ベルの姉が「才禍の怪物」なのは間違っていない   作:イルイル

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第24話 休日・下

 バベル前の中央広場(セントラルパーク)には大きな平たい水晶が設置されていた。

午後が始まったばかりくらいの時間に、”ソレ”は唐突に始まった。

 

 

「はーいオラリオのみなさーん午後一の時間いかがお過ごしでしょうかー【ヘスティア・ファミリア】副団長のマリーベル・クラネルでっす♪今日は私とっその友達の」

 

「私レイがっ」

 

「記念すべき第1回レイマリ配信をやっていきまーす☆」

 

「第1回」と銘打っているがあくまでもコンビでの初回だ。既に何回か、個人では放送している。この世界で初の「配信者」概念である。

ダンジョンからの配信は上層までなら許可された。下位団員を中心にした「駆け出しだけで攻略するダンジョン上層編」は非常に人気が出た。

ギルドからも好評で、記録媒体まで開発して、いつでも再生出来る映像資料として納めさせられたくらいだ。良い報酬も出たのでノリノリで作り上げたが。

「上層後半編~万一遭遇してしまった場合のレベル1だけでのインファントドラゴンの凌ぎ方」は最早駆け出しの必修科目になりつつある。

「第一級冒険者のオラリオ無断脱出法」等ではほぼ肉体性能(フィジカル)に任せた強引な壁越えをしたが真似できる者が殆ど居ないので、ジョークネタとしてウケた。

ギルドには注意されてしまったが。これ幸いとばかりにギルド長(ロイマン)が多額の罰金を課しそうだったが、マリーが既にギルドのトップ(ウラノス)のお気に入りというのは知れ渡っているので特に何もされなかった。

長年公平で有り続けた彼の神においては非常に珍しいと言えるだろう。だが批判の対象になることはなかった。ちょっと洒落にならないレベルでマリーの都市内での人気が上がっていたからである。

 

「配信者」は彼女しかいないので競合する者も当然居なく、独占状態だ。そんな彼女が特定の「どこか」を批判すれば瞬く間に都市内の居場所を失いそうだが、そこまで気付いているのは少数の聡い神か人間だけだ。

或いは気付いた上でも大半がアイドルのように扱っていた。「水晶」については当然欲しがる神もいたが、神々にこんなモノ渡せるハズがない。ゼウスみたいなのがいたら女湯配信とかやりそうだし…

配信ではクロとアベルもよく映している。戦闘力は普通に見せているので、紛れもないモンスターであることは伝わっているはずなのだが、じゃれついている時の姿はまるっきり愛玩動物(ペット)と変わらない。

お陰で女性冒険者からの質問が増えた。「どうやったらこんなに強く賢く従順な子たちを調教(テイム)出来るのか」みたいなの。

「スキルも道具もなしに同じようなことをしようとするな」と再三に渡って注意はしている。これでヘルハウンドやアルミラージ相手に躊躇して痛い目に遭う奴が出ても知ったこっちゃない。

 

 そうして以前の時と同じように教会からマリーはレイと共に演奏した。マリーは今回はピアノの弾き語りなので二重唱(デュエット)だ。画面には映っていない所で、アルフィアとヴェルフもヴァイオリンを演奏している。

