仮面ライダー GENESIS CHRONICLE   作:式神ニマ

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ども式神です!
『仮面ライダー GENESIS CHRONICLE』、今回で遂に最終回となります。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。


イメージ主題歌:藍井エイル『YeLL』
https://youtu.be/8iVjmlGvwjo?si=9OmYBpakXxon4Oci


Track22~24 『仮面ライダー、ラストバトル!(後章)』『Daylight』『それぞれの場所へ』

❖❖❖❖❖

〈シングル!ダブル‼トリプルミックス!!!〉

 ディライトが出現させた銃剣型の武器——『ミキシングラッシャー』に3つのライドラッグを装填し、側面のシリンダーを回転させる。霊薬のエネルギーが銃口へとチャージされると、迫りくるミサイルの群れに向けて構えた。

 

〈マテリアル!ミキシングバースト‼〉

 

 ミサイルが散弾に消し飛ばされ、黒煙となって消え去る。先程放った弾丸には空気中に金属片を撒き散らし、チャフの様に電波を阻害させる効果もあった。足元のブースターの出力を更に上げ、その場から駆け出すが……次の瞬間、戦艦の小型ハッチから出現した攻撃ドローンにその進路を阻まれる事になった。

 

「こいつは流石にっ……‼」

「ああ……キリがないっ‼」

 

 ディライトのすぐ近くを飛行していたジェネシスが光のシールドを出現させ、攻撃を防ぐ。チューリングチャーチと融合を果たしたエボリュードは次から次へと武器を作り出し、体に取りついた仮面ライダー達を叩き落そうと躍起になっている。無数の砲火に行く手を遮られ、仮面ライダー達は未だにエボリュードの悪面相が張り付く艦橋部まで辿り着けないでいた。

 

「諦めるなっ……!リソースはいつか尽きる筈……その瞬間まで持ち堪えればっ……‼」

「いつかって……いつだよ‼」

 

 しかも、船体も武器も壊したとしても立ちどころに再生されるのだ。流石に戦兎と言えども、疲労の色は隠せない様だった。徐々に追い詰められていく仮面ライダー達を睥睨しながら、頭上からエボリュードが『ンハハハハハハハハハハッ‼』と癇に障る笑いを降り注がせる。

 

『クドいぞムシケラどもっ‼いい加減に消えてなくなるがいいわぁっ‼』

 

 仮面ライダー達を取り囲む様に無数の有線セントリーガンが出現した。

 硬直する仮面ライダーを満足そうに眺めながら、彼らを焼き払う様に命令しかけた刹那。

 

 ドゴォンッッッ!!!!!という爆音と共に、チューリングチャーチの船体に激震が走った。何か猛烈な質量を持った物質が激突したのだ。

 

 艦底部に突き刺さっていたもの……それは巨大な“手”———時空移動装置エニグマに相違なかった。全ての指を前面に突き出した、所謂“抜き手”の状態でチューリングチャーチの底部と後方のエンジンの一部を深々と貫いていた。

 

『なぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ???!!!』

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっ!!!??」

「うそぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!?!?」

 

 驚きの声を上げたのエボリュードだけではない。ビルドとディライトも仮面の奥で目を見開いていた。なにせエニグマは完全にその機能を停止していた筈なのに、何故ここにいるのか。その疑問に答える様に、エニグマの外部スピーカーから『どうよ!!』という快哉が響き渡った。

 

「マヤ⁈…まさか……直したの⁉」

『なんとかね。ジクーテンイソーチ?……て言うのはどうにもならなくても、真っ直ぐ飛ばすくらいまでなら、あたしにだって直せるよ!!』

「まったく……最っ高だお前らぁぁぁぁぁぁっっっっっ‼」

 

 固い戦艦に正面から激突した事で、つに耐久度の限界を突破したエニグマの各部から小爆発が上がり始め、それに巻き込まれたチューリングチャーチの船体にもあちこちで火の手が上がり始める。アイリス達全員が飛び降りた瞬間にエニグマが爆砕し、同時にチューリングチャーチの後方エンジンも一緒に消し飛ばされてしまった。

 

 如何にエボリュードの力で再生する事が出来ようとも、これほどの規模の損傷を瞬間的に直すにはエネルギーもリソースは足りはしなかった。エンジンを失い、バランスを大きく逸した船体が傾ぎ、ステラスフィア山脈の岩肌へと思いきり叩きつけられる事となった。

 

 動かなくなったチューリングチャーチの甲板上。ここに集った全ての者たちが集結していた。

 

