ベルの姉が「才禍の怪物」なのは間違っていない   作:イルイル

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そろそろ攻略本持っているチート転生者かな、と思い始めてきた


第16話 異端児(ゼノス)攻略RTA中

バベルから出ると夜だった。

 

「ごめんなさいねせっかくの外なのにこんな時間で…陽の光は明日見せてあげるから今日は2人とも泊まっていきなさいな」

 

主神(ヘスティア)様とおばさま(アルフィア)にだけは打ち明けようと思っていますので、少なくともあのお2人は激しく拒絶みたいなことは絶対にしないので」

 

そうしてそのまま彼女らのホームに招かれた。

 

「ウチでなら残り香で正体がバレることもないでしょう。獣人はポンコツ狐1人だけなので」

 

「皆には取り敢えず挨拶して、その後はヘスティア様とおばさま(アルフィア)と私達だけで話し合いましょう。

 

そうして帰宅してまず主要メンバーだけ集め、

 

「はーいみんなちゅうもーく客人の私の新しい友達のレーちゃんと新しい師匠のフェルズ師匠(せんせい)と、新しい家族のアルミラージのアベルと、ヘルハウンドのクロよ、最後の子達は愛玩動物(ペット)枠みたいなもんだけど、

これからずっと一緒に暮らす家族だから仲良くしてあげてねっ最初の2人はあくまで客人だけどこれから連れてくる日が他にあるかもしれないからよろしくぅ」

 

「ちょっとまったああああああああマリー様?調教師(テイマー)になったということですか?」

 

「うん、元々ソレ系のスキルはあったんだけどね、今回試していたらあっさり成功しちゃった感じで、トントン拍子で調教師(テイマー)の資格貰っちゃったし凄く賢い子達で神様襲うこともないからヘスティア様と暮らしても大丈夫よ」

 

「この子達はかなり特殊な子達だから説明が出来る人達が来たの」

 

そうして今は私と、師匠(せんせい)、レイと、ヘスティア様とおばさまだけで向き合っている。

 

「さてと…その子達が神様にも敵意を向けない特殊な子達ってのは理解ってもらえたと思いますが、話の本題に入る前により理解り易い証拠を見せます。」

 

なんなら今はクロとアベルはヘスティア様にじゃれついている。ただのでかいワンコと兎にしか見えないだろう。

 

「【響く十二時のお告げ】」

 

レイのセイレーンとしての正体が(あら)わになる。

 

「は、モンスター?」

 

ヘスティア様が呆然とするがおばさまが勢いで魔法を撃たないように私がレイを背に庇う。

 

「お2人はこの娘が本能に支配された凶暴なモンスターに見えますか?」

 

「ううん、見えない」

 

「ああ、見えんな…」

 

「レイはヘスティア様に殺意沸いたりする?」

 

「ウウン、全くないよ…」

 

「と、まあ普通にこうして喋れますし、理性的な子達なんです」

 

それから彼らの事情を話していく。

 

「成程な…現役時代にも『喋るモンスター』の噂は聞いたことはあったが実態はそんなことになっていたとはな。ウラノスとガネーシャが協力している”ソレ”にお前も一枚噛むと…しかし『そいつらに対する全面的な協力』か…いいのか?そんな約束をして…」

 

「いいんです、打算的に見てもその価値があると判断しました。彼らの中にレベル7クラスの子もいたんで…おばさまでも無傷で下すのは無理だと思います、それほどの子が生まれて未だ2ヶ月程度でまだまだ強くなる余地がありそうだったんで…

ただ前世でベルと因縁があって、再戦を望んでいるというのが悩みの種なんですけどね…『今すぐ戦いたい』と言った時は私も混ざるつもりですが「私も混ぜろ」話聞いてました?タイマンでも普通に勝てるおばさまが混ざっても誰も得しませんよ?」

 

「いや私もベルが変態神に狙われていた時に何もしてやれなかった負い目があってだな…」

 

「彼をアポロン(あんなの)と一緒にしないでくださいっ『ただもう一度焦がれた好敵手と戦いたい』っていう純粋な願いなんですっ」

 

