仮面ライダー GENESIS CHRONICLE   作:式神ニマ

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プライベートでのゴタゴタが続いていまして、なかなか執筆できていない状況です。少しペースを落として連載を維持したいと思います。


Track08 『急襲者』

❖❖❖❖❖

 終わりのない迷宮を歩いている気分だった。足元は夥しい血の海となって行く手を歩みを阻む。背後から蛮声を上げながら、ジャファーの軍団が迫りつつあるのが分かる。逃げなければ……!と、どれだけ思っても、次の瞬間にはどこに行けばいいのか分からない空白がラアドの頭を支配していく。

 

『クソッ……!なんで……なんでこんな事にっ……!』

 

 思えば、空を割ってあの姿が——『仮面ライダージェネシス』を名乗る男が現れたのが全ての始まりだ。その神々しい姿と、天変地異を駆使するその力から、最初は天の神『サンドレア』が降臨したのかと誰もが思ったが……とんでもなかった。

 奴は侵略者だ。その脅威的な力で村を焼き、そしてラアドの父をその手に……。

 

『…許さないっ……!絶対に、許さないぞ……‼』

『ナニが許さない……なのだ?』

 だが、ラアドの前に突如としてあのジェネシスの顔面が出現した。その表情のない仮面が、しかし確かにニヤリと嗤うだけで、ラアドの全身から意気が萎えていくのが分かる……。

 

『貴様の一族を死に追いやったのが私だとでも?違うな!全ては貴様が弱い所為だ!ただ呆然と父の死を眺めているしか出来なかった、貴様がっ‼』

『…ち、違うっ……‼だって、あれは———!』

 ——決闘に手を出さぬのが、掟だから?

 ——それを破るのは、トンプソールの誇りに背く事だからか?

 ——普段は、そんなものを一顧だにしなかったくせに……。

 

『…ラアド。このバカ者が』

 ジェネシスの顔が突然、父・バラドのものに変わった。武術の修行をサボって、いつも他国の錬真術の研究に明け暮れていた自分を仕方なさそうに眺めていた父の顔。今そこにはありありと怒りと失望の色が浮かんでいる……。

 

『サンドラを頼むと言ったにもかかわらず、逃げ出すとは……この臆病者めっ‼』

『ち、違う父さん……!僕は逃げてなんか———!』

『問答無用っ‼一族の誇りを穢した貴様には何も期待せん。そこで惨めに震えているがいいわ……』

 

 父の雷声が降り注ぎ、吹き飛ばされたラアドはそのまま濁流に流されていく。冷たい河の底で寒さと息苦しさに震えながら、これが罰なんだろうか……と、言う声が脳内に反響していく……。

 

 転瞬、何かに引っ張られる様にラアドの意識は現実へと引き戻された。薄らと覚醒していく意識が最初に捉えたのは柔らかいマットレスとシーツの感触。ハァハァ……と、弾む息も噴き出る汗も優しく受け止めてくれる。次いで眩しい程の光輝と、それを纏って立つ2人の人影……。

 

「あ、起きた。お~い、大丈夫?」

「大丈夫、じゃないだろ。怪我人に変なモノ嗅がせるな」

「失敬な。あたし謹製の気付け薬だよ。そりゃ、臭いは少しキツイかもだけど———」

 

 こちらを覗き込んでいる人影——どうやら少女の様だ。1人は黒々とした美しい黒髪に端正な顔立ち。もう1人は褐色の肌に溌溂とした可愛らしい笑みを浮かべていて……。

 

 ——女神様?

 ——…そうか、ここは天国か……。

 

 

 

 

 

❖❖❖❖❖

「凄いっ!ココは正しく神秘の世界だ‼」

 

 一方その頃、デュランダール家の屋敷に招待された桐生戦兎がテンション高めにはしゃぎまくっていた。居並ぶツールド・ファミリアを手に取って眺めすかし、時折興奮しながら頭を掻く来客をハイル達は呆然と眺めている……。

 

「こんなカラクリ人形みたいなのが、自分で考えて行動するなんて!どうなってるんだ?パワーストーンって言うのが命令系統で、オリハルコンを織り交ぜた靭帯が稼働して動く……って、ところまでは分かるんだけど……。あぁっ、調べたい!今すぐ分解したいっ‼」

「絶対やめろ。…おい、レイト。何なんだよコイツは?」

「だ、だから桐生戦兎……。歴とした仮面ライダーで……」

 

