仮面ライダー GENESIS CHRONICLE   作:式神ニマ

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Track01~02『侵略者ジェネシス』『勇者ディライト』

❖❖❖❖❖

 『サンドレアヤード』。天華の土地。

 

 ここで暮らす者は、先祖達の習わしに従って、その名に誇りを持って呼ぶ。

 大地に根付く作物も、天からの恵みも、生まれた時から人生を共にする名も、耐え難き悲しみであったとしても、それは全て天の神より賜るものだから。故に彼らは自らをサンドレアの子———『サンドラス』と呼び、この地に長く根を張ってきた。

 今、この瞬間までは……。

 

「ぐはぁっっっ……!き、キサマぁっ……!」

「ンハッ、無駄だと言っているのが……分からないのかね?」

 “それ”の嘲弄的な言葉と共に手が振るわれると、次の瞬間には男の体がゆっくりと宙に浮かんでいく。目には見えないが体全体が万力の様な力で押さえつけられているらしく、男の口腔から激しい苦痛の叫びが迸った。まるで嬲る様にその声をどこまでも堪能し、“それ”が唐突に手を開く。不可視の力から解放された男が地面へと再び叩き落された。

 

「ぐっ……‼…貴様は、何者だっ……⁉何故、我らの先祖の土地を———!」

「原始世界のサル如きは知らなくとも良い。貴様らは我が千年王国の為の家畜……いや、()()でありさえすればよいのだ」

 

 “それ”は確かに仮面の奥で目の前の男を……その背後にいる全ての者を嘲っていた。誰もがグッと悔しさに拳を握りしめるが、手を出す者はいない。それが掟だから。それが男——族長・バラドの命令だから。

 

 ——でも、本当にそれでいいのか?

 

 この戦いには一族の命運が懸かっている。それなのに、昔からの掟とやらに固執してここでむざむざやられるのを見ているだけなんて……。

 

 “それ”が信じられない程の速度で肉薄し、バラドを思いきり蹴り上げた。先祖伝来の槍と鎧も、鍛え上げられた肉体も、その超常的なパワーの前では何の役にも立たない。ボキッ‼と何かの破砕音が響き渡り、流石に皆が青ざめる。

 

「……っ!と、父さん———‼」

「…来るなっ……ラアド!私はまだっ……戦える……!」

「ンハッ!そういうのを蛮勇と言うのだよっ!いい加減……己の限界を知るがいいわっ‼」

 

 “それ”が高々と手を掲げると、そこに稲妻の様に不定形な槍が出現する。迸る紫電が“それ”の顔貌を明々と照らし出す。夜がそのまま具現化した様な双眸なき漆黒の仮面、額から生えた鋭利な触角……凡そ人とは思えない、禍々しい仮面に覆われた“それ”の表情が——隠れて見えないが——確かに嗤った気がした。

 

 ダメだ!とラアドと呼ばれた少年が声にならない叫びを上げる。だが、その体は皆と同じくその場から一歩も動けないでいた。

 

 ——どうして⁈

 ——バカバカしいと思いつつ、やはり一族の掟なんかに縛られているのか?

 ——…否、それならまだいいかもしれない。

 

 伸ばされ、いっぱいに開かれた掌は……どうしようもない程に震えていた。飛び出せない理由は……恐怖だ。天より到来し、圧倒的な力で暴虐の限りを尽くす、目の前の仮面の侵略者への恐れ。単純だがこの世で最も原始的な感情の前では、積み上げてきた研鑽も磨いてきた知識も、何の役にも立ってはくれない。

 

 やがて“それ”が手に持った雷槍を振り上げ……一気に父の体を刺し貫いた。瞬間、圧倒的な衝撃が一帯に撒き散らされ、溢れかえる電光に周囲の空気を焼いていくのが感じられた。刺し貫かれたバラドの口腔からもかつてない苦悶の叫びが漏れ出ている様だったが、電光の音圧に遮られて誰の耳にも届かない。だが、その目が微かに動き、まるで最期に意思を伝えようとするかの様に、ラアドを見つめた。

