あの後───ファミリア解散と財産の没収が言い渡されたアポロンはそのまま追放された。
開戦直前までは都合の悪い記憶を失っていて調子の良いことを言っていたのだが…途中から記憶が戻ってきたのか青くなりだし、
「ジェノス・アンジェラス」を眷属が喰らった後は泡を吹いて倒れてしまった。お陰でミアハが診る羽目になり、決着も見届けられないまま起きた後に敗北だけ言い渡され、ヘスティアの沙汰が言い渡されるのも遅れてしまったのだが…
決着後に気絶していたアポロンそっちのけで未だ決まっていなかったマリーベルの二つ名の命名式が始まった。【城崩し】だの「城壁」と掛けた【
他にも物騒な名前が沢山候補に挙がったのだが…結局ヘルメスからの「これから確実に都市を代表することになるだろう英雄に下手な二つ名は付けられない」という援護と
と言う本人たっての希望を汲み取って【静穏】の二つ名が付けられた。まあその【静寂】が二つ名に合わない苛烈な女傑だったのだ。「無難だがそれもアリだろう」と結局その場は纏まった。
もう少し彼女の魔法に詳しければ【覇王】だの【
追放されるアポロンを尻目にヘスティアは最後にマリーベルからの伝言をアポロンに告げた。「外でもあんまりおイタが過ぎるようなら
外でやらかすこともあるまい。
そうして新たなホームを獲得しリフォームも終え、自身の私室と作業室、アルフィア用の部屋も確保し、リフォームをしてくれた【ゴブニュ】にそのまま教会の修復依頼を手配した、マリーベルは…
黄昏の館に訪れていた。
伝言でとはいえ、「ロキ・ファミリア相手に大口を叩く才能に恵まれ過ぎて調子に乗っている生意気な世間知らずの少女」だと思っていた。冒険者になってから2ヶ月程度の
世間知らずの
そうしていざ会ってみると…午前中に黄昏の館に訪問してきて、そのまま街を歩きながら話して、カフェで今もこうして話している。
「レフィーヤ先輩は凄いですねえ!レベル3で、レベル5以上の
「そんな…私なんて…アイズさん達にいつも頼り切っていますし…それにあの時も犠牲が出てしまったし…」
「───ごめんなさい、”それ”も知っていたのに迂闊でした。でも、レフィーヤ先輩のことを尊敬しているのは本当ですよ?」
なんか凄いべた褒めだった。悪いと思ったら素直に謝れる良い子だ。ううん、て、そうじゃなく!団長からも言われてるんだった、「何故普通に例の地下勢力のことを知っているのか?」という疑問だ。聞けそうなら聞いてくれと頼まれてるんだった。
ていうか口悪いなこの娘!?良い噂が多かったのに…
「あのっなんで彼らのことを知っているんですか!?」
「ああ、ヘルメスの奴から聞き出しました。ジジイの使いであるヤツが私に隠し事なんて出来るわけないでしょうあそこのファミリアの人たちは知らない仲ではありませんでした、
最近ですけど。通常の探索で亡くなったならともかく…明確に悪意のある”奴ら”は許せません」
「私の
「いえっ…そんなことはっ…この前の
「ああ、”アレ”ですか。まあ使い所の限られる曲芸みたいなもんですよ。第二魔法では特に…ダンジョンや市街では使いにくいし…私より最近仲いいっていう
「ええ、はいっ、最近私もようやく使えるようになったんですけどっ…フィルヴィスさんはとても素晴らしい同胞でっ…」
フィルヴィスさんを知っているのに悪い方の噂に流されている様子もない…この子は良い娘だ!