「彼は異端の仲間内にあって尚自身が更なる異端という自覚があってどこか寂しそうでしたからね…」

 

「なんだ?随分と絆されてるじゃあないか、共感(シンパシー)でも感じたか?」

 

「マーちゃんッ私はずっと傍にいるからネッ!」

 

少し寂しそうにしていたマリーに抱きつくレイ。クロとアベルも競い合うようにじゃれつく。

 

「こんなに可愛い子達を『見捨てろ』なんて言いませんよねっ?お義母様?」

 

ここぞで出す「お義母様」呼び、ここ1年では始めてである。しかも上目遣いで。

 

「ああ、なんでも聞いてやるぞこの『お義母様』がなっ」

 

狙いはバレバレでも乗ってやるのが良い母親というものである。それだけ押し通したい願いということなのだろうし…

 

「それでまずはお2人をお呼びしたのは【ファミリア】単位では、まだ巻き込む気は毛頭ないのですが、お2人には特に隠し事をなるべくしたくなかったというのが1つ、

私個人で彼らの支援をすることを認めて欲しいというのがもう1つ。ベルには遠からず全てを打ち明けようと思っていますが、その時には主要メンバー全員に明かしてもいいかもしれませんね、

まあリリあたりはファミリアのために反対するでしょうが…なんだかんだであの娘も暗い世界からこちらに引き上げられた側なんで最後には納得してくれるでしょう」

 

「それに、ヘスティア様の性質の1つに『孤児の保護者』というものがあるというのは聞き及んでいるので…狡いとは思いましたが、貴女様なら、迷い子である彼らを絶対見捨てようとはしないと思っていました。」

 

「ううーあーもう理解ったよ『助けて欲しい』じゃなくて『ただ認めて欲しい』と許可を貰いに来ただけの君を跳ね除けられるわけないじゃないかっ」

 

ヘスティアが唸り声を上げながらも結局は許可を出す。こうなることは判っていたから、彼女はやはり狡いのかもしれないが。まあ勿論本当にマリーに助けを求められたらヘスティアは全力で応えるのだが。

 

「で、その人間だかなんだかよく判らないその不審者ローブがなんでオマエの師匠になるんだ?」

 

「失礼ですよっ師匠(せんせい)は本当に物凄いお方なんですからねっ」

 

 アルフィアは若干拗ねていた。マリーが師事する神々でもここまでの敬意を向ける者は今まで居なかったからだ。

大した強さは感じないからまた技術的な方面の師匠なのだろう。既にアルフィアから教えられることはかなり少なくなって久しい。

元々天才肌のアルフィアは致命的に師匠に向かなかったのだがこの世で唯一自身と同格の才を持つこの愛し子(マリー)だけは、

そんな自分の教えを(すべから)く汲み取り自身の力に変えていったのだ。ベルには無茶な訓練をさせていた時期もあったのだが

「恩恵貰う前からこんなことやっても非効率」の一言で切り捨てられて止めたという経緯がある。その時のこともありベルはこの母よりも姉のことを尊敬している節があるのだが…

それで結局そいつの経緯を聞いてみれば予想以上の大物だった。見る眼がある、というか出会いに恵まれているな。我が愛し子達は。

魔道具製作者(アイテムメーカー)か。そのような道もあったのだな。いや目に見える分かり易い力しか興味のなかったかつての自分には考えられなかった道だな。

 

 そしてレイは【シンダー・エラ】をかけ直され、フェルズはマリーの実験室(ラボ)に呼ばれ、

実験用の死んだマウスに【ディア・オルフェウス】をかけてくれと頼まれ、駄目元で引き受けたら長い人生の中で始めて成功してしまった。

剥き出しの顎の骨が外れそうになるくらい驚いたが「恐らく自身の発展アビリティ【幸運】の効果で、今までは物凄く運が悪かったか、元々成功率が凄く低い魔法なんじゃないか」という推測に納得してしまった。

フェルズはその後は客室に案内され、レイはマリーの私室に招かれた。ちなみにヘスティア様に更新してもらったらこんなスキルが生えていた。

 

怪物友愛(モンスター・フィリア)

心を通わせたモンスターの気持ちが理解りやすくなる。

信頼度に比例する。

 

