仮面ライダー GENESIS CHRONICLE   作:式神ニマ

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Track09 『仮面ライダー共闘』

❖❖❖❖❖

「なんかアンタ……ディライトに似てるな?」

「おれが似てるんじゃない。コイツが俺に似てるんだ」

「…いや、全くの偶然だと思うんですけどね……」

 信じられない話かもしれないが、事実だ。ディライトの力を継承した際に、どういった変身システムを用いるかなど考えた記憶はない。だから偶然……だとは思うのだが、今のディライトの力はレイトの脳内にあったイメージが実体化したものだ。頭の片隅にあったビルドの変身システムが無意識に反映されたとしてもおかしくはないのだが……。

 

「何だかゴチャゴチャ言ってるわ、ナイトラ」

「喧しいわね、ボーラン。あれがビルド、ディライト、ソーディアね?」

「なら排除あるのみね」

 シェイプアンクが再度杖を振り上げ、風の刃を数発発射してきた。3人の仮面ライダーはそれぞれの武器を取り出し、攻撃を弾き飛ばした。

 

「凄いな……アレ、魔法か?」

「いいえ。多分、エレメントライドラッグの力を杖についてるパワーストーンで操ってるんです」

「ボケッと解説してる場合か。お前も似た様な事できんだろ?」

「そうでした……っと」

 ハイルに叱責され、ディライトがベルトのライドラッグを交換した。エレメントは紫色の雷、マテリアルは琥珀色のパワーストーンだ。

 

「再錬成!」

〈デンキショックウォーロック!メイジングナイツ‼〉

 

 ディライトの姿が神秘の力を司るメイジングナイツへと変わる。エレメントを自由自在に制御する力を持つこの形態は、さながら魔法の様な力を行使できるのだ。ロングライフルモードに変形させたトランスラッシャーを構えて、2体のシェイプアンクに向けて電撃のレーザーを照射した。

 

 だが敵は動じる事なく、一瞬で杖に差されたライドラッグを交換する。雷の力が先端部のパワーストーンに集まり、その一振りで攻撃を弾いてしまった。どうやら雷の通り道を作り出して、メイジングナイツのレーザーを弾いた様だった。

 

「雷の力を宿した神秘の形態……ジェネシス様のお話された通りね、ナイトラ」

「そしてジェネシス様の言う通り、この対処法で良さそうね、ボーラン」

「随分と余裕だな。なら接近戦はどうだ⁉」

 ソーディアとビルドが地を蹴立て、敵の懐に飛び込む、ソーディアのデウスカリバーⅡとビルドのドリルクラッシャーが降り下ろされるが、シェイプアンクはなんと杖から刀を抜刀して攻撃を防いだ。

 

「仕込み杖か……⁉だが、そんなモンでっ‼」

 ——魔剣開放、我流・ドラッグスター‼

〈ボルテックブレイク‼〉

 

 ソーディア渾身の突き技と、ヘリコプターフルボトルを装填して放ったドリルクラッシャーの回転刃がほぼ同時に放たれるが、シェイプアンクはその刃を全て受け止め、または躱してみせる。動きが突出して素早いという訳でもないのに、何故か攻撃を当てる事が出来ないのだ。

 

「なら、コレはどうだ!」

〈忍者!コミック!ベストマッチ‼Are You Ready?〉

「ビルドアップ‼」

〈忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック‼イェーイ‼〉

 

 紫色の忍者ハーフボディ、黄色のコミックハーフボディを纏ったビルドが専用武器の『4コマ忍法刀』を構えて斬りかかる。接近戦以外にも、忍者と漫画の力を有するこの形態はその変幻自在さにおいてはメイジングナイツにも劣らない。出現した分身が四方八方からシェイプアンクを取り囲み、出現させた手裏剣を無数に投擲するが……やはり、敵には掠りもしないのだった。

 

「これがニンニンコミックフォーム……ちょっと厄介ね、ナイトラ」

「纏めて吹き飛ばしましょう、ボーラン」

 2体のシェイプアンクがクエスチョナーにファイアライドラッグを装填し、地面を叩きつけた。次の瞬間、足元から猛烈な火柱が無数に立ち上がり、3体の仮面ライダーを直撃した。

 

