おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第11話

 

「おっちゃん? サスケと一緒にどこ行くんだってばよ」

「この前言ったからな……流石にアレはまだ早いが、代わりに修行を見てやることにした」

 

サスケと共にタズナの家を出て行こうとするマダラを、ナルトが呼び止めた。

木登り修行を始めた頃のサスケに豪火滅却の術を教えろと言われ、頂上まで登れたら考えてやると返事をしたがために、無事木登りを終えたサスケに急かされ修行をつけることにしたのだ。

サスケを指導することに関しては、担当上忍であるカカシに一言断わり許可は得ている。

カカシはマダラの監視役を引き受けてはいるが、体調が万全に回復するまではガトーらに狙われているタズナの護衛も引き続き受けていた。

今日はカカシはタズナが橋の建築現場に向かうとのことで、サクラと共にそこへ行く予定であった。

監視についてはマダラとナルトの信頼関係もあるため、マダラがナルトを置いて波の国から離れるような勝手な行動は取らないだろうと、七班の誰かと共に行動していれば問題ないとカカシは考え別行動を許した。

 

「で、お前はどうする」

「うーん、俺ってばちょーっと気になることがあんだ。だから今日はいいや」

「そうか。イナリか?」

「まあ、そうなんだってばよ」

 

イナリとは、タズナの孫のことである。

タズナの家に来たばかりの頃から、身内だけでなくマダラ達にもイナリはそっけない態度を取っていた。

タズナや母親のツナミから聞かされて話によると、イナリの父親代わりと呼べる存在である人物が亡くなってから、ヒーローなどいない、何事もうまく行くはずがないと物事に対して否定的になってしまったそうだ。

ナルトはそんなイナリの様子が気がかりなのだろう。

 

「サスケェ、おっちゃんには気をつけるんだぞ。カカシ先生より手強いってばよ」

「フン、負けるつもりはねぇ」

「やるのは修行だろうが。なんでお前らの中で俺を倒そうってなってるんだ」

 

ナルトがサスケに耳打ちしている。

何を伝えているのかは知らないが、大方マダラとの修行でナルトが得た気づきとやらをこっそり伝えているつもりなのだろう。

マダラはやるなら早く行くぞと歩き始め、木登り修行で使用した場所に向かうのだった。

 

 

 

修行場に着くと、マダラは早速サスケがどれくらい術が使えるのかを見ようと考えた。

流石に森の中で火を使うのもどうかと思い、先日カカシと話をした時に見つけていた川まで連れて行った。

マダラはその辺にあった木の枝を拾うと、サスケにまずは枝に火をつけてみろと差し出した。

サスケが訝しげにマダラを見上げる。

 

「……は?」

「どれくらいコントロールができるのか見る。なんでもデカい術が使えれば良いってものでもないからな。枝に火遁で火をつけてみろ」

 

マダラの言うことにも一理あるが、だがサスケからしてみれば地味で今更意味があるのかと問いたくなるものであった。

戸惑いながらもマダラから枝を受け取ると、サスケはいとも簡単に枝の先に火をつけた。

 

(今の感じなら、基礎的なものは問題なさそうだな。なら、今日は何をするか……)

 

せっかく水辺もある。

再不斬の水遁の術を打ち消そうと使った豪火滅却はサスケにはまだ早く教えられないが、と考えたところでマダラはふとあることを思った。

サスケも一族の子どもである。

歳はナルトと変わらないのであれば十三かそこらだろうか。

個人差はあれど、サスケもあの火遁の術を使えていてもおかしくない。

子どもにできる術の規模など知れている。ナルトからサスケはアカデミーでの成績も良く、ナンバーワンルーキーと呼ばれていると色々と聞かされていた。

里にとっても期待の新人なのである。

マダラとしても、サスケが最後のうちは一族の子どもとしてどれくらいの実力があるのか、測ってみても良いだろうと興味が湧いた。

 

「砂利。うちはは火遁が得意だとは聞いているが……豪火球の術は使えるのか」

「当たり前だ。見てろ、おっさん」

 

サスケはマダラの側に歩み寄り、印を結び指を口元に持って行くと、川に向かって術を繰り出した。

ゴウッと音が響き炎がマダラの視界を染める。

サスケも加減はしているが、少年の背丈よりも大きな炎は水面を赤く照らした。

 

(……さすが頭領一家の子だけある、か。ナンバーワンルーキーと言われているのも、伊達じゃないというわけだな)

 

マダラの幼少の頃の時代であれば、これ程の豪火球の術が使えれば問答無用で前線に駆り出されていたことだろう。

今は四人編成のチーム制で、それぞれの班の実力に合わせた任務が振られており、昔のように理不尽な戦場にいきなり放り込まれるということはない。

アカデミーの噂からも、サスケは体術もある程度は出来そうである。

サスケの豪火球が活かせる任務が来るかは知らないが、その齢であれば十分な規模なものではあるとマダラはふむふむと頷いた。

 