最初からアベルとクロ達の気持ちは結構理解っていたが、今では言葉そのものも全部理解る。

ちなみにレイからは大好きオーラが伝わってきて小っ恥ずかしい。

 

 

そして翌朝マリーはフェルズとアルフィアとクロだけを連れて黄昏の館に赴いた。

マリー以外の者達を外で待たせて。

 

「おはようございまーす」

 

既にロキ・ファミリア内でも英雄扱いの彼女は黄昏の館でも顔パス状態だ。

そうしてフィンに許可を得て「鍵」を借り出す。

 

「さてこれから都市に蔓延(はびこ)る悪党を討ちに行くんですがどちらかというと異端児(ゼノス)のためという理由の方が大きいです」

 

喋りながら2人をダイダロス通りに連れてくる。

 

「以前から異端児(ゼノス)を狙い打ちにしているという密猟者(ハンター)。ただ殺すではなく捕らえているというのなら正規の出入口から普通に運び出すことは不可能…ほぼ確実に例の人造迷宮(クノッソス)の関係者と踏んでいます。

ロキ・ファミリアがこの前の侵攻戦でイケロス・ファミリア団長【暴蛮者(ヘイザー)】ディックス・ペルディクスを目撃したらしいです。

ベートさんが彼と戦った時、この『鍵』を持ち出さずに迷宮内の仕掛けを操ったとも。このことから彼は人造迷宮(クノッソス)のかなり深い部分に関係しているのではないかと。

以前から闇派閥(イヴィルス)との関係が噂されていたクサいファミリアですが…もしかしたら闇派閥(イヴィルス)にあの”場”を提供した側かもしれません。

敵は十中八九【イケロス・ファミリア】…人造迷宮(クノッソス)内で確認したら確殺で構いません。他の候補は現在はないです。制圧は私とおばさまの2人でします。師匠(せんせい)は『捕らえられた子達』がいた時のために治療のための魔力を温存しててください。

暴蛮者(ヘイザー)】はレベル5以上の第一級の可能性が高いので、放置すると危険なので最優先で狙います。他は…いいえ貴方達には取り繕わなくても構いませんね、ギルドにも非公認の作戦なので皆殺しにするつもりです。

 

ギルドからディックスの似顔絵も借りてきました。現在はゴーグルをしていたらしいですがベートさんに確認したところ『ほぼ間違いない』らしいです。クロにとっては同胞の匂いは分かり易いらしいので、取り敢えずはダイダロス通りを虱潰しで…

あれっ!?クロッ?え、ベルと同胞の匂い!?」

 

駆け出すクロを追いかけて地下の穴に入ると今まさにバーバリアンがシルさんと子供達を襲おうとしたところで私がそれを蹴り飛ばし、突っ込んできた【女神の戦車(ヴァナ・フレイア)】の刺突を刀で弾く。

 

「おいッなんでテメェがっ!?」

 

「ねっ姉さんッ!?」

 

「こちらのモンスターの存在は都市のある重大犯罪に関わっている可能性が大きいのでこちらで確保させてもらいます、短絡的なチビ猫さん」

 

「テメェ…あの方に気に入られてるからって調子に乗ってんじゃねーぞ」

 

フレイヤ・ファミリア(あなたたち)ってことあるごとに『あの方』、『あの方』言いますけどなんなんですかそれ?隠してるつもりなんですかね?全然隠れてないし普通に『フレイヤしゃまー』とか『マンマァ…』とか呼べばいいじゃないですか。馬鹿みたいですよ?」

 

表情の消えたアレンが心の臓を突こうと槍を突き出してくるが、刀で反らしていく。

 

「速さ()()は大したものですけど軽いですね、微風(そよかぜ)みたいですよ?本当、噂通りに品のないお方…主神にそっくりですね?」

 

「というか本当なんで貴方なんかが副団長なんですかね、貴方達の事情は知ったこっちゃないですが普通そこはヘディンあたりじゃないんですか?あいつの方が万倍もマシでしょうに…

オッタルが団長で貴方が副団長って…だから『脳筋ファミリア』なんてイメージになるんですよ」

 