 

 ——サンドラ族を……頼んだぞ。

 

 強い意思を宿した瞳が、確かにそう言って揺れると……それを最期に急速に光を失った。胸を貫かれ、全身を焼き払われ、最早物言わぬ肉塊と化してしまった父を“それ”は無感動に睥睨し……唐突に蹴り上げた。命を懸けて戦った者への敬意も払わぬ不遜な振る舞い。そこにいる誰もが怒り……同時に恐れていただろう。

 

 ——自分達の常識では計り知れない、異様な怪物。

 ——暴虐なる侵略者にして破壊者。

 ——その名前は……。

 

「勝敗は決したぞ!今より貴様らはこの我——『仮面ライダージェネシス』に隷属せよ‼」

 

 高らかに宣言すると同時に、“それ”——『仮面ライダージェネシス』が両手を振り上げ、そこから次々と光の矢を周囲一帯に解き放った。禍々しい矢の群れがサンドラスの村に降り注ぎ、触れる物全てを焼き払っていく。熟し始めたトウモロコシの畑も、先祖が眠る墓所も、ラアドの生まれた家も、そこに溜め込まれた数々の本の山もみんな———。

 

 それを合図にして丘の上から百人近い屈強な男達が、蛮声を振り上げながらサンドラ族達へと襲い掛かってきた。体に描かれた独特の紋様、髑髏や骨を象った様な鎧から、ここより東の山岳地方に暮らす少数武族の『ジャファー族』だと知れた。笑いの鯨波を上げ、ジャファー達が次々とサンドラの仲間達を捕えていく。それがトンプソール武族を支配する掟、勝者が絶対という極めて単純な力の論理……。

 

「くっ……!やめろ–––––––––––––––––––––っっっ‼」

 恐怖が峻烈な怒りへと一瞬で変わり、竦んだ足を前に繰り出すだけの力をラアドにくれた。背中に背負った槍を抜き放ち、口金に設けられたスロットへ1本の薬瓶———『サンダーライドラッグ』を装填した。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ‼」

 力の限り振り回した雷槍が目の前のジャファーを吹き飛ばし、前方に道を切り開く。その先にいる仮面の仇敵———この事態の全ての元凶たる仮面ライダージェネシスに向けてラアドの槍が振り下ろされるが……。

 

「無駄だ」

 渾身の槍撃はジェネシスの指1つで簡単に止められてしまった。見ると、槍の先端には僅かな火花が光っているのみだった。驚愕するラアドを、ふん……と仮面の奥でせせら笑い、繰り出した蹴りで槍を半ばからへし折った。

 

「資源の分際で舐めた真似を……。だが、なかなかの錬真力だ。貴様は拾い物だな」

「…ふざけるな。僕は……僕たちはモノじゃないっ‼」

 

 折れた槍の先端を再度握りしめ、その切っ先を再びジェネシスへと向けた。震える手を、竦みそうなる脚を精一杯押さえつける。そろそろ怒りが再び恐れへと戻ってしまう。その前に何としてもコイツを仕留めなければ———。そう決意した直後の事だった。

 ジェネシスの振るった超常的な力の影響で、地盤が弱っていたのだろう。絶壁付近へと追い詰められていたラアドの足元が唐突に崩れ落ちたのだった。

 

「う………うわあぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ⁉」

 悲鳴を上げながら少年が、谷底の川へと転落していく。飛沫を上げる濁流に飲み込まれ、ラアドの姿は完全に見えなくなってしまった。ジェネシスがチッ!と激しい舌打ちを漏らした。

 

「しまった……!貴様らっ!そ奴らを連行した後、あのガキを探し出せ‼」

「よろしいので?あんなガキ一匹くらい———」

「クラスSの錬真力の持ち主だ。アレさえいれば他の有象無象どもなど……」

 

 ジャファーの男が頷き、他のサンドラの民達を引っ立てていく。仮面の奥からその様子を無感動に見つめながら、ジェネシスは未開のサルどもめ……と胸中に毒づいた。

 本当であれば、あんな粗野で無知な蛮人どもの力など借りたくもない。だが自分の力を見せつけてやれば、勝手に神だ奇跡だと祀り立ててくれる単純な連中だ。役に立つのならば、出来得る限り使い潰してやるのが無駄がないと言うものだ。

 

 ——もう少しで、我の時代がやって来る。

 ——誰にも打ち崩せない、最大最強の世界をこの手に掴む時が来る。

 ——この力がある限り、誰にも阻む事などできはしない!

