おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第10話

 

昨日の再不斬との戦闘で動けなくなったカカシだが、タズナから杖を借りるとナルト達を近くの森へ連れ出し、ある修行を彼らに課した。

チャクラコントロールである。

手を使わずに木を登れと言い、一番上に届くまで繰り返せとのことだ。

ナルトは水面を歩けるようにとマダラから教わっていたため、まだコントロールの上手く行かないサスケ達の手伝いをしろと指導役を任された。

子ども達が修行に励む中、共に連れ出されていたマダラはカカシに手招きされると、ナルト達からは見えないところへと連れられた。

 

「タジマさん、ちょっとお話いいですか」

「昨日のことか」

「そうでもありますね。俺はあの子達第七班の担当です。あの子達の周囲についても、ある程度把握している必要があります。タジマさん、ナルトとの関係は何ですか。なぜナルトと一緒に?」

「ただの同居人だ。なぜと言われてもな……火影に言われたからとしか」

「火影様が?」

「疑ってる目だな」

 

カカシはヒルゼンがナルトを謎の男とただ同居させるはずがないと疑っている。

昨日の戦いぶりといい、やはり下忍になったばかりの人間だとは思えなかった。

 

「昨日の火遁の術、随分と得意な様子でしたね。あなた程の火遁使いもそういないでしょう」

「……」

「あなた程の忍なら、先の大戦で有名になっていそうですが……俺はあなたを見たことがない。本当にあなたが下忍になったばかりだとしても、ただの下忍があの術を使えるはずがない」

 

カカシはマダラを真っ直ぐに見据えた。

年齢もそう自身と差はなく、彼ほどの実力者ならば過去に一度も名を聞かなかったのはおかしいと、マダラを疑っている。

疑いの目を向けられるのは、あまりいい気はしない。

だが正直に話したところで信用して貰える保証もなく、信じてもらったところで『うちはマダラ』ということが知られればカカシも波の国で休んでいる場合ではなくなるだろう。

かつて里を襲った『うちはマダラ』という男が、教え子達のそばにいるのだから。

このマダラにその気がなくとも、『うちはマダラ』が里に残した影響は大きい。

マダラがだんまりを決め込んでいると、カカシはそっと自身の左目に触れた。

 

「昨日はやけに、左目の写輪眼に反応していましたね」

「……うちは一族は滅んだのだろう? あのうちはサスケ以外に持っている人間がいるとは思わなかっただけだ」

「そうですか。あ、そうそう、ナルトにも聞いてるんですがね……タジマさん、あなたもうちは一族の人でしょ?」

「⁉︎ ……ナルトのやつめ」

「やはり、そうなんですね」

「……! さては……はぁ、俺を嵌めたな、はたけカカシ」

「いやぁ、すみませんねぇ。一応言っておきますが、ナルトは何も言ってませんでしたよ。何も言わないおかげで、わかりやすかったですが」

 

その見た目で、火遁が得意で、写輪眼に反応する。

カカシがナルトに「ナルトのおじさんってどんな人?」と彼の話を詳しく聞こうとした時は、目が泳いだり、黙ったかと思うと「言えない」というたった一言しか言わなかった。

昨日の夜にも聞いたが、口を結んで首を横に振るだけであった。

それでは同居人のおっちゃん『タジマ』には何かあると言っているような物である。

ナルトの様子や昨日のことを踏まえた上でタジマの正体を考えると、うちは一族の人間の可能性が高いと考え付けられたとカカシは話した。

 

「それで、『うちはタジマ』さん? どうしてナルトと一緒に? サスケのことはご存知で?」

 

マダラは脳内に亡き父の顔が浮かんだ。

タジマと呼ばれることに慣れてきたと思っていたが、いざうちはの名をつけて呼ばれると、まだその名は父の物である印象が強かった。

 

