閃乱カグラ 忍たちの生き様   作:ダーク・リベリオン

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第二十一章 さぁ、いくぞ。俺たちの新たな道へ

道元が死に際に放った術によって怨櫓血(オロチ)の体内に取り込まれてしまった光牙が目にしたのは異様な光景

 

「くっ、なんとも気味の悪い場所だ…」

 

光牙があたりを見回していると

 

 

ドバァァァァァァァン!!!

 

 

奥の方から凄まじい爆発が

 

「っ!?」

 

向かってみるとその先には

 

「どえぇい!!はぁぁぁぁ!!!」

 

「焔!?」

 

「っ?光牙!?」

 

自分よりも先に取り込まれていたであろう焔が怨櫓血(オロチ)の体内に住まう妖魔たちと交戦していた

 

「くっ、焔が戦ってるんだ、俺も!…なにか武器はないか…」

 

先の佐介との戦いで武器を失っていた光牙はあたりを見回し使えるものがないかとさがす

 

「よし、こいつで!…焔、俺もやるぞ!」

 

「助かる!!」

 

ちょうど良く刀を拾い加勢にはいる

 

「はぁぁぁぁ!!喰らえ!」

 

刀に自身の力をこめ光の斬撃を妖魔に浴びせる

 

「こちらも負けてられないな!秘伝忍法・紅!!!」

 

勢いよく回転し、刀を振り回し周りの妖魔を次々と切り裂いた

 

「ふぅ…」

 

ピキキキキ…パリィィィン!

 

「光牙、刀が…」

 

「所詮は鈍ら刀か……それにしても焔、無事だったんだな」

 

「あぁ、お前こそな。しかしこの状況はどういうことなんだ?」

 

「すべては道元が仕組んだ企んだこと。俺たちはまんまとやつに利用されたんだ」

 

光牙は事の全てを話した道元が自分たちを使って怨櫓血(オロチ)を復活させその力を我が物としようとしていたことを

 

「くそっ、道元のやつめ…!」

 

「安心しろ、やつはこの俺の手で葬った。それに怨櫓血(オロチ)のことは佐介たちに任せたあいつらならきっと怨櫓血(オロチ)を葬ってくれるだろう」

 

「…そうだよな。飛鳥たちならやってくれるさ」

 

なにしろ彼らは自分たちと壮絶な戦いを繰り広げるほどの実力者なのだから

 

「しかし、お前も俺と同じように取り込まれて尚、動けたんだな」

 

「あぁ、しかしほかのみんなの姿は見えない…つまり」

 

「詠たちはもう……」

 

彼女たちはもう取り込まれ存在すら消滅しているかもしれない

 

しかも自分たちもこの体内から出るすべもない

 

後悔と絶望に苛まれそうになった二人だったが

 

「「!?」」

 

どこか懐かしい気配が奥から漂う

 

「この気配…間違いない」

 

「あぁ、詠、日影、未来、春花の気配だ!」

 

この気配が意味するもの、それは彼女達が生きているということ

 

それだけでも光牙と焔にとっては大きな希望だった

 

気配のする方に駆け出す二人

 

「無事でいろよ!!」

 

「みんな!!」

 

かけ続ける光牙と焔、その時だった

 

急に当たりが真っ白になったかと思うと次に二人が見た光景は先ほどまでの不気味な空間ではなく

 

草木が生い茂り澄み渡る青い空が広がっていた

 

「何だここは?」

 

「いったいどうなってるんだ?」

 

「…悩んでいる暇はない、とにかく進むぞ!」

 

「あぁ、わかった!」

 

光牙のあとについで焔も駆け出していく

 

そしてしばらくかけていった先に二人が見たのは

 

白いワンピースと帽子をかぶった詠たちの姿が

 

「詠、日影、未来、春花!!」

 

「お前たち、無事だったのか…いや、なにか様子がおかしい」

 

「へっ?」

 

こんなにも美しい風景、そしてどこもなんともなさそうな彼女たちだったが

 

光牙の予想通りみんな浮かない顔をしていた

 

