ベルの姉が「才禍の怪物」なのは間違っていない   作:イルイル

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第41話 報復戦争1 開幕~先鋒戦「速さ自慢(スピードスター)

先鋒 ベル・クラネルVSアレン・フローメル

次鋒 アーシェス・ラグナールVSヘグニ・ラグナール

中堅 フィルヴィス・シャリアVSガリバー兄弟

副将 リュディス・セルランドVSヘディン・セルランド

大将 マリーベル・クラネルVSオッタル

 

 

組み合わせが決まった。向こうもしっかり合わせてきてくれたようだ。神会(デナトゥス)では、ウチのレベル6が4人に増えたことと、リリが10日でレベル2から3にランクアップしたことによりちょっとした騒ぎになったが、

ロキ様の「フィンも注目しとる」という援護もあり、収まった。アビリティもしっかり上げきった上でのランクアップだ。【超早熟】は、やはりヤバかった。

【偉業】の内容は(ミコト)亜夜(アヤ)の3人がかりでのゴライアス討伐だ。(ミコト)はアビリティが充分高かったので3にランクアップしたが、亜夜(アヤ)はまだ保留だ。

その後に予定通りヘスティア様からフレイヤに宣戦布告した。オッタルがインファント・ドラゴンやミノタウロスを捕まえて何やらしていたことは結構目撃されていたので、

そのあたりのこともヘスティア様が突っ込んだら、周りの神々も納得した。ぶっちゃけそのあたりのことはムカついてはいるが、言うほど大して恨んでいない…

が、私達がもっと弱かったり、魅了が効くようだったら今頃は強引な手段を取られていた可能性は高かったので、全く後ろめたさはない。

【けじめ案件】というやつだ。掛け金(チップ)は「互いの眷属を自由にする権利」と1勝につき1億ヴァリス、これで先にどちらかが3勝しても、緊張感を保てるわけだ。

それとファミリアの運営方針に関する大きな介入権、そして「どんな結果になろうとも互いの主神に対しては手出し無用」(※但し神側から大きく干渉してきた場合はその限りではない)「黒竜退治に全面的に協力する」

この2点だけは譲れない。フレイヤ眷属も前者の決め事がなければ、とても勝負になんか乗れないだろう。それと※のものもなければフレイヤが負けた後でもルールを盾に余計なちょっかいをかけてきそうだったので付け足した。

私達が負ける確率は1%もないとはいえ、必要なこととはいえ私主導で振り回すのだから、ヘスティア様の首を賭けられるわけがない。組み合わせも予定通りだ。

ヘスティア様の宣戦布告の後に向こうも既に決めていたのか、オーダーを記述した紙を渡された。4人がかりでオッタル1人に及ばないあの兄弟が今のフィルヴィスに勝てるわけがない。それが出来るのならとっくに纏めてレベル6になっているだろう。

私は当然オッタルだろうが誰が来ても勝てるので2勝は堅い。残りの3人の内誰かが勝てればいいので気は楽だ。リュディスとアーシェスも格上殺しの(すべ)は持っているので、

例えオッタルを当てられていた場合でも流石に勝てる確率は5割を切るだろうが、勝ちの芽はあった。あの2人はそれくらい強いのだ。興行的にも白黒エルフ対決は盛り上がるだろう。

これでレベル8以上を3人出して当たり前のように勝ちを拾っても白けるだけだ。まあ強いのに全然出番を与えないのもよろしくないのでその後にまで更に戦争遊戯(ウォーゲーム)を予定しているのだが。

ちなみにアーシェスとリュディスはかなり人気が高い。世界中を巡っていた経験からか、エルフの一般的なイメージに反して気さくで、懐が深く潔癖な感じもなく、頼れるお姉さん達という感じである。

リヴェリアさんも欲しがるわけだ。以前に「自身の補佐に欲しかった」とぼやいていたことがある。まあアリシアさんも確かな実力と才能はあるが、リヴェリアさんと比べたら若過ぎるからな。間を取り持てる者が欲しかったのだろう。