「……タジマで頼む。ナルトといるのは本当に火影に言われたからだ。二年前から里に住み始めたのも間違いない。うちはサスケのことは、ナルトが知っていること以外は知らん。特に関わりもなかったからな。……俺のことばかり聞いてくるがカカシ、俺がうちはの人間だと知ったのならこちらも聞く権利はある。お前のその目は誰の目だ。一族ではない人間が、なぜ持っている」

 

あまり『うちはタジマ』について深掘りされると不味い。

タジマと言う名だけであればそう珍しい物でもないが、『うちはタジマ』はマダラの父親でありかつての族長の名でもあり、一族内に里に謀反を成したマダラの親の名を付ける物好きもそういないであろうことから、偽名なのではないかと疑われかねない。

そう思ったマダラは話の流れを変えようと、カカシの左目を鋭く見据えながら尋ねた。

話を逸らすためでもあるが、実際に気になってはいるのだ。

昨日の様子からして、少しでも使えばかなりのチャクラを持っていかれるその目は、カカシの身体に見合っていない。

使いこなせないからこそ、片目だけなのか。

その目の元の持ち主は誰なのか。

カカシが教え子の身の回りのことを把握したいと言うのと同じように、マダラもまたナルトの担当上忍であるカカシのことについて知っているべきであると思うのだ。

 

「これは……」

「答えられないのなら、これ以上俺が話すことはない。一族の人間が外の人間に目を渡すとは思えないがな」

「……」

 

今度はカカシが黙ってしまった。

身体が弱っているのもあるだろうが、少しばかり顔色が悪いように見える。

マダラは話を切り上げるなら今だと思い、ナルト達の元へ戻ろうとカカシの向こう側へと歩き始めた。

カカシの側を通り過ぎる時、僅かに声が聞こえた。

 

「……オビト」

 

オビト、それは人の名か。

カカシの声は、どこか寂しげであった。

マダラとて、カカシが写輪眼を持っていることについてとやかく責めるつもりはない。

写輪眼のカカシという二つ名を持っているということは、里からそれを使用することが認められているということだ。

誰かの目を奪う様な人間の元に、サスケを置くことはないだろう。

ただほんの少し、彼が写輪眼を持つことになった経緯が気になるだけである。

 

 

 

 

マダラがナルト達の元に戻ると、木登りの修行は難航しているのか木の根本でナルトが頭を抱えながらサスケに説明を繰り返していた。

マダラはサスケやサクラが使っている木に目を向ける。

登れたところにクナイで傷をつけているのだが、サスケよりもサクラの方が位置は高い。

ナルトが戻ってきたマダラに気付くと、バッと振り返った。

 

「おっちゃん! カカシ先生と何話してたの!」

「昨日の話だ。なんだ、まだ出来てないのか」

「せつめーするのって難しいんだってばよ」

 

ナルトが腕を組みながら眉間に皺を寄せてうーんと唸った。

悩むナルトの側にいたサスケがマダラの方に向き直ると、真剣な顔であることを尋ねた。

 

「おっさん。昨日の術、あれはなんだ。教えてくれ」

「……一番上まで登れたら考えてやる、砂利が」

「! チッ」

「あ! サスケェ! ムキになって走っても滑るだけだってばよ!待てってば!」

「余計なこと言うな、ウスラトンカチ! あと付いて来んな!」

「んな冷たいこと言うなって……どぉわ!」

 

ナルトがなぜか木を駆け上るサスケの後を追い登り始め、気を抜いていたのか先にナルトが足を滑らせ地面に落ちてきた。

 

「もう二人とも集中しなさいよー! なんで男の子ってこうなのかしら」

 

下から見守っていたサクラが、そんな二人にやれやれとため息をつく。

マダラは木から落ちゴロゴロと転がるナルトを見ていたが、ふと視線を感じ、そちらの方へチラリと目を向けるとサクラと目が合った。

 

「あっ。ご、ごめんなさいジロジロ見ちゃって」

「いや、何か聞きたいことでもあるのか」

「その……」

 

サクラはしどろもどろになりながら、言葉を続けた。

 

