ベルの姉が「才禍の怪物」なのは間違っていない   作:イルイル

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第37話 成長促進スキル

「リリっ大丈夫っ?『眼の前が真っ赤に染まって~』みたいなのはない?」

 

「ああっもう心配し過ぎですよっ戦っていた時は興奮してましたけど、今はそんなこともありませんし…そんな心配するくらいならなんであんな魔法使ったんですかあ!」

 

「家族が困っていたら助けるのが当然のことでしょう?」

 

心底不思議そうに言うマリー。”こういう”ところだ。”こういう”ところであのベルの姉ということをつくづく実感するのだ。

いや(こちら)は計算した上で言っている気もするのだが…既にこの思考が誘導されている気もしてしまう。

リリもバカではない。小人族(どうぞく)の彼の魔法を自身に使ったことで起きた変化───マリーが”それ”をどうやって知ったのかは判らないが、自身の秘めたる力に対して

何らかの確信を持って「あの魔法」を使って目覚めさせたのだろう、というところまで気付いた。神々との繋がりも多い彼女のことだ。情報源はそのあたりだろう。

最有力候補は、最近自分も会った、姉弟の育ての親で様々な昔話に詳しいという大神(ゼウス)か、やたら小人族(じぶんたち)を贔屓してくれる鍛冶神(ゴブニュ)あたりか。

タイミングや親密さを考えるとやはり前者か。

 

「はあ、でも、惜しいわね、もう少し早ければ、フィンさんも四兄弟もリリにぶちのめしてもらえそうだったのに…今からじゃ流石に間に合わないかな」

 

「”それ”ファミリア内でだけで言うのは構わないですけど外では絶対に言わないでくださいよっ!?」

 

「最近は私より人気のある冒険者居ないし大丈夫でしょ?」

 

「女性と小人族(どうぞく)の殆どを敵に回すと言ってるんですっ!あと【ロキ・ファミリア】も!」

 

「あらそう?四つ子あたりは歓喜しそうだけどねえ?まあ流石に自分達の番の時は全力で抵抗するだろうけど…」

 

「あの…僕もまだ、いるんだけど…」

 

あの後、リリを抱えて旅館の方に運んだ。フィンさんもついてきた。リリを視る眼がかなり怪しくなった。絶対に逃さない、という意志が感じられた。

 

「なあにリリ…今更【ロキ・ファミリア(かれら)】が怖い?流石にそれは臆病過ぎじゃないかしら?」

 

「レベル9のレヴィスに私とおばさまの2人がレベル8、フィルヴィスが7よ?寧ろどう負けろって言うの?」

 

「やっぱり9までいっていたか…と言うかもう隠す気全然ないね…」

 

今朝私の8へのランクアップ発表と同時にレヴィスも8になったということにされた。実際は9だが…まあレヴィスの正体を知っているウラノス様には明かしているのだが。

段階的に、次は私かおばさまか、フィルヴィスら、超高レベル帯のランクアップに合わせて本当のレベルを発表させるつもりだ。ロイマン(ブタ野郎)が税収増やすためにSSランクとかいうの新たに作ろうとする動きがあったから「人類の足引っ張るんですか?」と睨んだら沈黙した。

 

「まあレヴィスは()()()()()()だから、アイズが希望でもしない限り積極的に使う気はないですよ?【フレイヤ】の方はむかつくからあんまり手心を加えてやる気ないですけどね」

 

まあ「なるべく殺さないように」とは指示するが。万一殺してしまっても、蘇生させれば問題ない。レベル差の暴力が酷すぎてゲームにならない気するけど奴らが悪い(しかたない)

 

 少し前までは弱小派閥だった相手に「手加減」とか完全に上から言われることにフィンも思うところがないわけでないが、実際今はもうあちらの方が上だ。

形式次第であろうが、今からどう足掻いてもほぼ勝ち目はないので、「どう、傷を浅くして負けるか」という着地点を模索している段階だ。というかこれがアルフィアだけだったら失望どうたら、言われて本気で潰しにかかられていたかもしれない。

敵視されていないだけ【フレイヤ】よりこちらはマシだろう。というか「【フレイヤ】が全員1レベル、ランクアップした」と想定した相手の方がまだ大分マシかもしれない。「ゼウス・ヘラ以上」ということはそういうことだ。

自分達は結局のところタイミング良く玉座をかすめ取ったまではいいものの、かつての最強の域にまで至れていないのだ。それが巡り巡って【暗黒期】の到来を招いてしまったのだから「不甲斐ない」と言われたらぐうの音も出ない。

本来彼女の立場ならこちらは恨まれていてもおかしくないのだ。「それ」を少なくとも表に出していないだけ有り難いと思うしか無い。

実際1年足らずでそこまでの戦力を集めたのだ。元怪人(クリーチャー)達というイレギュラーはあっても、安易に殺さずに味方に引き入れることが成功している時点で大概おかしい。