 異界からの戦士、仮面ライダービルドと仮面ライダークローズ、そして仮面ライダージェネシス。

 

 この世界の守護者たる仮面ライダーディライトと仮面ライダーソーディア。そして、アイリス・ルナレスとマヤ・フォルコ、ゼオラ・ユピターの3人の少女たち。

 

 恐れる事も怯む事もせず、毅然とこちらを睨みつける彼らにエボリュードが怒りの絶叫を上げた。

 

『おのれおのれおのれぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!よくもよくもっ……!この原始世界のサルどもの分際でぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!』

 

「原始人舐めんなよ。パクリばっかりのモノマネヤローが」

「そうね。そうやって見下げるしか出来ないから足元を掬われるのよ。…みんな、聞いて。フランハイム教授からあいつの弱点を教えられてる」

 アイリスが取り出したレイヴァクロスの切っ先をエボリュードの左胸へと突き付けた。

 

「あそこにあの怪物の全機能が集中している箇所……『命核』が備え付けられてるって言ってた。あそこに全ての6大エレメントをぶつければ、エボリュードの機能は停止するそうよ」

 

 それは、フランハイムがあの怪物に仕組んだ明確なウィークポイントだった。傲岸な侵略者の計画に加担しながらも、止める事も出来る様に意図的に作られた綻び。それは確かに他者を虐げるしか出来ない人間に穿たれた墓穴と言えるのかもしれない。

 

 だが、問題があるとすれば……。

 

「その前にアイツの再生能力を突破しなければいけないって事か……」

「確かに厄介そうだけど……でも、戦兎たちなら出来るでしょ?1年間戦い続けたレジェンドライダーなんだから」

「簡単に言ってくれるな……。でも確かに、ここで引き下がったら先輩の名折れってもんだな」

 そう言ってビルドが1本の大型のフルボトルを取り出し、前へと進み出た。勿論、クローズも一緒だ。

 

「行くぞ万丈。俺たちの最大火力で道を創りだす」

「力技か。いいじゃねぇか。シンプルで俺好みだ」

 そう言ってクローズもビルドとほぼ同じ形状のフルボトルを取り出すと、底面のスイッチを同時に押し込んだ。

 

〈マッチョ!〉〈フィーバー!〉〈マッスルギャラクシー‼〉

 

〈グレイト!〉〈オールイェイ!〉〈ジーニアス‼〉

 

「…さぁ、実験を始めようか」

 ビルドとクローズがそれをビルドドライバーへと装着し、それぞれベルトのボルテックレバーを回し始めると、専用のスナップライドビルダーが形成される。宇宙の様な濃紺と血の赤に彩られたクローズに対して、ビルドはいつもとは大きく趣が違う。まるで未来都市……科学が行きつく幸福な世界の象徴の様な……。

 

〈ブラァ!〉〈チャオ!〉〈ブラァ!〉〈チャオ!〉

 

〈イェーイ!〉〈イェーイッ!〉〈イェーイ!〉〈イェーイッ!〉

 

〈〈Are You Ready?〉〉

 

「ビルドアップ‼」

 

〈銀河無敵の筋肉ヤロー‼〉

 

〈完全無欠のボトルヤロー‼〉

 

〈クローズエボル‼〉

 

〈ビルドジーニアス‼〉

 

〈パネーイ‼マジパネーイッッ!!!!!〉

 

〈スゲーイ‼モノスゲーイッッ!!!!!〉

 

 クローズを象徴する青色に、因縁の相手である仮面ライダーエボルを思わせる黒と白を取り込んだ姿、『仮面ライダークローズエボル』。

 

 純白のスーツの上から計60本のフルボトルが突き刺さった、特異でありながらもどこか神々しい姿、『仮面ライダービルド ジーニアスフォーム』。

 

 彼らの長き戦いの全てを象徴する、最大最強の形態へと変わったビルドとクローズ、そしてジェネシスが地を蹴立てて飛び出した。

 

 迎撃の為に無数の攻撃ドローンが放たれる……が、ジェネシスの拳から放たれた光の津波に押し流され、全てが爆砕の炎を上げる。そして爆炎を突き破ってビルドとクローズが猛然と迫ってきた。

 

〈エボルサイド‼ギャラクシーフィニッシュ‼〉

 

「オラァァァァァッッッッ!!」

 クローズの右拳に暗黒の特異点——ブラックホールエネルギーが形成され、それを正拳突きと共に正面に叩き込んだ。甲板デッキの表面と周囲の砲座を尽く飲み込み、ますます肥大化していった黒球がエボリュードの腹部へとめり込んだ。