「そのっ…第一魔法と第三魔法って…」
「私の能力調査したいなら…一緒にダンジョン行きませんか?日帰りで行ける所まで…出来たら
「あっ…リヴェリア様は…寧ろ来たがると思います。今日は大丈夫なはずですし…」
──────
「…と言うわけなんですけど…」
「アタシもー!行きたーい!調査よりよっぽどおもしろそー!」
「私も…行きたい」
「はあ…仕方ない。向こうの方から来たというのなら良いタイミングだ。リヴェリアもずっと気になってたんだろう?近々行うつもりだった調査の前にリヴェリア達も彼女と交流を深めておいてくれ」
──────そうして私達2人とリヴェリア様と付いてきたがったアイズさんとティオナさんも加えて16階層までやってきた。
面子が面子だけにあっという間だったが、前衛のアイズさんやティオナさん以上に迅速な進行速度に貢献したのが、マリーの魔法だった(仲良くなって愛称で呼ぶようになった)。
モンスターが見えた瞬間に彼女の【
ベル・クラネルと同じ
【静寂】のアルフィアさんのことは調べた。もし彼女も例の防御魔法を持っていたら私じゃ絶対勝てないと思って戦々恐々していたのだがそれはなかったみたいだ。
彼女の魔法については「不特定多数に漏らさなければ幹部同士で共有するくらいは構わない」とあっさり教えてくれた。例のコピーの第三魔法についても。
「【エルフリング】は無理でしょう」とあっさり告げた。「でも他の2つはイケそう」とも。自分に使えそうかどうかの判断もすぐにつくらしい。
ついでに条件も教えてもらえたが、想像以上に条件がユルかった。私のモノより基本的に詠唱短そうだしズルい…
リヴェリア様に対しても「レベルが追いついたら教えて下さいっ」と普通に言えるのは凄い…
肝心のリヴェリア様が笑いながら了承してしまったから、私からは何も言えなかった。
多分他のエルフ達ならリヴェリア様の態度を無視して「無礼な!」とか「
私も彼女がどこまで羽ばたけるか見たくなってしまった。現時点で私よりも全然強いけど…
何で彼女ほどの使い手が例え表面上だけだったとしても私を敬ってくれるのか判らなかったが、彼女はある程度才能のある人物が判るらしい。
それが何の才能かまではすぐには判らないがとにかく「それ」の数とどれくら高いか判るらしい。
私は、才能の数でこそリヴェリア様に劣るがある一点だけはリヴェリア様の最高値にも優っているとも(恐らく魔法だと)。
ロキ・ファミリアはそのあたり、才能と人材の宝庫で評価が高いとも。そういった人間との縁を特に大事にしているとも。
というか
直接戦えば流石に負けるだろうが、これで今日は使っていないが回復魔法の引き出しに、アイズさん達が「凄まじい」と評する剣技まであるのだ。
やたらドロップアイテムが多いと思ったら「確率を上げる発展アビリティがある」とのこと。その有用性は計り知れない。
彼女は1人で何でも出来すぎる。鍛冶や医療、製薬にも手を出していていずれも高水準だという話まである。そのあたりは置いておいても、
彼女が1人いるだけでパーティの安定度が凄まじく上がる。私が魔法だけなら通用したように恐らく彼女もロキ・ファミリアの幹部陣とのパーティでなら現時点でも深層に通用するだろう。
「次の17階層…私1人で
「なっ…なんですってー!?あのベル・クラネルがぁーっ!?」
「レベルが上の相手をタイマンで下したなら不思議じゃないでしょうに…」
「やはり敵の大将を回復させたのは弟のランクアップを促すためのものだったのか…」
「まあそんなところでしたかね。あくまで状況が”ああ”なったってだけで他にタイマンに拘る理由もなかったから本当に負けそうになったら水差すことになっても割り込むつもりでしたけど。
いやー勝ってよかったです。いけるとは思ってましたけど『格上相手に絶対に勝てる』なんて無責任なこと言えませんからね」
「それじゃ君はこれからソロで階層主と戦うつもりなのか」
「リヴェリアさん…なんですかその眼は…アポロンの連中に出来たのなら私1人でも出来ないはずがないじゃないですか、言っておきますがあんな連中魔法封印しても刀一本で勝てなくもなかったんですからねっ」
「それにアレと似たようなのでレベル5クラスのモンスターとレベル2の時パーティでですけど
「はあ…」
「むーなんですかその溜め息はリヴェリアさんっ」
「いやアイズがもう1人増えたみたいに思ってな」
