仮面ライダー GENESIS CHRONICLE   作:式神ニマ

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今回かなり短いです。ごめんなさい。
本作も次回で終わりとなりますので、なるべく早く投稿したいと思います。


Track21~22『懺悔』『仮面ライダー、ラストバトル!(前章)』

❖❖❖❖❖

「クッ……!こんな……こんな筈では……!」

 先程までギマイラエボリュードだった砂塊から這い出してきたフランハイムに、アイリスが剣を突き付けた。

 

「教授……もう終わりにしましょう。こんな怪物を生んで、世界に復讐するなんて……あなたの研究が目指したものはこんな事じゃないでしょう?」

「ぐっ……」

 フランハイムがアイリスを睨み付けて歯噛みするが……反論の言葉は思いつかなかった。

 

 砂に塗れ、霊薬の痛みに蝕まれ、若者たちの熱い思いに阻まれ、娘ほどの年頃の少女にこうして諭されている我が身を顧みた時、一体自分は何をしているのだろうか……?というやるせなさに、フランハイムは包まれていた。

 

 娘を、妻を、大切な友人や家族もデブリス病で失った自分だからこそ、人造人間(ホムンクルス)という研究分野にのめり込んだ。デブリスの毒や牙にも負けない強い肉体をどうしたら人は得られるのか。例え実を結ばなかったとしても、我が子を失う苦しみを他の誰かに味わわせない為に。そんな純粋な思いで始まった研究だったが、その成果が認められる事はなかった。寧ろ、亡くした娘や妻を蘇らせようとした悪魔の研究だという流言飛語が広まり、彼は錬真術の世界から追い堕とされる事になった。彼が世の中への深い失望を抱いた折にコルテスの野望へと誘われ、ホムンクルスの力を以て今ある世界を破壊するという、歪みきった道へとその脚を伸ばす事になってしまった……。

 

 だが、その道は果たして自分に……何よりもホムンクルス達にとっていい結果へと繋がっただろうか?コルテスは彼女たちを自らの強化の為の踏み台、もしくは便利な兵器程度にしか認識していなかった筈だ。彼女らの強靭な肉体や優れた叡智を誰かに称賛される事もなく、ただ命を踏み躙る怪物として人の中に刻み付けるだけの事だった。そんな事が本当に彼女たちの幸せだったと言えるだろうか?

 

「…そうだろうな。あの娘たちの価値を貶めてしまったのは……この私だ……」

 全身を小刻みに震わせながら、しかしどこか憑き物が落ちた様な顔で、フランハイムが項垂れた。

 

 観念したのは彼だけではなかった。神の様に崇めていたコルテスが敗北して抵抗する気力もなくしたのか、ジャファー達は武器を手放して次々とサンドラ達に拘束されていった。彼らも自らを排斥した世界に復讐する為にコルテスの企みに加担したクチなのだろうが、多くのサンドラ族を虐げた罪への言い訳にはならない。きっとトンプソールの法律が彼らをしっかりと裁くだろう。

 

 ジェネシスの特別な力の効果が切れたのか、ディライトとビルドはそれぞれが元の姿へと戻っていった。

 

「はぁ~~……やっと戻れたぜ……。マジでもう二度とゴメンだ……」

「あぁ……夢の時間ももう終わりかぁ……。もっと他のレジェンドファンタスティックも試したかった……」

「はいはい気を抜かない。まだコルテスがどうなったのか確認できてないんだからそれまでは———」

 ガックリと項垂れる2人を戦兎が諫めようとした刹那の事だった。

 

 ヒュヒュヒュッッッ‼という風切り音が鳴り、砂塊を突き破って無数の触手が飛び出してきた。それは降伏し呆けていたジャファー族達に次々と突き刺さり、彼らの身の内の力———錬真力を吸い取っていった。

 

「なっ……⁉アイツまさか……‼」

 

「ンハハハハハハハハハハッッ……!油断したなバカめぇぇっっ‼」

 