 

『ギィアァァァァァッッッ……!!貴様ァァァッッ‼』

 エボリュードが負けじと左腕の機関砲を向けるが、なんと砲火が放たれる前に残像を纏ってジーニアスフォームが現れていた。

 

〈逆ゥサイドッ!!ジーニアスブレイクッ‼〉

 

「はあぁぁぁっっっ‼」

 ジーニアスフォームの右脚がエボリュードの巨大な腕を弾き飛ばす。だが、齎された効果はそれだけに留まらなかった。ビルドの蹴りを受けた怪物の腕がダイヤモンドの様な物質に覆われ、ガクンとその機能を停止させてしまったのだった。

 

 60本全てのフルボトルを纏ったその姿は、決して伊達や酔狂ではない。このジーニアスフォームはフルボトルに秘められたあらゆる成分の力を瞬時に発揮したり、更にそれらを瞬時にミックスさせる事すらも可能になっているのだ。正しく戦兎の天才性を象徴する、真の守護神とも言うべき姿である。

 

『桐生戦兎っ……!万丈龍我ぁっ……!何故、貴様らが私の邪魔をするゥッ⁈貴様らとは違う世界……マルチバースの出来事に首を突っ込む事になんの意味がっ……‼』

 

「うるせぇっ!ちばむらだかマルイデパートだか知らねぇが、テメェのやってる事は許せねぇ‼」

「どれだけ世界を跨ごうとも……愛と平和を求める心は‼」

「全てが響き合う命の摂理はどこにでも、誰の中にもある‼」

 

「それを守る為に!力の限り、戦い続ける‼それが‼」

「それが‼」

「それが‼」

 

「「「仮面ライダーだ‼‼‼」」」

 

〈Go‼ユニバースジャンプ!!!〉

 ジェネシスがベルト側面の両方のスイッチに触れると、その体が更に増速する。光も音も時間も、全てを超えていく程の速度で飛翔したジェネシスがチューリングチャーチの船体全体に無数の傷痕を穿っていく。

 

 ビルドとクローズも止めの一撃を決めるべく、ベルトのボルテックレバーを回し始めた。ベルトに装着された『ジーニアスフルボトル』と『マッスルギャラクシーフルボトル』に内蔵された成分の全てが仮面ライダー達の全身にチャージされていく。

 

〈ダブルサイド!!!マッスルギャラクシーフィニッシュ!!!〉

 

〈オールサイド!!!ジーニアスフィニッシュ!!!〉

 

〈Let’s Go‼オールユニバース・ライダーキック‼〉

 限界まで加速したジェネシスも再度ベルトのスイッチを叩く様に押した。そのまま飛び上がったビルドとクローズに並び、飛び蹴りの姿勢をとる。

 

「「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ‼‼‼」」」

 

 3人の仮面ライダーの全力のライダーキックがエボリュードの胸板を深々と貫いた。強固な生体装甲が膨大なエネルギーにあてられて消し飛ばされると、その奥に秘められた銀色の球体———エボリュードの命核がハッキリと露出していた。

 

「今だぁぁっっ‼」

「任せろ」

 先陣を切ったのは、仮面ライダーソーディアだった。デウスカリバーⅡのソードラッグを外し、土の霊薬『ランドライドラッグ』を代わりに装填し、アブレイシブスターターを3回コッキングした。

 

〈エレメント・アブレーション!テリフィング・ランド・ストラッシュ‼〉

 ソーディアはエレメントエネルギーが集結した手を手刀の形へと変えた。得意のスピードを生かしてあっという間にエボリュードの命核へと肉薄する。

 

 ——魔剣開放、真我流・ファストエックス‼

 

 ソーディアの神速の手刀が命核をエックス字に斬り裂き、その内部に土属のエレメントを流し込んだ。命核の表面が微かにひび割れたのを確認すると、素早くその場を離れる。その背後には、愛用の双剣『玉翔』と『戸締李』に風と雷のライドラッグを装填したゼオラが控えていた。

 

『っっっっっ⁈』

「くたばれバケモノ」

 

 2本の剣先が命核に深々と突き刺さりエレメントを流し込んでいく。荒れ狂うエネルギーが命核の中で更に暴れまわり、表面のひびが更に拡大する。痛みに絶叫するエボリュードはなんとか傷口を塞ごうと試みるが、それを予測していたゼオラはありったけの爆弾を傷口に向けて投擲した。

 