「クソッ!どうなってやがる……⁉なんでこっちの攻撃をこうもアッサリと……!」

「…さっきからのアイツらの会話……こっちの力を全部把握してるみたいだな……」

 思えば、ジェネシスは万丈龍我にエボルトの遺伝子が備わっている事を知っていた。自身の計画の脅威となり得る存在——この場合はビルドとこの世界の仮面ライダー2人の能力を入念に下調べしていたとしてもおかしくはない。

 

「把握してるって……それってやるのと、出来るのとでは大違いなんじゃ……」

「だが、他に説明する方法もない。も少し試してみるかっ……」

 

〈ランドマンナイツ‼〉

〈ゴリラモンド‼〉

 ディライトとビルドが揃ってパワー特化形態へとチェンジし、それぞれの剛力を生かして無数の岩塊を射出する……が、シェイプアンクはクエスチョナーの霊薬を土へと交換し、岩壁を出現させてそれを阻んだ。簡単な様でいて、こちらの持つ攻撃力を正確に把握していなければできない芸当だ。やはり、こちらの手の内は全て知られていると取るべきだろう。

 

 こちらの攻撃は予測される上に、ディライト並みの変幻自在さを持っているのだから手に負えない。どうしたものか……と、思案するレイトの視界に無数に散らばったフルボトルが目に入った。先程の攻撃で吹き飛ばされた余波で散らばったのだろう。それを見た瞬間、レイトの脳裏に1つのアイデアが浮かんだ。

 

「戦兎!これを使って!」

 ディライトが拾った2つのフルボトルをビルドに放り投げた。片や紫、片や深緑色の装飾が表面に施されたそれは……。

 

「ワニと……リモコン?何でコレ?」

 それは新世界創造後に新造されたフルボトルの1つだった。確かにこれなら敵に読まれないかもしれないが、一方でまだベストマッチすらも判明していない状態なのだ。あのレベルの敵に対して必殺技なしで勝つのは、少し荷が重い……。

 

「…いや、今は実験してる場合じゃな———」

「いいから使って!()()()だから!」

「……?そう?それなら———」

 若干、釈然としない思いを抱えながらビルドがベルトのフルボトルを換装する。その結果はなんと———。

 

〈クロコダイル!リモコン!ベストマッチ‼〉

「うそん⁉」

 

 結果はまさかの大当たり。ボトルのカラーと揃いのスナップライドビルダーが形成され、ビルドがいつものファイティングポーズを構えて迎え撃つ。

 

〈Are You Ready?〉

「ビルドアップ‼」

〈水際の電波ヤロー!クロコダイコン‼イェーイ‼〉

 

 ビルドの姿が全く新しい姿へと変わった。右腕にはワニの頭を模した足元ほどまである長い複合兵装ユニット。左腕には複数のキーが配列されたシールドが装備されていた。槍と盾を装備した騎士、という佇まいのビルドの複眼がギラリと輝いた。

 

「黒子、大根……?まぁ、いいか。これは……こう使うのか」

 ビルドが左腕のシールドをシェイプアンクに突き出す。すると、武器を構えていた敵はその動きをピタリと止め、カクンカクンとした不安定な足取りでビルドの方へ走り出した。

 

「ど、どこへ行くのボーラン⁉」

「わ、分からないわナイトラ!体が勝手に———!」

 まるで見えない糸によって操られている様にビルドへと近づいていくシェイプアンク。それを見計らい、ビルドは右腕の大剣——『デスブレイクハング』をシェイプアンクへと叩きつけた。攻撃を喰らい、遥か後方へと吹き飛ばされるデブリーターだったが、突如としてその動きが止まり、またしてもビルドの方へと引っ張られ、再度攻撃を叩きつけられる。

 

 これがビルドの新しい形態———『クロコダイコンフォーム』の力なのだった。左腕に取り付けられた『ドミネーションシールド』から発せられる特殊なレーザーは、選んだ対象に強制的に命令を下す事が出来るのだ。少々卑怯な気がしないでもないが……この場を勝利するには、手段を選んではいられない。

 

「はあぁぁぁぁぁっっっっ‼」

「ぐあぁぁぁっっっ‼」

 ビルドの立て続けの攻撃を喰らい、シェイプアンクの1体が遂に地面に倒れ伏した。「貴様……‼」と、もう1体が杖からエレメントを弾丸にして発射するが、ビルドが左腕を一薙ぎすると、エレメント弾は急に軌道を変えて発射した本人に直撃した。操れる対象は生物だけとは限らないのだ。

