両雄は向き合っていた。互いに凄まじい威圧感だ。
オッタルとアステリオスは闘技場で再会を果たした。
「また、貴方に出会えた感謝をマリーに…
「!…聞いてはいたが実際にこうして喋っているところを見ると驚くな…成る程お前はオレの弟子だったわけだ…」
「ああ…今日は胸を借りるつもりで行くぞ【師匠】…」
「クッ…ハハハ…思えば団長という立場になってから結構長いというのに誰かにそれなりの期間モノを教えたのは…お前が初めてだったかもな…」
「それは、光栄だ…既にマリー達の世話になった時間のほうが長いだろうが…貴方の教えは確かに自分の中で生きている…」
「それが巡り巡ってオマエほどの
そうだ。自分は何を「敵がいない」などと腐っていたのだろうか。敵がいないなら自分で育てれば…いやこれは何かおかしいか。
アルフィアに「既に全盛期のザルドは越えた」とお墨付きを貰ってもどこか納得は出来ていなかったのだが今日ここでこいつを倒せれば長年の鬱屈とした想いに終止符を打てるかもしれない。
「実際に戦えば奴にも切り札がある以上勝負がどう転ぶかは判らんが地力では間違いなく上回っている、10回戦えば5回以上はほぼ確実に勝ち越せる程度にはお前は強い」とも言われたが…
マリーはそれを面白くなさそうに共に聞いていた。そもそもマリーは
いかに【才禍】といえども恩恵すら受けていない頃に彼の正確な力量など量れるはずもない。どこかでオッタルが全盛期のザルドよりも既に強いということは理解っていたのだ。
その程度には認めている。
「では行くぞ!」
「来い!」
アステリオスから仕掛けオッタルが迎え討ち、2人の大剣同士が衝突する。
中心でドゴォン!と凄まじい爆音がして衝撃波が発生する。
衝撃波だけでそこいらの冒険者が卒倒してしまうような衝突だったが、観客席は結界でしっかり守られていた。
今日の観客は
アダマンタイトで広くコーティングしていた地面に罅が割れてめくり上がる。
マリーは「オリハルコンじゃなきゃ駄目かなーいや流石に勿体ないわよ!」とかそんな益体もないことを考えていた。
「前より強くなっているね…凄まじい成長速度だ…」
「【彼ら】のツートップの片割れですから」
「アレと同格がまだ居るのかい…」
「フィンさんの立場じゃあの子達を認めにくいのは理解りますが…有用性は伝わりましたでしょう?『組めない』と言うのなら【ロキ】は不参加で…」
「待て待て待て待てまず幹部だけ呼んだのは”そういう”コトだろう!?早とちりはしないでくれ!」
メリュはなんか
ちょっとだけ【
更に私が培養した
更に深層にカメレオンみたいなドラゴンがいたことによりそれを食べたら肌の色を擬態出来るようになり、元々あった形状変化の能力も強化され、額を隠せば完全に人間に化けれるようになった。
折を見て黒竜の細胞も与えるつもりだ。私が与えた腕に取り付ける双剣も使いこなしているし、最近はバイザーで顔を隠して勝手によく会いに来る…
まあ空飛んだりしなきゃバレないから別にいいかと思って見逃している。モンスターということはバレていないが冒険者の上位陣には只者ではない、ということくらいまでは見抜かれている。
シャクティさんにも聞かれたが、彼女は
「というかこの
「ハ?」
「メリュ…自己紹介しなさい…少し
「ハイッ、初めましてブレイバー様、ワタクシは最強の
さっきまで他には見向きもしていなかったのに私が命令するとフィンさんに向き直る。喋りながら隠していた気配を晒す。レベル8以上の力の圧迫が周囲に広がる。
何事かと戦いを観戦していた面々もこちらを注目する。
私とフィンさんが居た所なので、私の気配と勘違いしたのか、すぐ注目がオッタル達に戻る。
有力な冒険者、特に【ロキ・フレイヤ】の冒険者の情報は伝達済みなので、フィンさんのこともすぐに判ったメリュは一応敬意を向けている。
純粋な戦闘力は自身以下でも、実力者だと認めたのだろう。戦闘力だけを人間の評価基準にするのも良くないんだけどねえ…
「最強」とは言ったが現状アステリオスとのツートップだ。メリュはスピードタイプで空中機動も出来る。
私が与えた武器も使いこなしており、切れ味もヤバいので、滅茶苦茶強い。ビームに加えてドラゴンらしく強力なブレスもあるのでどの距離からでも強い。
