仮面ライダー GENESIS CHRONICLE   作:式神ニマ

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Track05~06 『仮面ライダービルド メインテーマ 勝利の法則は決まった!』『戦兎かく語る』

❖❖❖❖❖

「さぁ、実験を始めようか」

 戦士は少し気障たらしく、悠然と言い放つ。その仕草も、その言葉も、レイトにはとても馴染みが深いものだ。

 

 ——だが、そんな事はあり得ない。

 ——なぜなら、アレは存在しないものだから。

 ——そう頭では分かっているが……。

 ——では、他に目の前の光景を説明できる手段があるだろうか?

 

「『仮面ライダービルド』……一体どうして……?」

 

 レイトの疑問に答える事なく、戦士——仮面ライダービルドが暴走レオニーグへと駆け出して行った。スピードと跳躍力に優れた左脚が地面を蹴り、怪物の眼前まで跳躍すると、今度はパワーに優れる右脚で蹴りを繰り出した。まるで戦車の砲弾が直撃でもしたかの様に、レオニーグの巨体が後方へと弾き飛ばされる。

 「まだまだ!」と叫び、ビルドがベルトに刺さった2つのアイテム『フルボトル』を交換した。

 

〈タカ!ガトリング!ベストマッチ‼〉

 ベルトからプラモのランナーの様なゲート——『スナップライドビルダー』がビルドの前後に出現する。前はオレンジ、後方は黒だ。

 

〈Are You Ready?〉

「ビルドアップ」

〈天空の暴れん坊!ホークガトリング‼イェーイ‼〉

 

 新たな姿に変化したビルドは背中の翼『ソレスタルウイング』を大きく展開させ、勢いよく飛翔した。そのまま右手に出現させた銃『ホークガトリンガー』を暴走レオニーグへと乱射していく。如何に暴走デブリーターの外皮が強固であろうとも、相手の防御特性を瞬時に判定し、それに応じた弾種を精製するガトリングハーフボディの力があればそんなモノは無意味だ。

 

 だが、突如としてビルドが攻撃をやめた。相手の生体装甲を周囲に飛散させると土地や人間への汚染を引き起こす可能性があるという分析結果が出たからだ。ならば、このまま攻撃を続けるのはマズい。どうしたものか……と黙考する———が、ビルドは僅か一瞬後には解決法を導き出していた。

 

「…勝利の法則は、決まった」

〈フェニックス!ロボット!ベストマッチ‼Are You Ready?〉

「ビルドアップ!」

〈不死身の兵器!フェニックスロボ‼イェーイ‼〉

 

 ビルドの姿が再度変わった。左顔面・右上半身・左上半身の有機物サイドが燃える様な真紅、その対がメタリックな灰色に変わる。大きな変化としては左腕はマジックハンドの様な鋏状に変わっている事だろうか。

 

 この『フェニックスロボフォーム』も炎を纏って飛行する力を持つ。レオニーグの背後へと回り込んだビルドが左腕から拘束エネルギーを放ち、動きを止めさせた。そのままベルト右に据え付けられたハンドル——『ボルテックレバー』を回転させる。それに連動してベルトのエネルギー生成ユニット『ボルテックチャージャー』が稼働し、フルボトルのエネルギーをビルドの全身に伝えていく。

 

〈Ready Go‼ボルテックフィニッシュ‼〉

 

 これが仮面ライダービルドの力なのだ。ビルドはフルボトルというアイテムを組み合わせる事によって、様々な能力を発揮できる。その中でも『ベストマッチフォーム』という特別な組み合わせで発動する形態ではこうして必殺技を繰り出す事も可能になる。フェニックスハーフボディから噴き上がる炎が大きさを増し、巨大な翼を形成すると……そのまま暴走レオニーグの全身を包み込んだ。

 

 不死鳥の力を宿すフェニックスハーフボディが放つ炎は、万物の再生を司る。業火で破壊されるレオニーグの肉片は、しかし次の瞬間にはデブリス細胞を含まない無害な物質へと再生させられた。全身の細胞が置き換わったのを確認したビルドが今度は左腕の『ディストラクティブアーム』にエネルギーを込めた。

 流し込まれた破壊の力に耐え切れなくなったレオニーグが悲鳴を上げ、その体を爆砕させる。地面に着地したビルドの背中には、その結果への揺るぎない確信が込められている様に見えた……。

 

 

 

 

 