 爆発によって発生した黒煙がエボリュードの視界を塞ぐ。その向こうにはライドラッグから出現させたユニオンドリフターに乗り込んだマヤの姿があった。鋏に内蔵されたエレメントキャノンにウォーターライドラッグのエネルギーが充填されていく。

 

「いくよユニオ!リヤちゃん!」

「おうよぉっ!」

 

 ユニオンドリフターの砲口から水のエレメントを秘めた極低温レーザーが勢いよく掃射された。狙い違わず左胸を撃ち抜かれ、命核に四筋めのひびが刻まれた。それを確認すると、最後の一押しを決める為に、一番殿に控えていたディライトとアイリスが飛び出した。

 

〈FIRE ENCHANT……〉

〈テラワット‼〉

 ファイアライドラッグを装填した炎剣を振るうアイリスと、全身のブースターを全開に瞬かせたディライトがエボリュードに向かって駆けていく。目前まで迫る自らの終わりの時……その事にエボリュードはいよいよ恐怖を感じた。言葉にならない絶叫を迸らせ、無数の有線セントリーガンをぶつけようとしてくるが、それで止まる2人ではない。素早い剣捌きで迫りくる障害を次々と斬り払うディライトとアイリスの姿は、光と炎のエフェクトに彩られた輪舞の様だった。

 

「これでっ……!」

「終わりだ!」

 目前まで迫ったエボリュードの命核に向けて、2人の姿が跳躍した。

 

〈エブリッション!テラ・ヴァリアントフラッシュ‼〉

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっ‼」

「せぇりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっ‼」

 

 ディライトのライダーキックが、アイリスの刺突が、あらゆる障壁を砕いて遂に命核へと直撃した。全てのエレメントを注ぎ込まれた命核はエボリュードの身体に停止不可能な破壊コマンドを打ち込み始めた。全身のあらゆる血肉が沸騰し、金属でさえも砂の様に溶け去って行く。錬真力を以てしても相殺する事ができない崩壊が、エボリュードの肉体と融合した全てのものに齎された。

 

『ギィアァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッ!!!???』

 

 悔し気な断末魔を響かせて、エボリュードの巨大な影が爆炎の中へと飲み込まれた。やがてその声さえも蒼穹に呑まれ、肉体も塵となって空気の中に溶け出していく。傲岸なる侵略者はその痕跡さえ残す事なく、この宇宙から消滅していった……。

 

 

 

 

 

❖❖❖❖❖

 『サンドレアヤード』。天華の土地。

 

 ここで暮らす者は、先祖達の習わしに従って、その名に誇りを持って呼ぶ。

 

 長き戦いの1日が終わり、この地にあるべき者たちが帰ってきた。どれだけ土地を焼かれようとも、失った命が戻って来ずとも、長く根付いた彼らの魂が絶える事は決してない。怯む事もなく、嘆く事もせず、ただひたむきにヤードの再建に取り組むサンドラの人々を、夕映えの空が祝福する様に照らしていた。

 

「…父が死んでから、ずっと考えてた。僕なんかが、サンドラの族長になれるのかなって……」

 族長の息子として生まれながらも、天華の摂理を、そして一族の伝統も理解できているとは言えない。何よりも勇気のない自分にそんな事が出来るだろうか、と。だが、今のラアドはどこか憑き物が落ちた様な顔で、晴々と笑っていた。そこにはかつて自信なく沈む少年の面影はもうない。

 

「でもみんなと出会えて、この宇宙の限りない広さを知った。…まだ完全じゃないかもしれないけど……少しわかった気がするよ。天華の摂理を知るって事は、自分が1人じゃないって気付く事なんだって」

「…そうだろうね。この世界に生まれた以上、誰もが1人じゃないから……」

 たった1人で在る事が強い訳ではない。支え合い、響き合う事が命の本質。それが分かったのならば、もう心配する事はないだろう。ラアドを認めて支えてくれる人々があれだけいるのだから。

 

「も少し、武術の鍛錬もするよ。でも、錬真術の研究もやめない。先祖の道を辿って、新しく響き合えるものを探して……僕らしい族長を目指す事にする」

「なれるよ、ラアドなら」

「ありがとう。レイトも負けないでね。何かあったら、必ず僕たちが助けに行く」

 

 レイトとラアドは固く手を握り合い、やがてあるべき場所へと歩み出していく。それ以上の別れはいらない。天華の摂理に導かれて、またいつか巡り合う時が来る事をどこかで感じ取っていたから……。

 