 

 目の前の山の一角を睨み付けながら、抑えきれない哄笑が仮面ライダージェネシスの仮面の奥から迸った。

 

 

 

 

 

❖❖❖❖❖

 空に輝く恒星——『陽星ソニア』の恵みが最も豊潤に注ぐ昼日中。温められた空気が息づくもの全てを優しく包み込み、森の木々を青々と煌めかせる。そよぐ風も柔らかく、余計な湿気を帯びてもいない。生きとし生ける者、全てを祝福する様な初夏の1日……。

 だが、それだけで終わってくれないのが、この世界の常というものだった。

 

「グオォォォォォォォッッッッッッッッッッッ!!!」

 

 空気を揺るがし、木々をへし折り、地面を砕き割って、巨大な影が森の中を撃侵していく。人間に近い体型を持ちながらも全高3ハンズ近い巨体。獰猛にギラギラと輝く双眸と牙。体表面は黒に近い色合いで山脈の如き僧帽筋が波打っている。そして眉間の辺りから聳える鋭い金色の角。

 

 巨人(タイタン)クラスタに分類される怪物の一角——『オーガデブリス』の威容だった。

 

「ハラ……ヘッタ……。ニンゲンドモノサト……チカイ……!」

 

 怪物の口からたどたどしい言葉が漏れる。この先に渦巻く匂いから判別が出来る。この先に彼の標的———人間達が暮らす集落がある。そこに行けば脆弱で臆病なエサどもが大量にひしめいている。新鮮な肉とともに、人間どもの阿鼻叫喚をたっぷりと味わう事も出来るだろう。少し先の未来を思い描いた様にその顔が喜悦に歪んだその瞬間の事だった。

 

「行かせると思うのか?」

 

 不意に響いた声にオーガが周囲を見渡す。果たして目の前、1本の巨木の枝に佇んでいたのは1人の人間の少女だった。

 藍染の装束に包まれた抜群のプロポーション。陽光すら吸い込みそうな黒く艶やかな長髪。だが、両手に握られた2振りの刃と鋭い眼光が目の前の怪物への敵意を何よりも雄弁に物語っていた。

 

「オンナノニンゲン……!ヤワラカイニク……!クワセロッ‼」

「悪いが貴様にくれてやる命なぞ、毛一本ぶんもありはしない」

 

 興奮気味にオーガの腕が伸びるが、少女——ゼオラ・ユピターはそれを軽々と躱した。木を踏み場にして、空中を舞う様に跳躍する。デブリスが驚愕する程の身体能力を見せつけ、不意にその背中に向けて1つの爆弾を投擲した。起爆と同時に周囲に無数の金属片を撒き散らす性質を持つ、破砕榴弾『星雷』はオーガの壁の様な背中に着弾した瞬間、轟音とともに炎を噴き上げた。

 

「ギィアァァァァァァァァァァァッッッッッ!!?」

 音速を超える鉄片に背中の広範囲を穿たれ、オーガの口から苦痛の絶叫が漏れる。舞い散る肉片と血の雨を巧みに躱しながら、ゼオラが口の端をニヤリと挑発的に曲げる。

 

「血も流すし、痛みも感じるのか。デブリスにしては分かりやすくていい」

「キッ……キサマァァァッッ‼フザケヤガッテェェェェェッッッッ‼」

 

