あれから2人をそのまま連れ回し地上に戻った時のことを考えながら19階層まで行くと樹上から複数の視線が感じられる。こちらを獲物と見定め狩ろうと本能に支配されているモンスターのものじゃない。
どちらかというと観察しようとしている人間のものに近い。駆け上がって連中の1人の目と鼻の先まで向かい合う。その
「うわ、すっごい美人だね?貴女人間?モンスター?
私相手に隠れていられないと悟ったのか他の樹上から眺めていた連中が地面に降り立って私達に視線を向けてきた。
「へえ
「
「は?この子達はもうウチの子なんだから渡すわけないでしょうが、このクソボケ石野郎。私より弱い奴が粋がってんじゃないわよ」
喋る
一応純粋な
そして今は倒れ伏したグロスは上に乗っかられている、というか尻に敷かれている。アベルとクロにもげしげし蹴られている。
「で、
「あのう…貴女は私達ガ怖くないのですカ?」
「は?なんでこの私が自分より弱いたかだか喋るモンスター如きにビビるのよ。自慢じゃないけど私も地上じゃ『才禍の
それに言葉は喋れても会話が全然成立しない
その場にいる彼ら
いやこんな特徴的な者はいなかったはずだ。実のところ彼女は第一級成りたてだった上に、派閥としてはまだいいところ中堅なので情報が伝達されていなかったのだ。
リーダーであり、人類共存派のリドはこれを
例の密猟者にも思えない。何よりそんな姑息なことをするような者に全く見えなかったのだ。普通の
モンスターに対する嫌悪感の少なさから或いは【ガネーシャ】の団員だろうか?というか不思議と
彼女ほどの存在なら若さからいって今現在でも地上で権力者ということはないだろうが、未来では間違いなくとんでもない大人物に成り得るという確信もある。フェルズには無断になってしまうがここは踏み出すべきだとリドは判断し、
「ここじゃ他の冒険者達が通る可能性がある」と話して今現在拠点にしている隠れ里に案内するのだった。
ちなみにマリーの動揺が少なかったのは
自分の方が弱いならともかく…こんな連中をどう怖がれというのだ。
「いいぜ、話すよ俺っち達のこと…「リド!」グロス落ち着けよこの人がその気になっていたら、お前はもう死んでいたはずだ。それに多分、今ここにいる全員を殺せるだけの
「へえ!貴方よりも強いヒトもいるんだ?それは結構びっくり…で、貴方達はどういう集まりなの?」
「私達ハ
「そう…じゃあウチの子達も…」
「ハイ…その子達ハ…身体の作りから言ッテ残念ナガラ言葉ハ話せないようですが…
「まあ普通の子達じゃないのは理解ってたけどそっかあ君達のお仲間かあ、それになんとなく気持ちは理解るんだけどね」
「ソレガ理解ッタナラ…!」
「君は黙ってなさい、石野郎。またボコられたいの…?人型の喋れる娘達は、やたら美形だしまだ難しいだろうけど、ウチの子達は
睨むと黙る。上下関係はしっかり叩き込んだのに威勢のいいことだ。
「ヒッ…」
「あっとまだ、きちんと名乗ってなかったわね私の名前はマリーベル・クラネル【ヘスティア・ファミリア】所属のレベル5の冒険者よ、親しい人は大抵、そうじゃない人も多くが『マリー』って呼ぶわ。」
「私ハ、レイと言います。
「? 何か問題あるの?」
「いえここにはいない「
「あちゃあそれは紛らわしいわねまあ『マリーベル』でもなんならあだ名で『マーちゃん』でも構わないわよ」
「マーちゃん…」
「はい、じゃあ私は『レーちゃん』って呼ぶわね」
「ウンッマーちゃん♪マーちゃん♪」
感極まって私の手を握ってきたので、一旦手を離してから抱きしめて耳元で囁いてみる。
「うふふやっぱり貴女可愛いわねレーちゃん」
「
ぼふんと真っ赤になったレイが昇天してしまう。それから彼らから色々な話を聞いた地上への憧憬、繰り返される「前世」の夢…
「あら、『愛する人間に抱きしめられたい』がレーちゃんの夢か…ごめんなさいね、とても綺麗な女の子の貴女を同性の私なんかが抱きしめちゃって…」