「さぁて……事件も片付いたし、俺たちも帰ろうぜ戦兎」

 満足そうな笑みを浮かべて大きく伸びをする龍我。だが、それに対して戦兎は「それなんだけどな……」と言いにくそうに言葉を濁す。

 

「エニグマが壊れちまったから……もうこの異世界から帰る方法がないんだよな……」

「ハァッ⁈帰る方法がないって———って、ここ異世界ィッ⁈」

「「今さら気付いたのかよっっ⁉⁉」」

 唖然とする龍牙に、レイトと戦兎がツッコミをいれた。

 

「どうすんだよっ⁉こんな田舎に骨埋めるなんてゴメンだぞ‼何とかしろよ天才物理学者だろ‼」

「田舎で悪かったなぁ‼」

「あのな……天才にも出来る事と出来ない事が———ん?アレは……」

 戦兎が反駁しかけた刹那、空の向こうに何かが輝くのが見えた。それは瞬く間に戦兎たちのいる地点まで近づき、勢いよく着地した。

 

「こいつは……⁉」

「仮面ライダージェネシス⁈」

 

 全身に黄金の輝きを纏う仮面ライダージェネシスが静かに戦兎達を見つめていた。あの戦いの後、ラアドが身に着けていたジェネシックドライバーはまたどこかへと飛び去って行ってしまった。だからこそ、これはラアドではない。ならば一体誰が……?と、身を固くした彼らに答える事なく、ジェネシスがスッと戦兎達を指差し、そして続いて天を指差した。どうやら、敵対する気はなさそうだが……。

 

「…まさか……連れ帰ってくれるって言ってるのか?」

 ジェネシスは何も発さない。だが、確かにその仮面に包まれた顔が首肯した。

 

〈Go‼ユニバースジャンプ‼〉

 

「うおぅっ⁈なんじゃコリャ⁈」

「揚力もなしに浮かび上がるなんて……スゴい!コイツは完全に物理法則を超越してる‼」

 ジェネシスがベルトに手を触れると、戦兎と龍牙の身体が同じ黄金の輝きに包まれ、ジェネシスと一緒にゆっくりと浮かび上がった。ジェネシスが更に手を伸ばすと……天に風穴が開いた。

 

「ゲッ⁈またアレかよ!勘弁してくれよメッチャ吐きそうになるんだよアレ‼」

「異世界で生きてくよりいいだろ。今更ゴチャゴチャ言うんじゃないよ」

 

「戦兎!龍牙!」

 相も変わらず騒々しいやり取りをしながら、空高く舞い上がっていく2人。あるべき場所へと帰っていく彼らに向かって、レイトが声を上げた。

 

「協力してくれてありがとう‼2人がいてくれて……本物の仮面ライダーに出会えて、本当に良かった‼」

「おう!何だか知らねぇけど、お前も負けんな‼」

「レイト!どの世界に仮面ライダーがいる!どれだけ宇宙の垣根に阻まれても、俺たちは仲間だ!それを忘れるなよ‼」

 力強い言葉を残し、やがて戦兎と龍牙は空の向こうに消えていった。

 

 何だか、夢を見ていた様だな……と思う。仮面ライダーを名乗り、彼らの名にに恥じぬ様にと戦い続けてきたレイトだったが、今の今までその名は幻なんだとずっと思ってきた。

 だが、そうではなかった。この宇宙のどこか……無数に枝分かれしたマルチバースのどこかには、彼が憧れ目指した者たちが確かに息づいていた。それだけで、この先に待ち受けるであろう、更なる戦いにも向かって行ける気がする……。晴れやかに微笑むレイトの背後にユニオが近づいてきて囁いた。

 

「あんたバカね。あのジェネシスって奴に一緒に連れて帰って貰えばよかったじゃない」

「え?………あぁ、そっか‼」

 

 思えば、レイトも元はと言えばこことは別のマルチバースの出身なのだ。あのジェネシスの力ならば、日比野玲人が生まれた世界へと連れて帰って貰う事も出来た筈ではない。すっかり忘れてた……という顔で愕然とするレイトだったが、しかし直ぐに「…まぁ、いいさ」と穏やかに笑った。

 

「まだやる事がいっぱい残ってる。だったら、最後まで貫いてみせるよ。仮面ライダーディライトとして」

 

 虚勢でも強がりでもない。後悔のない笑みと共に発された少年の決意が、どこまでも広がる地平線の向こうへと沁み込んで行った。

 

『仮面ライダー GENESIS CHRONICLE』~The End~

 