 唐突に始まった第一級冒険者同士の戦いだったがベルやシルや子供達は魅せられていた。

段々と刀だけで捌くのが厳しくなってきたマリーが魔法を解禁しようとした矢先にアレンの方が急に槍を収めて引いていった。

 

「時と場所を選べバカ娘がっ!」

 

追いかけてきたおばさまに愛のムチ(チョップ)を喰らった。

 

「お義母さんも…」

 

ちなみにバーバリアンの彼は師匠(せんせい)が保護し、傷も治して姿消しの魔道具を被せている。クロは自分が及ぶ戦いでないと判断すると早々にベルにじゃれつきに行っていた。図太い。

 

「あ、師匠(せんせい)、この奥で間違いなさそうですか?」

 

「ああ…まだ大勢の彼の同胞が捕まっているそうだ」

 

彼も後ろからついてきてるみたいだ。

 

「じゃあね、ベル逢瀬(デート)邪魔しちゃって悪かったね」

 

「ベル…あまり焦るなよ、このバカ娘がおかしすぎるだけでお前のペースも充分異常だからな?」

 

 今は【剣姫】に憧がれているらしいが(ベル)の立場で片割れの(マリー)を意識しないはずがないのだ。姉弟仲が良いからこそ複雑な部分もあるだろう。

マリーの方は身内を突き放しているらしい女神の戦車(ヴァナ・フレイア)に何か思うところでもあったのかもな…オッタルのことをよく罵っているがもしかして【フレイヤ】全員に”こう”なのだろうか?

 

 

「そいつら」は突然やって来た。

 

堂々と「鍵」を使って開けて3人だけで。まず団長(ディックス)がやられた。灰髪の女の「福音(ゴスペル)」の一言で。

 

「濃い血とドラッグの臭い…噂通り碌でもない連中のようですね」

 

そう言い放った魔導士のはずのその白髪の女は刀で次々と首を落としていく。副団長(グラン)もすぐ殺られた。残りはレベル3以下なので敵うわけがない。

無様に背を向けダンジョンの方に逃げようとしたがあっ───

 

 凄まじい殺戮劇を見た。グロスがどれだけ無謀なことをしていたのか今更ながら理解ってしまった。

死体の懐を(まさぐ)り出すとDの文字が刻まれた球体を取り出して集めていく。

 

「やっぱり有りましたねーこいつら絶対闇派閥(イヴィルス)より”ここ”に詳しい奴らですよ、殆ど全員持ってるじゃないですかー」

 

魔法を使わなかったのはそれで、か。音の魔法なんて使ったら球体が潰れる可能性があるからな【暴蛮者(ヘイザー)】にはオリハルコンの手錠と足錠に猿轡を着けた上で奥の方に進んでいく。

 

そこには見目麗しい女性型モンスターや希少種(レアモンスター)異端児(ゼノス)達が囚われていた。アルフィアとマリーが次々と檻を裂き手枷も外していく。

 

並行詠唱しながら解放していき回復魔法を使っている様子を見ると結構焦っているみたいだ。

 

ドロップアイテムのいくつかに【ディア・オルフェウス】も試していく。

 

そうした中に復活出来た異端児(ゼノス)もいた。復活出来なかった者は時間が経ちすぎて魂もダンジョンに還ってしまったのだろう。

 

「はあ本当はウチに招いてたっぷり癒やしてあげたいんだけど…まあ人間不信になっているだろうしねえ…このままダンジョンに帰ってもらってリド達に合流してもらうのが一番か。」

 

共同体に元々いなかった者もいるが、その者達も加えて次々と扉を鍵で開放していく。外で姿を消して待たせていたバーバリアンの異端児(ゼノス)も加えてダンジョンの入口から帰っていく。

ちなみにマリーはほぼ例外なく滅茶苦茶懐かれていた。リド達に合流させたら滅茶苦茶感謝された。グロスも何やら私にデレだした。男のツンデレとか誰得だよ。ベートさんだけで充分です。まあほぼ私限定だろうが…

私だけが好かれて、人間不信そのものは更に進んだだろうなあ…




マリーはザオリクをおぼえた!

ベル君のアルフィアの呼び方

  • おばさん
  • お義母さん
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