ベルの姉が「才禍の怪物」なのは間違っていない   作:イルイル

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第52話 インターン1

「それじゃメアリーのことよろしくね、マリィ」

 

「ウン、ありがとウ!マリーベル!まタきてネ!」

 

数の多い異端児(ゼノス)同士でも種族まで完全に一致することは滅多にない。それだけダンジョンのモンスターの種類が豊富ということなのだが。

同じ母(ダンジョン)から産まれ、同じような理性を持ち、言葉を交わせ、種族まで同一ならそれは「姉妹」とも呼べるだろう。

以前から眼晶(オクルス)で交流はさせていたため、ずっと直接会える日を楽しみにしていたのだ。

 

「それじゃあ次迎えに来るときはマリィも一緒にメレンに連れて行くから…」

 

「ウン!皆にお別レは言っておくヨ!」

 

「いつかは…皆が堂々と地上で暮らせるようにするから、それまでは…ごめんね…」

 

そうして私は巨蒼の滝(グレートフォール)を後にした。

 

─────────

 

 

「レフィーヤそっちはどう?【インターン】…そっちも今やっているんでしょう?」

 

レフィーヤとマリーは2人でお茶していた。フィルヴィスが居ないことも偶にある。欺瞞だらけだったとはいえ彼女もなんだかんだ元団長なので、「そういった仕事」が回る場合もあるのだ。

 

「『例年ほど黄色い声を上げられない』ってロキがしょげていましたよ…今来ている子達も貴女に関する質問ばかり…」

 

「あっはっはまあ学区にも配信していたからねえ使い魔使って水晶送り込んだし…貴女恥ずかしがって私が誘っても断っていたじゃない、アレで顔売っていれば少しは違ったかもよ?

深層配信は、外じゃバルドル様達学区の神々とレオンさんしか視ていないだろうけど…上層や中層は誰でも視れるようにしていたみたいだし、外の方でも私は先生に近い扱いらしいし?」

 

「まあ前までの【フレイヤ】しか対抗馬が居ないような状態じゃ緊張感無さすぎて今くらいのほうが気合い入るでしょう?【4位】さん?」

 

「ぐ…【フレイヤ】どころか【ガネーシャ】以下ってのは流石にって皆さん怒っていましたよ?」

 

「だから探索系ファミリア用に、【ランキング戦】なんてものをわざわざ設けたんじゃないですか、悔しかったら【フレイヤ】に挑戦すればいいんですよ。それとも私が貴女達より少し長く監修しただけの連中(フレイヤ)が恐いですか?」

 

【ランキング戦】…要するに同ランク内でこちらの基準だけで序列が決まっては不満が溜まるだろうと、設けた戦争遊戯(ウォーゲーム)行使権である。

勝利すれば順位が変動する。同一ランク内なら下位のファミリアが上位に挑むことが出来る、など色々ルールは作った。

従来ほど大きな物は賭けられないが…【デメテル】や【ディアンケヒト】に直接的な戦いを挑まれても困るので探索系限定なわけである。商業系用にお祭りの売上で競わせるとかやってみても面白そうかもな…

使えるのは半年に1回のみ。【フレイヤ】はこれまでの懲罰も込めて1年は使えない。消耗している時とか狙って挑むような卑怯なことをされても困るので、こちらが認可しないと通らないようにはしているが。

ちなみに連合のトップの総長は私、副長はおばさま、フィンさん、オッタル。条件は「Sランク以上の派閥に所属かつレベル7以上」。副長以下の幹部は各派閥の代表者、大抵は団長が務めている。

もしくは「レベル6以上」の人間。現状レベル6以上の団員数ではウチがトップなので、ここでの力関係も、実際の戦力が反映されるわけだ。「レベル5以上」なんてしたら【ガネーシャ】と【フレイヤ】がやたら力を持つことになるのでこの基準にした。

普通なら権力が【ヘスティア】に集中しすぎて問題があったかもしれないが、まず高レベル者であることが条件なので、権力に溺れるような俗物はまず食い込めないので問題ない。