 

 

 

 

❖❖❖❖❖

〈設定メモ〉

 

◇リチャード・コルテス

 西暦2117年の未来(戦兎やレイトがいた世界ともまた別)からやって来た男。

 長らく争いのない平和な世界で育ち、いつの頃からか世界を力によって導く“英雄”へと心惹かれる様になり、星系防衛機構に入隊。しかし、協調性に欠ける性格と組織理念への無理解が散見された為、間もなく除籍となる。

 認められない英雄願望を更に募らせた男は、他のユニバースから偶然迷い込んだ『ジェネシックドライバー』を入手すると、機構が開発した新造戦艦『チューリングチャーチ』を奪取。自らの世界を破滅させた後、アース298659(仮面ライダーミスリックサーガの世界)に辿り着いた。

 別次元に存在する強靭な生命体『エボルト』の遺伝子と、この世界の錬真術の技術を組み合わせ、自らが究極の生命体『スペリオル』に近づこうと目論んだが、最終的には仮面ライダー達の信念の前に敗北。“英雄”として歴史に名を馳せようとしたにも拘わらず、最後は肉体の一片すらも残さずに消滅する事になってしまったのは皮肉としか言いようがない。

 

・年齢:34歳

・性別:男

・イメージCV:中野泰佑

 

 

◇ラアド

 トンプソール武族連合の代表武族『族柱会議』の一柱たる『サンドラ族』の少年。族長バラドの息子。

 幼少期より比類なき頭脳を見せ、錬真術師としての才覚を開花させ始めるが、旧態依然とした武族内部では変革は受け入れられ辛かった。そんな折に仮面ライダージェネシスことリチャード・コルテスの襲撃を受け、父バラドを亡くす事となってしまった。

 自身への失望と敵への恐怖心から自信を喪失していたが、命を懸けて戦う仮面ライダー達の活躍を見て奮起。新たな族長となる事を受け入れ、宿敵を討ち果たした。

 強きサンドラスの伝統と錬真術師としての誇りを胸に、これからも一族を率いていく。

 

・年齢:14歳

・性別:男

・装備:我流錬真槍『ヴァジュラⅢ式』

    ジェネシックドライバー(今回の戦いのみ)

・イメージCV:松岡禎丞

 

 

 

 

 

❖❖❖❖❖

 読了ありがとうございました。これにて、本作は終了です。

 

 本編と深く連動した劇場版を同時に執筆するというのはなかなかハードな作業で、正直何度か心が折れかけました……。書いても書いても全然終わらねぇ、と。

 それでも『仮面ライダーミスリックサーガ』の世界観を広げていく為に、是非ともやってみたい挑戦でもありました。敵味方含めて、登場したキャラクターや怪人達はとても気に入ったものが出来た為、今後とも本編で何らかの形で触れる機会があるかもしれません。

 

 一番の懸念点だったのは、ゲストキャラだった『仮面ライダービルド』の登場人物達でしたが……自分なりにそれらしいセリフや描写を描ける様に努力しました。少しクサさに走りすぎたかなと感じた所も多々ありましたが、まぁそれも勢い重視な本作らしいという事で。

 

 それでは、またっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

❖❖❖❖❖

 陽星が沈む。そして時間も、大地と空の境目も、人と怪物の境界も曖昧にする闇の時間が到来する。

 異界からの侵略者とそれが齎そうとした大いなる厄災、それを阻止する為に奮闘した英雄たちの戦い。“それ”はその全てを見つめていた。

 

「『仮面ライダーディライト』……そしてあの少年……。君は力を託す道を選んだんだね」

 男とも女ともつかない、高めの声が“それ”の喉から発される。

 

「6大エレメントの器となれたばかりか、マルチバースとの接触まで果たすとは……。流石に、これ以上は看過できないな」

 

 雲間に隠れていたルネアが地を照らし、“それ”の姿をボンヤリと照らし出した。

 

 光を吸い込もうとするかの様な黒々とした体。

 それに巻き付く、骨の様に白い装甲群。

 仮面が張り付く頭部の中央からは、妖しく輝く単眼が覗いている。

 

 そして……腰部に巻き付けられた、左側に大きめのレバーが伸びる円形のベルト。

 

「待っていろ。天罰の時は……近い」

 

 感情を感じさせない冷酷な声色で、“それ”———『仮面ライダーネメシス』が誰にともなく宣言した。

 

 

 

KAMENRIDER GENESIS WILL RETURN

〈仮面ライダージェネシスは帰ってくる〉

 

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