2人共映るのは嫌がったのだ。ヴェルフは希少素材で釣った。レイは当然人間に変身させている。最近になって異端児(ゼノス)達は以前より流暢に喋れる者が増えてきた。

マリーを中心とした【ヘスティア・ファミリア】との交流が増え人類そのものとの交流が増えたからだ。

今のレイは元の姿と変身後の人間の姿でも全く差がないレベルで流暢に喋れるし、歌える。

異端児(ゼノス)達への支援は続いている。人型に近い者らは変身させて地上で一緒に遊んだりしているしウィーネは結構な頻度で会っている。

防音用の魔道具も完成したので渡したら、手先の器用な者らに楽器をせがまれたので渡してついでにレッスンまでしてやっている。

ヴァイオリンばかりだと難易度が高い上に面白味がないのでフルートやトランペット等の管楽器まである。

見本としてそれらを全て完璧以上に弾きこなしてしまう彼女が大概おかしいのであるが。

全体的に戦闘力も向上しているが、アステリオスは特にアルフィアとマリーらがてずから鍛えているので、成長著しい。

深層の魔石を摂取し続け基礎能力も向上させながら、”技”も仕込み続けている。

両刃斧(ラビュリス)は前の戦いで駄目になってしまったので、今は【暴喰】(おじさま)が使っていた大剣の【グラトール】を渡している。

いずれ彼の最高の武器は私が作るつもりだが繋ぎの武器としては上等過ぎるだろう。「斧がいいか、大剣がいいか」で本人に選ばせたが、彼が選んだのは後者だった。

なんでも前世で「自分より強い誰か」に大剣の技を仕込まれていた覚えがあるらしい。なんとなくそんな気がしていたが、あの阿呆はミノタウロスを強化種にするだけでは飽き足らず、

技まで仕込んでいたらしい。レベル1の相手用に。どう考えてもやり過ぎだろう。まあ奴が仕込んだ剣技なんて私らのもので上書きしてやればいい。

彼には2人がかりで【暴喰】(おじさま)の剣技を仕込んでいる。おばさまはレベル7の身体能力(フィジカル)で雑に再現していたが、本来は彼のような者にこそ相応しい技だろう。

そのおばさまは私が作った剣を与えたことにより雑に【暴喰】(おじさま)の剣技を使うことはなくなった。そもそも体格が違いすぎるし、得物も普通の大きさの剣では、

あの「大剣の技」を活かしきれるものではないだろう。そんなものでも私以外のレベル6以下ならどうにでもなるのだろうが、いくら今は身体の調子が良くても剣だけでなら、多分オッタルや

毒がない場合の【暴喰】(おじさま)レベルの相手には負ける可能性もある。まあそもそも近接戦でも【サタナス・ヴェーリオン】がある限り同格以下相手にはほぼ無敵なのだが…

最近はタケミカヅチ様と共に「自分だけの剣技」を開発している。「私の頃には武神など居なかったからな面白い」とか言いながら。

せっかくの愛娘からのプレゼントを十全に振るいたいのだろう。少しおばさまの方に脱線してしまったが、アステリオスはそんな感じでメキメキと強くなっている。

いずれ【フレイヤ】が仕掛けてきたらオッタルにはアステリオスをぶつけるのも面白そうだ。意趣返しとしてもぴったりだろう。

ちなみにラーニェには自ら強靭な糸を作れるのを利用して裁縫を仕込んでみたりもした。今は異端児(ゼノス)達の服は彼女お手製の物ばかりだ。

染料はダンジョン製の物か、地上の物はこちらが提供したりもしてる。少量を地上に売りに出したら、凄い値がついてそのお金を彼らの支援に使ったり、地上に来た時の遊興費にしたりした。

また、「蜘蛛の横糸」にあたる粘着力の強い糸を採取して【蜘蛛糸爆弾】なるものを作ったりもした。対象にぶつけると弾けて粘着力の強い糸に絡まれ行動を阻害する。

余程の大型じゃなければ大抵の相手に通用する。ちなみに「インファントドラゴンの凌ぎ方」もこれを使うのが前提だ。

加工して作れるのは私と師匠(せんせい)だけなので、大々的に流通させるほど作ってはいない。その上でそれなり以上に力と信用のあるファミリアにしか売りに出していない。

奪われた挙げ句冒険者同士の諍いにでも使われたら面倒だからだ。異端児(ゼノス)達や【ヘスティア・ファミリア】の団員には殆ど全員に所持させている。

やはりというか、かなりリリ好みのアイテムだったようなのでよくせがまれるようになった。あくまでも緊急時の時間稼ぎ用なのであまり頼られても困るのだが…

そんなこんなで、昼下がりの演奏会は無事終了した。この演奏以後、芸能や音楽に造詣の深い神々や歌劇の国【メイルストラ】からの勧誘が来るようになってしまうのはまた別のお話。

レイへの追求も当然強まるが、そこはのらりくらり躱す。普段はダンジョンに居るのだし本人が捕まるわけがない。いずれ黒竜を始末したら行ってみるのも悪くないかな。

多分平和な世だったら音楽家あたりになっていたかもしれないし。




当然だが「霊夢と魔理沙」ではない。
【蜘蛛糸爆弾】はドラクエの「まだらぐもいと」のイメージ。

ベル君のアルフィアの呼び方

  • おばさん
  • お義母さん
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