リューさんやフィルヴィス、レフィーヤもよく懐いている。オマケにこの街で特に重要視される「強さ」も確かなものがあり、リュディはヘディンの妹ということもあり美形揃いのエルフの中でも輪にかけて美人だ。

リュディもスタイルは良いが特にアーシェの方は恵体だ。【ムチムチ褐色エルフ】…みたいな感じで男神達には呼ばれている。

「男エルフコンビより美女エルフコンビの方が何倍も需要がある」とのこと。ハイエルフ云々はまだ秘密だが、2人のプロフィールはそれなりに明かされている。【フレイヤ】の2人との関係も。

そんな背景もあり宣戦布告後めっちゃ盛り上がった。既に「三大派閥」として扱われてはいるが、無駄に歴の長い冒険者の一部は「ぽっと出が」みたいな風に思っているようだが、

【静寂】の恐ろしさも知らない中途半端な古参連中の評価など無視してもいいだろう。まあ今回はその後継者たる私の今の実力を見せてやればいい。

まあオッタル1人じゃ私の相手には正直不足なのだが…せめてレベル8までには上げてきて欲しかった。奴が8になっていればおばさまもやる気を出したのかもしれないが、現状その重い腰を上げる気はないらしい。

まあそれでも私が頼めば乗り気でなくてもすぐ動いてくれるだろうが…ちなみにレヴィスの方は私に忠実なのでこちらも私が頼めば一発だ。

病気だった頃と違って今は鍛えても身体が悲鳴を上げることがほぼないので精力的に鍛えている。本来の気質は勤勉な人なのだろう。

ヘスティア様がぐーたらのままだったなら相性悪かっただろうな。昔は鍛えるだけで血を吐きかねなかったから…禄に鍛えずに才能だけで10代でレベル7にまで到達してればそら「怪物」扱いもされるわ。

まあその彼女と同格の才能の持ち主が、師にも恵まれた上で若い頃から健康体で鍛えているのだ。私の今の強さもある意味必然である。

おばさまの現在進行系で鍛えているその力も身内以外に振るえる実力者は皆無で暴れる機会を求めている…ので2つのファミリアを纏めて相手にする過程(プロセス)はどうしても欲しかったのだ。

ちなみに私は「【ヘラ】の後継者」とも呼ばれ出している。まあ他ならぬ元主神(おばあさま)唯一の生き残り(おばさま)が認めているので誰からも文句は出ない。

今の【ヘスティア・ファミリア】は女性比率が高く女傑揃いなのでまあある意味ファミリアごと【ヘラ】の後継と呼べなくもない。

数少ない男のヴェルフは唯一無二の才能を持っているが、彼の限界は恐らくレベル5くらいだろう。ベルが「【ゼウス】の後継者」と呼ばれるようになるのは7以上になってからだろう。

私は【連合】という派閥を越えた枠組みの纏め役を担っているので、ファミリアの方の纏め役はベルに任せられるようになって欲しいのだ。リリがこのまま成長して自信と求心力まで付ければ、頼りになる補佐になってくれるだろう。

派閥を越えた枠組みのトップということで私のことを【盟主様】とか呼ぶ者もいるが。

ちなみに対外向けに「幹部同士の対決」と銘打ったが、現状【ヘスティア・ファミリア】に正式な幹部は存在しない。私がスカウトした中途組がとんでもない実力者ばかりなので古参組と軋轢が発生しないようにレベル2以上を【中級戦闘員】、

レベル5以上を【上級戦闘員】としている。ちなみにヴェルフとおばさまは【特別幹部】としている。まあヴェルフは唯一無二の異能の持ち主、おばさまは突き抜けた戦闘力に加え、冒険者としての大先輩の視点の持ち主でもあるので、

その2人が特別扱いされるのは当然だろう。春姫もいずれその能力が知れ渡れば同じような扱いにするつもりだ。

 

 そんなこんなで【その日】を迎える。会場は当然私達の円形闘技場(コロシアム)だ。場所が場所だけにその気になればいくらでもこちらが有利になれるモノを仕掛け放題だったのだが、事前に複数の神々の前で「そういったモノは使わない」と宣言している。