 一応、ハイル達には彼が仮面ライダーを名乗る者であり、別の世界からやって来た……と、言う事は説明したのだが、イマイチ理解されていなそうだった。…まぁ、いきなり別の世界だと言われても信じられないのは当然である。だからこそレイトも、自分が異世界の知識を持っている事を未だに明かせない訳だが……。

 

「戦兎さん……だっけか?ジェネシスとか言うヤバい奴がここら辺に来てるって言うのはいいけどよ……そんな呑気に構えてて大丈夫なのかい?」

「勿論、大丈夫って訳じゃないが……奴の行動・目的についてはいくつか予想が立ってる」

 戦兎が表情を引き締めて、一同に向き直る。

 

「奴は万丈の中の、エボルトの遺伝子が目当てだと言っていた。…エボルトって言うのは、俺達の世界を滅ぼそうとした、外宇宙の生命体だが……それの遺伝子を狙ってくるって事は、間違いなく穏当な存在じゃない。必ず何か大きな騒ぎを起こしてくると思ってるんだが……」

「大きな騒ぎ……。…ここが襲撃を受けた件と、何か関係があるんじゃねぇかって事か?」

「そういう事。確証はないけど、取り敢えず今はここで張っておくの一番と思う訳さ」

 ハイルがほう……と、息を吐く。異世界人に仮面ライダー、おまけに天才物理学者なんて肩書きを聞いた時は明らかに盛り過ぎだと思ったが、確かに頭は切れる様だった。

 

「ハイルさん、奴ら吐きましたよ」

 扉が開いて何人かの少年たちが入ってくる。アレステリスを襲撃したトンプソール人の取り調べを請け負わせていた部隊だった。

 

「ご苦労さん、デネク。…で、何だって?」

「サクラさんの予想通り、ジャファー族って名乗ってました。目的はよく分かんなかったんですけど……何でも仮面ライダージェネシスって奴の命令で、千年王国を築く~~とか、訳の分かんない事を……」

「ァんだとぉっ⁉」

「…予想が当たったか……」

 戦兎が小さく呟いた。どうやらこのままこの線を手繰っていけば相棒の下に辿り着けそうだ……と、納得して、サクラの方へと向き直った。

 

「サクラさん、ジャファー族って奴らが何者か、説明頼める?」

「はいはい。ジャファーってのはトンプソールの東、ミドルガ連峰に拠点を構えてるトンプソールの一武族。確か、勇者ディライトによってドランバルド連合の結成が進められてた際に、最後まで他国との同盟を拒否して、族柱会議とも絶縁状態になってるって聞いたわ」

「…それはまた……厄介そうな連中だな」

「そ。今どきのトンプソール人の中でも珍しいくらいに排他的で、凶暴な連中だって言われてるわ。…でも、これまでは表立って族柱会議と事を構えはしなかった。流石に兵力差があるからって事なんだろうけど……」

「その均衡が破られた。他武族とやり合うだけの後ろ盾が出来たと取るべきか……」

 レイト達が頷く。恐らくその背後にいるのが仮面ライダージェネシス。色々とパズルのピースが揃ってきた……。

 

「それにしても、あの口の堅いトンプソール人をよく吐かせたな。大変だったろ?」

「……?いいえ、ちょっと目の前でナイフ研いでみせただけで、案外あっさりと……」

「なに……?」

 

 デネクが首を傾げて答えると、ハイル達の間に緊張が強くなった。同族内での結束が強く、生命の危機よりも武族の誇りに準じようとする彼らがこうもあっさりと自分達の正体や目的を吐くものだろうか?

 何だか、嫌なピースが組み上がって行っている気がする……。そう感じた直後、屋敷全体に強い激震が走った。

 

「どうしたぁっ⁉」

『敵襲っス!アイツら急にやって来やがって……捕らえた捕虜、全員殺されちまいましたっ‼』

「クソッ……!やっぱり口封じって訳か……!敵の規模はどん位だ?」

『それがっ……!攻めてきたのは女2人だけなんスけど、これがやたらめったら強くて———‼』

 

 ジャンの言葉が言い終わらない内に、屋敷の壁が一部吹き飛んだ。その向こうには確かに報告通り、2人の少女が立っていた。

 金色の髪と、白人種よりも更に色味が抜け落ちた白い肌。だが、瞳の色は燃える様に赤い。どこか異様な雰囲気を感じさせるが、彼女たちの場合はそれだけに留まらない。人形の様に端正な顔の造作、2人の少女の顔立ちは全くと言っていいほど瓜二つだった。

