ベルの姉が「才禍の怪物」なのは間違っていない   作:イルイル

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魔(法による)改造


第36話 テコ入れ②「聖女再来」

「それで、リリ?相談って?まあその2人を連れてきた時点で大体察してるけど…」

 

想定していたパターンの1つだ。リリはヴェルフと(ミコト)も連れてきた。

 

「貴女達は揃いも揃って【施術】を受けたいと言うワケね?」

 

「ああ、そうだ」

 

「私もです、マリー殿…」

 

 

神様ガチ恋勢の2人を連れきたということは「そういうこと」だろう。参謀たるリリには団員らの大半の【ステイタス閲覧権】を与えている。勿論本人達には同意を取ってある。それらの情報をどう扱うかの裁量権も。

そこでレヴィスとフィルヴィスらのスキル【新人類】を確認したのだろう。あの2人が人間に戻った経緯もリリは把握している。だから”どう”習得したのかも、理解したのだろう。リリとしては【不老】の方にはあんまり興味はないだろうが、

人間として神々と同じ時間を生きられないヴェルフと(ミコト)からすれば【不老】は天からの福音だろう。

そしてレヴィス達は早熟スキルにも目覚めている。恐らく元怪人であったことは無関係だろう。俗物的な権力者達だけでなく刹那的に生きる冒険者達からしても眉唾物だろう。

誰もがベル並みの速度で成長出来るようになるのだから(恐らくそれでも私には少しだけ及ばないが)リリは純粋に力を求めて”こちら”に目を付けたわけだ。

使用した上で、そう簡単に死なない第一級クラスまで上り詰めれば神々とは異なる第2の超越存在(デウスデア)の誕生とも呼べるだろう。

【新人類】の表記が示す通り【施術】された時点で、元の種族とは別の何かになってしまうので自身の種族に拘りや誇りがある、フィンさんあたりは断固として拒否するだろうが。

まあ怪人(クリーチャー)のように見た目に怪物要素が加わったり、別の何かに操られたりということもないので、アレに比べれば天国だろうが。自身の種族に頓着のないリリなら、希望して然るべきか。

 

「既にヘファイストス様と想いが通じ合っているヴェルフに措置をするのは吝かじゃないけど…(ミコト)はいいの?まだタケミカヅチ様に想いすら伝えていないのでしょう?

永劫に等しい時を報われない想いを抱えながら生きることになったら流石の私でも尻拭いは出来ないわよ?それに千草や桜花達は元々家族同然だったのでしょう?彼らを確実に見送ることになるのは…」

 

「もうっマリー殿…そんなことを思っていたのですか?ヘスティア・ファミリア(ここ)も今や大切な場所で貴方達も同じくらい大切な家族ですよっ

それにマリー殿やヘスティア様となら黒竜を倒した後の人類の夜明け…その先の遠い未来も…視てみたいと思ってしまったのです、勿論タケミカヅチ様も諦める気はないですけどね」

 

「ふぅんまあそこまで想ってくれているのなら、まあ、考えなくもないけど…ヴェルフも?」

 

「ああ、【不老】の方に惹かれたのも事実だが…このまま置いていかれたくないとも思ったんだ」

 

「貴方の本分は鍛冶で、『戦う者』ではなく『作る者』でしょう?『折れない魔剣』の目処も立っているのに…それでいて、直接戦闘にすらついていこうだなんて贅沢じゃない?私じゃあるまいし…」

 

「理解ってる…何でも超一流のお前と比べたら、俺は中途半端だ…純粋な鍛冶の腕じゃ片手間のお前に及ばないし、戦闘じゃ比べるべくもない。それでも出来ることはしたいんだ。ベルの相棒の座は譲りたくねえんだ」

 

「へえ?私と張り合う気?レベル5になっても全く満足していないベルはこれから私達のような本物の強者…レベル6以上の世界的強者(ハイレベル帯)、【英雄の領域】に間もなく踏み入れるわ。

それこそ私達と肩を並べるのに相応しいほどの、ね。早熟スキルを身に着けた程度じゃ私達には及ばないわよ?『ここ』はそんなに甘くない。元々私達姉弟は共闘することで互いを強化し合うスキルもあるしね…私以上に相棒に相応しい存在は居ないでしょう?