「ナルトがアカデミーにいた頃から、タジマさんと修行してたって聞いて。確かに急に強くなったなとは思ってたんですけど。ナルトとの修行って、どんな感じだったのかな……と思って」

 

ナルトが『おっちゃんの方が怖い』と言いかけていたのが気になっていたのだろう。

サクラは見た目から、ナルトのおじさんという事前情報が無ければ警戒したかもしれないと思うくらいには、マダラの第一印象は「怖い人」であった。

 

「どんな感じ、か」

 

サクラの問いにマダラはナルトとの修行の日々を振り返った。

向かってくるナルトをちぎっては投げの繰り返しで、体術の修行ばかりだったと思い返す。

マダラがどんなに軽くあしらっても、諦めずに、疲れ果てるまで向かってきたものだ。

 

「諦めの悪いガキだったな。今もだが」

「諦めの悪い……」

「ああ。俺の方が先に疲れるくらいには、しぶとい」

「そう、なんですね」

 

マダラとナルトの強さは、歴然の差である。

今のまだ幼いナルトでは、マダラを超えることは叶わないだろう。九尾の力を使えばその限りではないのかもしれないが、この先何かの事故で九尾の封印が解かれても、マダラも万華鏡写輪眼で制御できることを知っているため、そう易々と負けはしないとは思っている。

 

「サクラ、だったな。お前は上まで登れたのか」

「はい、何度かもうあの高さまでは」

「早いな」

 

サクラが木のかなり高いところを指差した。

マダラはほうと感嘆の息を漏らす。

 

(さっき見た印は始めたばかりの物か)

 

「意外と簡単なんですね」

「そ、そうだな」

 

サクラの言葉に、マダラは幼い頃を思い出した。

父のタジマに早く水上歩行くらいは出来るようになれと、川に沈められた日々を。

 

(一般家庭の出だとは聞いてたが、ナルトとサスケより忍の素質がありそうだな)

 

この第七班に配属されているあたり、何か秀でているものがあるのだろう。

マダラがサクラと話していると、突然ナルトとサスケの悲鳴が聞こえてきた。

今度は二人して同時に落ちたらしい。

 

「イッテーーー!!」

「いっつつ……なんで同じ木で走るんだ、このウスラトンカチ!」

「あー! またウスラトンカチって言いやがったな! ウスラトンカチって言う方がウスラトンカチなんやい!」

「ちょっとちょっと! 二人とも!」

 

サクラが二人を宥めに入った。

マダラはナルト達の様子に懐かしさを覚える。

まだ柱間と互いの正体を隠していた頃、ふざけていたら川に落ちたこともあったなと、そんな他愛もない思い出を振り返った。

二人で修行をした日も少なくない。父に知られるまでは。

マダラがひょんなことで未来に来てから二年が過ぎているが、柱間は今何をしているのだろうか。

マダラが姿を消したとなれば、一番騒ぎそうなのが柱間だ。騒がないはずがない。

だがしかし、マダラがどんなに過去の情報を漁っても、どこにもマダラが消えたという記録は残っていなかった。

ヒルゼンに聞いても、特に大きな事件があった記憶もないそうだ。

里を抜けた後にマダラに関する記録を消した可能性はあるが、調べられる限りでは歴史に不自然な穴は見受けられなかった。

それがやけに奇妙であると、マダラもヒルゼンも思っている。

マダラは再び木登りを始めたサスケに視線を動かす。

 

(……あーあー、あんなに力強く蹴ったらまた落ち……たな)

 

すぐできるようになると思いムキになるところは、イズナよりもなんとなく昔の自身に似ているとそう思った。

ナルトとサスケの二人を見ていると、嫌でもマダラは柱間と水切りをした日々を思い出してしまう。

 

(……コイツらは)

 

あの日のマダラと柱間の様に、この七班がバラバラにならなければ良いと、彼らのやり取りをみて願わずにいられなかった。

 

 

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