──────翌日
朝イチでランクアップを正式にギルドに報告した後、入団希望者の集まっている庭に顔を出した。
「100人はいるわね…
「ヘスティア・ファミリアのツートップが
「私はレフィーヤ達師弟みたいな関係で他人に魔法の使い方を教えることなんて出来ないのに…」
「マリー様の魔法は【
「しっエルフが沢山いる所で『その名前』出さないのっ」
「ふんだっマリー様は
「別にいいでしょーが?私1人でみんなの倍以上稼いでるんだから。それにリリってば嫉妬してるのぉ?可愛いんだからもうっ♪」
マリーが指でくりくりリリルカのほっぺをこね回す。周囲の者達は性別問わず美少女達の戯れに魅了されている。
「あの人が【静穏】のマリーベルさん…」
「
「『世界最速姉弟』の片割れ…」
「【城崩し】の…」
おい、注目されんのはしょうがないけど最後のは命名式の候補に出てきただけの非公式なやつだろーが!
人が嫌がる名前で呼んじゃいけないだろっフィルヴィスさんや椿さんを慮りなさいっ…
「やれやれ…本拠の場所が変わったと聞いて訪ねてみればここは騒がしいな…」
その女性が来ると人垣が割れた。美しいということもあったが、一目見て持っているオーラが違うというのが冒険者未満の入団希望者達にも理解ったのだ。まるでこの街の頂点に位置する第一級冒険者のような───
「久しぶりだなマリー?と言っても別れてからまだ半年も経っていないか…ベルも…いるみたいだな…」
というか
オラリオに着いてからも手紙のやりとりはしていたのだ。
それで教会付近の空き家がヘファイストス様から買い取れそうな目処がたったタイミングで呼び寄せておいたのだ。
「はい、こちらこそ数ヶ月ぶりです、おばさm「
「何度も言っているだろう『お義母様』と呼べと。しかし、中々の反応速度だな。この前にレベル3になったという話なのにもう4になったか?」
女の子の顔面を躊躇なく魔法で撃ち抜こうとするのは流石(の暴君ぶり)である。まあ男連中に比べれば喰らった回数は断然少なかったのだが、気の所為じゃなければ冒険者になったからなのか前より手心が少なくなっている。
くるのは判っていたからなんとか腕でガードは出来た。痛いけど。
「そちらこそ何度も言っているでしょう。私はおばさまが愛した私達の本当の母親のメーテリア母様を敬愛し、感謝しているのだと。私はおばさまのことはお母様と同じくらい愛していますが、だからこそ線引きはきちんとすべき、かと。」
他ならぬ愛する
「くっ相変わらず減らず口を…なんでお前はベルのような素直さがないのだっ」
「さあ?育ててくれた誰かさんに似たんじゃないですかねえ?」
「この前ヘラに更新してもらった時に生えたスキルのお陰で身体の調子は良いんだ舐めるなよ馬鹿娘が…淑女の作法を教えてやろう」
「そちらこそ貴女にビビッていたウチの情けない男連中と私を一緒だと思わないことですねえ!?私はもう冒険者だ!力でも対抗出来るんだっ!」
「おいベル…アレ止めなくていいのか?身内同士なんだろ?少し人帰っちゃったぜ?」
「いやいいよ…これからアレ日常になりそうだし、アレくらいでビビッているようじゃどのみちここではやっていけないよそれに2人とも楽しそうだし…入団希望者はこっちで案内しよう」
ベルの対応も慣れたものだ。流石に以前までは力同士でやり合うことはなかったが、口での言い合いはしょっちゅうだったのだ。
そうこうしている内に「サタナスヴェーリオン」を2人で撃ち合っている。マリーの方は一切周囲を巻き込んでいない。アルフィアも真似して巻き込まなくなった。無駄に器用な2人である。
「チィッやっぱり効かないッ!」
「フハハハハ私と同じ魔法を使う者が現れるとはなこれほど愉快なことはあるまい、だが『
「当然!モンスター相手じゃブレスを使うような一部にしか使えないでしょうあんなモノ!しかもほぼ自分しか守れないし…集団戦で微妙なモノなんていんないんですよ!」
魔法戦じゃラチがあかないので素手で殴りかかるマリー。
だがレベル差は如何ともし難い。易々と捌かれていくが…しかも向こうの魔法は通るのにこちらの魔法は通らない。タイマンでは理不尽の権化過ぎるだろう。