 

 双子、と言うのではない。10代半ばの少女ならば例え一卵性双生児であっても、顔立ちには違いが出てくるものだが、彼女らにはそれが当て嵌まらない。まるで鏡に映したかの様な似通い方にその場にいる誰もが息を呑んだ。

 

「あれかしら、ナイトラ」

「ええ、この人達みたいね、ボーラン。この人達がジェネシス様の言ってた……仮面ライダーね?」

「じゃあ、排除ね」

「ええ、掃除ね」

 抑揚のない声で言い合うと、少女たちはその細い腕に注射器型のガントレット——『デブリシリンジャー』を取り付けた。

 

〈SPHINX……!〉

「「錬身」」

〈Sphinx…Deb-Reading…‼Wow…Wow,wow,woooooow…‼…To Be Sick…〉

 

 全く相似形の変身ポーズと共に、少女たちがデブリーターへと変身を遂げた。アンダースーツや一部のアーマー、背部の翼などは先程のレオニーグと似通っているが、頭部はのっぺりとした人間の顔立ちに近い能面。目元をバイザーで覆い、頭頂部からネメスというエジプトの王冠の様な装甲が装着されている。

 

 システム音声が告げた通り、人の頭に獣の胴体を持つ怪物スフィンクス。その力を宿したデブリーター『シェイプアンク』である。腰の錬結炉から1本の錫杖をローディングすると、その先端をゆっくりとハイル達に向ける。

 

「「排除開始」」

 

 呟くと同時に錫杖——『クエスチョナー』から風の塊が放出され、周囲一帯を吹き飛ばしたが、レイト達には当たらなかった。応接間の外へと飛び出し、3人揃ってそれぞれの変身アイテムを引っ張り出す。

「やるしかないって事か……」

「ああ、行くぞ!」

 

〈ライト!シルバー!ファンタスティック!栄光のレシピ‼〉

〈ライトブレード!テリフィック!閃光の魔剣‼〉

〈ラビット!タンク!ベストマッチ‼〉

 

 3人の周囲をそれぞれの変身エフェクトが取り囲み、クエスチョナーの攻撃をガードする。ベルトから放出されたエネルギーがやがて凝縮し、全ての準備が整った。

 

 覚悟はあるか?とでも言う様に、問う声が1つ。

 

〈Are You Ready?〉

 

「「「変身!!!」」」

 

〈ライトアップブレイバー!ミスリックナイツ‼〉

〈刀光剣影!ソーディア、ライトブレード‼〉

〈鋼のムーンサルト!ラビットタンク‼イェーイ‼〉

 

 レイトが、光と聖銀の勇者『仮面ライダーディライト ミスリックナイツ』に。

 ハイルが、神速の剣人『仮面ライダーソーディア ライトブレード』に。

 そして戦兎が、戦車と兎の力を宿した赤と青のベストマッチフォーム『仮面ライダービルド ラビットタンクフォーム』に変化した。

 

「ここから先は———あ、出しゃばりましたスイマセン。先輩お先にどうぞ」

「いいよ、別に。君の世界だ。君が言え」

「そ、そうですか……?それじゃ———」

 譲る、とでも言わんばかりにビルドに肩を叩かれ、ディライトが宣言する。

 

「ここから先は、俺たち仮面ライダーのサーガだ‼」

 




〈設定メモ〉
◇ハイル・ランドナー/仮面ライダーソーディア
・もう1人の仮面ライダー『ソーディア』に変身する青年。男、20歳。
・没落した魔剣鍛冶師『ランドナー家」の末裔で、現在は盗賊団『ヒュペリオン』を率いる。
・圧倒的なカリスマ性でヒュペリオンを統率する。義理堅く人情に篤い性格だが、敵対する者には容赦しない苛烈さも持つ。
・自らの一族を滅ぼした魔剣を全て破壊し、魔剣に捕らわれた妹『ローザ』を救い出す事が目的。

◇ヒュペリオン
・“壁の外”の子ども達で構成された盗賊団で、構成員は約250名。
・世間から見れば無法者の集団だが、ハイルの方針で基本的に市井に手を上げる事はせず、悪徳貴族や他の無法者達を標的とする。
・戦闘員は1番隊から7番隊まで存在。更に工業や農業など様々な分野に精通した非戦闘員も多数存在している。
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