今原作が手元にないので、なんとなくの記憶を頼りに書いています。
(ナルトのそばにマダラ置いちゃいけない気がしますが)ゆるゆると、書いていければと思ってます。
第1話
そういや、いつの間にかおっちゃんと暮らしてたってばよ。
ナルトは目の前のテーブルにある、山盛りに盛られたいなり寿司と、四号の小さめのショートケーキを眺めたあと、腕を組みながら無言でナルトを見下ろしている男を見上げた。
今日はアカデミーが終わったらまっすぐに帰ってこいと言われていた。 壁にかかっているカレンダーには、今日の日付のところに赤い花丸マークとナルトの名前が書かれている。
ナルトの言うおっちゃんとは一年程前に里の中で出会い、火影のヒルゼンから一緒に住むようにと言われて突然共に暮らすようになった人だ。
ナルトから見たおっちゃんの第一印象は、なんだか黒い人だった。
着ている着物の丈も長く色も暗く、加えて髪の毛もすごく長かった。
話し方も少し偉そうで、ナルトにとっては変な人だった。 変な人ではあったが、初対面でも普通に話をしてくれた人でもあった。
おっちゃんは顔岩を見た時にすごい驚いていた。
おっちゃんと初めて会った時、名前を聞いた。
うちはマダラ、そう言っていた。
けれど一緒に暮らす時は違う名前を言っていた。
タジマ。
ナルトが名前が違うと言ったら、本名はマダラであっていると教えてくれた。 火影のヒルゼンとの約束で、偽名を使わないといけなくなったらしい。
ナルトはへーと頷いた。 おっちゃんことマダラの名前を改めて聞いたナルトは、あ!と声をあげて言った。
「アカデミーにおっちゃんと同じうちはのうちはサスケってヤツがいるってばよ」
けれど、マダラはあまり興味がなさそうだった。
「ほら、さっさと手ぇ洗って座れ」
「こ、こんなにどうしたんだってばよ」
「生まれた日に祝うもんなんだろ、だから、ほら」
「! おっちゃんおっちゃん、これ、俺の!?」
「他に誰の誕生日なんだよ」
「手あらってくる!!」
ナルトは家の中だと言うのに、駆け足で流しに向かっていく。
今日十月十日はナルトの誕生日である。 だが同時に木の葉の里にとっては、災厄が起きた日でもある。 ナルトの生まれた日を祝ってくれる人間は少ない。
ナルトが急いでテーブルに戻り、どすんと椅子に座れば、マダラは何か面白かったのかフッと笑った。 ナルトはいなり寿司の山から数個自分の取り皿に移し、小さな口で大きく頬張った。 その様子をちらりと見ながらマダラもいなり寿司を頬張る。
木の葉の里に来てから随分と経つ。
十月十日、この日に九尾が里を襲ったという事件については、いやでも耳に入った。
マダラがこの里、否この時代の木の葉の里に来たのは事故である。
けして故意ではない。
柱間に頼まれ、出来たばかりの里の周辺を調査し帰ってきたらこんなところに飛ばされていた。
元の時代に戻れるまで里での滞在許可は降りたものの、現火影のヒルゼンはマダラをうちは一族の集落へは立ち入らせようとしなかった。
のちに知ったことだが、ナルトのクラスメイトのうちはサスケを残して一族は滅んでいたらしい。
未来に来る直前、一族からも敬遠されていたマダラであったが、仮にも長であり、千手の手を取ったことに間違いはなかっただろうかと何度も思い返しはした。
うちは一族の惨殺について火影のヒルゼンを脅しながら問い詰めてみれば、僅かではあるが情報を分けてもらえた。
だが、僅かに事情を知ったところでどうにかなるものでもあるまい。
ナルトの学友のうちはサスケは家族を失った。
木の葉の里の滞在中、マダラに許されているのは日用品の買い物くらいで、里の外に出ることは出来ず、忍らしいこともできない。 ヒルゼンがマダラが他の忍と接触するのを忌避しているからだ。 そのためナルトには無職のおっちゃん、いそーろーのおっちゃんと言われている。
普段何をしているかといえば、買出しや暇つぶしにナルトの修行に付き合ってやっているくらいである。
未来のーー、現代の木の葉の里では忍ではないため、マダラに任務はない。職はない。
一年近くも耐えたのだから、そろそろ過去に戻るか、何か体を動かしたいものだが。
マダラは空になったナルトの小皿に二つ三つといなり寿司を盛っていく。 もう一つを乗せようとすると、ナルトがげええ!と言ってお皿を避けた。
「ちゃんと食わないとでかくなれねぇぞ」
「おっちゃん盛りすぎなんだってばよ! 俺ってばケーキも食べたいの!」
ワイワイギャーギャーと、いなり寿司を盛られまいとナルトが叫びながら皿を一生懸命マダラの手から遠ざけていく。
マダラにとっては未来の木の葉の里に来てから、 今までにない穏やかな時間がすぎていた。
ここでは里や一族、そして千手兄弟について思い悩まされることもほとんどない。未来に大きく介入するべきではないと、マダラは理解しているからだ。
ここではただのマダラだ。 亡き父、タジマの名を借りているが。
だが穏やかな日常にも、影は落ちている。
共に過ごしてすぐに、里の人間のナルトへの態度は明らかに冷めていることに気がついた。
故にマダラは理解してしまっている、ナルトの中に九尾がいることを。
九尾を手に入れられれば、どんな力が手に入るだろうか。 目の前の子どもからそれを抜けば、死ぬだろう。 奪うのは簡単だ。
だが奪ったとして、この時代で何をすればいいのだろうか。
元の時代であれば九尾を取りに行くことも考えたかも知れぬが、今はマダラのいる時代ではない。
一族代々伝わるあの石碑が脳裏によぎるが、マダラが事を起こすのはこの時代ではない。
「行儀が悪いぞ、座れ」
「いなりはおっちゃんが食べていいってばよ! 俺ってばもうお腹いっぱい」
「いいのか、後になって欲しくなってもやらないからな」
「いいってばよ! つーかさ、そんなに食えんの」
「もっといける」
「えー!」
戦いの日々が恋しくないわけではないが、誰かと過ごすのも悪くはない。
マダラはナルトに幼き頃の柱間の面影を重ねながら、いなり寿司の山を掻っ攫うのだった。