連合は私という圧倒的なトップがあってこその組織なので、【ヘスティア】の権力が強くなるのもある意味自然だ。もし私になんかあった場合はフィンさんがトップを引き継ぐことになるだろう。

 大分話が逸れたが【ランキング戦】のことでレフィーヤを煽ったが、今の【ロキ】が【フレイヤ】に挑むのは勝ち目が薄くて出来ないだろう。

【フレイヤ】はレベル8が1人にレベル7が3人に増えた。どちらかだけだったらまだ勝ち目があったが、この2つが揃っている現在【ロキ】でも勝ち目は薄い。

【フレイヤ】の幹部がレベル6のままだったらオッタルをレベル7が3人以上で囲んで、後は各個撃破でどうにかなったが、レベル7が他に3人もいるとそれも厳しい。

レベル7相手に速攻で落とせるほどの人材までは【ロキ】にも居ないのでレベル7相手に手こずっている間にオッタルと合流されたら、その場は「詰み」になる。

【フレイヤ】ほど治癒士(ヒーラー)に恵まれていないのも不利な理由の1つだ。自衛力が高く回復力も範囲も広いヘイズは【ロキ】をしてもかなり厄介な相手だろう。

最近は私が仕込んでもいるので、防戦に徹すればベートさんやティオナ相手でも数分保つ。苦労して倒した幹部をゾンビのように復活させられれば最悪だ。

まあウチは私にリュディ、リューさんまでいる上に今はベルも使えるので、大分回復魔法には恵まれているのだが。やはり現幹部以外が強くなるか、ベートさん、ティオナ、ティオネさんの3人がレベル7にならないと厳しいか。

アキさんが上げられるのにレベル5になるのを躊躇しているらしいが、「アビリティ上がりきってるんならとっとと上げろよ」と思ってしまう。幹部入りに気が引けるなら「レベル6まで待ってください」とか言えばいいのに。

まあ、そのあたりより一番手っ取り早いのはレフィーヤが奮戦することである。魔法収集にも付き合ってあげたことによってかなり強化がされているし、レベル以上の活躍をすることが出来るのはいつだって強力な魔道士だ。

レベル7連中にはもう厳しいだろうが、当たればお笑い三等兵(4兄弟)程度は食えそうなものである。

 

「それで、そっちの子達はどんな感じなの?」

 

「個々の能力は高い子達ですよ、レベル3が2人もいますし…ただ少し(はや)り気味というか焦っている感じもしましたけど…『黒竜早く倒さなきゃ!』って強く思っているみたいで…でも貴女の話をすると目を輝かせてましたよ」

 

「ふぅん、じゃ最後の方にサービスで私が顔出してみるのも良いかもね?」

 

「…そう言えばアルテナでのこと学区でも有名になっていましたよ『たった4人で国を潰した』って…私もフィルヴィスさんもフェルズさんも殆ど何もしていないのに…」

 

「『潰した』って…私はあの馬鹿神送還しただけで普通に国は健在でしょうに…」

 

「私を指さして、『一国を滅ぼした【千の悪魔(サウザンド・デビル)】だ!』とか、あそこまで畏怖されるのは初めてですよ…マリーやフィルヴィスさんならまだしも私1人じゃ国を滅ぼすほどの力なんて無いのに…」

 

「まあそのへんはきっちり否定しときましたけど…でもあの超巨大火球(ファイアボール)は大多数に目撃されていたみたいだから…少なくとも『国を滅ぼせる力はある』という認識はされてましたよ…」

 

「何を今更…外では精強と見られているラキアの軍もレベル3の頃の貴女の魔法でぽんぽん吹き飛んでいたじゃありませんか。小国ならレベル5くらいでも、大国と呼ばれるような所もレベル6が1人で国家なんて簡単に滅ぼせますよ」

 

まあ実際は体力的な問題とか考えたら2人以上はいないと厳しいだろうが。

 

「貴女も【こちら】に踏み入れつつあるんですから少しずつ認識をアップデートしていきなさいな」

 