「武神に弟子入りしたという話だったな…成程経験は足りんが技そのものはしっかり練られている…同格以上との対人戦は余りしていなかったようだな?」
投げようとしても見てから対応されたし、どんどん自分の技も吸収されていく。もうやだこのおばさま…
「おばさま達のような大昔の野蛮人どもの時代と違って今は対人戦の機会なんて少ないんですよ。有象無象共は私の魔法だけで圧倒できるからなんの問題もないんですぅ」
負け惜しみに皮肉を言うが引き出しが尽きる前に素直に降参する。
「…参りました」
「嘘だろ…あのマリーが」
「マリー様が…」
「マリー殿が…」
「「「負けた!?」」」
みんなしてうるさいわ…!限界突破を繰り返した私のアビリティをもってしてもレベル7はまだ遠い。最初の内は”技”の引き出しだけなら私が優っていたのにあっという間に追いつかれた。
身体能力で負けているんだからそうなったら勝てるわけない。病気をほぼ克服している状態じゃ本気で勝とうと思ったら短期決戦しかないな…お陰でランクアップ後のズレは大分無くなったが。
というか途中からソレに気付いて付き合ってくれていたようだ。さて取り敢えずこの場を収めねば…
「さてマリー?私はお前たちが例の教会に住んでいると聞いて、最初は喜んだんだ。どんな確率、どんな運命なのかとな。幸いお前たちの主神になったという神ヘスティアもヘラに神格を保証された。
それでいざ意気揚々と向かってみれば、何故か教会は無惨にも破壊されていて【ゴブニュ】の連中が修復中ときた。そうして彼らに聞いてみるとなんでもお前らと【アポロン・ファミリア】とかいう
碌な噂のない連中との抗争で壊されたという話じゃあないか。お前がいながら何故
あっダフネとカサンドラ逃げやがった…勿体ないなあの2人は使えそうだったのに…
「────つまり纏めるとだ。当時のお前は単独行動ばかりをしていて、ランクアップしたてで浮かれていてベルの方への注意力が散漫になっていて気付いた時にはベルが狙われ奴らと抗争状態になってあそこも破壊されていた、と…」
なんか凄い人聞きが悪いが大体合ってるのは仕方ない。
「あのぅ怒ってますかおばさま…」
「私がそれくらいでお前を怒るわけがないだろう形あるものはいつか壊れるものだ、お前らが無事だったのならそれでいい」
「但しまだ未熟なベルから目を離しみすみす変態にケツを狙われるような状況になったのはいただけんな。まだ未熟な
「あのうお言葉ですかベルはその
「ほうこの前まで2だったのにもう、か。良いじゃないか。それに
「相手の最大レベルがお前と同じ3程度の集団だったならそれくらい出来たはずだ、お前なら」
スッと目を開けて睨むアルフィア。
「おばさま達野蛮人の時代と一緒にしないでくださいっ確かに最初はぶち殺そうと思ったし、やろうと思えば寧ろそっちの方が簡単でしたが、今の時代に故意にそんなことしたら顰蹙ものですよっ
当時圧倒的最強だったヘラ・ファミリアと一緒にしないでください、私達の所はまだ弱小だし、民衆の声を無視出来るわけないんですっ本当に魔導士のくせに考え方が脳筋なんだからっおじさまのこと笑えませんよっ
一先ず下手人どもを戦いに引っ張り出して全身の骨を砕くくらいのことはしてやったのでそれで溜飲下げてくださいな。」
「全身の骨を砕く?それで死人が出なかったのか?」
「はい、私の…回復魔法で…」(本当はちょっと違うけど)
「お前が回復魔法?ふっあはははっそうかっお前がかっ…」
おばさまの身体を慮って生えたと思われたかなぁ…でも本当は違う。ううん確かにソレも欲しいと思ったけどアミッド先輩の高名は外でも聞くことが出来た。彼女なら或いは…と思ってナァーザ先輩には悪いけど縁を結んだんだ。
ミアハ様の腕だけならディアンケヒトにも負けていないだろうけど(資金力の差がエグいけど)、強力な回復魔法を持つアミッド先輩なら或いは、と思ったのだ。
医神二柱の腕だけでは結局お母様たちを治せなかったから。
アレは何にでも手を伸ばそうとする欲張りな私の心の具現。単純な魔力ならもうアミッド先輩を大きく凌いでいるのに未だ回復効率が劣っているのは純粋な医療の腕が劣っているからなのだろう。