 憤怒の表情も凄まじく、オーガがゼオラに向けて拳を振り下ろしてきた。ゼオラは咄嗟に後方へと跳び退って躱す。背中の広範囲と右肩を焼かれたにも拘わらず、まだここまで機敏に動けるとは。やはりデブリスの生命力は伊達ではないという事か。唸りを上げて迫る拳撃が樹木を砕き、ゼオラの足場が崩れた。それを見定めたオーガが勝ち誇った様に笑う……が、次の瞬間、木々の隙間から別の巨影が姿を現し、その巨大な腕でオーガの胴体を嫌というほど殴りつけた。

 

 形容するならば、巨大な蟹だ。両腕に備えられた鋏がオーガの左腕を挟み込み、背負い投げの要領で放り投げてしまった。岩場に叩きつけられた怪物を満足気に睥睨し、巨大な蟹———椰子蟹型眷族乗騎『リヤカードリフター』の上部に乗った少女がゼオラに「大丈夫?」と声をかけた。

 

「意外と油断しやすいんだから……。相手はデブリスだよ?そう簡単にはやられないって」

 少女——マヤ・フォルコが窘める様に言うと、再び前方の敵へと目を向ける。硬い岩場の上に頭から叩きつけられたにも拘わらず、オーガは未だに立ち上がろうとしていた。

 

 

 

❖❖❖

 デブリス。

 いつの頃からかこの世界に現れ、人を、そして世界そのものを蝕んでいく怪物の総称。

 

 それぞれ『吸血鬼(ヴァンピール)』『巨人(タイタン)』『妖精(フェアリー)』『野獣(ビースト)』『幽霊(ゴースト)』『(ドラゴン)』『悪魔(デモニック)』の7つのクラスタに分類され、その生態や見た目、行動なども種類によっては全く異なる。このオーガの様に人に近い明確な意志を持っている存在もいれば、ただ増殖本能程度の思考しか持たないものもいる。

 

 だが、彼らの多くはハッキリとこの世界に生きる者にとっては脅威でしかない。その理由は彼らが体内に抱える『デブリス細胞』という特殊な細胞組織を持ち、それが生き物や土地を汚染する毒物となるからだ。

 デブリス細胞の毒によって発生する病を『デブリス病』という。作物からの二次汚染や土地の浸食による影響もあり、それを完全に止める手立てはない。最悪の場合は死に至る、若しくは同じ怪物へと生物を変異させるこの奇病によって、人類は長らく恐怖に晒され続けているのだ。

 

 

 

❖❖❖

「オーガの弱点は角だよ。狙うならそこ」

「…聞いてたよ。巨体を動かす為の神経が集中する箇所……。あ、お前の耳みたいなものか」

「耳じゃない!ダイロク器官‼」

 

 マヤが怒ると、彼女の頭頂部からピョコンとキツネの耳の様な器官が立ち上がった。リンクスと呼ばれる特殊なヒト族である彼女はこの耳の様な器官を展開する事で、視覚や聴覚などを強化する事が出来るのだ。今もオーガの息遣いや心音、筋肉の動きなどを検知し、次の攻撃を抜け目なく予測しているのだ。

 

「ニン、ゲンドモガッ……!モウユルサネェッ‼」

 オーガが近くの巨木の幹を両腕で抱え込むと……なんと根っこごと力任せに引き抜いてしまった。自身の3倍近い巨木を棍棒の如く振り回し、広範囲を薙ぎ払う。だが、マヤもゼオラも慌てた様子はなかった。怪物の背後に1人の少年が降り立つのが見えたからだ。

 

 どこにでもいそうな平凡な身なりの少年だった。金髪と銀色の瞳で飾られた顔も線が細く、面差しもどこか柔弱そうな雰囲気を感じる。だがその少年が現れた途端、少女たちの間に確かに勝利への確信が生まれるのが感じられた。

 

 少年は静かに怪物を睨み付けると、バックルを取り出し、腰へと巻き付けた。〈ディライトドライバー!〉と叫んだバックルからベルトがシュルシュルと伸び、少年の腰へと巻き付く。そして今度は左右に開いたスロットに2つの薬瓶———この世界でデブリスに対抗する為に作られた霊薬『ライドラッグ』を装填した。