「光牙さん。焔ちゃん…わたくしなんか…変なんです。わたくし体に変な感情が…入ってきます」

 

「わしもや…なんか、おかしいんや、わしには感情がないはずなのに…心がざわつかせるようなもんが入ってくるんや」

 

「なんで、なんでなの?…嫌だ…嫌だよ…あたしたちの中に入り込まないで!!」

 

「私ともあろうものが…心と体を奪われるなんて…」

 

何やらみな、得体の知れないなにかに襲われていたようだった

 

「みんな、しっかりしろ!」

 

「自分を強く持て!」

 

呼びかける二人だったがそれも虚しく

 

「いやっ、やめてぇぇぇぇぇぇ…!!!」

 

「ふぁ?うっうぅぅぅぅぅ!!!」

 

「うっ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ぐっ、ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

怨櫓血(オロチ)の怨念が4人の心と体を邪悪に染め上げた

 

そして風景もまた不気味な雰囲気に変わっていった

 

「ふふふ、迷いのない憎しみってこんなにも気持ちが楽になるのですね」

 

「なるほど、これが感情っちゅうもんか。こいつはいいもんや何もかもぶっ壊し、誰もかも傷つけたい。そんなサイコーの気分や」

 

「いじめてやる。あたしは強くなった今度はあたしがいじめてやる番だ」

 

「私は人形、何も考えないあやつり人形。目に映る全てを殺す。ただそれだけの人形」

 

負の感情に囚われ4人は底に眠っている負の感情を吐き出す

 

「違う!そんなものはまやかしだ!…詠。本当のお前は憎しみなんかに支配されたりしない、いつも明るくみなに気を配り笑顔を撒き散らす。それが本来のお前だ。…日影。お前は感情がないないと言ってはいても本当は俺たちと同じだ。辛い時や悲し時もある。しかしそれだけが感情じゃない!仲間とともに喜びを分かち合うのも感情だ。そしてその事をお前は知っている。それこそがお前が感情を持っているという証拠だ。…未来。お前もはじめはそうだったかもしれない、しかしそれが俺や焔たちと過ごすうちに過ちだったと気づき、お前はそれをバネに真の意味で強くなろうとした。それこそがお前の本当の強さだ。…春花。お前は人形なんかじゃない。お前はみんなの相談や悩みを聞いてそれらを解決するきっかけを与えた。お前の行いに皆感謝している。そんな心優しいお前がみんな大好きなんだ。それは人形としてではない、春花という1人の女性としてだ!…待っていろ必ず全員助ける!」

 

「私たちの手でお前たちをもとのお前たちに戻してやるからな!うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

焔が背中に背負っている七本目の太刀を抜くと髪と瞳が赤く染まる

 

これぞ焔が手にした境地の姿、紅蓮の焔だった

 

「焔、その姿…」

 

「これがお前やあいつらとの絆がくれた私の力さ」

 

「そうか、ならば俺も見せてやろう。お前同様、絆がもたらしたこの力を!!」

 

光牙もまた高らかに叫ぶ

 

真・粒子変化(ネオ・フォトランス)!!」

 

光り輝き、服も色が変化し、メッシュ部分も広がるとともに変身が完了する

 

「お前もか」

 

「あぁ、これが俺の新たな力だ!」

 

変身が完了するのを見計らい詠たちが攻めてきた

 

光牙が詠と春花を、焔が日影と未来と対峙した

 

「消えなさい!!」

 

「聖剣クラウソラス!!」

 

大剣を振りかざす詠にクラウソラスで対抗する

 

「これで逝っちゃいなさい!!」

 

春花が両手に持ったカラフルな薬品が入った試験管をばらまいてきた

 

危険と感じた光牙が急ぎ詠からはなれると地面に落ちた瞬間、詠を巻き込んで爆発した

 

「くっ、詠がいるのを承知で!?」

 

距離をとりつつそのことに驚くもやられた詠がゆっくりと立ち上がり不気味な笑みを浮かべた

 

「くそっ、やりづらいぜ」

 

光牙はそう軽くもらす

 

「おりゃ!」

 

「甘いで!!」

 