 ジャファーから吸収した錬真力を元にして黒色の肉塊が徐々に元のエボリュードの姿を取り戻していった。だが、まだ完全な復活には足りないのか、皮膚のところどころがまだケロイドの様になったままだ。

 

「下等な資源どもがよくもっ……!貴様らのエネルギーを寄こせぇぇぇっっっ‼」

 エボリュードの左腕が1本の触手状に変化し、手近にいた一番高い錬真力を秘めた者——アイリスに向けて突進した。

 

「アイリィ⁉」

 ディライトが必死に手を伸ばすがとても間に合わない。やがてその鋭利な尖端が少女の体を食い破る……かに思えた瞬間、アイリスを庇う様に1人の影が立ち塞がった。

 

「……………っっ‼」

「フランハイム教授⁈」

 触手がズブリと音を立てて、フランハイムの体を刺し貫いた。体に食い込んだ触手がその身に宿す力を余す事なく食い荒らし、一気に引き抜かれた。

 

 元は貴族家付きの錬真術師でもあった彼の錬真力は相当に高い。崩壊しかかっていたエボリュードの体がようやく安定状態を取り戻した。

 

「コルテスッ……!お前———‼」

「忘れて貰っては困る……!我にはまだチューリングチャーチがあるのだ……!コイツさえ起動させられれば……‼」

 

 エボリュードの命令に呼応し、今まで待機状態にあった戦艦が急速に活動を再開した様だった。山の中に封印されていた戦艦が上昇を開始したのに合わせて、ジャファーの砦が崩落を開始した。混乱状態に陥る人間達を嘲笑いながら、エボリュードの体がゲル状に溶け出して動き出した戦艦の中へと消えていった。

 

「クソッ!逃がすと思うか‼」

 起動した戦艦へと飛び移ろうとしたビルド達だったが、突如として艦側面のハッチが開き、無数のロボット兵士———『ガーディアン』が射出された。ガーディアン達はまるで組体操かなにかの様に重なり合うと、その姿を巨大な脚と砲座を備えた合体ガーディアンへと変えた。

 

「アイツ……!こんなモノまで隠し持ってたのかよ……」

 

「戦兎ぉ!コイツ等は俺に任せろ‼」

「お前もだレイト!あの三流野郎にたっぷりと灸をすえてやれ‼」

 そう言って合体ガーディアンへと向かって行ったのは仮面ライダークローズと、錬真力を取り戻した仮面ライダーソーディアだった。ビルドとディライト、そしてジェネシスの3人はそれに力強く頷き、岩盤を突き破って表れたチューリングチャーチの表面へと飛び乗った。

 

 エボリュードの生命力をエネルギーへと変換する事で起動したチューリングチャーチが表面を覆っていた岩盤を突き破り、遂にその全貌を現した。巨大な船といった有様の船体各所に備え付けられた噴射口が明滅する様に瞬き……更に速度を上げて遥か上空へと上昇していった。

 

 いよいよ始まった、大いなる厄災。だが崩落した砦の一角に致命傷を受け地に仰臥するフランハイムと、そんな彼を支えるアイリスの姿があった。そこだけが上空の喧騒から取り残された様な不思議な静けさに包まれていた。

 

「教授……一体どうして……?」

 

 アイリスの声は不思議と静かだった。エボリュードの触手はフランハイムの右胸を綺麗に穿ち抜き、丸々とした風穴が空いていた。おまけに彼自身の錬真力は残らず吸い取られてしまったのだ。アイリスの目から見ても、彼がもう長くない事は分かる。

 だが、フランハイムの顔は不思議と晴れ晴れとしていた。血糊で塞がった喉を懸命に震わせて「…さぁてな……」と、ゆっくり絞り出す。

 

「…最期くらい……人間らしくありたいと、思ったのかもしれないな……。すまないな……。罪をちゃんと償う事も出来んとは……」

「…教授……」

「…まだ、そう呼んでくれるとはね……。…君たちの様に、広い心を持った人間達がいるのならば……まだこの世界には希望が持てるかもしれない……。…だから、頼む。あの男を止めてはくれないか……?」