前にも言ったけど貴方の戦士としての才能は…並…凡才ってとこよ、今からどんなに努力してもダンジョンはともかく黒竜戦では後ろから【ウィル・オ・ウィスプ】唱えるくらいしか役目ないわよ?」

 

「それでもっ…出来ることはしたいんだっ…!」

 

「まあ、いいわ。【施術】については、貴方達が20歳を迎えた時にも意志が変わっていなかったら…その上でヘスティア様と貴方達の元主神にも許可を取れたら、(おこな)ってあげるわ。

(ミコト)も、女性としてもっと成長してからの方がいいでしょう?」

 

「マリー殿っ私はもっと早く力をっ…」

 

(ミコト)…貴女は真っ当に努力を続ければ、10代の内にレベル5以上になれる才能があるわ。今は自身の才能と私の言葉を信じて鍛えなさい。眼の前の楽な道じゃなくて…」

 

「ッ…はいっありがとうございますっマリー殿っ!」

 

そうしてヴェルフと(ミコト)は礼を告げて部屋から去って行く。そして残ったのは───

 

「さて、リリ…貴女は…なんか不満そうね…?」

 

「当然です!結局あの2人も先延ばしにされただけじゃないですか!」

 

「リリ…貴女がどうしても力を求めるというのなら【施術】以外で確かな『力』を得る方法はあるわ。貴女だけにしか使えない…ね。尤もこれは一種の賭けだわ。

最悪、貴女の良さが失われてしまう可能性はある。まあ、その時の復帰(リカバリー)の方法は考えてあるけど…”それ”受けてみる?」

 

「やりますっやらせてくださいっ!フィン様が以前仰ってました。『ヘディンは僕より頭が良い。マトモに知恵比べしたら僕でも親指(ズル)抜きじゃ敵わない』と。その【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】が『自分より頭が良い』と称する、

リュディス様と比べたら自分は…いくらマリー様が『貴女は頭が良い』と評してくれてもっ…何も取り柄が有りませんっ」

 

「そうね…私も同レベルなら【静寂の園(シレンティウム・エデン)】抜きではタイマンは避けたいくらいリュディの能力は恐ろしいわ。

ヘディンに劣っているところなんて遠距離での砲撃戦と、私達のような第一級冒険者(きょうりょくなコマ)を動かす経験くらい。

【アルテミス・ファミリア】で指揮の経験も豊富だったみたいだし…その辺りの擦り合わせも遠からず済むでしょう。何より彼女自身が既に私達と同じ視点に立てる第一級冒険者だし…ね。」

 

「でもね、リリ、たとえ今すぐフィンさんみたいな人が入団してきても私が貴女を見限ることなんてないわ。黒竜を倒しダンジョン完全攻略も成し遂げたその先は…武力だけの人間では生きられない時代がくるわ。遠い未来かもしれないけど…ね。」

 

───そんな話をしながら、闘技場に辿り着いた。これからやろうとしていることは間違いなのかもしれない。

彼女の力は疎まれ恐れられ、また自身でも呪っていたらしいから。弟の方(フィンさん)にだけ発現しているのはそのあたりの在り方も関係しているのかもな。

だが、ゼウス(ジジイ)の話のその情報は役に立った。「現在(いま)を生きる私達には関係ない」と言いたいところだが、実際に似た力を発現している者も居るのだから、役立つ情報には成り得る。

反則的な情報源だが、まあ私の存在自体がインチキみたいなもんだし。リリにも素養はあるはず。その凄まじい武力に恐れる者はいても、仲間達には頼りになる確かな力として、信頼されていたらしい。

ならたとえ「彼女の再来」のようなことになっても、今の【ヘスティア・ファミリア(わたしたち)】の水準なら…持て余すこともないだろう。

ティオネさんに一度頼まれてかけたから問題なく出来るはずだ。まあ、本人に全く制御出来なくて、暴走して襲いかかられ、既に私もレベル6だったのではっ倒した後にティオナとフィンさんにめっちゃ謝られたのだが。

世界で唯1人私にしか出来ない方法だ。さながら私は灰被り姫(シンデレラ)を変身させる童話の魔女か。或いは戦士に伝説の剣を与えて勇者に引き上げる魔法使いあたりか。私がリリと出会ったことにも運命を感じてしまう。

 

「ねえ、リリ、貴女『大分前に冒険者としての道は諦めてサポーターに転向した』って言ってたけど、武器はどんなもの試したの?」

 

「剣とナイフを少々…」

 

「槍は?槍は試さなかったの?小人族(パルゥム)って言ったら槍らしいじゃない、素人が振るって一番マシなのはリーチの長い得物だ、ってことくらい子供でも判ることよ?」

 

「かつてのリリは『小人族(パルゥム)ならどうこう』みたいなの、好きじゃなかったんで。どのみち師匠もなしの独学じゃ槍のリーチだけでどうにかなるような浅い階層ならともかく、深い層でも通用するように自由自在に振るうのは、敷居が高いと思っていたので…」

 

「つまり試したことなかったのね…」

 

私の「才能を見る目」は知っている者からすれば凄い能力だと思われているみたいだが、”それ”が何の才能なのかは、即座に判るものでもないため、結局具体的に何の才能なのかは手探りしていかなければ、

判らないので微妙に使い勝手が悪い。まあ才禍(わたしたち)には及ばなくても、満遍なく高水準なフィンさんやリヴェリアさんとかいくつかが異様に高いガレスさん、アイズやリューさん、レフィーヤみたいな人は即座に「持っている側」

と判り易いのだが。ちなみにラウルさんは驚くほど真っ平らである意味オンリーワンで非凡だ。リリは恐らく、知力や指揮能力関係と思われる、いくつかがぶっ飛んでいて、戦闘関連と思われるいくつかが妙な視え方になっている。

