原作よりちょっと強い橙の小話集   作:望月エト

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 橙の異能に関係する小話。
 ドレミーも一応出ます。


夢の世界

 

 夜が更けた幻想郷。

 そこのどこかにあるとされるマヨヒガにて、橙は茜や猫たちと共に気持ち良さそうに眠っていた。

 

「……みゃむ……ちぇんさまぁ……えへへぇ……」

「……すぅ…………すぅ……」

 

 眠りが深まり橙の魂は『夢の世界』へ旅立つ。

 夢は他者と接続しているものである。

 そのためこの接続部分を通して夢の中で見知らぬ場所に行くこともできるし、出会ったことがない誰かに合うことも出来る。きっと何者にもなれるのだろう。

 ただ何人か例外が存在し、その中の一人が橙である。

 夢とは肉体から魂が抜け出て夢の世界へ移ることで見るもの。

 その仕組みがあるが故に、橙は例外の括りに部類されてしまう。

 橙の異能“負の感情を受け取れる程度の能力”は魂が有する力。これによって吸収した恨み辛みなどの負の感情は常に彼女の魂の周りを覆って離れない。

 橙自身は並外れた負の感情及びそれをエネルギー源とする狂気や呪いに耐性を有するため、千や万、もしかしたら億単位の負の感情をその身に受け取っても平然としていられるのだろう。

 異能の副産物か。

 それとも魂が元からそういう性質なのか。

 精神面が弱点である妖怪でありながら大妖怪()よりも“心”が強い。

 だがそれは橙だけであり、式と主という強い繋がりを持つ藍を含めた他者にはそんな特異な力はない。

 現実世界ならば肉体という盾があるので普通に接する分には問題はない。

 しかし、舞台を夢の世界に移ってしまうと少々話が異なってしまう。

 先にも言った通り、夢の世界では全ての者の魂が繋がっている。

 言い換えれば、其処には境界が曖昧なのだ。

 負の感情の伝播は一瞬。

 個人としての境界が薄れている世界に怨霊も白目を剥いて再び死んでしまうような怨嗟を纏う橙の魂が入ってしまえば、結果は『終』。

 人間ならば心と共に魂が破壊され、妖怪ならば心が死に永久に復活することはなくなってしまうだろう。

 そんなことになれば夢の世界もただでは済まない。

 汚染区域のような扱いとなり、大勢の睡眠が損なわれてしまう。

 夢の世界にとって橙は世界を滅ぼす核爆弾。

 そんな取扱注意猫をどうにかしようと頑張った者がいた。

 その名は、ドレミー・スイート。

 獏の妖怪にして常に夢の世界の監視している支配者。

 夢の世界はドレミーにとって仕事場であると同時に住処でもあるため、橙の対処は真剣に取り組むしかなかったのだ。

 対処の方法については、ドレミーは以下のように語っている。

 

——はい? どうやって橙ちゃんの魂を対処したか?

——あー……今思い出してもアレは重労働でした……と言ってもやったことはシンプルなんですけどね。

——先ずは夢の世界の端っこを分断して橙ちゃん用の『ミニ夢の世界(小島)』を設けたんです。この作業は魂同士の接続のアレコレとか色々とやることがあったのですが、これは獏の技術なので上手く言葉で説明できないんですよ、ごめんなさい。

——で、次に橙ちゃんだけが通る通路を作って小島へ繋げ、特殊な結界を百層ほど張りました。百層なのは念には念を入れた結果です。

——夢の世界と言うのはデリケートですからね。橙ちゃんが持ってきてしまうあのドロッドロな負の感情を一抹でも本島に入れるワケにはいきませんので、数百年ぶりの結界術を必死に施しましたよ~。

——いやぁ、本当に大変でしたよー。八雲の方々はとんでもない子を身内に引き入れたものです……いえ、橙ちゃん自身はとても良い子なんですけどね。魂そのものは常に穏やかですし。でもあの負の感情が魂を覆う様は……そう。台風、ですかね。周囲の感情を巻き上げて勢いを増す暴風雨圏(渦巻き)(負の感情)に、常に穏やかな安全圏(台風の目)(たましい)……まさに台風そのモノですよ。

——地獄……閻魔様とかはあの魂には手を焼くんじゃないですかねぇ……ま、私には関係ないですね!

 

 ドレミーは締め括りにそう言うと説明を終え、普段のどこか胡散臭さを感じる笑みを漏らしてスッと消えてしまった。

 かくして獏の努力の結果、橙もまた夢の世界へ来ても大丈夫となった。

 他の者とは違い別の場所なので誰かと繋がることはできないが、これで他の魂や夢の世界をダメにしてしまう破壊者になる心配はなくなったのだ。

 

「あーっむ! ん~♪ この魚おいし~ッ!」

 

 今宵も橙は夢の世界の自分だけしかいない中の小島で己の願望が具現した夢を堪能するのだった。

 




 橙は消臭剤みたいな感じです。
 近くにいる者がその内側に燻ぶらせている恨み辛み、妬みなどの負の感情を吸収して魂がそれを離さない=受け止める。
 橙には常に自身の魂に覆うように纏わり付く負の感情が聞こえています。たぶん聞いてて気持ち良いものではないのですが、橙は慣れているので就寝時などは子守歌代わりにしています。
 負の感情が呪いの燃料というオリ設定なので橙には呪いへの耐性もあります。
 本来は妖怪の天敵である怨霊ですが橙が相手だとかなり分が悪いです。
 自身の活力である恨みなどが無理やり吸収されてしまうので存在意義を失い、成仏ができない無気力幽霊に成ってしまう……かも。

 普通の人間や妖怪の心を半ば無理やりに楽にさせ、怨霊などの恨みがエネルギー源である存在も最悪の形で楽にさせる……そんな『少し』変わった化け猫がこの作品の橙です。
 さとりの読心にも影響が出て、橙の心の声と同時に魂を囲う負の感情の怨嗟まで聞こえてくるのでとてもウザったい筈です。
 橙の中の負の感情は蟲毒で死んだ獣×100体以上の恨み妬み(これが一番濃い)に加え、茜の人間への恨みやモブ怨霊の怨嗟など多種多様。(ここにフランの狂気も加わる)
 藍様が蟲毒をしなければ、紫様が適当に数合わせで拾ってこなければ、この異能は目覚めることはなかったので罪は保護者達にあります。

 ここまで読んでくれてありがとうございました!
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