いくら私が天才でも身体は1つだ。まだ医神の知識を学び尽くすには時間が足りない。さて、ヘスティア様の面接もあらかた終わって人数を絞れたみたいだ。でもまだ多い。
残りは60人くらいか。「犯罪歴はあるか?」「何かトラブルを抱えているか?」「闇派閥との関わりがあるか?」等の質問を必須にしてあとはヘスティア様にお任せした。
ベルに近付こうとする者も排除しようとしてるんだろうなあきっと。まあでもあの子は絶賛アイズにゾッコン中だし。苦い想いするのが目に見えてるからこのまま落としてもらっても構わないだろう。
それ込みでも「惜しい」と思える才能の持ち主がいれば私が拾えばいいし…
───そうして結局私の眼力で20人くらいまでに絞った。
面接が終わった後に私達家族3人とヘスティア様だけの場を設けてもらった。
「さて君が【静寂】のアルフィア君か…ベル君達からたっぷり話は聞いているよ
「ああ、こちらこそ2人が世話になっていたようだな、ありがとう。それで、これがヘラからの手紙だ」
「おばあさまからっ?なんて書いてあるんですか、ヘスティア様っ?」
「『私の可愛い娘と孫達をよろしく頼む』だとさ。」
「あのっ…」
ここまで話しかけていなかったベルがアルフィアに話しかけようとする。
「アルフィアおb…ッ!?」
物凄い速度でベルの頭に
「何故お前が邪魔するマリー…離せ教育だこれは」
「いいえ、離しませんわ。確かにベルが悪いことしたのなら”それ”も致し方ないでしょうけどベルは何も間違えていないでしょうお・ば・さ・ま?」
「あのっ身体はもう大丈夫なの?」
「…止めておくか」
「そもそもベルを殴ろうとしなければ良かったんですよ」
二回戦が一瞬始まりそうになったが本気で心配するベルを見て空気を読んで収める。
「いい機会だ
そうして無事に
【
【
姉弟のための戦いになると【
目が点になった。
「しかし文面的に完治はしてないですね…それじゃあ予定通りディアンケヒト・ファミリアに行ってきましょうか。」
そう言うや否やマリーがアルフィアの手を掴んでそのままディアンケヒト・ファミリアに向かってしまう。
「10年以上ぶりでしょうが、昔と比べると街はどうですかっ?」
「流石に結構街並みは変わっているな…煩わしい」
「もうっ思うのは自由ですけど絡まれたりしない限りジジイやおじさま相手のように気軽に
「理解ってる…」
そんな他愛もない会話をしながらディアンケヒト・ファミリアのホームに辿り着く。
「あら、こんにちは、マリーさん、もしかしてその方が…」
「はい、私の『おばさま』です。おばさま【
それからアミッドが色々な魔道具を使って診察を始める。
「…聞いていた
「じゃあっ!?」
「はい、充分完治出来そうですよ」
「あ…」
「良かったぁ良かったよぅ…」
泣きながら抱き合うアルフィアとマリー。
「患部の…肺のこのあたりに一日の朝と夜の2回貴女の【ディア・フラーテル】をかけ続けていけば1週間も続ければ症状の更なる緩和も見られるようになるでしょう念のため週一で診察させてください」
「本当ありがとうございますっアミッド先輩っディアンケヒトのジジイは嫌いですけど貴女のことは大好きですよっ先輩っ」
(ああ…毎度思いますが、患者やその親族のこの笑顔にはどんな大金よりも価値がありますね)
「じゃあまた来ますねーっ♪ジジイに『銭ゲバは程々にしろ』って伝えておいてくださいっ♪忙しい時はいつでも手伝いに来ますのでその時は使いをお願いしますっ」
「どこかと揉めるようなことになったら私達が遠慮なく敵対者を潰してやるからその時は遠慮なく呼べよ?」
「物騒ですよっもうっ…」
「はい、それじゃまた…お2人とも」
仲睦まじく手を繋ぎながら2人が店を出て行く。
「小娘は帰ったか?」
2人が帰った後
「はい、もう警戒する必要はないですよディアンケヒト様」
「あやつは苦手じゃ。ミアハのこといつものようにいびってたら魔法ぶち込まれたし…」
「それは貴方様が悪いんじゃないですか?」
「アミッドやミアハのことは敬っているのに儂の方はちっとも敬わんし」