 

「な、なんなのこのビルド……。こんなのは、情報にない……」

「だろうな。俺も今、初めて知ったんだから」

 

 敵も戦兎も知らない、全く未知のビルド。それを何故、レイトだけが知り得たのか。その答えは酷くバカバカしく、単純なところにある。

 

 レイトが元いた世界——『仮面ライダービルド』がテレビで放映されている世界で発売されていたビルドの関連商品『DXビルドドライバー』には、いくつかテレビ本編には登場していないベストマッチフォームの音声が収録されていたのを思い出したのだ。このクロコダイコンフォームもその内の1つである。

 登場しない為、主人公ですらその存在を知らない。だがそれならば、敵がその存在を把握していないのも道理という訳だ。言葉にするとバカバカしいが、この通り実際にその効果は絶大だ。普段ならば全く役に立ちもしないレイトの知識と、全く未知のフォームであるにも関わらず、それを完璧に使い込なす戦兎のセンスと頭脳が合わさってこその結果だと言えるだろう。

 

「…勝利の法則は、決まった‼」

 決め台詞と共に、ビルドがベルトのボルテックレバーを回転させ始めた。クロコダイルハーフボディとリモコンハーフボディの力、敵の能力、周囲の状況……それら全てを総合的に分析し、勝利へと繋がる最適解を導き出していく。ボルテックチャージャーにエネルギーが凝縮されるのと、答えが纏まるのはほぼ同時だった。

 

〈Ready Go‼ボルテックフィニッシュ‼〉

 ドミネーションシールドの力によって、シェイプアンクが突如フワリと浮き上がりると、同時に周囲の瓦礫が一斉に襲い掛かっていった。無数の岩塊に全身を殴打され、身動きが取れない2体にビルドが右腕が突き付け、思いきり跳躍した。デスブレイクハングの咢がゆっくりと開き、並べられた無数の刃がエネルギーを纏って高速振動し、シェイプアンク達を拘束した。生物最強の嚙む力を持つワニの咢からはそう逃げられるものではない。そのまま落下する勢いに任せて、2体のデブリーターが地上へと叩きつけられた。

 

「戦兎、このまま一気に!」

「ああっ!」

 ディライトがライドラッグを交換し、ソーディアもソードラッグの挿し口を変える。そしてビルドも缶型の大型アイテムを取り出し、ベルトに装填した。

 

〈ファイア!アイアン!ファンタスティック!闘魂のレシピ‼〉

〈バスタード!テリフィック!蛮壊の魔剣‼〉

〈ラビットタンクスパークリング‼Are You Ready?〉

 

「ビルドアップ!」

「再錬成!」

 

〈ヒートアップファイター!メタレイズナイツ‼〉

〈弩張剣抜!ソーディア、ツヴァイハンド‼〉

〈シュワっと弾ける!ラビットタンクスパークリング‼イェイイェーイ‼〉

 

 ディライトが選択したのは炎と鉄のメタレイズナイツ。ソーディアはパワーに特化したツヴァイハンド。そして、ビルドはラビットタンクを泡の力で強化した『ラビットタンクスパークリングフォーム』へとチェンジした。

 

 ディライトとソーディアがシェイプアンクの懐に飛び込み、打撃を打ち込んでいく。このメタレイズナイツはレイトの感情に呼応して力を上げる性質を持っている。そのコントロール次第によっては性能の上限を飛び越える事も可能となる為、動きが読まれていようがあまり関係はない。

 

「俺たち仮面ライダーを……」

「簡単に超えられると思うなっ‼」

〈エブリッション!ヴァリアントファイア‼〉

〈ミドル・アブレーション!テリフィング・ミドル・バニッシュ‼〉

 ディライトとソーディアの拳が炸裂し、悲鳴を上げながら吹き飛んだシェイプアンクが壁に叩きつけられ、爆砕した。

 

 ビルドの方も戦いは佳境に入りつつあった。この形態は爆発的な泡を発生させる事で、パワーとスピードの両面にブーストをかける事ができる。おまけに各種ベストマッチフォームの専用武器を召喚する事も可能な為、取れる戦術の幅は限りなく高い。