「ヴモオオオオオオオオオオオオ!!」
「うるああああああああああああああああ!」
おっといつの間にやら戦いが佳境に入っていた。
お互い耐久力には自信があるだろうが1発でもマトモに受けたら、部位欠損の深手か或いは即死だろう。
どちらも力自慢だが、力に頼り切った「力任せ」ではない。
マトモに受ければレベル6以下なら即死しそうな攻防が音速に近い領域で続いている。
そんな中でも確かな”技”と”駆け引き”の応酬がされている。
アステリオスを鍛えたのは正解だった。
元々パワータイプの冒険者でもそうそう届かないほどの膂力があったのだ。しかも速い。
そこに”人の技”と判断力が加われば、まさにその力は天下無双とも呼べるだろう。
あんまり強くしすぎるとベルに勝ち目が無くなるという懸念もあるのだが。
「ヴムゥン!」
「うぉ!?」
ドゴォンという轟音が響いて観客席の透明の壁にオッタルがふっ飛ばされて打ち付けられる。
低レベルの冒険者では近くにいただけで卒倒しそうな衝撃だが結界内は安全だ。単なる堅い壁なので、触れただけでダメージを受けるとか無い。まあ勢いよくぶつかれば当然痛いが。
「【
使ったか…だが、恐らくそれだけでは通用しないが…そこからどうする?
「…!」
「「獣化!?」」
「ここでか…」
「【ヒルスヴィーニ】!」
詠唱をし切った後の、僅かな待機状態を利用して獣化を発動させた。
獣化状態でも理性が完全にトぶわけじゃない。変身後に最後の魔法発動のためのワンワードを紡ぐのは難しくないだろう。
2つの強化が齎すパワーは一時的にレベル2つぶんくらい強化されるだろう。
「「「「「え!?」」」」
「「「マリー!?」」」
既にアステリオスの数秒後の未来を幻視したマリーは詠唱を始めていた。予想通りにオッタルの最強の一撃が入りアステリオスが消し飛ぶ。
「【ディア・オルフェウス】!」
「俺の勝ちだああああ!」
寡黙なオッタルが珍しく腕を突き上げて勝ち名乗りを上げる。背後では蘇生されたアステリオスが悔しそうにしていた。
──────
オッタルがレベル8になった。フレイヤには礼を言われた。「最近自分の子達が前より輝いている」と…
まあオッタルは言わずもがな、アレンはアーニャさんと仲直りしたことによってか、動きのキレや気迫が増した。少し前までの不貞腐れ駄猫のままだったら捨て置いたところだが、今のあいつなら私が手ずから鍛えても良い。
アーニャさんは「レベル5じゃまだまだ雑魚だな」と(頭を撫でられながら)言われて、それを真に受けて未だレベル6を目指して鍛え続けている。やっぱあいつベートさんの精神的双子かなんかか…?
あの魔法強力だけど、魔法や魔道具でカバーしないと、絶望的に集団戦闘に向いていないんだよな。最近は腹筋を多めにしたり、ボイトレとかもさせている。拡声の魔道具とかも使えば黒竜にもワンチャンあると思う。
まあ流石にアーニャさんが6になるより先にアレンが7になるだろう。ヘディンとヘグニもまあ理解る。長年気にしていた身内の行方も判り、今は身近でケツを叩かれているのだ。ヘグニはランクアップまでした。
「ヘディンやアレンが少し柔らかくなった」とは周りにも言われている。ヘディンは
私とフレイヤの関係は悪友くらいの関係に落ち着いた。というか私がそれくらいの距離感を希望した。ロキ様とフレイヤくらいの関係を、と。
ちなみに
ロキ様は気さくだから
天界での”やらかし”が大きすぎて、大抵は「こいつなんか企んでんじゃねえだろうな!?」と警戒されてしまうらしい。まあそこは過去の身から出た錆なので私でもどうしようもない。
【ロキ・ファミリア】は正式に連合入りした。まあ人類の力を結集するなら彼らが居ないと始まらないだろう。アイズもバロールを討伐してレベル7になったので私から
後々に彼女用に調整した剣もプレゼントするつもりである。ベートさんはプライドより強くなることを優先したのか反対しなかったらしい。
最近は私に負けることも構わなくなってきたのか、普通に挑んでくる。私がすることは単純だ。
相手と同じような得物を用意し、相手と同じような戦法で、より洗練された戦い方を、新しい技も混じえながらするだけである。
