ベルの姉が「才禍の怪物」なのは間違っていない   作:イルイル

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第43話 報復戦争3 中堅戦「性能(スペック)差」

【ヘスティア・ファミリア】が早々に2勝してしまった。その実力にも懐疑的だった、観客の大半が思い知った。「彼らの実力は本物だ」と。

 

それでも長年オラリオの頂点に立っていたオッタルに期待する者が居ないわけでもないのだが。

レベル7と言えば文句なしに最上位クラスの冒険者なのだがマリーのレベルは8だ。

半端な玄人気取りは彼女の若さとここまで急激にレベルを上げてきたが故の隙を少し期待していたが、

本物の玄人らは「あの【静寂】と武神の教え子にそんなモノがあるわけがない」とまで予想していた。

 

「これで【フレイヤ】が2敗…おいおいどうなってやがる」

 

「【ヘスティア・ファミリア】…間違いなく本物だな。クラネル姉弟と【静寂】や【クロッゾ】だけじゃない…」

 

「しかも次は…」

 

「【爆炎(ばくえん)】…フィルヴィス・シャリア…」

 

「あの女はヤバいぞ…前にリヴィラに救援に来た時に広域魔法一発で殆どのモンスター共を消し炭にしちまった…近接戦闘も強い」

 

「【レベル7】も間違いなくフカシじゃねえ…」

 

「同じ7の【勇者(ブレイバー)】ならまだしも【炎金の四戦士(ブリンガル)】じゃ無理だろうよ…」

 

控室では…

 

「これで、2敗か…」

 

「まあアレはストレートに強すぎたな…」

 

「ヘグニのことも責められまい」

 

「さて我らの番か…というより誰にも勝つことを期待されてない気がするのだがな…」

 

「元怪人(クリーチャー)という話だ、何が飛び出してくるか予想がつかん。」

 

脳筋(オッタル)が『間違いなく俺より強い』って言っていたぞ」

 

「あのフィルヴィスとマリーベル自身が向こうの絶対の自信の根源なのだろうよ。残りの【氷姫(リュディス)】も先の2人以下ということはないだろう。少なくとも最低限ヘディン相手に勝ち目がある程度の実力はあるのだろうよ」

 

「マジで全敗コースあるなこれ…」

 

というかほぼ敗戦処理の貧乏くじだ。本当はオッタルが相手にすべきほどの使い手なのだが、向こう側の最強(マリーベル)相手を立候補してしまい誰からも反対は挙がらなかった。

当たり前だ。誰も絶対に勝てない奴(レベル8)など相手にしたくない。そして自分達は、特にヘディン達のように因縁のある相手がいるわけでもなかったので、雑に押し付けられた位置なのだ。中堅(3番手)は。

 

「そうならんためにも全力で()るぞ」

 

「何、格上殺しは誉れだ。勝てば確実にランクアップというのも良い」

 

「ああ、()るか」

 

「「「「()って()る」」」」

 

一方【ヘスティア】側の控室では…

 

「はあ…【猛者(おうじゃ)】とは言わずともせめてレベル6の同族(エルフ)のどちらかと戦いたかった」

 

正道(にんげん)に戻ってから実戦で初めての強敵かと意気込んでいたのに、実戦でマリーやヘスティア様にその忠誠心と実力を示したかったのに。レフィーヤにも生まれ変わった自分の輝きというものを見て欲しかったのに。

尚身内同士の模擬戦で散々暴れているので、その実力を疑う者は近しい者らには誰も居ないのだが。レフィーヤも普通に何回も視ているので彼女の現在の実力の程はよく知っている。

 

「ほらフィルヴィス様っ!今の貴女にとって【炎金の四戦士(ブリンガル)】でも役者不足なのは理解りますが、あんまり油断していると思わぬ反撃を喰らいますよ!?」

 

「同じ小人族(パルゥム)でもせめて、レベル7に至った後のお前とか勇者(ブレイバー)が良かったなあ…大人が子供を4人纏めて蹴散らすような絵面になるぞ…」

 

戦いになれば勿論本気は出すので、奴らに一矢報われるという展開はまずない。怪人(クリーチャー)の頃の性能(スペック)を引き継ぎ、尚且つ強化された今の彼女は、

アビリティ限界突破を繰り返したレベル7の頃のマリーにも劣らない性能(スペック)を持っていた。レベル的にはこれで4番手の実力者なのだからフィンが「絶対に戦いたくない」と思うのも已む無しだろう。

 

「マリーからの伝言だ…『10秒で片付けろ』だと」

 

アルフィアが眼晶(オクルス)からのマリーの指示をフィルヴィスに伝える。マリーやアルフィア達は、ガリバー兄弟には何も期待していなかった。

身内だけで固まったせせこましい連携、それでどれだけやれるのかと思えば4人がかりでせいぜいレベル6が1人分程度。

ハイレベル帯の本物の強者達には単独でレベル差を覆す程の切り札の1つや2つはあるというのに、奴らは4人がかりでその程度だ。彼らの名誉のために言っておくと、兄弟は充分才人で努力家でもある。

ただ、今現在レベル6以上にいる本物の天才である大手の幹部達と比べるとどうしても見劣りしてしまうのだ。【才禍】の2人のような天才を越えた鬼才達からすると「物足りない」という評価は必然のものだった。