「むー私の方ばかりでそっちの方こそどうなんですか、まさか貴女自ら面倒を見ているとか…!?」

 

「私は最初の方だけで後はベルやリリ達に任せてますよ…そろそろ人の上に立つだけでなく、【導く】ことも覚えたほうがいい頃ですからね…」

 

「ベルやリリ達って…もうあの2人もレベル6ってこと考えると滅茶苦茶豪華ですよね」

 

「ウチは急造の新興だから中間層少ないのよ…ヴェルフや(ミコト)、亜夜達はレベル3だけど…学区がレベル2も多いこと考えると舐められないように4以上は欲しいのよね」

 

「新興なのになんでレベル6以上がオラリオで1番いるんでしょうかね…そういえば教会の近くにまた新しい建物造っているみたいですけど…」

 

「ああ、2号館のことね…最近は人数増える勢いヤバいから、あの結構デカいホームでも少し不安になってきたから造らせてるのよ…」

 

「資金力おかしいですね相変わらず…」

 

「そっちこそ魔光弓の儲けの半分、そっちに入っているから、ロキ・ファミリア団員の個人資産ではトップじゃないの?」

 

「う…皆にも結構羨ましがられています…」

 

ついでに言えばロキ・ファミリアで幹部以外でもプライベートでマリーと付き合いがあるのはレフィーヤだけなのでこの繋がり自体羨ましがられている。そこで変に嫉妬に駆られる者が出ないのはロキ・ファミリア全体とレフィーヤの人柄の良さ故なのだろうが。

入団後に幹部の第一級冒険者の先輩たちに脳を焼かれるのがロキ・ファミリアの新入団員の一種の様式美なのだが、ロキ・ファミリアは今や幹部含めて全員がマリーに脳を焼かれている。

団長(フィン)ですらそうなのだから、ティオネからすれば恋愛対象外とは理解っていても、未だ距離感が微妙なままのもそのあたりが理由なのだろう。

 

「ちなみに私はスカウトされたわ…教師として…『【ダンジョン完全攻略後】なら考えておく』って返しておいたけど…」

 

「流石というかなんというかそれだけの【成果】も上げてますからね…」

 

「それで、ウチに来た子達ですが…まあわざわざバルドル様達の指名でウチに預けられただけあって個々の能力は普通に高いですよ、皆レベル2だし…」

 

「歯切れ悪いですね…そっちもなんか問題あったんですか?」

 

「うんまあ…」

 

数日前──────

 

「初めまして、落ちこぼれの第三小隊諸君、貴方達のことはバルドル様とレオンさんから聞いているわ。私の方はあんまり必要ないだろうけど、一応自己紹介しとくわね、

【ヘスティア・ファミリア】副団長【覇王(オーバーロード)】のマリーベル・クラネル、【黒竜討伐連合】の総長よ。レベルは9、まあ当然のことながらこの時代の最強の1人よ」

 

「貴方達のことはもう大体把握しているわ、個々の能力はそこそこだけどチームワークが壊滅的な残念集団って」

 

「あ、言っておくけどそのへんはお二方が直接言っていたわけじゃなくて他の子達にも聞き込んだ結果よ?」

 

「ドワーフのイグリンに、ダークエルフのレギ、小人族(パルゥム)のクリスティア、それにハーフエルフのニイナ・()()()()…」

 

レギはなんだかそわそわしている。()()のことか…やはり気付いていたか…

 

「レギだけ残って、貴女には話があるから、それが終わったらニイナもね、終わった後のレギに呼ばせるから、各々さっき案内した部屋に戻ってて」

 

私が指示すると各々が部屋に戻っていく。

 

「さて、レギ…貴女が気になるのは、同族のアーシェスのことでしょ…?」

 

「あの方は闇妖精(われら)王族(ハイエルフ)…間違いない」

 

「本人からすれば『領地も皆無で、臣民すら居ないのにもし王族なんて名乗っていたら滑稽』だそうよ?」

 

「『私は【地上で今現在で一番大切なこと】を忘れて同族に望まれたわけでもないのに『一族の再興だ』と息巻いているどこかの勇者殿とは違うので、【黒竜討伐】が成された後は、自身の【血の責任】についても考えてみようと思っています』…だそうよ?