明確な隙があれば徹底的にそこを突く。レベル差によるスペックのゴリ押しにはならないように気を付ける。
それさえしていれば向上心のある者なら勝手に自身で修正していき、より動きも洗練されていく。
というかアイズあたりならまだ口での
元々
私のはもう少し手心があるだろうが似たような方法を取っているわけだ。複雑で繊細な技は使えないが、全く技というものがないわけではない。とはいえかなり力任せのスタイルだが。
多分ロキ・ファミリアのレベル7の第5号はティオナかな…素直な気質なので、ティオナでも参考に出来る振り方をしていると「凄い凄い」言いながらマネして吸収してしまう。
アビリティもどんどん上がるので、もうティオネさんより普通に強いだろう。
最近は【フレイヤ】の強化に注力していたが当然、自派閥の強化も忘れない。ということでもう何度目かになる遠征、今回の第一目標はフィルヴィスのランクアップである。
今回の戦いは「レベル7から8へのランクアップの参考例に」と【ロキ・フレイヤ】の上位陣にも見せている。倒し方そのものはあまり参考にならないだろうが。
70階層まで行くのは禁止されているので、目標は当然バロールである。レベル6が7になるのには丁度いい相手ということで最近は狩られまくりで大人気の哀れな
レベル7でも特に強いフィルヴィスがただソロで倒すだけではランクアップは無理だろうが、そこは
私は1人寂しく48階層に残り目標のポイントで待機する。
「【祝福の禍根、生誕の呪い、母を喰らいし我が身の原罪、鳴り響く天の音色こそ私の福音───響け、聖鐘楼】【ジェノス・アンジェラス】!」
轟音がして48階層に大穴が空く。前の時に【レア・ラーヴァテイン】を使ったのは【ロキ】が視ていたからであり、通常は構造物の破壊はこちらの方が楽だ。余波だけであっついしアレ。あんま好んで使う魔法じゃない。
ジャガーノートが発生したことも確認して、大穴に飛び込んで49階層に向かう。私を追ってジャガーノートも飛び込んでくる。結構手加減したが今の私が本気で撃つと軽く3階層くらいぶち抜いてしまう。なのでかなり抑えた。
降りた先ではフィルヴィスが既にバロールと対峙していた。そしてフィルヴィスとすれ違うように駆けて後方にいた仲間の所まで退避する。
ちょっと有り得ないレベルでの最悪な
ジャガノートがフィルヴィスに襲いかかろうと追ってきて襲いかかる。フィルヴィスが素早く短剣を抜いて応対する。
階層的にリューさんが戦った時のジャガーノートと強さは大差ない。斬りかかってくるジャガノートの斬撃を凌いでいるとバロールがその背後からごんぶとの
そのままだと巻き込まれてしまうフィルヴィスは射線上にジャガーノートが被るように退避する。
ジャガノートに当たった光線はそのまま跳ね返されバロールの身体を抉り深手を負わせる。周囲の壁にも穴を空ける。
ジャガノートは首を傾げながらバロールを一瞥するがすぐにフィルヴィスに向き直ってまた斬りかかった。
フィルヴィスは流石だ。レベル差もあるからリューさんの時より余裕で凌いでいる。
そして懲りないバロールの第二撃が準備されようとする段階で詠唱に入る。
「【闇よ
「【ダーク・ロアー】!」
大きくジャンプしてジャガノートを巻き込まないように精霊魔法を撃ち出す。闇の砲撃が、バロールを
着地の最中に斬りかかってくるジャガノートの斬撃を短剣で受け止め、少し吹き飛ばされて着地する。
そして再び白兵戦になるも、詠唱をし出す。
「【盾となれ、破邪の
魔法のバリアを自身の前面に展開してそのまま───
「「「「「体当たりしたァ!?」」」」」
ジャガノートがふっ飛ばされて壁際に打ち付けられる。そしてそのまま再び体当たりして壁とサンドイッチにするように押し潰す。
そしてジャガノートも灰に還っていく───
本当に強いな。今のフィルヴィスは、高い
帰還後はフィルヴィスもレベル8になった。
ベル君のアルフィアの呼び方
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おばさん
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お義母さん