 

「お待たせ、2人とも」

〈ライト!シルバー!ファンタスティック!栄光のレシピ‼〉

 

「やれやれ、ようやく真打ち登場か……」

「遅すぎだよ。レイト、さっさとこの暴れん坊倒しちゃって!」

「任せて。…変身‼」

 

〈オールセット、ディライト!〉

 

 レイトと呼ばれた少年の叫びに呼応する様にベルトが一層輝き、眩い光輝の中に少年の姿を包み込んで行った。どこか神聖なその光を浴びてレイトの細身の体が変化していく。体中が銀色の装甲に覆われていき、更にその上から光が具現化した様な手袋・ブーツ・胸甲、そして仮面が被さっていき、文字通りの変身が完了した。

 

〈ライトアップブレイバー!ミスリックナイツ‼〉

 

 デブリスと戦う、この世界の伝説の勇者。その名を受け継ぐ戦士———『仮面ライダーディライト』が青い複眼を光らせて、オーガを睨み付けると……そのまま前方へ勢いよく跳躍した。ディライトの回し蹴りがオーガの横面を打ち、身長2倍近い怪物がそのままもんどりを打って吹き飛んだ。

 

 相変わらずデタラメなパワーだとゼオラは半ば呆れ気味に思う。仮面ライダーディライトと呼ばれる戦士——それはただ鎧を纏った様な単純なものではない。神憑り的な力を駆使し、かつてデブリスの王『ディアバル』を打倒したと言われる『勇者ディライト』の力の一部がレイトに宿っているにも等しい。だからこそ、通常のデブリス程度ならばその力の前では為す術もないのだ。

 

〈ヴァリアントスラッシュ‼〉

 

 オーガが苦し紛れに巨木を振り回す。だが、ディライトは自身が持つ剣『トランスラッシャー』のスロットに炎のライドラッグを装填した。刀身から火柱の如く噴き上がった炎熱が巨木の表面を薙ぎ払い、一瞬にして灰燼に帰せしめた。とどまる事を知らない剣戟がオーガの分厚い表皮を焼き切り、怪物が苦悶の声を上げる。

 

 その隙を見逃さず、マヤが取り出した弓から光の矢を幾筋も放射し、ゼオラはオーガの足元の表皮を刃で斬り裂いた。立て続けの攻撃に遂に体勢を崩したオーガが後ろに倒れ込み……その右肩に折れた木の枝が思いきり突き刺さって動きを封じられてしまった。

 

「「レイト、今だ!」」

〈エブリッション!ヴァリアントフラッシュ‼〉

 

 ゼオラとマヤの声に呼応し、ディライトがベルトのスイッチを再度押し込んだ。ライトライドラッグのエレメントエネルギーがベルトに再チャージされ、ディライトの右足へと集中していく。背部のマフラー——エレメントタービュラーがジェット噴射の如く躍動すると、その体を一気に加速させる。

 

「せぇりゃあぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ‼」

「ギャオォォォォォォォォォォォォォォッッッッッッッッッッ!!??」

 

 オーガの胸元にディライトの必殺の飛び蹴りが炸裂した。ライドラッグに秘められた力はデブリス細胞を破壊し、浄化する性質を持つ。ライトライドラッグ——光のエレメントエネルギーを全身に浴びたオーガが苦悶の呻きを漏らし……次の瞬間、体の内側から噴き上がったエネルギーに耐え切れなくなり爆発した。

 

「よぉし、討伐完了‼」

 マヤが快哉を叫び、怪物の遺体に空の霊薬瓶を向ける。次の瞬間、オーガの体がパーティクル状に霧散し、薬瓶の中へと収まっていった。土地を汚染するデブリスの遺体は討伐後、こうして『討伐の証(レセプト)』にする必要があるのだ。

 