「あの程度でよく【勇者(ブレイバー)】批判なんて出来るものだ」とまで思っていた。もう少し覚醒が早ければリリルカに任せて、彼女の踏み台にするつもりだったくらいだ。

対してフィルヴィスは最早、アルフィアを含めた都市中の実力者達が一目を置く強者だ。本人は自身の特殊な経歴とマリーのお膳立てによるズルだという意識もあるが、

【27階層の悪夢】が無く正道を歩んでいたとしても今と大差ない実力者になっていただろうというのがマリーの見立てである。「救助サービス」による活動で大分悪評も改善した。

一度奈落の底まで落ちたからこそ、今の憂いの無い恵まれた状況がよりその魂を美しく輝かせる。信頼を預けるに足りる真っ当に強く頼もしい仲間達、眩しいほど善良で仕えるに不足ない主神、

かつては何も知らないまま敬愛する主神に仕え尊敬に値する先輩達を追いかけていた頃を思い出す。それらは残念ながら儚い夢になってしまったが、世界の強大な闇を知った後でも、今の仲間達となら絶対に崩されないという絶対的な信頼と安心感があった。

今のこの場所を守り続けるためにもちょろちょろと目障りな【フレイヤ・ファミリア】には1回程度は失墜してもらわねば、な。何、どのみち自分の味わった絶望の半分以下だ。

そんなことを考えながらフィルヴィスが入場する。貴賓席にまず眼をやる。マリーとヘスティアに軽く手を振る。向こうも軽く手を振り返してくる。

続いて【ロキ】側の観客席。レフィーヤにも手を振る。向こうは気付きやすいようにかぶんぶんと大きく手を振り返している。可愛い奴だ。ガリバー兄弟は既に待機している。

正直パッと見区別は付かないのだが…青い鎧と槍を持ったリーダー格長男アルフリッグ…まずは、こいつだな。大鎚と黄色の鎧が…次男のドヴァリン、だっけか。後は纏めて落とせば良しだ。特に個人間の因縁等はないのですぐに試合が始まる。

 

 開始の合図と同時にフィルヴィスが特殊な歩法で一瞬で距離を詰める。短剣による斬りつけでアルフリッグの槍ごと身体を斬り裂く。既に詠唱も始めている。

 

「【(すさ)べ天の───」

 

続く蹴りの一撃でドヴァリンもふっ飛ばされる。

 

「「怒りよ】【カエルム・ヴェール】!」

 

爆散鍵(スペルキー)は使用するまでもないと判断し、雷を纏ったままの空いた左手で殴り飛ばす。残るベーリングとグレールも倒れていく。

 

「勝者フィルヴィス・シャリア!」

 

「瞬殺でしたね、まあ判っていましたが…」

 

今までで一番戦いの(てい)を成していなかった、酷かった。まあ2レベル差とは本来こんなものだ。連携だのなんだの言っても強いのは攻めてる間だけだ。

 

「ほぼ無抵抗にしか見えんかったな、てか今のフィルたんあんなつえーんかい…二つ名【爆炎(ばくえん)】で4つ目の雷魔法で倒すって…とんだ詐欺やなぁ~しかも手ぇ振った時の笑顔!めっちゃ可愛かったわぁ~はぁマリーたんとレフィーヤとでウチの所で百合百合させたかったわぁ」

 

「あの歩法は、もしかして”縮地”かい?」

 

「本当に物知りですね…」

 

「いや、昔の武術の師匠に、ね」

 

「まあタケミカヅチ様から教わったものを私なりにフィルヴィスに伝えました」

 

天界時代ならともかく今の身体能力ではタケミカヅチ様も完全再現は難しかったので、私もいつもの見様見真似は出来なかったから、口伝からなんとか練習して体得したのだが、おばさまは私のものを見て即再現してしまった。

いや、私達って本当にずるいな…未だにめげずに私を追いかけてくれるベルをちょっと尊敬した。

 

「取り敢えずこれでファミリアとしての勝敗は決まりましたが───ここで中止にすると誰もが萎えますよね」

 

フレイヤの表情はもう死んでいる。フィルヴィスのこと自体は評価しているようだが、この結果じゃあな。兄弟のことも見限ったわけではないのだろうが「まあ、こんなものよね」くらいの感じだ。

あの細身でオッタル並みのパワーで、リヴェリアさん以上の魔力、ベートさん以上の速度、ガレスさん以上に堅いのだ。現役のレベル7の中ではぶっちぎりで最強だろう。怪人(クリーチャー)の時とは比べ物にならない。

度重なる訓練でその桁外れの性能(スペック)に振り回されずに使いこなせるようにしたので、三流冒険者にありがちな隙もない。私でも同じレベルならあまり敵対したくないほどの理不尽さの塊だ。

 

「当たり前やーん元々最後までやるっちゅう話やったやろぉ?リュディスたんとマリーたんの勇姿も観たいんやわあ!」

 

「ヘスティア様?先程から無言ですが少しは喜んでも良いのではよろしくて?」

 

先程から黙ったままのヘスティア様に話を振る。

 

「ぷっはぁ…いやぁ皆が凄く強いのは知ってたけど、他所と真っ向から戦うのなんて【アポロン】以来だったし、あの頃とはもうこちらも相手も次元が違いすぎるからね。実際に勝つところを見るまでは安心できなかったんだよ」

 

「『もう私抜きでも充分に強い』と言っているじゃないですか、おばさまですら認めていますよ」

 

今回はそこまで焦るほどの重傷ではなかったので医療班にそのまま任せた兄弟達も運ばれていきフィルヴィスも退場していく。

ベル君のアルフィアの呼び方

  • おばさん
  • お義母さん
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