「…ええ、勿論です」

 

 アイリスはゆっくりと頷く。その答えにフランハイムは満足そうに微笑むと、彼女の耳元にゆっくりと何かを語りかけ……まるで使命を果たしたかの様に、フツリと力尽きた。

 

 

 

 

 

❖❖❖❖❖

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっっっっ………!!!」

 チューリングチャーチの側面砲塔に歯を食いしばってしがみついているディライトの姿があった。遥か上空まで一気に飛翔した戦艦全体には強風が吹き荒れ、壁面にしがみつく人間などあっと言う間に振り落とされそうだ。

 

 この高度から落下したのではきっと助かるまい。戦艦後方の噴射ノズルは今にも火が吹きだしそうに明滅している。急いで甲板デッキまで上がらなければ……!と、腕に力を込めると、

 

「何やってるんだよ?」

「うわぁっ、戦兎⁉」

 ラビットタンクフォームのビルドがこちらを覗き込んでいた。しかも驚くべき事に戦艦の壁面にそのまま素立ちしている。

 

「ど、どうやってるの⁉ラビットタンクにそんな機能あったっけ⁈」

「はぁ……コイツは船体全体に半重力リフトが働いてるんだ。だからどこに立ってようとも、足元が下になるってわけ」

「え……?…あ、ホントだ」

 

 恐る恐る手を放してみると、確かに体は壁面に接着する様にストンと落ちた。これなら動き回るのは楽だと思いつつ、周囲を見渡す。10歩ほど歩いたところに艦内へ入る為のハッチらしきものがあった。近付いてみるが、なんと扉の周囲が()()()の様な金属でしっかりと接合され、開かないようになっていた。

 

「なんだコレ?」

「さっき周りをザッと見てみたんだが……どのハッチもこんな感じだ」

「籠城でもする気なのか、アイツは?いつまでもコソコソと……」

 

『籠城?違うなぁ……。余計な病原体が入らない為の、予防というヤツだよ‼』

 

 毒づいたレイトに答える様な、不気味な唸りが足元から響き渡った。間違いなくコルテスの声だ。ビルドとディライトが周囲を見渡すと……次の瞬間、2人は信じられない光景を目撃した。

 チューリングチャーチの甲板上に設置されていた、恐らく船渠に接岸する為のクレーンが稼働し、それがみるみる巨大な怪物の“腕”へと姿を変えていったのだった。

 変化を始めたのはそこだけではない。クレーンに挟まれた艦橋部もその表面が液体状に流動し、悪魔的なエボリュードの上半身へと変わったではないか。

 

「アイツ……!戦艦と融合しやがったのか……⁉」

『その通りっ‼今やこの艦の全てが!私の思うがままなのだぁっ‼』

 

 エボリュードの顔がニヤリと嗤い、腕をビルド達に向けて叩き落した。これだけの巨体にしては信じられない速度だった。その衝撃に煽られたビルドとディライトの体が浮き上がり、半重力リフトの圏内から放り出されてしまった。そのまま地上へと落下しそうになった2人の仮面ライダーだったが……突如、下方から飛来した光が両者を拾い上げてそのままチューリングチャーチの甲板まで運び去った。

 

「2人とも、大丈夫?」

「ラアド!」

 仮面ライダージェネシスだった。2人の無事を確認すると、ジェネシスは再びエボリュードに向けて飛翔した。まるで重力に支配されない程の速度で砲火を搔い潜り、パンチやキックをエボリュードに見舞っていく。

 

「スゲ……あれもう仮面ライダーって言うより、ウルト〇マンとかキャ〇テン・〇ーベルだろ……」

「呆けてる場合か。俺たちも続くんだよ」

「分かってるよ……っと」

 

 レイトが腰から取り出した箱状のアイテムにライドラッグを装填し、ベルトへ押し込んだ。

 

〈ラビット&ラビット‼〉

〈ライト!シルバー!レ~ン・チン‼〉

 

〈Are You Ready?〉

「ビルドアップ‼」

「再錬成‼」

 