ナイフを投げつけて日影が焔を攻撃する

 

「こんなもの…っ!!?」

 

「蜂の巣よ!!」

 

日影の攻撃に気を取られているうちに未来がスカートの裾の中の周囲から無数の重火器を展開させて、 回転しながら焔に向かって銃を乱射する

 

「ぐあぁぁぁぁ!!!」

 

「焔!?」

 

「だっ、大丈夫だ…」

 

そうは言うも焔は衣服がボロボロの状態で状況もまた最悪だった

 

 

「くそっ!詠たちをどうすれば救えるんだ?」

 

 

焔はどうすればいいのかと思い悩む

 

 

そんな中、光牙は1つの答えを見いだす

 

 

「……焔」

 

 

「なんだ光牙?」

 

 

「詠たちを救うには俺たちの力をあわせる以外ない、力を貸せ!」

 

 

「……ふっ、まさかお前からそんな言葉が来るなんて思いにも寄らなかったな。いいぜ、やってる!」

 

 

互いに皆を救いたい気持ちは同じ、そして2人は力を限界まで高め始める

 

 

「この一撃に全てを賭ける!」

 

 

「頼むみんな、正気に戻ってくれ!」

 

 

そして極限まで高めた力を振るう

 

 

「「炎竜斬!!」」

 

 

ギャオオオオオオ!!!!

 

 

 

光牙と焔が放った斬撃は火竜の姿を催し、目の前の詠たちを切り裂いた

 

 

そしてそれによって詠たちから怨念が消え、元の姿に戻った

 

 

シュタ

 

 

「ふっ、終わりだ」

 

 

「やったな!」

 

 

こうして光牙と焔の活躍でみんなが元に戻ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、しっかりしろ!」

 

「目を覚ますんだ!」

 

戦いを終えて光牙と焔が詠たちに呼びかけると徐々に目を覚ましていく

 

「光牙さん…焔さん…わたくしいったいなにを?」

 

「葛城と戦ってからの記憶がとんどるが光牙さんたちが助けてくれたんか?」

 

「ごめんね二人ともあたしたちのせいで」

 

「迷惑、かけちゃったわね」

 

目を覚ました詠たちが光牙たちに自身がした行いに謝罪する

 

「気にするな。無事で何よりだ」

 

「本当だな。私たちは守りきったんだ。大切な仲間たちを」

 

無事に詠たちを救えた光牙たち

 

そんな時だった

 

 

ギャォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!

 

 

断末魔の叫びと共に赤一色の世界は消えさるとそこに眩しい朝日が目に飛び込んできた

 

怨櫓血(オロチ)の体が消滅しみながあたりを見回していると

 

光牙が瓦礫の中から超秘伝忍法書を見つけた

 

「終わったんだな。何もかも」

 

「あぁ…終わったんだ。全て」

 

こうして光牙たちの戦いは終わりを告げたのだった

 

「これからどうするんや?」

 

「帰る場所もなくなっちゃったよ?」

 

帰るべき場所である蛇女がこんな状態じゃ無理もなかった

 

「蛇女の本部までみんなでいきましょう」

 

春花がそう提案し焔たちは納得するも光牙だけは違った

 

みんなが歩き出す中、光牙だけはその場に立ちつくす

 

「光牙?」

 

「どうしたの?光牙も行こうよ」

 

それに気づいた焔たちと未来がかけよりみんなでいこうと手を引っ張るが光牙は断固として動かない

 

「すまない。俺はもうみんなとはいられない」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

事情が事情とはいえ上司である道元を切ったのだ

 

このまま戻っても自分は反逆者の烙印を押され、一緒にいれば焔達もまた同罪にされるかもしれない

 

だからこそ皆を巻き込みたくない思いから光牙はそう言い放ったのだ

 

「俺はもう、みんなとはいられない…だからこそここでお別れだ」

 

焔たちの前から光牙は去ろうとする

 

だが

 

 

バッ!!