「ウウンッ、いいのっとても嬉しかったから…」
「貴女くらい可愛い娘なら男なら抱きしめてくれる人なんていくらでもいそうだけどね」
レイがまた真っ赤になってしまう。割りと本音でしか喋ってないんだけどなあ…そうして彼らの「隠れ里」の1つに辿り着きそうになった段階で、
「マリっち…別に騙すつもりじゃなかったんだけど今から案内する所には俺らの中で1番強い奴がいる。多分今のマリっちよりも。驚かすつもりはないから今のうちに言っておく。」
「あら、それは楽しみね」
辿り着いたその場所に”ソレ”はいた。何やら多種多様の
強烈な存在感…恐らくレベル7に届く。普段自分達の前では抑えているおばさまと同格?いやオッタルよりほんの少し下くらいか。
その彼を見た時、私はこの出会いに感謝するのであった。その大柄な黒い牛は私を確認するや否やこちらに歩み寄ってくる。
周りの子達は見慣れない人間の私が来たことに戸惑っているみたいだが…
「似ている…
「貴方名前は?生まれたのいつ頃?」
「アステリオス…生まれたのは2ヶ月程前だ」
「うわちゃー確定かな」
「?」
「似てて当然ね、貴方の『好敵手』っていうのは多分私の弟よ、私と同じ髪色で両目共赤い兎みたいな男の子のことでしょう?」
「まさか…そんな…」
「何を落ち込んでいるの?」
「リド達がわざわざ招いた人間の身内を傷つけるような真似はやりにくい…」
「あくまで戦って決着を着けたいだけ?殺したいわけではないのよね?」
「ああ、そうだ」
「なら別にいいわよ。向こうの同意が得られたらそのうち戦わせてあげる、ただし私の頼みを聞いてくれるのなら、ね。今すぐ戦いたいというのなら今のあの子じゃ今の貴方に全く勝ち目ないから私も混ぜてもらうけど」
そうしてその場の全員に聞こえる声で喋りだす。
「貴方達の
「本当か!?」
「そうね、タイマンは時期が難しくなると思うけど…貴方が強すぎても、あの子が強くなりすぎてもどちらかに偏ったらつまらなくなると思うし…ただし即死さえ免れれば私が治してみせるからどちらにも本物の命のやり取りにはさせないわ」
「ありがとうっありがとうっ!!」
「騙サレルナッ!」
せっかく良い雰囲気になったのに水を差す
「ソイツハウマイコトヲ言ッテ我ラを乗セ、捨テ駒ノヨウニ扱ウニ決マッテル…!」
「へえこの私がヘスティア様の名前を出してまで誓ったと言うのに
「私ヲ殺スカソレモ良イダロウ!但シソノ時ハアステリオスニオ前ハ殺サレルガナッ!」
一方のアステリオスは焦っていた。せっかく自身の「悲願」を叶えられそうな流れになっていたのになんで喧嘩売ってるんだこのバカは、とまで思っていた。
それにやはり一番の渇望は「彼」との尋常な
総じてアステリオスのマリーへの印象は非常に良いものだった。「彼の姉」ということも加味して好印象である。
「結局他力本願かよ情けなっハンッアホらしっ…」
マリーがそう吐き捨ててグロスが言い返そうとしたところで…
「グロス…少し黙っててくれ」
その頼りのアステリオスに口のあたりごと身体を抑えられてしまった。
「まあ無理に『戦え』とは言わないわ。戦う自信のない方は下がってて結構。足手まといだから」
「貴方達は見込みありそうだから誘ったけどね、現時点でのアステリオスでも戦力になれるか微妙な…それほどの相手なの…」
思わず息を呑む
「それと空を飛べる相手だから、主力にまでは出来ないけど援護要員として空を飛べる子達には期待しているわ一応そこの石頭にも」
「私私ッ私空飛べるヨッ!マーちゃんッ!」
「見れば理解るわよレーちゃん…」
すっかり懐いてしまったレイを撫でるマリー。
一方直接的なという意味では
冒険者との接触、それ自体は今までも極稀にあったが、なんとか穏便な方法で誤魔化せてきたのだ。だが「彼女」相手に誤魔化せると思えない…灰色のローブに緑と赤のオッドアイに白髪、