「オッケイ!アネスタのオーガは頑丈な分、貴重な素材になるから高く売れるって話だよ。あと、角は幸運のお守りになるとも———」

「…絶対にゴメンだ。そんなもの身につけたがる奴の気が知れない……」

「ハハ……気が知れないかはともかく……確かにあんまりいい気はしないね」

 嫌そうな顔をするゼオラに変身を解除したレイトが笑って答える。鬼のシンボルが福を呼び込むアイテムになるなんて、何だか皮肉だなぁ……と思うと、「やぁ、お疲れ様」と呑気そうな声が耳朶を打った。

 

 赤銅色のプレートメイルを身に纏った騎士がこちらに悠然と歩み寄ってきた。線の細い中性的な顔の造作は、まんま物語の中に出てくる美剣士という佇まいであるが……左目の下には羽根を広げた様なパラディンの紋章が描かれていた。

 

「ローランさん……他の個体は確認できましたか?」

「いや。どうやらここに現れた1体だけだった様だね。…多分、体が大きすぎて群れから放逐された個体だったんだろうなぁ……」

 ローランが、うんうんと1人納得した様に頷くと、そのままオーガの冥福を祈る様に合掌する。相変わらず不思議な人だな、とレイトは軽く苦笑した。

 

「それにしても……さっきの対応は見事だったよ。あれだけの巨体に怯まずに向かっていける者はアネスタにもそうそういない。レイト君もそろそろ一人前の戦士だね?」

「い、いえ……。まだまだです。仲間とドライバーのメモリージングシステムがサポートしてくれるお陰ですよ」

 

 見た目に違わず、レイトはそこまで荒事が得意な方ではない。それでも凶悪なデブリス相手に戦って行けるのは、このディライトドライバーに蓄積された戦闘データがレイトの戦いをサポートしているからだ。だから正直に、これがなければなければレイトはただの少年でしかないのだが……ローランがやれやれと肩を竦めた。

 

「レイト君、謙虚さは君の美点の1つだけど……いつまでもそればかりではいけないな。もう少し……自分を信じる事も必要かもしれないよ?」

「……?それってどういう———?」

 レイトが訊き返そうとした刹那、突如としてドォン‼という轟音が響き渡った。レイト達が音の震源地に目を向ける。あの方向には……。

 

「『アレステリス』の方からだ……。まさか、オーガの仲間が……?」

「ううん、微かに翼のはためく音が聞こえる……。空からだ。しかも、凄い数……!」

 

 マヤが頭のダイロク器官を展開して言った。翼を持つデブリスと言うとそれこそ『ハルピー』や『モスマン』、『ロックバード』など様々な種類が思いつくが……さっきの轟音は明らかに爆弾の音に聞こえた。まさか……?という予感がレイトの胸中に走る。

 

「レイト君、悪いが一足先にアレステリスに戻ってくれないか?」

「分かりました。…ユニオ!」

「合点でぃっ‼」

 リヤカードリフターの上部から銀色の大型バイクが飛び降りてきた。一角獣型眷族乗騎『マシン・ユニオンスティンガー』のシートにレイトが飛び乗り、森の中を激走し始めた。

 

 ——ただのデブリスの攻撃とは違う。

 ——何か、かつてない大きな戦いが始まる様な……。

 

 何の確証もなく、だが妙な予感がレイトの胸中に渦巻いて消えてくれなかった。

 

 




〈設定メモ〉
◇勇者ディライト
・かつてこの世界をデブリスの王『ディアバル』から救ったとされる伝説の勇者。
・超常的な力を持ち、この世に今の錬真術や国家体制を齎したと言われている。
・彼の遺品と思われるメダリオンが変化し、レイトに仮面ライダーの力を与えた。


初めましての方も、「またお前か」という方も今日は。
あらすじにも書きました通り、本作の筆者の投稿作品『仮面ライダーミスリックサーガ』の劇場版に相当する作品です。
上記の様に、設定の関しては適宜開設していきますので、初めての方もお楽しみ下さい。

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