〈紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット‼ヤベーイ!ハエーイ‼〉

 

〈ブートアップ、ディライト!サイバネティック・ハイパーブレイバー!ミスリックレンジャー‼〉

 

 ビルドが深紅のラビットラビットフォームに、そしてディライトの全身に『ブースタースケルトン』と呼ばれる外骨格が装着され、メカニカルな意匠を施された強化形態『ミスリックレンジャー』へと姿を変えた。

 

『仮面ライダー共がっ……!いい加減、しつこいんだよぉぉっっ‼』

 

 エボリュードの声に呼応し、戦艦の砲座からマイクロミサイルや迎撃用のセントリーガンが一斉に火を吹き出す。フルボトルバスターから砲火を吐きながら、ビルドは得意のスピードを生かしてそれらを躱す。ディライトもベルトの箱型のアイテム——『ライドレンジアッパー』のダイヤルを回転させると、脚部からスピードを強化する『オーバーフライタービュラー』が出現した。

 

「「「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ‼‼」」」

 

 ここを決戦の場と定め、裂帛の叫びを上げた3人の仮面ライダーが、迎撃の猛火を掻い潜って駆け出して行った。

 

 

 

 

 

❖❖❖❖❖

 3人の仮面ライダー達を相手に戦いながら、エボリュードは次なる命令をチューリングチャーチに向けて発した。この戦艦はエボリュードの生命エネルギーを動力へと変換する事で動いているのだが、先程の攻撃や破壊酵素の投与を受けてそれの消耗も激しい。十分な錬真力を取り込めないまま復活を果たした事もあって、このままではいつか資源が底をついてしまう。

 

 チューリングチャーチに搭載されたナビゲーションがこの世界の地形データを瞬時に読み取り、次なる目的地———人口密集地に向けて戦艦が加速を開始した。目的は勿論、人間……正確には、彼らの身の内の錬真力だ。

 

 この戦艦が起動した以上は誰が手向かおうとも関係ない。この世界にはこの高度まで上昇できる様な手段が存在しない事は分かっているのだ。ならば、後は纏わりつくウザったい小虫どもを撃破するのみ。

 そんなコルテスの嘲りを乗せて動き始めた戦艦を、地上のアイリス達は歯痒い思いで見つめていた。出現した合体ガーディアンは既にクローズとソーディアが打ち倒したが、そうこうしている間に敵の中枢は自分達に手が届かないところまで行ってしまった。

 

「クソッ!待つしかねぇのかよ……」

「それにしても……アレはヤバいだろ……」

 

 今や戦艦はその姿を大きく変化させ、怪物の上半身が乗っかった様な奇怪な姿へと変貌していた。仮面ライダー達が懸命に反撃している様だが、先程のギマイラエボリュードとも大きさが比べ物にならない上に、戦艦に搭載されている武器を自由自在に使えると来ている。このままでは、早晩ジリ貧になる事は目に見えている。

 

「…あそこまで、行く手段があれば……」

 クローズマグマならば空を飛ぶ事は出来るが、流石にあれほどの高度まで、しかも動き出してしまった戦艦には流石に追いつけない。何としてもあそこに行って、フランハイムから託された物をレイト達に届けなければいけないのだが……。アイリスが歯噛みすると、「あ、そうだ‼」と、突然マヤが大声を出した。

 

「あそこまで行く手段……あるかも‼」

 

 




〈設定メモ〉
◇テオドール・フランハイム
 元は神聖アネスタ皇国の貴族家付き錬真術師であったが、親しい人々をデブリス病で亡くし、それ以来ホムンクルスの研究を続けてきた。だが、彼の才能へのやっかみもあったのか、それを「悪魔の研究だ」と悪し様に言う者もおり、その結果として錬真術師としての資格を剥奪される事になった。
 一時期、デブリーターに属しながらホムンクルスの研究を進めていたが、デブリーターとのコンペティションで敗北し、組織を離脱。コルテスの下で彼の世界侵略の野望に手を貸す事になった。

・年齢:49歳
・性別:男
・イメージCV:濱田岳
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