出鱈目な音の魔法、グロスを事もなげに制圧する実力、間違いなく「彼女」だろう。2代目才禍の怪物、【静穏】のマリーベル。理性的かと思えば怒れば神にすら牙を剥くとんでもないじゃじゃ馬娘だとか。
何より【静穏】に何かあればあの【静寂】が動くだろう。彼女の怒りを買えばアステリオスごと皆殺しにされてもおかしくない。それは最悪中の最悪の展開だが、先程から
彼女とのやり取りも聞こえてくるのだ。幸い彼女は「彼ら」に対する偏見もなく、能力はあの若さで現時点でもずば抜けてるし、戦闘力も既に冒険者の中でトップ層に食い込む。
個人での協力者にするなら理想的な人物だ。だが、案の定グロスが怒りを買いボコられ、復活した後も、何度も一触即発になりかけているのだ。そして呼ばれた彼らの「隠れ里」の1つ。そこに急いで駆け込む。
「皆っ彼女も無事かっ!?」「あらフェルズ、こんにちハ」
膝枕されていた…レイが。フィアも抱きついている…共存否定派のグロスやラーニェはジト目でそれを見ている。だがもう絶対力で敵わないのは理解っているので何も言えない。
ちなみにクロとアベルは向こうの同族であるヘルガとアルルとで戯れていた。丁度性別は別れているしそのうち
「貴方が『協力者』とやらね…え、人間?モンスターでも神でも精霊でもないし…今までで一番訳分かんないわ」
「
フェルズはフードを取り、その白骨の素顔を見せる。
それから彼(女?)が”そう”なってしまった経緯を聞いた。
「貴方、もしかして『賢者』って呼ばれていた人物?それにこちらの状況を知って駆けつけられたのも魔道具かなんか?」
大体のことを吐かされてしまうフェルズ───
「何が『しがない
「ああ、構わないが…」
思わず同意してしまうが、「彼女ほどの人物を引き込めるなら安いもの」とも思ってしまう。
「それとリド貴方『人間の作る武器は素晴らしい』って言ってたわね…この剣あげるわ【ライフスティーラー】って言うの
それとアステリオス、いつか貴方にも最高の武器を作ってあげるわ」
「え、嬉しいけどワリーよ、これすげえ業物だろ?」
「いいのいいの元々試作品だったし…充分テスト出来たし完成品もほぼ変わんないだろうけど…私からの始めての友好の証と思って頂戴。それに…長い付き合いになりそうだし…ね」
「それからレーちゃん…貴女はクロとアベル以外ではここでの始めての友達だから…特別扱いしてあげる、反対派の連中黙らせたいから…一緒に私と地上に来て見極めて私とクロとアベルのこと」
「例の『密猟者』もほんの少し心当たりあるから探してみるわ」
そう言ってマリーはレイに【シンダー・エラ】をかけて
「言っておくけどこれ地味に少しずつ魔力を消費するから1度に大人数へ長期間使ってあげる気はないからね、さ、行きましょ」
唖然とする
「あ、
そうして地上を目指す途中で【ディア・パナケイア】を見せた。更に軽い問答をして、彼女にも使えるようになったらしい。「表に出れない
この短時間で懐く子達があんなに多かった訳が理解った。既に
音声だけでも
そうして彼女らが地上に戻るや否やギルドにまで案内されて、そのままクロとアベルには発信機付き首輪が取り付けられた。ヘスティア・ファミリアのエンブレムも刻まれている。
「ほらこれで貴方達も都市で認められた私達【ヘスティア・ファミリア】の正式な一員ですよー」
と言いながら。2人とも喜びながらマリーに縋りついている。フェルズはそれを陰から見ていた。モンスターでも種類が種類だけに美少女が
周りの連中も眼を丸くしている。普通に
レイちゃんはチョロ可愛い
ベル君のアルフィアの呼び方
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おばさん
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お義母さん