「ランクアップしようと思ったら1ランクだけ上の敵に挑む…のって何かおかしいですか?ソロに自信あるなら普通じゃないですか?」
「君は魔導士だろう…」
「魔導士がどうしてソロで弱いって決めつけるんですかっ都市の魔導士の代表とも言える貴女がそんなこと言っていたらソロで潜っている私が頭おかしいみたいじゃないですかっ」
「そもそも君はどうしてソロで潜っていたりしたんだい?弟たちは普通にパーティ組んでいるだろう?」
「それじゃあ逆に聞きますけど私がいるパーティといないパーティ、どれくらい差が出ると思いますかね?」
「まあ、かなり違うだろうな。ポーションも減らせるだろうし…」
「第一級の貴女達ですらそう感じたのなら私の力があることに慣れない方がいいんです。この前のような理不尽な試練でもない限り私は出張るつもりは今後もないです。
この前は自身の感情を優先して表に出て引っ掻き回してしまいましたが、最後の一騎討ちでベルが勝てたように本当ならアレも私抜きでもギリギリで乗り越えられる程度の試練だったと思っています。
私が出る時は今のあの子達では本当にどうしようもない相手…例えば今も覗き見しているあそこの【
敢えて周りに聞こえるようにデカく言う。こちらにリヴェリアさんがいるからか焦っているふふっざまぁ。
「まあアレじゃなくてもアイズさんが【
その時にレベル3のままだったら流石に逃げるしか出来なくなるから、レベル4以上なら正面からでも勝ち目あると思うんですよね」
まあヘディンの方はフリュネと違って同レベル以上になるまでは正直相手したくない。
「「「ああー…」」」
(というか逃げられるんだ…)
経験のあるアイズさんや話を聞いているだろう他の面子も納得したような声を上げる。
まあヘディンの私を冷静に測ろうとする無機質な視線は、フレイヤの中身まで見通そうとする無遠慮で舐め回すような気持ち悪さがないからマシだ。開き直ってメガネに罅が入りそうなくらい思いっきり暴れてやろう。
そうこうしている内に【嘆きの大壁】にまで辿り着いた…
「それじゃあこのへんで待っててください、ここからは私1人でいいので」
まだ討伐されていないゴライアス、ベストタイミングだ。一人駆けるマリーベルに吼えながら襲いくる
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
「
「グガッ!?」
サタナスヴェーリオンの甲高い音がしてゴライアスの咆哮が黙らせられる。
身長7
そして両手にしっかり刀を持ちその足を削っていく。
「
ずっと連呼し続けている。上から
その必要がない場合は蹴りに魔法を纏ったまま相手の足に叩き込んでいく。ゴライアスの足は裂傷と打撲だらけで真っ赤になっていった。
「すっご…」
ティオナは唖然としながらも目を輝かせている。
「あれが『才禍の怪物』…」
「いや…体調に不安要素のあったアルフィアはあんな軽快な戦い方はしなかった…」
「それじゃあ…」
「間違いなくあの娘はアルフィアも超えるだろう…」
一方レフィーヤは自身のトラウマでもあったゴライアスを魔法を併用した超
自分の後輩のはずの同じレベル3のマリー。マリーは自分のことを「剣士」とも「魔法剣士」とも呼ぶことはない。頑なに「魔導士」を自称するのだ。
「魔法以外の全てがオマケ」とも言っていた。「他は魔法を活かすためのサブと」と…そう言うのだ。魔導士…?
このままでも削り殺せそうだけどそのままじゃ芸がないと思ったマリーベルは1つ手札を切ることにした。
さっきからヘディンだけでなくフレイヤの視線も感じるし…楽しくて気になんなくなってたけど…どうせおばさまの手札はある程度知られているし…私もある程度共通しているのは予想されているだろう。
「【炸響(ルギオ)】」
そう唱えると瞬間、大爆発が起こる。ゴライアスの上半身がふっとび脆くなっていた足も消し飛び、
「やりましたー!」
ニッコリVサインするその
発想は足でかめはめ波のやつ
モーションは嵐脚とかだけど。
でも斬撃ではなく砲撃
ヘルメス・ファミリアとはヘルメスのお付きとして来た団員との面識があったから。
アスフィはセクハラジジイと会わせた場合の胃の状態を慮って面識なし。
「ジジイ」呼びは親愛の表れです。でもベルの教育に悪いのはアルフィアとの共通認識。
慕ってはいるけれど「なんであんなに素晴らしいおばあさまという方がいながら浮気するのか」
という考えからスケベな部分を蔑んでいる。