多くの観客から入場料を取った上で、都市中にも【神の鏡】で中継される。観戦出来るモノなら間近で生で観たいと思うのが当然だろう。下位団員らや連合所属の冒険者達が協力者となり会場内で、売り子や受付を担当する。

他国からの人間もチラホラいるようだ。まあロイマン(ブタ)は「オラリオの力の喧伝に丁度いい」という考えらしくほぼ素通りだった。一応都市外の敷地なので入ろうと思えばいくらでも入れるのである。

「死者を出したら反則負け」という規則(ルール)も設けたので奴からの横槍も入らなかった。一応「黒竜討伐のための人類統一軍結成のために必要な過程(プロセス)だ」と丁寧に説明してやったのも効いたのだろう。

さて、先鋒戦はベルとアレンの対決である。ベルは人が良いから自分だけが口であれこれ言われたくらいで怒るようなことはないが、レベル6にもなればその実力を疑う者もほぼいない。

何よりそこいらの木っ端の冒険者風情が「喧嘩を売って本当にレベル6でした」だったら洒落にならない。ウチはそうそう気軽に力を振るわないよう心がけているので粗暴な冒険者のイメージが大分良くなったようだが…一番槍がスピードファファイター同士というのは判りやすくて良いだろう。一応全勝は出来る可能性は高い見込みだ。

関係者用の貴賓席には互いの主神が座している。それと連合で地位の高い神々も。フレイヤ信者の男神共は締め出した。デメテル様は少し複雑そうだが、まあ私らが戦いを挑むだけの理由はあったので納得してくれた。

【ロキ・ファミリア】の面々は招待客として呼んだが、貴賓席には入りきらなかったので、そこを除けば一番良い席のあたりを譲った。貴賓席にはフィンさんとアイズだけを引き連れたロキ様も来ていた。

最近では眷属達に言い含められているのかロキ様がヘスティア様に喧嘩売ってくることは少なくなった。まあヘスティア様を見た目だけで侮り、バカにしてくるような奴は神でもなんでも問答無用で抹殺対象なのだが、

ロキ様は自身の無乳っぷりがコンプレックスで、低身長で豊かな果実を実らせているヘスティア様が憎くて堪らないらしい。不変の神が身体的コンプレックスを抱き、羨んでいるとか、そんな事情を聞いてしまったら、

あまりにも哀れすぎ可愛らしいので、怒るに怒りにくいのだ。ヘスティア様は自身の私闘に眷属を巻き込むような方ではないのだが、万一眷属同士の争いにまで発展したら酷いことになる。

だからフィンさんらに言い含められて喧嘩を売ることが減ったのだろう。ちなみにここに来た理由は「フレイヤの悔しがる顔が見たかった」らしい。

本当はジジイ達を呼ぶこともちょっと考えていたのだが、ロキ様らと諍いになることを考えると面倒になるので止めた。まあ水晶があれば充分だろう。

私は最終戦まですることがないのでホスト役を担っている。

 

「マリーたんこの葡萄酒(ワイン)めっちゃ美味いなあ!でも前に嗅いだことあるような…?」

 

「ああ、それディオニュソスの送還前に製法を聞き出してそれを真似たんですよ、流石に薄めた上で出す相手は選んでますけどね、神様以外じゃ高ランクの冒険者…ミアさんとかには普通に出してますよ」

 

「へえ、しかしアイツがよく口割ったなあ、脅しても口割るような奴やないやろ、どう考えても送還が免れる状況じゃなかったし…」

 

「そこはほら、アイツ自作の葡萄酒(ワイン)をまた飲ませて酔わせれば…」

 

「うへぇ…」

 

散々利用していた自作の葡萄酒(ワイン)に足元を掬われるとは…最期まで敗けっぱなしで搾り尽くされたわけだ。地頭は良いのかもしれないが別に神算鬼謀とかじゃなく、碌でもない神に対する敬意が皆無だから遠慮なしにそんなことが出来るのだろう。

