閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

84 / 809
第十六章 これが最後かもしれないなら…せめて会いに行きたい

雲雀に異変が起こり、雲雀を奪還すべく現れた佐介と柳生が光牙たちを襲撃してきた

 

光牙たちは佐介たちと対峙するも佐介たちは雲雀が撤退を完了したのを確認するとあとを追うようにその場から退避していった

 

それから少しして光牙たちのもとに現れた鈴音から光牙たちが聞かされた事実

 

蛇女が半蔵に占拠されたということを

 

佐介たちが強いということは戦ったからわかるものの、学園には多勢の忍学生たちがいる

 

それをたった6人だけで掻い潜っただけでなく、見事蛇女を占拠されるとは夢にも思っていなかった

 

いや、正確には一人を除きかと光牙は内心思った

 

その一人とはもちろんさっき対峙した佐介のことだ

 

先ほどの戦いをみればわかる自分もそうだったが佐介もまた、あれで準備運動程度にしか力を使ってはいなかったのだ

 

おそらく彼の実力は自分と同等と言えるほどそんな彼を相手にすれば生徒たちを倒すなどわけはないとそう思っていたが、どうやら事の方はちょっと違っていたらしい

 

「やつらはこちらの超秘伝忍法書を奪取し、その力を利用したのだ」

 

事のいきさつはこうだった

 

光牙たちが対抗戦を繰り広げるさなかに蛇女へと攻めこんだ佐介たち半蔵学院の面々が超秘伝忍法書を奪取し、それに記された強力な術を使用

 

それによって蛇女の生徒たちは半蔵学院で起こった時のように狂い始めてしまい

 

今や蛇女は忍学生達が暴れ放題の無秩序状態となっているらしい

 

確かにこれは彼らに蛇女が占拠されたことも納得行く話ではあった

 

「そんな…」

 

それを聞いた詠が驚きの声をあげ、声こそあげないが他のみんなも同じような思いだった

 

「そして、先ほど半蔵側からこちら側に要求が来た」

 

「要求だと?」

 

「あぁ、内容は今から6時間後に天守閣に超秘伝忍法書を持って来るようにと。こちらが要求をのめば速やかに城を解放するとのことだ」

 

鈴音はそう言うが、だがはたしてそんなにすんなり事が片付くだろうか

 

仮にこちらが持つ半蔵学院の超秘伝忍法書を持っていけば、2つの超秘伝忍法書が揃う事になる

 

そうなれば事態は収まるどころか争奪戦に発展しかねない

 

かと言って隠れて行くにしても城の城内や城外には超秘伝忍法書の影響で凶暴化した生徒たちがわんさかといる

 

おそらく戦いは避けては通ることはできないだろう

 

それほど事態は深刻なのだ

 

しかし、だからといってこのまま手をこまねいているわけではなかった

 

「これは本部からお前たちへの正式任務だ。心して聞け、要求にあった6時間内までに各自準備を整え、速やかに蛇女を奪還せよとのことだ」

 

今ここに光牙たち6人に任務がくだされた

 

そして鈴音は懐から半蔵学院の超秘伝忍法書を取り出し

 

それを光牙たちに託した

 

「この戦い、お前たちに全てがかかっている。それゆえに命の保証はない、よって作戦開始は5時間後。それまでは各自の自由行動とする。悔いの残らぬようにしろ……以上だ」

 

鈴音のその気遣いは同時にこの任務がいかに過酷であることを物語っていた

 

蛇女の仲間達を斬りつつ、天守閣へと向かい、半蔵学院の忍学生と命と超秘伝忍法書を賭けて戦う

 

想像するだけでも恐ろしいものだった

 

光牙たちはそれぞれ見つめ合うと採掘場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

皆それぞれが各方の時間を過ごす中、光牙は病院に来ていた

 

今尚、ここに入院している姉のもとへと

 

いつもの場所から病室を確認すると看護師に介護されながらすやすやと眠りにつく姉の姿が

 

そして看護師が病室からいなくなったのを確認するといつもなら窓際から除いているだけだった光牙が病室に入っていく

 

そっと眠る姉を起こさぬように静かに…

 

「…姉さん」

 

