰してビルか何かを建てようとしているのだ
ここに住まう人たちのことなどお構いなしに
「ゲスどもが…」
「許せない。この街は詠さんやここの人たちの故郷なんですよ!その人たちの居場所を奪おうだなんて絶対にさせません!」
「今日ばかりは意見が一致したようだな」
「なら今日は休戦としてともに彼らを追い払いましょう!」
光牙と佐介が先陣を切って不良たちに向かっていく
「詠さん。わたくしたちもいきましょう!」
「いいのですか?」
「わたくしの"友達"の故郷は絶対に守り抜きます!」
「友達。ありがとうございます…いきましょう!!」
斑鳩の言葉に胸を打たれながら詠たちもまた向かっていく
「閃光龍雨!!」
ギャオォォォォォォ!!!
「シグムンド!!」
ドスウウウウウゥゥゥゥン!!!!
「覇王獣波!!」
ガオォォォォォォ!!!!
「凰火炎閃!!」
ピャァァァァァァァ!!!!!
「「「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」」」
4人はそれぞれの秘伝忍法技を駆使して不良たちを蹴散らしていった
「にっ、逃げろ~!」
「あんなやつら相手にしてたら命がいくつあってもたりねぇ!!!」
「ごえ~よおがあぢゃぁぁん!!!」
みっともない声を荒らげながら不良たちは逃げ帰っていくのだった
「これで不良たちは追い払えましたね」
「お嬢さま。光牙くん。それにお嬢さまのお連れの方。ありがとうございます」
ペコリと詠が頭を下げた
「いえ、僕たちはただ、この場所を守りたいからやったまでです」
「あいつらのやってることが気に入らなかったしな」
「貧民街を守ることができてなによりです」
貧民街を守ることができたことを喜ぶも
ここでふと詠は浮かない顔を浮かべた
「どうしました詠さん?」
気づいた斑鳩が詠に尋ねると
「せっかく仲良くなれたのに、わたくしは悪忍、お嬢さまは善忍、次会うときはまたお互い戦わなければならないのだと思うと…」
詠の言い分を聞いた瞬間、他の3人も同じようなことを考えた
確かに今回は共通の敵を相手に利害が一致したからこそ力を合わせた
しかしもともと自分たちは敵同士、いずれまた互いに殺し合わなければならないのだ
「だから…だからせめて、わたくしからもお願いします。…お嬢さまわたくしとお友達になってくれませんか?」
詠が手を差し出し握手をしようとする
「えぇ、喜んで」
斑鳩もそれに応じ握手をかわす
「では、せっかくですのでわたくしのことはどうか「斑鳩」と呼んでください」
「あらやだ。そうですわね。せっかくお友達になるのにお嬢さまなんて他人行儀みたいですわね。では……これからよろしくお願いします。斑鳩さん」
「はい♪」
二人が友情を結んだ
それを見て佐介は微笑ましそうに
光牙は複雑な思いを浮かべたのだった
「今日はとても素晴らしい一日でしたわ」
「そうか。それは良かったな…」
帰り道を歩く二人は今日の出来事の話しをしていた
「……ありがとうございますね光牙くん」
「なんだいきなり?」
「光牙くんのおかげで今日はいろいろ楽しかったです」
「…ふっ、そうか」
笑いかける詠の顔を見て光牙は軽く笑いかけるのだった
しかし、二人がいない間に蛇女ではとある事件が起こっていることをこの時の二人には知る由もなかった
「だれ?」
「こんにちは春花さん」
「ひばり?どうしてここに?」