❖❖❖❖❖

 ビルドが変身を解除し、その姿が1人の青年へと変わる。そのまま自身が乗ってきた“手”に歩み寄ると……「…やっちまった」とぼやいて頭をガシガシ掻く。

 

「後先考えずに飛び出した結果がコレか……。直す手段あるかな、これ……?」

 青年は見るも無残に大破した“手”の一部、メンテナンスハッチをこじ開けると、中に備え付けられたモニターを起動させた。幸い生きている機能もある様だ。破損箇所をピックアップして表示する様に指示を飛ばそうとすると———。

 

「…やっぱり……桐生戦兎!仮面ライダービルド‼」

「うわぁビックリしたっ⁈」

 突然後ろから声をかけられ、青年——『桐生戦兎』がもんどりを打って倒れそうになる。背後を見やると、そこには仮面ライダーディライトが立っていた。仮面に隠れて表情は分からないが、顔色が思いきり輝いている様だった。

 

「…え~と……何?俺の事、知ってるの?」

「あ、ハイ勿論ですっ!あなたは桐生戦兎、本名は葛城巧!パンドラボックスが出現させたスカイウォールの存在した地球で、愛と平和の為に地球外生命体エボルトと戦った、仮面ライダーにして、天才(てぇんさい)物理学者‼」

「…その『てぇんさい』って言い方、やめてくんない?何だかバカっぽい」

 

 早口で捲し立てるディライトに戦兎が不満そうに唇を曲げた。しかし、彼の語っている内容はほぼ全て正鵠を射ている。少し考え込む様に、戦兎は目の前の黄色と銀色の姿をマジマジと観察した。

 

「…その姿に、そのベルト……。もしかして、君も仮面ライダー?」

「あ、そうです一応。…まぁ、“自称”が付くんですけど……」

 ディライトがディライトドライバーから2つの霊薬を引っこ抜いた。変身が解除され、姿が少年のものに戻る。

 

「初めまして、レイト・ドメニカと言います。『仮面ライダーディライト』として、この世界で戦ってます」

「そっか、どの世界にも仮面ライダーがいるんだな……。…ん?でも、それじゃなんで俺の事をそんなに詳しく?」

「あ~……その話は、ちょっと俄かに信じ難い話なんですけど……。…ん?ちょっと待って下さい。俺、何の疑いもなくあなたの事を戦兎って呼んでましたけど、あなたもしかして犬飼あつ———」

「おいちょっと待てやめろ。それ以上は言っちゃいけないやつだ」

 戦兎が慌ててレイトの言葉を制した。だが、それだけで大体の事情は察した様で「()()()()()()()()()()……」と頭を掻く。

 

「…つまり、お前は俺の事を、“テレビの中のヒーロー”として知ってるって事か?」

「…はい。本当に突拍子もない話なんですけど……」

 

 レイトというこの世界で生きる今の自分。だが、ほんの体感にして数か月前まで、レイトはこことは違う別の世界で生きていたのだ。

 

 信じられない事に、『異世界転生』という奴である。

 

 現代の日本——『仮面ライダー』がテレビで放映されている世界で、日比野玲人は生まれ育った。だが16歳の誕生日、あるストーカー男から幼馴染を庇った事が元になって、玲人は死亡してしまった。死にゆく瞬間の痛みや苦しみ、そしてそれすらも感じられなくなっていくあの冷たさ……今でもハッキリと覚えているからそれは間違いない。

 

 ところがどう言う訳か、玲人はこのデブリスが跋扈するファンタジー世界で目覚め、しかもレイト・ドメニカという全く別の人間となっていたのだから驚きだ。

 何故こうなったのかは皆目見当がつかない。「あなたは前世の徳により~~」とか親切な事を説明してくれる神様もいなけりゃ、異世界を生き抜くチートスキルも与えられなかった。それでも……デブリスの脅威から人々を、そしてこんな世界でも一筋の希望を求めて戦い続けるある少女の願いを叶えたいと思った瞬間、かつて世界を救ったとされる救世の勇者『ディライト』の力を与えられ、それが仮面ライダーの似姿となって発現したのだった。

 

 だからこそ、“自称”仮面ライダーだ。その名前を名乗る事でレイトは己が逃げない為の枷としたのだ。今はあくまでもただの“真似事”。だが、いつしかそれを“本物”にして、この世界から恐怖の芽を消し去るその瞬間まで……。

 

 レイトの事情を聴いていた戦兎が「なるほど……」と興味深そうに頷いた。

 