 だがそれ以上に、戦兎には負けられない理由がある。ライダーシステムは元は戦争の為の兵器として作られたものだ。だが、思いの強さに呼応して性能の上限を超える力が仮面ライダー達にはある。誰かを守りたいという強い思いを込めて作り上げられたビルドの強さは、ただの数値上のデータでは計り知れないのだ。そしてそれは、決して戦兎1人の力で成しえたものではない。

 

「バカ、なっ……。こんな事が———⁉」

「俺と仲間たちが一から作り上げたビルドだ。ただの情報の羅列だけで超えられる程、簡単じゃないんだよ」

 

〈Ready Go‼スパークリングフィニッシュ‼〉

 

 ボルテックレバーを回し、ビルドが必殺技を解き放った。まるで砂時計の様な図形の中にシェイプアンクが拘束されると、そこにビルドのライダーキックが炸裂した。地面に倒れ伏したシェイプアンクの変身が解除され、元の少女の姿へと戻った。

 

「…仕方ないわね。ここは退きましょう、ナイトラ?」

「…無理よ、ボーラン。身体が動かないの……。…私の、事はっ……」

「ダメージを受け過ぎたのね……。…抱えた場合、撤退成功率は15%まで低減……。そうね。さよなら、ナイトラ」

「…………」

 

 ディライト達と戦っていた方の少女はデブリシリンジャーから煙幕を展開して、その場から撤退した。後に残されたナイトラと呼ばれていた少女は気を失っている様だった。デブリシリンジャーが破壊されている為、下手すればデブリドラッグの中毒症状に陥る危険性もある。ハイルが手近の団員達に声を掛けて少女を屋敷内へと運ばせた。

 

「逃げたか……。薄情なもんだね」

「時空を自由に移動できる仮面ライダーに凶暴な武族、加えて人間離れした少女達……。何だか、得体が知れませんね」

「そうだなぁ……。…まぁ、あの娘が目覚め次第、何か聞き出してみよう。そう簡単に吐くとは思えないけど……」

 

 やり切れなそうに戦兎が頭を掻く——直後、「ち、ちょっと待って!まだ動いたら——!」と、焦った様なマヤの声が聞こえた。戦兎達が振り返ると、そこにトンプソール人の少年が立って、こちらを睨みつけていた。その瞳には、峻烈な怒りの感情が色濃く映し出されていた。

 

「君は確か……」

「…仮面ライダー……?…お前たちも……ジェネシスの仲間かっ⁉」

 言うが早いが、少年は拳を振り上げてレイト達に殴り掛かってきた。だが、戦兎にはひょいと躱され、「落ち着きなさいって」と逆に少年が押さえつけられる事となった。

 

「放せ……!お前たちがっ……僕の故郷と皆をっ———‼」

「だから、落ち着けって。俺たちは確かに仮面ライダーを名乗ってるけど、ジェネシスって奴とは何の関わりもない。寧ろ、俺たちも奴らと戦ってる側だ」

「なっ……?」

 驚く少年を解放し、戦兎が宥める様に少年の頭に手を置く。

 

「俺もアイツから大切な相棒を取り返さなきゃいけない。その為にも今は情報が必要なんだ。…君の知っている事を、俺たちに教えてくれないか?」

「…………」

「大丈夫、ここには底抜けのお人好ししかいないから!きっと力になってくれるよ」

 

 マヤが鷹揚に笑い、レイトと戦兎が「底抜けは余計だ」と渋い顔をする。助けられた事実はしっかりと覚えているからか、少年は少し顔を赤らめて、気まずそうに頷いた。

 

 




〈設定メモ〉
◇仮面ライダーディライト
・レイトが勇者ディライトの力を秘めたメダリオンが変化したベルト『ディライトドライバー』を使って変身する仮面ライダー。
・2つのライドラッグの組み合わせによって能力が変化し、相性が良ければ『ファンタスティックヒット』という特殊形態となる。

◇仮面ライダーソーディア
・ハイルが変身する仮面ライダー。魔剣『デウスカリバー』の生まれ変わりである『ソーディアドライバー』と『ソードラッグ」を使用して変身する。
・退魔の力を秘めたデウスカリバーの力によって、エレメントやマテリアルの組み合わせなしにデブリスを討伐する事が可能。


今回登場した『クロコダイコンフォーム』。姿や能力は筆者のオリジナルですが、作中で言っている通り、玩具では再現可能なフォームになります。本編では欠片も役に立たない上に、殆ど出てこない「レイトはライダーオタクである」という設定が、大きく役に立ちました。

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