4勝出来た、か。ヘディンとリュディは一番力量差が無かったので少し不安だったが、タイマン向けの能力ということもありしっかり勝てた。
魔法で翻弄された後に剣での勝負の誘いに乗ってしまった。「剣のみ」の勝負と見せかけてしっかり
勿論リュディ自身はそんなこと一言も言ってないので乗せられたヘディンの方が悪いのだが。
彼らしくもなく唯一の身内相手には冷静でいられなかったのかもな。お陰で殆ど手の内を見せずにも済んだ。
ヘディン相手に勝ちを拾うのは雷が殆ど効かないアーシェをぶつけるのが一番手っ取り早いと思っていたが、どうやらそうでもなかったらしい。
「彼ら相手にストレートに4勝0敗…ここまでとは、ね。正直『黒竜倒すまでは君たちの傘下につく』と僕が言い出しても、今なら皆を納得させられそうだけど…それでも
「これで私達が『最強』名乗ってもこの先『まだ【ロキ】がいるじゃん』とずっと言われ続けることになります。それは気に食わないので、この際出来るところまで徹底的にやるべきでしょう」
まあそんなこと言ったら「互いに目の上のたんこぶが健在で実力的にどっこいどっこいだったのに「最強」の看板を掲げていた【ロキ】と【フレイヤ】はなんなんだ」という話にもなるが。
「唯一無二」でないのなら「最強を掲げるのに相応しくない」という価値感は別に不思議でないだろう。【ゼウス・ヘラ】の頃のようにトップ同士が蜜月ならともかく。
「はあ、君達姉弟が入っていればリリルカやあの四妖精も、レヴィスとアルフィアもこちらに来ていた可能性が高かったと思うと本当に悔やまれるよ」
「リリはどうだったんですかね【ロキ】所属だった場合のベルに声かけていたのかは微妙なんじゃないですかねえ…?」
「ぐ…零細だったからこその声のかけ易さという長所、出逢いということか…」
「さ、ここまできたからには完勝で締めますか」
そう言うや否や立ち上がったマリーは入場口の方へと足を運んで行く。
「【闘牛祭】やジャガーノートと斬り結ぶのも僕らは視ているがそれ以上の大多数の前に力を晒すのは【アポロン】の時以来ということになるのかな」
「まあそれ言うたらオッタルも久々ってことになるんやろうけど」
「所属派閥が大きくなれば抗争なんてそうそうしなくなるし況して
「フィンはどう見る?」
「オッタルでも勝ち目は無い…レベルが並んでいれば僅かに勝ちの芽は残っていただろうけどレベル8相手じゃそれも摘み取られた…523と855」
「?何がや?」
「ざっと思いついたオッタルを殺す方法の数と今使える魔法の数らしい、前者の数は大半が後者に依存しているのかもしれないが…」
「私以上にズルいよね…マリーの魔法…」
「レフィーヤより先に
「あんな派手に【連合】を立ち上げたのも3割くらいは自己の強化のためだろうね…」
「全て繋がってるってことかほんま恐ろしい子やっちゃ」
───
「リュディの魔法…ある程度は聞いていたが性能の半分も把握出来ていなかったということだな…」
「あれって1つしか使ってなかったんですよね?なんで【ヘスティア】の人たちの所にばかり無詠唱の無茶苦茶な魔法の使い手が集まるんでしょう…」
「さあな…それに無茶苦茶な魔法を使うのはお前もだろう?」
「マリーなんて数で私以上な上に無詠唱も持ってるんですよ?それに最近は…」
「おっと出てきたようだぞ…すっかり貫禄が出てきたな…さしずめ『新旧最強対決』といったところか、レベルが逆だったら見応えのある戦いになっただろうが…あの娘が遊ばなければ勝負は一瞬だろう。戦士としてのアビリティも異様に高いからな、
オッタルを倒す方法などいくらでもあるだろうよ…剣士としても魔道士としても…あの【サタナス・ヴェーリオン】は一般的な魔道士の魔法とはかけ離れてはいるが…」
「あの女ならその気になれば素手でも完封出来るだろうよ…」
エルフ師弟の近くに居たベートが口を挟む。
「ベートめっちゃボコられてたもんねー?」
「うっせぇ!テメェらもやってみやがれ!」
