あの後、ベートの治療をしたらすぐに目が覚めそのままその足で、全員で帰還した。
ティオナやアイズが戦いたがったりもしたが、あの速度を捌き続けるのは結構集中力がいり、疲れていたので控えさせてもらった。
唯一の男性であるフィンの上背が足りなく女性陣は誰も運びたがらなかったので目覚めてくれたのは皆助かった。
結局【ハティ】も教えてもらえた。強力なのは間違いないのだが、実際使うかは微妙なところだ。
というより自前の魔力で強力な魔法をいくつも扱える彼女からすればわざわざダメージを受けてまで吸収する必要性がないのだ。
黄昏の館では当初マリーを応援する声の方が多かった。人望の差は歴然なので当然である。
だがボロボロになりながらも泥臭く喰らいつく様子を見て徐々にベートへの応援は増えていった。
素人目に見ても勝ち目が無くなってきた時点でリーネは駆け出そうとしたが周りに止められた。
それから数日経ち…マリーは街をうろついていた。【ミアハ・ファミリア】の【青の薬舗】では…
「おお、マリーではないか!お前のお陰で最近は商売の軌道が乗り出して助かっておるぞ!」
【ミアハ・ファミリア】は最近になって【ディアンケヒト・ファミリア】への借金を完済した。
マリーの提案した「再生治療」のお陰である。元の使い手がフェルズということを考慮しなければ100%マリーの能力によるものなのに窓口となり場所を提供するだけで稼ぎの実に6割もが
【ミアハ・ファミリア】に入るのだ。ナァーザも大喜びのボロい商売である。尚マリーの取り分の半分はフェルズに渡している。
「欠損部位再生」はこの街では予想以上に需要が有り過ぎた。いつぞやに【ロキ・ファミリア】に文句を言っていた連中も再生済みだ。
変わり種ではリヴィラの街の支配者のボールス・エルダーというのも居たが、その失って久しい眼を再生したのだ。
彼自身としても眼帯は長年付けていたチャームポイントのようなものだと思っていたが、常に生き死にに関わる冒険者をやっているのなら、そんな不利な箇所など無くせるのなら無くしたい、と思い、
地上に上がり、再生してもらったのだ。そのままウキウキ気分で眼帯を取ったら子分達にまで「誰?」と言われてしまったのはご愛嬌だが。
ナァーザの腕は再生されていない。その義手を齎したのが【ディアンケヒト・ファミリア】というのは気に食わないが、ミアハが当時の中堅派閥としての地位を捨ててまで費用をかき集め、
頭を下げて齎してくれたものなのだ。それほどのモノだから愛着も沸く。悔しいがメチャクチャ高性能で不便に感じたことはほぼないし…
再生してもらえばモンスターに対するPTSDが解消するならそうしてもらっただろうが、そう上手くもいかないだろう。
そして治療しながらマリーが【ミアハ・ファミリア】の宣伝もしていったので、普通の客も増えていったのである。
そんなことを繰り返していったら、マリーの名声も上がっていった。最近では「聖女様」と呼ぶ輩まで出てくる始末である。
【ディアンケヒト】の方は、貴族からの依頼は少数だった。戦場には基本出ない人種なのだから当然だろう。
その代わり他国の高級軍人からの依頼が多かった。ラキアの者までいたのに治して良かったのだろうか?とも思ったがどうせレベル3以下じゃ物の数にならないから、構わないらしい。
そんな連中からでもディアンケヒトはたっぷり搾り取ったみたいだが。
「こんにちは、裏切り者のマリー…」
滅茶苦茶マリーに恩があるはずなのに最近のナァーザはマリーに対して塩対応になっていた。主神のポーション無差別無料配布も止めさせた恩まであるのに…同時に薄めるのも止めさせたが。
ナァーザも出会った当初は「せんぱーい」と慕ってくれるマリーを可愛がっていたのだ。だがアミッドと仲良くなりだしてからは徐々に冷たい対応をするようになってしまったのだ。