自分も地上では眷属を大事にしている方だから善神のカテゴリに入れられ敬意を向けられてるのだろうが…これが天界時代と同じようなことしていたら、彼女に討たれるような運命もあったかもしれない。

こちらにも仕掛けるつもりの戦争遊戯(ウォーゲーム)についても気楽なものだ。こちらを戦力と見なし従えるつもりなら無駄に削るつもりはないのに加え、仲間にも無茶はさせないだろうし。

何より恐らく【ロキ・ファミリア(こちら)】に対して何が何でも勝とうという気概が感じられない。まあプライドもあるから普通に勝ちにはくるだろうが、「最悪黒竜討伐が成されればこちらに従うのも吝かではない」といった感じだ。

ファミリアとして未だ【ロキ・ファミリア(こちら)】が上だったのなら担ぎ上げて従うつもりもあったのかもしれないが、彼女自身の予想も越えてあまりにも早く戦力が集まりすぎて「あれ、これもうウチが最強だからこのまま統一した方が良くね?」

くらいの行き当たりばったりでの判断なのだろう。或いはリヴェリア達が最初に聞いていたように本来は5年後くらいを見据えていたのかもしれないが…【ヘスティア】の傘下というのは気に食わないが、それも黒竜討伐までらしい。

まあ「不甲斐ない」と判断したら傘下も解かない気らしいが。一強状態が続くと不健全な状態になり意識の高い自分たち上位層はともかく、

下の人間たちは胡座をかいて慢心するような状態になるだろうから、【ロキ・ファミリア】には競争相手であり続けて欲しいとのこと。「組織が腐る時は根本から」ということだ。

「【フレイヤ】にはこれ以上好きにさせておいても発展する見込みが少ないからここいらでテコ入れに踏み切ったのだ」と。

本来はフレイヤが余計なことしなければ、二強状態よりも今の「三大派閥」くらいが緊張感もあって丁度いいバランスくらいだという感覚らしいが…もう目障りなだけでこのままだと役に立ちそうもないから、「最低一回は潰さなきゃダメ」とのこと。

 

 眼前には薄めてもなお、濃厚で美味な葡萄酒(ワイン)が出されている。材料が揃っているとはいえ、口頭で聞き出した情報だけで神酒なんてモノを再現出来るのも彼女が才禍たる所以(ゆえん)だが。

これが正史(げんさく)通りエニュオによって【ロキ・ファミリア】にも多大な被害が出ていたようなら酒好きのロキとて「んなモンいるかボケェ!」と吐き捨てていたかもしれないが、

この世界ではマリーに完全にやり込められ被害もほぼ皆無なので、既に送還されてしまった小物なぞに含むところは特に無かった。まあそんな背景もあって相変わらずロキは「自分たちに喧嘩を売る」と宣言しているマリーが変わらずお気に入りだった。

 

「マリーたん、マリーたん最初の戦いについて解説してくれや、自慢の弟やろぉ?てかウチのベートも突っ込んでみたい組み合わせやなあ!」

「もう出来上がっちゃったよロキの奴…」

「はあ仮にも貴賓席なのに…ロキったら…」

「いざという時は君が酔いをはらってくれよマリー、それと僕からも聞くけど君の眼から見てあの2人はどうだい?」

 

「最低限の対策はしてきましたし…まあベルなら勝てますよ、アレンがレベル7になってきてたならベルの【試練】足り得たでしょうが…ベルは基礎アビリティの蓄積量が凄まじいですから、

アレンの方にも速度補正スキルでもあるっぽいからなんとか速度だけはついていけているかもしれないですが…」

 

───対戦場ではベルとアレンが向き合っていた。

…ベルは正直この戦いの意義を余り見出だせなかった。

「シルさんと黒竜討伐に必要なこと」と言われあれよあれよとこの場にまで来てしまったが…

ベルは正史(げんさく)と違ってシル・フローヴァ(フレイヤ)の事情などこれっぽっちも知らない。

マリーとアルフィア達が意図的にシャットアウトしてたからだ。正体を隠して弟に接触する胡散臭い女神など、

弟にあまり深く関わらせたくなかったからだ。豊穣の女主人で働くことにしたのも彼女を見極めるためだったのだが───

何より血縁者という本物の家族に恵まれたこの世界のベルは正史(ほんらい)より、ファミリア外との人間の付き合いが浅い。

正史(ほんらい)はない出会いに恵まれ、実力も大幅に伸ばせたが───

 