 

 

「っ?」

 

焔、詠、未来が光牙の前に立ち腕を広げて通せん坊する

 

「何をしている?…どけ」

 

光牙はそう言うと焔たちは首を横にふる

 

「水臭いぞ光牙」

 

「そうですわ」

 

「あたしたち仲間じゃない、あたしたちはみんな一緒だよ」

 

「えっ?」

 

その耳を疑うほどに優しく語りかけてきた焔たちの言葉に光牙は驚きを隠せない

 

「そうね。私たちを救ってくれた恩人の光牙くんをひとりぼっちにして自分たちだけいい思いをするなんて私はごめんだわ」

 

「お前たち…」

 

「問題はこれからやね」

 

日影の言葉に詠がいい場所があると提案したり、春花が半蔵学院に行こうかなどと言い出したり

 

超秘伝忍法書もあるから自分たちで学園を作る案もあったりといろいろだった

 

「まったく。お前たちといるとつかれることばかりだな」

 

「だが、そこがいいだろ」ニヤニヤ

 

「あぁ…そうだな」

 

以前なら否定するとこだが今はそれに頷ける自分がいることに嬉しさもあった

 

「じゃあ行くとするか、俺たちが目指す新たな道に」

 

「あぁ!」

 

「そうですね」

 

「ほ~い」

 

「うん」

 

「ええ」

 

光牙たちが歩みだそうとした時

 

「光牙くぅぅぅぅん!!!」

 

自分を呼ぶ声に振り向くとそこには半蔵学院の面々が

 

「僕、もっともっと強くなるから!今度は絶対に負けないくらい強くなるから、その時はまた会おうねーーー!!!!」

 

全力で手をふる佐介の姿に笑みを浮かべ光牙は右手を上げて答えたのだった

 

「で、結局どこ行くの?」

 

「どこでもええやろ」

 

「今はとりあえず進めばいいのよ」

 

「そうです。とりあえず出発ですわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆で笑い合いながら自分たちを照らす太陽に向かって歩いていく光牙たち

 

 

 

この先に待ち受けるもの。それは彼ら自身にもわからない

 

 

 

しかしそれでも尚、彼らは進んでいく。例えそれがゆく先の見えない道だろうと

 

 

 

信じあう仲間たちとともに一歩一歩踏み出して

 

 

 

これが彼らの新しい日々という名の始まりのロードなのだから

 

 

 

 

 

「さぁ、いくぞみんな」

 

 

 

 

「「「「「おーーー!!!」」」」」

 

 

 

 

 

そのロードを進む彼らの心には一切のまよいはない

 

 

 

 

あるのはただ、彼らの進むロードを照らす希望という名のひと筋の光だけだった

 

 

 

 

これが悪の道を選んだ彼らの新たな物語の始まりなのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怨櫓血(オロチ)を倒し蛇女での戦いが終わった頃、とある場所にてそれを見ていた二人の女性が……

 

 

 

「(あれは確かに…妖魔だった)」

 

「うっ…」

 

「みっ、雅緋。大丈夫!?」

 

女性が頭を抱える雅緋と呼ばれる女性を心配そうに見た

 

そんな中、彼女の中で今まで封じられていた記憶が一気に蘇った

 

「…忌夢。私は今までなにを?」

 

「雅緋、戻ったんだね記憶が」

 

「私は…あの時……母さん…光牙、…光牙?…そうだ忌夢、光牙、光牙はどこだ!?光牙は無事なのか忌夢!?」

 

「みっ雅緋、落ち着いて順に教えてあげるから!」

 

光牙の名を叫びあわてふためく雅緋に驚く忌夢だった

 

 




告知 新章スタート!


「久しぶりだな光牙、お前を迎えに来た。さぁ一緒に帰ろう」


「俺は…俺は…」


「貴様らのせいだ。貴様らのせいで光牙は!許さん!!」


「私とて負けられない!光牙は私たちの大切な仲間だ!!」


「…探したよ…光くん…一緒に、帰ろう…」


「こいつが…………道元が残した負の遺産か…」



焔紅蓮竜隊編&新蛇女子学園ノ巻 完成次第投稿



「…忍、転身」


グォォォォォォォン!!

ピィィィィ!!!

シャキィィィィィィィン!



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