「すいません、何だかホントに突拍子もない話で……」

「確かに信じられない様な話だけど……まぁ、『パラレルワールド』の世界で考えれば、そう不思議な事でもないさ。…俺も『新世界』を1つ作っちゃった訳だし……」

 

 パラレルワールド、所謂『平行世界』という奴である。この世はあらゆる可能性によって分岐・枝分かれしており、その中では全く違う歴史・全く異なる物理法則が作用している事さえもある……と言う話だった筈だ。確かにその視点で考えると、レイトは今まで住んでいた世界とはまた別のパラレルワールドに跳んだという可能性も考えられる訳か……。

 そこまで考えたところで、「そういえば」とレイトが口を開いた。

 

「平行世界で思い出したんですけど……コレ、『エニグマ』ですよね?何でコレがここに?」

 

 戦兎が乗ってきた巨大な“手”。これは確か『仮面ライダービルド』の物語の中で『最上魁星(もがみかいせい)』というマッドサイエンティストが作り出した平行世界移動装置・通称『エニグマ』で間違いない。だが、物語の中では仮面ライダービルドと仲間達の奮闘によって破壊された筈なのだが……。

 

「ああ、これはな……俺が作り直したんだよ」

「作り直したって……エニグマを⁉一体どうして……?」

「最上みたいに平行世界を移動する為じゃない。いつまたエボルトみたいな脅威が外宇宙や平行世界から襲来するか分からないからな。世界の次元をこれで常にモニタリングして、境界を揺るがす様な脅威に備えてたんだけどな……」

 

 

 

 

 

❖❖❖

『…何だコレは?』

『どした、戦兎?』

 時は少し遡り、現代の日本——仮面ライダービルドがいる時空。エニグマのモニターで世界の境界を監視していた戦兎が緊迫する中、後ろで相棒の万丈龍我は呑気そうにコーヒーなぞ啜っている。

 

『…時空と時空の境界面が揺らいでる……?それだけの高エネルギー体がこんな近くまで接近してきたら……マズいぞ、下手したら境界結合(インカージョン)が起こる……!』

『お~い戦兎~?日本語で言ってくんね?』

『マジとんでもなくヤバい事が起こるって事だよ!幻さん達に知らせ———‼』

 

 言いかけた直後、何と戦兎の地下研究室に突如として時空の穴が開いた。周囲のものを手当たり次第に飲み込もうとする暴風の中、戦兎と龍我が咄嗟にビルドドライバーを構えた。目の前で起きている現象は、かつて彼らが戦った地球外生命体エボルトが引き起こすワームホールとよく似ている。だからこそ、彼らは真っ先にかつての仇敵の再襲を警戒した訳だが……虚空から降り立ったのは、全く別の姿だった。

 

『ここがアース2017093……そして、貴様らが仮面ライダービルドと……仮面ライダークローズだな?』

『…お前、何者だ?この世界の存在じゃないな?』

『ンハッ!その通り、我は《仮面ライダージェネシス》。全てのユニバースを征する、次元の王……いや、神だ……』

『ナニ寝惚けたコト言ってやがるっ⁉』

 突然の乱入者を前にしても、万丈は戸惑う事なく戦闘の意志を示した。

 

『テメェが何者だろうが、自分を王だとか神だとか言う奴にロクなのはいねぇっ‼変身っ‼』

〈Wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!〉

『よせ、万丈‼』

 

 戦兎の制止を振り切って跳躍した龍我が変身する仮面ライダー——『仮面ライダークローズ』の拳がジェネシスと名乗った仮面ライダーの顔面を捉えるが、相手に堪えた様子はなかった。はぁ……と、大仰な溜息を1つ吐き、次の瞬間には腕一本でクローズを拘束した。

 

『クソッ!何だコイツ……⁉振り払えねぇ……!』

『自分からわざわざ出向いてくれるは……噂通りの低能だ』

『ァんだとぉっ⁉』

『だが好都合だ。必要なのは貴様の中のエボルトの遺伝子……我が王国の建造に役立たせて貰う‼』

 

 ジェネシスのドライバーが輝きを増し、ワームホールから無数の光の触手が出現して、クローズを拘束した。『うおっ、なんだコレ⁉放しやがれ———‼』とクローズが精一杯の抵抗を見せるが、それも空しくその体がどんどん虚空の中に引き込まれていき———。

 

『万丈ォォォ–––––––––––––––––‼』

 

 ビルドに変身した戦兎が精一杯手を伸ばすが、既に間に合わなかった。ワームホールは消え去り、何も掴めなかったビルドの手だけが宙を空しく舞うだけだった……。

 