「それも(ry」
ちなみにこちらで働いている時は絶対にしない。そのあたりの上下関係は弁えているのだ。
だが「神だから」という理由だけで彼女が手出しを躊躇することはない。一応一般人のビンタ程度の威力にまで落としたりもしているのだが。
そのあたり
「んで、今日は非番なのに何故来てたんじゃ?」
「彼女の叔母という【静寂】のアルフィアさんを診察していました、もともとそういう契約でしたし…」
「あやつか…!」
それはディアンケヒトにとっても苦い記憶であった。当時は今ほど医療用の魔道具が発達していないこともあり、まだそれなりのファミリアだったミアハやこちらでも診たがお手上げ状態だったのだ。
ヘラが「姉妹を治せなければ送還してやる」と言わんばかりの剣幕だったが、治せないものは治せない。医神としてのプライドもあったので「しょうがない」とまでは思わなかったが。
「はああやつがあんな無茶苦茶な
「あら。私は嬉しいですよ。私の魔法を受け継いだあの娘があの魔法でより多くの人たちを救うことになるのが。個人での戦闘力にも非常に長けているあの娘にこそ『戦場の聖女』の二つ名は相応しいと思うんですけどね」
「ダンジョンでの成果物が明らかに多いし、質も極上だし、ウチにも安めに卸してくれているのにミアハはもっと優遇している節あるし…」
「それについては『向こうの借金が返し終わるまで、それが無くなったら平等に取引をする』って言ってましたよ。」
「はあ本当に欲しかったのう、あやつ1人だけで無茶苦茶金の匂いするからのう…ヘスティアはどうやってあんなの手懐けたんじゃか」
「どのみちディアンケヒト様にはどうやっても無理だったと思います」
──────
マリーがニッコニコしながら繋いだ手をぶんぶん振っている。ここまでご機嫌なのはアルフィアですら初めて見るレベルだ。アルフィアも目を見開いてそんなマリーを愛おし気に眺めながら歩く。
竈火の館に帰還するとベルが駆け寄ってくる。
「2人とも!どうだった!?」
「アミッド先輩が『充分治りそう』だって!」
「っ~~~やったあああああああああああああ!」
そうして3人で抱き合って喜び合ってたが、やがて落ち着いて団員達のいる広間の方に入っていく。
そして元々のメンバーと内定団員達の前で、期待の新人()であるおばさまにも自己紹介をしてもらった。
「アルフィアだ。」
っておいそれで終わらす気か!?どうやってファミリアで生きてきたの貴女!?さっきまでの喜びっぷりはどっかへ行って仏頂面に戻ってるし…仕方ないなあもう…
「えー彼女は【静寂】のアルフィア、元ヘラ・ファミリアの幹部でレベル7の冒険者です。私とベルの産みの母親の姉で『叔母』ということになります。ぶっちゃけ今のオラリオじゃぶっちぎりで最強です。同レベルの猪でもほぼ勝ち目ないです。
騒がしいのは嫌いな方なのであまりうるさくすると魔法ブチ込まれるんで注意してください」
「えっと副団長…それってヘスティア・ファミリアが今現在の都市最強ってことですか?」
「それはまあ条件にもよりますね、この前の
ロキ・フレイヤには負けるでしょうね、先手さえ取れればどこにでも勝てます。おばさまはこの前私が使った魔法の元々の使い手なんで。更に私が追い討ちかければどんな奇跡も起こり得ないでしょう。
まあ当分抗争する予定はないし、真っ当にあいつら越えていく予定ですから。今の力関係は気にしなくていいですよ」
主に目を輝かせている人達か、「とんでもない所に来ちゃった」って顔をしている人達に分かれている。今のところはどちらが良いとも言えないが。
+20人程度じゃまだまだ部屋が余る。そのうち大きくなればそうもいかなくなってくる可能性もあるが、新入団員達は一先ず
それぞれの部屋に入ってもらった。いきなり個室があてがわれて皆嬉しそうだった。
おばさまの部屋は私とベルの近くの部屋を用意した。防音設備には相当気遣って改築しておいてある。
「ここからが新生ヘスティア・ファミリアのスタートだ!」と言いたいところだが、まだまだトラブルの予感がする…
例のマザパワー()
ベル君のアルフィアの呼び方
-
おばさん
-
お義母さん