最近は「彼女自身の強さよりもそのスカウト力に一番価値があるのでは」と思うようになってきた。

(ベル)が門前払いされていなければ【ロキ・ファミリア(ウチ)】に入っていたかもしれない」と告げられた時は頭がおかしくなりそうだった。

その話は瞬く間に広がり、当時の門番は針の筵になり、脱退してしまったが。幹部以外にも彼女のファンは多いから仕方ない。というか自分達の力まで本当に必要なのだろうか?彼女がレベル10まで至ったら、単独ファミリアで黒竜攻略も可能ではないのか、と思ってしまう。

 

「それで、いつの間にリリルカ(かのじょ)はランクアップしていたんだい?今日まで隠し続けていたなんて意地が悪いんじゃないのかい?」

 

「は?ランクアップ?リリはレベル1のままですよ?」

 

「はあ?流石にそれは…」

 

「…失礼ですねフィン様…リリはレベル1のままですよ?」

 

心外だとばかりにリリがフィンさんを睨む。

 

「かつての聖女様は恩恵なんてない時代にレベル5か6程度の強さはあったらしいですし、リリみたいな小人族(パルゥム)が稀に産まれてきても、おかしくないでしょう?」

 

「待て…何で『5か6』なんて具体的な数字が出せる?僕ですら知らないのに…」

 

「少しだけその時代のこと知っている神様にチラッと…まあリリは先祖返りみたいなものでしょう」

 

それ以上話す気はないとばかりにマリーはニコニコしている。

 

「それで2人共…僕から提案があるんだが…」

 

「…まあ聞くだけなら良いですよ」

 

「リリルカを僕の弟子にしてみる気はないかい?以前から見どころのある同族を弟子に取ること自体は考えていたんだ」

 

「今までは難しかったけど、理解り易い才能と実績を見せれば周りも納得するだろう」

 

「ねえ、リリ、フィンさんに教わるのと、私とリュディに教わるのどっちがいい?」

 

「お2人がいらっしゃらなかったらフィン様の申し出は有り難かったのですが、今はファミリアの自前だけで最高の環境が整っていますので。当然謹んで断らせていただきます【怒蛇(ヨルムガンド)】恐いですし…」

 

「だよねえ?大体判り易い能力見たからいきなり勧誘だなんて現金過ぎるもんねえ?そもそも『一族の再興』って目標は隠していないのに今更弟子取りなんて…

本当に同族を想っているのなら自身の目先の名誉ばかり優先していないで、もっと早く弟子取りしていれば良かったのに、この街だけでも小人族(パルゥム)の立場がかなり低いのは誰よりも把握していたはず…

自身で立ち上がろうにもリリくらい劣悪な環境に居た者にはそれも難しい…ちなみにリリ、【ロキ・ファミリア】に頼ろうとしたことは?」

 

「ずっと前ですが門前払いされましたっ【フレイヤ】にも同じくっ」

 

フィンは「もう門番廃止した方がいいかな」と思い始めた。

 

「面食いの主神(ロキ)様の方針か知らないですけど副団長の同族(エルフ)は結構いるのに、団長の同族(パルゥム)は、フィンさん以外、一切居ない。

貴方に憧れて【ロキ・ファミリア】の門を叩こうとする小人族(パルゥム)は結構いるはずなのに…」

 

「【ロキ・ファミリア】の入団希望者はただでさえ多いんだ、僕の立場で『同族(パルゥム)だから』というだけで贔屓出来るわけないだろうっ!」

 

「だから入団試験程度で淘汰されるような者らに差し伸べる手はない、と?」

 

「───そうだっ」

 

「冒険者未満の新人達なんて私ですら大したこと判りませんよ。結局本人らの心がけと『どう変われるか』と、先達の導き次第でしょう。才能なんて1つの目安に過ぎない。それを補うための神の恩恵(ファルナ)でしょう。

誰よりも”それ”に恵まれた私が言っても説得力無いでしょうが…ロキ・フレイヤの幹部陣の殆どは天才揃いですが…オッタルなんて元々の才能は明らかに『持ってない側』ですよ。貴方はラウルさんに見どころがないと思いますか?」

 

まあこんなこと言っておいて私自身も足切りの目安に才能を測っていたりしたのだが。碌に知らない人間相手じゃそれくらいしか比較出来るものがなかったのだから仕方ない。

 

「そんなわけないだろうっ!」

 

「そこで怒れるのなら…誰よりも早く同族(パルゥム)に見切りをつけていたのは貴方自身だったんじゃないですか?フィンさん、貴方はもっと我儘になって同族(パルゥム)を贔屓しても良かったんじゃないですか?