 

 

 

 

❖❖❖

「龍我が攫われたぁっ⁉」

「万丈の事も知ってるのか……。…まぁ、話が早くて助かるよ。だけど、あのジェネシスって仮面ライダーはかなり独特の波動を放出してたから、追跡するのは難しくなかった。それで、それを辿ったらここ……アース298659のこの地点に着いたってわけさ。…そのジェネシスって仮面ライダーに心当たりはないか?」

「…いや、聞いた事ないですね。この世界の仮面ライダーは俺と仲間のソーディアだけです。…まぁ、それも勝手に名乗ってるだけですし」

 それもそうか、と戦兎が嘆息すると、改めてエニグマの端末を操作する。やはりジェネシスが放っていた波動はこの世界に辿り着いている様だったが、それが今どこにあるかまでは装置の不具合で確かめられなかった。

 

「やっぱりダメか……。せめて観測装置だけでも直したいんだが、この世界では……無理だよな?」

「…はい。見ての通りのファンタジー世界なんで……」

 

 田園や原生林、中世ヨーロッパチックな建造物が広がる世界を指差して、レイトが力なく頷く。一応この世界にも『錬真術』という魔法みたいな技術は存在するが、流石に平行世界を移動する様な精密機械を直せるとは思えない。

 万事休す……と、思われたが、戦兎は存外あっさりと「まぁ、いいか」とあっけらかんと呟いた。

 

「取り敢えずはやれる事をやろう。この地点の付近にいるのは間違いないんだから、先ずは地道に情報収集だな」

「あ、案外前向きですね……」

「天才物理学者にも出来ない事はある。でも、本当に手が出ないかを判断するのは今じゃない。俺のファンで、この世界の仮面ライダーにも出会えた訳だしね?」

 少しはにかんだ様に笑った戦兎が、レイトに手を差し出してくる。

 

「レイト。もし君の都合が悪くなければ……なんだが……」

「…そんな事、頼まれる間でもないですよ」

 レイトは差し出された手を躊躇いなく握り返す。

 

「推しのピンチに手を貸さないオタクはいません。ジェネシスって奴の力を考えれば、下手すればこの世界のピンチでもありますし……協力させて下さい、戦兎さん」

「戦兎でいいよ。…ありがとう、助かる」

「いえいえ。それじゃ一旦、今の雇い主の所に行きましょう。俺の仲間達も紹介します」

 

 ジェネシスを探すならばヒュペリオンの団員達や、耳の早いローランの協力は欠かせない。当面の活動拠点も必要な事ではあるし、今住まわせて貰っているデュランダール家の屋敷に案内しようと一歩を踏み出すレイト———だったが、「そうだ、仲間と言えば」と戦兎の方に向き直った。その目にはまた強い期待の色が浮かんでいる。

 

「カズミンと幻さん……グリスとローグはどこですか?さっきから姿が見えませんけど……」

「今回は来てない」

 

 ジェネシスの様な脅威が他の世界から襲来した以上、警戒を強める必要がある。だからこそ、戦兎たちの世界の防衛に猿渡一海と氷室幻徳——『仮面ライダーグリス』と『仮面ライダーローグ』には残って貰ったのだ。だが、それを聞いたレイトは「そんなぁ……」と力なく項垂れた。

 

「ガッカリ……俺、ビルドの中だとカズミンが一番好きだったのに……」

「…そういう事は、主役の前で言わないで貰える?」

 呆れた様な、不本意そうな声で戦兎が嘆息した……。

 




〈設定メモ〉
◇レイト・ドメニカ(日比野玲人)
・本作の主人公。16歳、男。『仮面ライダー』がテレビで放映される世界からやってきた少年で、彼自身その筋のオタク。
・ストーカーから幼馴染を庇い、それが元で死亡するが、何故かこの世界に転生。容姿も変わっているが、その過程は彼の記憶から抜け落ちている為、詳細は不明。
・歳相応に臆病なところもあるが、大切な人の為なら身を投げ出す事も厭わない決断力の高さも持つ。
・唯一の特殊能力として、光の霊薬『ライトライドラッグ』を作り出す事ができる。


自分で作ったキャラクターはともかく、既存のキャラはキャラ崩壊させない様に書かなきゃいけないので、なかなかに気を使いました。一応「俺の中の桐生戦兎」を全開にして書きましたが、「なんか違うな……」と思われる部分もあるかもしれません。その際はご容赦下さい。

ご意見・ご感想など頂けると励みになります。
それではまたっ。
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