【ミアハ・ファミリア】には悪いが
ダフネやカサンドラは今は普通に仲良くしてくれている。
「もう
「マリーあの女の魔法使いまくってたもんね…上手く利用したよね、ホントに…」
「失敬な!『利用した』などとは人聞きの悪い…!あの魔法はアミッド先輩が『貴女なら使い方を間違えないでしょう、沢山の人を救ってくださいね』と言って笑顔で託してくれた絆の証なんですっ!」
「『絆の証』ねえ…本当に仲が良いのね、余計に憎たらしいわねっあの女っ…」
アルフィアの病気は最近完治した。先日の更新の際にスキル【
最初から殆ど治りかけだったことにより、投薬の必要も殆ど無かったのだが、「同じ病気で苦しむ人間が現れた時のためサンプルが欲しい」と頼まれて、採血しようとしたら針が通らずに、
マリーがオリハルコン製の注射器を作る羽目になった。第一級冒険者相手なら、全員同じようなことになりそうなものだが、基本冒険者は器が昇華されるほど病気とは無縁になっていく。
そういった意味でもアルフィアは異端中の異端だったのだろう。そんな致命的なハンデを背負いながらレベル7にまで登り詰めた彼女が大概おかしいのであるが。
「はあ無理に『仲良くしろ』とまでは言わないですからせめて無意味に食って掛かるのは止めてくださいね」
「善処するからもっと優遇して…」
「ダメですー借金返済に多大な貢献しましたでしょう…これ以上優遇したら
「じゃあダンジョンアタックに付き合うから…ダフネ達が」
「ちょちょちょちょっと待って、第一級が2人いる派閥の遠征なんてっ…「ベルもこの前ので5になったから3人よ」どっちにせよむりー!」
ここまで大人しく聞き役に徹していたダフネとカサンドラが顔色を変える。
「どうしても怖いのならこの前のアステリオスも呼べば安全よちなみに目標階層は71」
「はぁ!?」
「ゼウス・ヘラの申し子とも言える私がそれを越えようと思うのは当然だわ。それにおばさまから『私達とアステリオスがいれば不可能ではないな』とお墨付きいただけたのでー」
実際のところは【ヘスティア】単独だとほぼ博打になってしまうのでやらないが、「全面的に
というか実力詐称になってしまうのでやるつもりはない。
「むりむりむりむり」
カサンドラが涙目になりながらガクガク震えている。
これ以上脅すのは可哀想かと思ったマリーは───
「なーんて冗談よっ。今はまだまだウチの層が薄くて難しそうだからねっせいぜい50とかそんなもんよっ」
「やっぱむり───!」
「これこれあんまり私の子達をからかわないでくれマリー」
友達?同士の戯れを邪魔してはいけないと眺めていたミアハも口を出す。嘘を簡単に見極められる神からすればイジられていることにもすぐ気付く。
ナァーザは途中から面白がって眺めていた。
「でも本当に【深層】に行くようになったら希少素材私達の方にも回してねマリー」
「以前までほど優遇は出来ないですけど構いませんよー」
第一級冒険者との繋がりは貴重だ。【ロキ】・【フレイヤ】との繋がりがなく、零細に成り下がってしまった今の自分達なら尚更。
実はナァーザも少し不安だったのだ。瞬く間にレベル6となり、世界有数の実力者まで駆け上がったマリーに関係を切られてしまわないか、と。
「そんな娘ではない」と頭では理解っていても
薬の類はもうマリーが自前で用意出来てしまうので顧客として利用することはない。最初の頃はしてくれていた手伝いも今は彼女が忙しくなったことにより、また教えられることも無くなってきたため、してくれなくなり、取引相手としての付き合いしかない。
普通に考えたら医療系ファミリアとの繋がりは大手の【ディアンケヒト・ファミリア】にのみ絞られてしまっていてもなんらおかしくないのだ。
午前中はそんな感じで終わった。
ベル君のアルフィアの呼び方
-
おばさん
-
お義母さん