まあそうすると勘違いして調子に乗り出すのが人間というものですから匙加減は難しいかもしれないですけど…ね。ちなみにリリを貴方の嫁にさせる気は微塵も無いですよ。それこそ自派閥内でどうにかしてください、あと年齢差考えてください」

 

年齢差のことを指摘されると弱い。やがてヘスティアやアルフィアらが到着すると、フィンは去っていった。

そうして更新した結果は…

 

リリルカ・アーデ レベル1

 

力H102→B756

耐久H189→563

器用G287→A873

敏捷E452→B712

魔力E478→C638

 

 

 

 

縁下力持(アーテル・アシスト)

一定以上の装備過重時における能力補正がかかる。

 

 

 

聖女回帰(ナイト・オブ・フィアナ)

レベル6まで超早熟する。アビリティの限界突破。超高ランクの発展アビリティ【槍士(そうし)】発現。

 

 

指揮官(コマンダー)

指示を通し易くなる。周囲の状況把握能力上昇。冷静さを保ち易くなる。

 

 

【単騎駆け】

単独(ソロ)戦闘時、もしくは単独で一番槍を担った時に全能力超高補整。

生存能力超上昇。

 

真紅(しんく)の魔眼】

任意発動(アクティブトリガー)精神力(マインド)を使用して発動。全能力超高補正。色の濃さで出力が変化する。

 

魔法

シンダー・エラ

詠唱式:【貴方の刻印(きず)は私のもの。私の刻印(きず)は私のもの】

 

解呪式:【響く十二時のお告げ】

 

発展アビリティ

 

槍士(そうし):S

 

 

【凶猛の魔眼】じゃない…似て非なるものということか…その魂にまでこびりついていた呪いじみた力は、弟の方(フィンさん)が全て引き取ったらしいから…

私がしたことは聖女(あね)の方に残った僅かな残滓を利用して少し思い出させただけだ。最悪魔導書(グリモア)を使えば似たような魔法が発現するとは思っていたが…その必要も無くなったな。

リリの眼は戦闘後元の色に戻り、身体の限界で倒れた。レベル1の器にあの動きは早すぎただろう。それに「超早熟」ときたか。成長促進スキルはいくつか確認しているが、

その中でも最上級は「早熟」表記のものだ。かくいうおばさまも成長促進スキルは元々持っていた。まあそれがなきゃどんな天才であれ、継戦能力が低い者に10代でレベル7とか不可能だろう。

体感的には姉弟(わたしたち)の3分の1程度の効果らしいが…あの人も最近は早熟スキルまで生えてきたし…リリのは「超早熟」と言うからには間違いなく早熟スキル以上だろう。

前世(フィアナ)に追いつくまでは一気に成長出来るわけだ。ちなみに全体的に才能そのものも爆上がりしている。今なら槍以外でも別人のように上手く扱えるだろう。

 

「早熟スキルね。きちんと発現したじゃない。」

 

「レベル1とはいえ、ここまでの上昇率は私でも初めて見たぞ。ベルとマリー(おまえら)以上じゃないか。」

 

「まあ手加減していたとはいえ、レベル8の私とあそこまで打ち合えたなら…それに槍士(そうし):Sですか…発展アビリティでSランクは初めて見ましたね…

確かにそれくらいぶっ飛んだ動きしてましたし…【単騎駆け】と【真紅(しんく)の魔眼】…私とあそこまで打ち合えたのは槍士(そうし)とこれらのお陰でしょうね。

それにリリ…早熟スキルは確かに有利になるのは間違いないけれど、私達でも判る通り普通の冒険者たちと同じように【偉業】の達成は必須だから」

 

そうなのだ。有利になれるのは間違いないが、結局一番の関門で楽が出来るわけじゃないから、資格なき者は結局淘汰されるだろう。

 

「例のごとくベルは隠し事ヘタだから言っちゃ駄目よ?」

 

少しがっかりした表情をする、リリ。まあ一番に見せたい相手だろうしな。

 

「そんなにしょげた顔しないの。最初のランクアップ祝いは盛大にやってあげるから」

 

「これから何日か貴女の力の検証に付き合ってあげるから、その後私達は、ベル達のランクアップのために深層に行ってくるから…

いや貴女の【偉業】を皆で見届けてから潜るのもいいわね。それで戻ってきたら全員で纏めて盛大に祝いましょうか。」

 

「はいっ」

 

リリが嬉しそうに返事をする。

 

「マリー君…」

 

「はい?」

 

「一体何をしていたんだ、君達はぁ~!」

 

その後ヘスティア様とおばさまらに前世(フィアナ)のことは吐かされてしまった。リリ本人に隠し通すことは出来たが…

ベル君のアルフィアの呼び方

  • おばさん
  • お義母さん
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