「アタシは何回か相手してもらってるよー?素手でも得物ありでも、本気出してはくんないし、魔法はあんま使ってくんないんだけどねー」
「最近のティオナの妙な成長は”ソレ”か…」
「アタシだけじゃなくアイズやレフィーヤもじゃん!アタシはまだアルフィアさんには相手してもらったことないのにさ、レフィーヤはエルフの人達に滅茶苦茶可愛がられてるみたいだし」
ティオナレベルでもマリー相手だと当然滅茶苦茶ボコられてしまうが
ちなみにレフィーヤはアルフィアにも結構興味を持たれていたのだがアルフィアのスパルタ教育はまだ無理だろうと判断されマリーに止められていた。そもそもアルフィアの魔法構成が一般的な魔道士からかけ離れまくっているので教えられることも少ないのだが。
というかつくづく敵対しようとしている相手にすることではない。本当に仕掛けてくるのか甚だ疑問だった。まあ彼女が自らの言葉を撤回することなどそうそうないだろうか…
リヴェリアはエルフ達の実力ならある程度把握していたつもりだったが、所詮
レベル6では4人がかりでも蹴散らされかねない。ここにマリーにアルフィアだのレヴィスまで加わったらもう悪夢でしかない。
今までなら絶対にしようとしなかった
勿論そんなことをした瞬間に、マリーにもリュディにもアーシェにも失望され、容赦なく叩き潰された後に、二度と友人に戻れなくなるだろうから絶対にしないが。
フレイヤ側控室では…
リュディスの魔法で治療されたヘディンはすっかりピンピンした様子で戻ってきた。
「済まなかったな、私だけでも勝ちたかったのだが…」
「いや、なんでそんなに元気そうなんだよ…」
「
「その
「まあ、そうだが…」
「負けた割には結構機嫌良さそうだよな…」
「まあ我らに比べれば戦いにはなっていたしな…」
そういうガリバー兄弟達もすっかりピンピンしている。そこまでの重傷ではなかった上に【ディアンケヒト】の治療班の腕が良かったからだろう。アレンは既に闘技場を出てしまった。
本当は勝ちたかったが妹の確かな成長を見れたことの嬉しさもあり、どっこいどっこいといったところだった。それにこれからこちらに施されるという「改革」にも少し期待していた。
言う事の聞かないバカどもの面倒を引き受けてくれるというのならヘディンとしては願ったり叶ったりだった。そんなこんなでヘディンは久々に重責から逃れた解放的な気分になっていた。
「オッタル、お前の番だぞ」
オッタルはずっと部屋の隅で不動で瞑想していた。集中するために外界の情報を完全に遮断し味方の勝ち負けすら把握していないような状況だった。敵は間違いなく今までで最強の相手だ。
【ゼウス・ヘラ】の頃はそもそも「敵」にすらなれていなかったので含まないだろう。【暗黒期】の時のザルドよりも今回のほうが力量差は大きいだろう。
ザルドはレベル7でもトップクラスの実力者だったが、毒によって弱体化していた。マリーベルはレベル8でも最強だろう。かつてのアルフィアのような病気もない。
現時点でもあの頃の【女帝】を食い兼ねない。まだ発展途上だというのに既に人類史上最強候補の一角だろう。
都市内では結構前から「彼女こそが次世代の最強だ」と推す声は挙がっていたが最近では「現時点でも最強じゃないか?」という声も挙がってきている。
自身の「最強の座」というものがここまで脆く儚いとは思っていなかった。マリーベルが色々と例外中の例外というのは理解るのだが、フィン達にも追いつかれてきている時点で己が不甲斐ないのは間違いないだろう。
まあ結局「繰り上がり」で得たような座だからとどこか納得もしてしまったが。奴の言う通り【
「【ヘラの後継者】か…違いない…相手にとって不足なし!」
急に眼を開けてそう叫んで立ち上がるとそのまま歩いて部屋を出ていく。
「大丈夫か?あいつ…」
オッタルもマリーより遅れて入場してくる。
「…お前は恨んでいるのか?オレのことを…」
「
他に候補もいなかったから
「節穴?妥協?」
「ええ、そうでしょう?1年足らずで私のような小娘に追い抜かれている時点でどいつもこいつも不甲斐ない」