彼女の考え方は個人的にはリヴェリアさんやフィンさんよりよっぽど尊敬出来るし、仲間達もリヴェリアさんも肯定しているわ…」

 

「う…じゃあ、【その時】までは私1人だけでも傍にお仕え…」

 

「貴女()()が?たかだがレベル2で連携も禄に出来ない今の貴女じゃあ邪魔にしかならないわよ、今の同格の同僚たちやリヴェリアさんやヘグニ達と居るほうが余程有意義ってもんだわ」

 

「ぐ…四妖精に…【黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)】に【九魔姫(ナイン・ヘル)】のリヴェリア様…」

 

最近のランクアップと併せて全員が名を上げている。第一級の中でも上澄みの英雄たちだ。勝ち目なんて無い。

 

「彼女は遠からずレベル7になるわ…ウチの中でも向上心かなり高い人だしね…本気で『力になりたい』というのなら今は貴方達を心配しているバルドル様達の意志を汲み取って地に足をつけて力を付けなさい」

 

「あと最後に2つだけ言っておくけど私は自身の未熟さを棚に上げてチームの連携不足を全て仲間のせいにするような奴が大嫌いだわ、まあ確かに他も酷いんでしょうけど、それは自分が悪くない理由にはならないわ。

アーシェスの出自のことは吹聴しないでね、本人も望んでいないし…さて、今日の話はこれで終わりよ、ニイナを呼んできてちょうだい」

 

「うん、判りました、言いません…私からも1つ…いつか貴女を倒してあの方を取り戻す…!」

 

「ぷっアハハハハッ面白いわね貴女、挑戦は暇な時ならいつでも受けるわよ、自信がついたらいつでもかかって来なさい」

 

自分がロキ・ファミリア相手に似たようなことを言っていたのを思い出す。理性的な部分では「自分達には絶対に及ばないだろう」と思いつつも

ほんの少し心のどこかで自分達を越えてくれることも期待してしまうのだ。成る程、これは楽しみにもなるな。

 

──────

 

「アレが【ヘラの後継者】…【覇王(オーバーロード)】のマリーベルさん…私達と大差ない歳で細身であんな綺麗な女性が、レオン先生以上の今代の最強なんて…つくづく神の恩恵(ファルナ)っていうのは凄いね」

 

「レギは何を話しているんだろうねえ?しかしレオン先生からの推薦とは…ようやく私の才能が認められたか…!」

 

「多分、そうじゃなくて…()()()()()()()()()()()()()()って思われたんじゃないかな?今回もしくじったら本格的にやばいかも…マリーベルさんが教え上手なのは有名だし…

あの、ロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアの団員達までランクアップに導いたって話もあるし…直接下した【フレイヤ】だけじゃなく【ロキ】ですら最近傘下に入ったって話だから…」

 

「ギルドや都市神とも違う明確な”力”を持ったこの街の頂点…いや事実上の人類のトップ、か…」

 

『「自身がレベル10以上、今の幹部達が8以上になったら黒竜を討ちに行く』とも宣言しているし…実際それだけの戦力(チカラ)も集まりつつある。物凄く恵まれているのは確かだよ、他の皆も第一希望だったみたいだし…」

 

「ニイナ…あの人が…呼んでいる」

 

「あ、うん、分かったよ、じゃ、行ってくるねみんな…」

 

「レギ…なんでお前は機嫌悪そうなんだ…?」

 

「知りたいことは知れたからもういい…でも、あの人は敵…!」

 

「おいおい『寄宿先(ホスト)に喧嘩売って全員叩き出されました』ってオチは勘弁してくれたまえよ?巻き込まれたくないからな」

ベル君のアルフィアの呼び方

  • おばさん
  • お義母さん
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