すやすやと寝息をたてながら眠る姉の頬を優しく撫でた

 

「姉さん。俺はこれから蛇女を奪還しに行く、姉さんの母校をだ。この任務は生半可な物なんかじゃない、命をかけたものになるだろう」

 

おそらくこの奪還戦において一番の障害となるのは佐介だ

 

佐介を相手にできるのは自分しかいないだろう

 

しかしあの時の佐介はまだ本気ではなかった

 

つまりこの戦いで佐介は蛇女奪還をなそうとする自分たちを本気で潰しにかかるだろう

 

そうなれば互いにただではすまないかも知れない

 

もしかしたらこれが最後の別れになるかも知れないと意を決して光牙はここに来たのだ

 

「もし俺が死ぬことになったとしても安心してくれ。後のことは父さんにも任せてあるから」

 

光牙はここに来る途中で自分に何かあった時のために父親に話しを通していたのだ

 

「…姉さん。実はね…俺、"仲間"が出来たんだ」

 

ふと光牙は死ぬかも知れないと言う思いから眠る姉に蛇女で過ごした今までの出来事を語り始めた

 

「…蛇女に来てあいつらと過ごすようになって度々思うんだ。あいつらといるのも悪くないかなって…」

 

平和な日々が突然地獄へと変わったあの日。母を失い、姉がこの状態となったにも関わらず父以外の人間は誰も助けてはくれなかった

 

それによって光牙は誓った。自分が死なせてしまった母の分まで姉を守ると

 

それからというものかつての優しく明るかった自分を捨て、他者との関わり合おうとすることをせず、誰の手も借りずにたった一人で戦ってきた

 

そんな中、上層部により、道元の妖魔捕獲作戦の捕獲担当として秘立蛇男子学園より蛇女子学園に光牙は派遣され、特別転入し、焔たちのいる選抜メンバーの一員として加わったのだ

 

それからというもの光牙は己を鍛え上げるための修行や道元に命じられるがままに数多くの妖魔を捕獲していく日々に明け暮れた

 

正直、妖魔を捕獲するのは反吐が出るほど嫌だった

 

母さんを殺し、今こうして姉をこんな状態に追いやった憎き相手なのだから

 

しかし、妖魔を殺せば道元の権限でこの病院に入院している姉への治療費などの援助を止めると言われ逆らうに逆らえなかった

 

父もそうだ

 

ゆえに道元の命令に服従するしかない自分の無力さに何度悔やんだことか

 

でも、そんな光牙に焔たちは接してきた

 

最初は迷惑でしかなかった。関わりたくないといつも思っていた

 

「あいつらときたら暑中俺をひっかき回したりしてきてな。まいどまいど苦労させられたよ」

 

こっちは関わり合おうとしないようにしているにも関わらず絡んできて強引に自分を巻き込んだりしてきた

 

「…でも、そのおかげであいつらと関わりを持つようになってあいつらと一緒にいることが段々と当たり前のように思えてきたんだ」

 

焔は自分に突っかかってきたり、詠はもやしの話しをし始めたら長いし、日影は掴みどころがないように見えるが他のみんなとあまり変わらなかったり、未来は未来でコンプレックスの話しをするとギャーギャー喚くし、春花が新作の発明を作る度に自分を巻き込んだりと

 

「それに暴走した俺に傷つけられたってのに、あいつらと来たら蛇女を抜けようとした俺を必死に探しに来たんだぜ」

 

焔も、詠も、日影も、未来も、春花も

 

全員が本気で自分の身を案じ、必死に探していたと知った時、光牙は我が目を疑った

 

「こんな俺なんかを必死に心配してくれて…まったくバカな奴らだよあいつらは」

 

罵声をいう光牙だが、その顔は嬉しそうな表情を浮かべていた

 

そして、今は思う、彼女たちと今まで過ごしてきた学園生活は自身にとっても大切な思い出であり、かけがえのないものだと

 

そう考えられる自分がいると思えるのもまた彼女たちのおかげでもあり、自分もそれだけ成長した証なのかも知れないと光牙は感じていた

 

彼女たちがいなければ彼女たちと関わらなければ今の自分はいないと

 