「アレンさん…貴方個人に思うところはないですが、姉さんへのちょっかいをこれ以上させないためにも推し通させてもらいます」

 

「待てお前…何か勘違いしてないか?」

 

女神(フレイヤ)のためにこの場に立ったというのに宿敵(あのおんな)のために戦いに来たと勘違いされるのは心外だ。

まあ確かにあの女も自身の身柄を賭けてはいるが───

 

「それでは、始めっ!」

 

【ガネーシャ】の審判が開始の合図をする。彼らも連合所属ではあるが、あくまで黒竜討伐とダンジョン攻略のための同盟だ。ファミリア間の争いならこれまで通り中立である。

 

「まあ知っての通り2人共足が自慢のスピードファイター同士なので…素人目には一番つまらない試合になるんじゃないですかね?なんせ殆どの人間には何をやっているか理解し難いでしょうし…」

 

闘技場の中心では絶え間なく2つの影が凄まじい速度で交錯している。ベルは剣を使っている。ナイフで槍を相手にするのは流石に無理があったからだ。これは確かに第一級以上の近接タイプでなければ何をしているか理解らないだろう。

 

「凄い…本当に…あの【女神の戦車(ヴァナ・フレイア)】と、互角に…」

 

「いやそれ以上だよアイズ。少し押している、恐らくパワーは上だ」

 

「本当に…強くなったね…」

 

アイズは少し寂しかった。アルフィアが来た頃には自分の手からは殆ど離れていたのは理解っているが、それでも寂しい想いは募った。動きのところどころに自分の教えが残っているのを見つけると嬉しくなるのだが、

大部分はアルフィアとマリーの教えに染まっている。隙になるような癖は全て解消されており、長年剣を学んでいたとしか思えないような動きだ。アルフィアに比べれば他者に興味を持ち、理解り合おうとするマリーは師としての資質は最高クラスだった。

武神の教えを冒険者の身体能力を活かしたものへと昇華させ本人らへより適合した剣技を産み出し教えていたのだ。歴では遥かに長いアイズですら教わる立場にしたほどのものだ。アルフィアもそんなマリーのやり方を見ていれば効率的な方法を理解ってしまう。

自分自身のことだけなら見ただけで理解出来てしまうのも彼女たちが【才禍】たる所以(ゆえん)なのだが。そんな者達に2人がかりで鍛えられていれば【才禍】の2人には流石に劣っていても元々高いベルの吸収力なら高い次元に行き着く。

何より戦争遊戯(ウォーゲーム)が決まってからはマリーが一度刃を交えた、アレンの槍術を再現したトレーニングを集中的に(おこな)っていたのだ。何なら念のためにレベル7のスペックでも相手にしたくらいだ。

対人戦の武器戦闘の対策なら見たものを再現することでいくらでも出来てしまう。これは【才禍】保有ファミリアのみの特権だろう。

昔のアルフィアではやる気も無かったが仮にやろうと思っても体調の関係で出来なかったことだ。ちなみに今のマリーは小人族(パルゥム)や大柄のドワーフくらいの体格くらいなら変身出来る。

なんなら「ザルド(おじさま)に変身してオッタルぶちのめそうかな」とかまで思いついたくらいだ。民衆に【暴喰】のイメージは悪いので流石に自重したが。

 

(チッここまでやるようになっていたとは…)

 

いい加減覗き見や尾行やらをされるのに腹を立てていたマリーによる情報封鎖がここにきて地味に効いている。

同じレベル6の剣士でもヘグニやヘディンともかなりタイプは違う。彼ら【フレイヤ・ファミリア】の団員たちは「対人戦の経験が豊富」とは言っても、所詮身内同士の争いばかりなので著しく経験は偏っていた。

自身とほぼ同速でパワーで上回る剣士など久しぶりすぎてほぼ初見に等しかった。オッタルは「オッタル」という生き物なので殆ど当てにならない経験だ。

何より───

 

(クソッさっきから嫌らしく痺れさせやがって…結構痛ェ!)