周りの人間たちは会話の大半は理解出来なかったが、誰もが思った「お前と一緒にするな」と。現状同格以上のアルフィアとレヴィス、冒険者歴がほぼ同じベル以外の大半の人間が当て嵌まってしまう。
「あの方の眼が曇っていなかったと言うのなら今日この場で私を倒して証明してご覧なさい」
「言われずとも」
「
「!流石だな一目で理解るのか」
「もう私以上の腕の持ち主は鍛冶神だけですからね…」
「大枚をはたいて無理を言って作ってもらったのだ…不満か?」
「まさか!あの方は鍛冶師として顧客の依頼を受けて仕事をしたまででしょう。それにミスリル製だのウダイオスの黒剣だのを持ち込んでいたら剣ごとその首跳ばしてましたよ」
「フ…そのあたりを『斬れる』と言い切れるお前は剣士としてだけでも間違いなく当代…いや史上最強かもな」
勝つだけなら【サタナス・ヴェーリオン】を引き撃ちしているだけで充分だ。やろうと思えば簡単にそれで終わるだろう。それも一撃で。
だがそうする気はなかった。それでは何も得るものがなく誰も得しない。
「耳栓…用意出来なかったんですね。」
「ああ…【
「どうせ耳栓型じゃ不完全ですからね、少しの軽減が限界でしょう」
私達の「音」は物理的な破壊力を以って内臓をぐちゃぐちゃにして、骨を砕くような威力があるのだ。一番音に弱い三半規管だけを守れたところでなんの意味もない。というか耳の穴だけ塞いでも守りきれない。
本気で対策しようと思ったら音を完全に遮断する結界構築式の魔道具でもなきゃ無理だ。そこまで高度な物になると私以外で作れるのは
「まあ、今回はいつもの使い方はしませんからどのみち関係ないですよ『魔法剣士』として相手しますからね」
「有り難い…」
両者が構える。
「それでは始めッ!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
審判の合図と同時に裂帛の気合を掲げて雄叫びと共にオッタルが踏み込む。過去最速の踏み込みとも言えるそれは瞬間的にはアレンの速度も凌駕した。工夫のない愚直な正面からの突撃と上段からの振り下ろし。
そのまま無防備に受ければ如何にレベル8とて致命傷は免れない。オッタルの過去一番とも言える神速からの一撃を───マリーは正面からの抜刀術で迎え討った。
(絶対切断───)
【サタナス・ヴェーリオン】を
スパァン!と音がして
マリーはそのまま続く二の太刀でそのままオッタルに再び斬撃を放った。オッタルも折れた剣で受け止めようとするが、刀身の大半を失ってしまったことにより、
受け止めきれず今度こそ胸元に深手を負い血を吹き出しながら地に沈んでいく。
「勝者マリーベル!」
「見えたかい?アイズ?」
「ううん、でも何をしたのかは何となく…理解った」
種族として眼の良いフィンにはギリギリ見えた。「眼の前で対応出来るか?」と問われたら困るが。俯瞰できるほどの距離があるから視えたに過ぎない。
「一太刀目の抜刀術で大剣を
「やっぱり別の魔法使ってたんだ…2回目は刀が黒く染まってるように視えたから…」
「レフィーヤ…判ったか?」
「視えませんでしたけど2回斬ったのは判りました…それと恐らく別々の魔法を2回使ったのも…」
「『最近
剣士としての極まった技量に並ぶ異常な魔法発動速度だな、これもある意味魔法剣士の到達点の1つか。そもそも刀使いの魔法剣士が今まであんまり居なかったからな」
今の私ならいけると思っていたが
【
それで切れ味と射程を延ばしてオッタルを攻撃した。既におばさまのように「自身の手刀も刃」と見なせる高いステイタスと技量を持つ私だからなんなら素手でも使えるのだが。
ベル君のアルフィアの呼び方
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おばさん
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お義母さん