恐らく何らかの条件を満たさない限り開放されないということだと思うのだが…槍を持たせただけで変わるほど単純なモノではあるまい。なら…最後の鍵に成り得るのは私の魔法だろう。いや、彼のか。

リリに槍を持たせて向き合う。私も槍を持って向き合っている。

 

【【覇王】の名のもとに命ず。───【ヘル・フィネガス】!」

 

リリにその魔法をかける。これ自体も結局本家本元(オリジナル)には及ばない似非(エセ)らしいが、力の方向性はそっくりらしい。それを疑似体験させれば、リリの中に秘めたモノも呼び起こすことが出来るかもしれない。

 

「ア?アアア…アアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!?」

 

眼が紅く染まったリリが頭を抱えて眼を剥き出しにして苦しんでいる。心が痛むが今更後に引けない。やがて荒れ狂っていた気配が落ち着き、リリが調子を確かめるように数度槍を振るう。その動きは私をして寒気がするほど鮮やかだった。

 

「マリー様…相手してくれるのでしょう?、そのつもりで(これ)を用意していたんですよね?」

 

()()()()…」

 

リリは紅い眼のままに、初めて見せるような好戦的な笑みを浮かべていた。

 

───フィン・ディムナは郊外の闘技場を訪れていた。【連合】所属の冒険者には無料で開放されており、【ヘスティア・ファミリア】が使用しない日は自由に使える。

それ以外のファミリアでも予め予約した上で高めの使用料を払えば貸し切り状態で使用出来る。かくいう【ロキ・ファミリア】も結構お世話になっている。

ホームの訓練場では狭いと判断した時、ダンジョンでわざわざ他所のファミリアに目撃されない場所まで趣き、訓練するより、こちらの方が圧倒的に早く、楽だからだ。

しかし、今日は別段訓練の予定があったわけではない。ただ今朝「上手くいけば面白いものが見られる」とマリーに誘われていたので、赴いたのだ。

槍同士がぶつかり合う金属音。フィンほどの腕があれば、直接見なくとも音だけで、得物の特定は出来る。況してやそれが自身も使用する槍同士なら───

 

「どちらも強い…第二級でも上澄み…レベル4くらいかな?片方の体重は恐らく軽い?まさか───いや…」

 

そんな小人族(どうほう)居ないはずだ、と思いつつも気になり駆け出したフィンだったがそこで見たものは予想外の光景だった。

2本の槍の軌跡が閃光と化し、互いを喰らおうと絶えず交わり続けている。誰が想像出来るだろうか。第一級同士でも滅多に見れない、この速度と技量の応酬を繰り広げている片方は、先程まではレベル1の戦闘力がほぼ皆無だった小人族(パルゥム)だなんて。

マリーは当初レベル2程度のスペックで相手をしていた。それはもう懇切丁寧に指導するかのようにタケミカヅチやフィンの技を再現して。それらの技をリリは瞬く間に吸収し、どんどん速度も技のキレも上がっていき、結局レベル4程度のスペックまで引き上げて相手せざるを得なくなっていた。

【ヘル・フィネガス】の効果時間はとっくに切れている。彼女をして「槍だけならまるで才禍(じぶんたち)だ」とまで思ってしまった。それはマリーにとって人類の中では最高位の評価だった。

リリルカ・アーデはどんどんギアを引き上げていき、その火照った身体とは裏腹に冷静な思考で俯瞰しようとしていたが、それでも歓喜の感情が抑えられなかった。

一度は諦めてしまった道───本当は「今の愛しい家族達と共に直接武器を手にして力になれたら」と何度思ったことか。ベルやマリー達が褒めてくれる「頭の良さ」も少しは自信を持ち、誇れるようにはなりつつあったが。

やはり同じ方法で同じ景色を見てみたかったのだ。【冒険者リリルカ・アーデ】は覚醒を果たしこの日、真に産声を上げた。

 

「ふぃあ…な?」

 

フィンは気付けば涙を流していた。何故その名前が口に出たのかも現在(いま)のフィンには理解らない。現在(いま)の彼は彼女とは所詮他人だ。

だが魂の奥底が揺さぶられるかのような感覚。幼い頃自身らの命を犠牲にして自分(むすこ)を助けた両親に勇気を見出した時のような…いや、2度と見られるはずのない奇跡を目にしたかのような───やがてリリルカが力尽きて倒れ込む。

 

「リリ…」

 

「はい?」

 

()()()()♪」

 

マリーが伸ばしたその手をしっかりとリリルカが握り返して立ち上がる。

 

「はいっ」

 

まだ入り口に過ぎないとはいえ、この日確かにリリルカ・アーデは手にしたのだ。端役ではない「本物の英雄」への道、その資格を。




リリを魔改造するSSは昔から結構あるからこれくらい許されるはず…!

ベル君のアルフィアの呼び方

  • おばさん
  • お義母さん
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