 

攻防の中で雷の付与魔法(エンチャント)らしきものを使ってくる。しかも無詠唱で。武器同士で打ち合っている最中(さなか)に使ってくるのだ。加えて金属製の武器伝いに伝わってくる。

こんなモノ防げるわけなかった。

 

(このままいくと───)

 

パワーで負けていることもあり、受け止めきれず徐々にこちらの速度だけが落ちてきている。加えて雷撃によるダメージの蓄積。

少し距離を置き助走をつけた突進をしようとすると…

 

福音(ゴスペル)!」

 

「ぐぁっ!?」

 

【サタナス・ヴェーリオン】で迎撃を行い全身に当ててくる。

恐らく奴らの魔法(モノ)より精度はまだまだ甘いが、間違いなく同一の魔法だ。【ファイアボルト】だったらある程度は無視して突っ込んで刺し殺せる自信はあったが、音魔法(こちら)は無理だ。

 

───その頃の【ロキ・ファミリア】側の観客席では…

 

「うん?どうしたレフィーヤ?あのベル・クラネルがアルフィア達の魔法を使ったことがそんなに不思議か?」

 

「いえ、それ自体はマリーに続いての2人目ですし同じ血縁者ということも考慮すればそんなに意外でもないんですが…マリーよりほんの少し発動が遅いような…それも単純な未熟さとかじゃなく妙な魔力の流れが…過程(プロセス)がある気がして…」

 

(よし予定通り2つ見せた…後は───)

姉の言葉を思い出す。「ベル…単純な削り合いなら貴方の方が基礎能力で上回っている分、有利でしょう。暫く削り合えばこのままだと勝てないと踏み向こうも勝負に出てくるでしょう。

【ファイアボルト】以外の魔法を2つ見せれば既に割れている【ファイアボルト】と合わせて3つ…もうそれ以上の魔法はないと思われ、誘い易くなるでしょう、だからもし奴がのうのうと長文詠唱を始めたら」

 

(「チョロチョロと目障りな猫に不可避の、ヴェルフのアレを叩き込んでやりなさい」…か)

 

こちらから距離を置いたことで、まんまと超長文の魔法の詠唱を始めている。一応並行詠唱は出来るらしいが回避に徹しながらが限界らしい。どちらかというと攻撃しながら出来る叔母や姉、リューさんの方が異常らしいが…

反撃が飛んでこないのなら今なら確実に入る。

 

「【金の車輪、銀の首輪】【憎悪の愛、骸の幻想、宿命はここに】【消えろ金輪(こうりん)、轍がお前を殺すその前に】───!?」

 

「【燃え尽きろ、外法の(わざ)】!【ウィル・オ・ウィスプ】!」

 

爆発を起こしたアレンが煙を吐きながら倒れる。油断なく念のためチャージしながら待機する。

やがてベルの勝利が宣言されると、構えを解いた。アレンはアミッドら救護班に運ばれていく。

 

先鋒戦───ベル・クラネルの勝利

 




ベルの第二魔法
眷属たちの物語(ファミリア・ミィス)

ネタに困ったときのコピー魔法。同一の恩恵持ちの魔法が使用出来る。起動詠唱的なものは不要。
リューさんと似ているけど今を生きている仲間達の魔法(もの)というのが大きな違い。
基本的に並行詠唱の適性は低いので詠唱の短い魔法しか覚えていない。
マリー版【ジェノス・アンジェラス】だけは血縁者故か相性が良く並行詠唱でも歌うようにすんなり紡げた。
英雄願望(アルゴノゥト)】との併用は出来ない。

ベル君のアルフィアの呼び方

  • おばさん
  • お義母さん
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