「だからこそ俺はそんなあいつらとともに蛇女を取り戻す。たとえこの命果てようとも…だから見守っていてくれ姉さん」

 

眠る姉の髪の乱れを整えながらそう囁くと入った時と同じように窓から抜け出し姉に別れを告げるのだった

 

 

 

 

 

 

「おっ?光牙か」

 

「焔…」

 

光牙が集合場所に向かおうとしていると同じく集合場所に向かおうとしている焔と再会した

 

焔は光牙に自分が半蔵が営業する寿司屋で飛鳥に会ったこと、互の意見をぶつけあったことを聞かせた

 

「私は善忍と悪忍とは果たしてなんなのかわからなかった。どうやら飛鳥もそうらしかったんだ。そんな時、半蔵は私たちにこういったんだ『どこかで誰かが笑えば、必ずどこかで誰かが泣く、誰かが幸せになれば、誰かが不幸になったりする。それが人生だが、いつも同じ人ばかりが不幸で泣いていたら、それは不公平であるだからこの世にはバランスが必要なのじゃ、忍とはそのバランスを取るために存在している。だから、善やら悪やらにとらわれず、自分の歩む道を信じて真っ直ぐに進めばよい。きっとそれが、誰かを幸せにする』とな」

 

「…自分の歩む道を信じて真っ直ぐに進めばよい、か…さすがは伝説の忍というべきかな」

 

「まっ、傍から見ればただのスケベじじいだがなww」

 

焔はおちゃらけ気味に話していると集合場所にたどり着いた

 

すると集合場所である採掘場から騒がしい声が聞こえてきた

 

「ちがいます!これは列記とした料理です!」

 

声の主は詠だった

 

「あら、光牙くん。焔ちゃんおかえり」

 

春花が声をかけてくると未来や日影も続く

 

そして詠がなにやら鍋を持ってきながらこちらに向かってきた

 

「光牙さん、焔ちゃん。ちょっとこれを食べていただけませんか?わたくしが摘んだ野草で作った、特製スープです!」

 

鍋の中身には見る限り気持ち悪い色の液体が入っていた

 

その中には様々な色の草が浮いている

 

「よ、詠!これを私に食べろと言うのか!?」

 

「はい。どうぞ召し上がれ♪」

 

詠が嬉しそうな顔でそれをすすめる

 

「よせ!最後の戦いに参加できなくなる!」

 

「わたくしの料理が不味いとでも!?」

 

激しく慌てる焔を見て春花と未来が笑っている

 

日影は相変わらず無表情で詠は可愛らしく頬を膨らませている

 

そんな彼女たちを見ていると光牙はなぜか安心できる感じがしてきた

 

最初は、1人で生きてきたのに

 

いつのまにかこんなにも頼もしくそれでいて信頼できる仲間がいる

 

それが嬉しいと思うと自然と笑みがこぼれる

 

「あれー?今光牙笑ったでしょ?」ニヤ

 

「っ…笑ってない」

 

「みんな~!光牙が嬉しそうな顔して笑ってるよ~」

 

「未来、貴様!?」

 

余計なことを言うなと言おうとするも

 

「なになに~光牙くんが嬉しそうな顔~?私たちにも見せてよ~」

 

「わたくしもみたいですわ!」

 

「笑ってないと言ってる!」

 

「勿体付けやがって~」ニヤ

 

すぐに焔たちに知られからかわれる

 

すると

 

「全員揃ってるな?…いよいよだな」

 

いつのまにか月明かりの下に、鈴音先生が立っていた

 

つまりそれはいよいよ蛇女を奪還任務が開始されるということ

 

 

「一つだけ約束しろ……死ぬんじゃないぞ。私からは以上だ」

 

鈴音は、いつも以上に厳しい顔をして、そう光牙たちに言った

 

「俺たちは負けたりはしない。必ず生きてこの任務をやり遂げてみせる…いいな!?」

 

「「「「「おーっ!」」」」」

 

光牙たちは円陣を組み

重ね合わせた手をその言葉とともに夜空に振り上げ天を仰ぐ

 

夜空の月明かりが、彼らを照らす

 

こうして光牙たちの蛇女奪還作戦が幕を開けるのだった

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。