「どうだ、おっさん」

「……悪くはないな。誰に教わった? それとも、誰かのを見たのか。元の使い手が良かったんだろうな、印の結ぶ速さもそいつの真似だろう」

 

マダラがサスケに指導者は誰かと尋ねると、サスケは突然表情を落とし森の中は静寂に包まれた。

突如様子の変わったサスケに、マダラは余計なことを聞いたと気まずそうな表情に変わる。

亡くなった身内であることは想像に難く無い。

 

「……父さ、父だ」

「父親か」

 

サスケの声は、暗く落ちている。

マダラが話題を変えようと思った時、サスケが再び口を開いた。

 

「………………………まだだ、こんなんじゃ……イタチ」

 

サスケは一度父親から教わったと答えたが、しばらく間を空けてもう一人の名をつぶやいた。

その名を呼んだサスケの声はといえば、ナルト達とのやりとりでは聞いたことがないほどに底冷えしているものであった。

 

「誰なのか、聞いても」

「……兄、だった」

「だった?」

「あんなやつ、もう家族でもなんでもねぇッ」

 

最後は吐き捨てるような言葉であった。

事件があったとされる日から月日は経っているが、幼いサスケにとってはまだ記憶に新しい出来事なのだろう。

兄だというイタチのことを、家族でないと吐き捨てる程だ。

 

(話ぶりからして生きていそうだな……だとすると、まさか)

 

マダラはある推測に至り、いかに自身が愚かな質問を振ったかと後悔することになった。

サスケが一族の生き残りであれば、その兄を生きていると言い恨んでいる様子なのであれば即ちそれはーー。

 

「俺はアイツを、いつかこの手で殺してやる」

 

(事件を起こしたのは、コイツの兄か)

 

一人で他の一族の人間全てを手にかけたのだろうか。

なぜ、サスケだけは生かされたのか。

 

(弟に恨まれるとは、生きた心地がしないだろうな)

 

千手を恨んだイズナでもこんな顔をしただろうかと思うくらいには、サスケはその歳でして良い表情をしていなかった。

兄が下手人であることを知っているとは、さては事件の日に会っているのか。

 

「だから、俺は強くなる必要がある。アイツを殺すためにも。再不斬みたいな奴らに遅れを取ってる場合じゃねぇんだよ。早く教えろ、おっさん」

 

サスケは兄のイタチを殺そうと、マダラに教えを乞うている。

だが兄弟殺しをさせるために修行を見るつもりはないと、マダラは瞳を閉じて思案した。

マダラが強くなった理由は、当時攻勢であった柱間が率いる千手を倒すためでもあったが、まずは自身の背後にいる弟や一族の仲間を守るためでもあった。

結果はほぼうちはの負けで終わったが、決して復讐のためだけに力をつけたのではない。

弟に恨まれる兄の気持ちとはどんなものだろうか。

そして兄を恨む弟の思いとは。

イタチと元から仲が悪かったのであれば、サスケだけを生かすこともないだろう。

 

「……復讐のために強くなるのなら、お勧めはしないな」

「っ!? アンタに何がわかるんだよ! 何も知らないアンタに!」

「ああ、何も知らん。だが、見たものだけが真実だと思うな。お前の兄はさぞ優秀な忍だったんだろうな。自分だけ生かされた理由を、考えてみろ」

「そんなの、俺への腹いせに決まって……決まって、る」

「……俺にも弟がいたが、身内を殺せと言われても弟達だけは手に掛けられる気がしない」

「弟がいた、のか……?」

「ああ。俺に親友だなんだと語っていた奴の弟に殺された。戦の時代だったしな」

「そ、れは……そいつの弟を、殺したいと思ったことはねぇのかよ」

 

マダラは足元にある、平べったさのある石を一つ広い上げ、川面に向かって投げた。

石はリズム良く水面を跳ねると向こう岸にたどり着いた。

 

「思うさ、今だってな。アイツさえいなければと、ずっと思っている」

「じゃあ、なんで」

「いつだってやろうと思えば殺せた。が、復讐をして弟が帰ってくるわけでもない。サスケ、お前が復讐をしたいのならすればいい。何も知らないままな」

「なんで……んなこと言うんだよ」

「おっさんからのお節介だとでも思っておけ。それに、お前は俺の弟に似てたからな」

「弟に……名前は?」

 

マダラは少し悩んだ後、口を開いた。

 

「イズナだ」

 

弟の名を呼んだ時の声は、寂しさを残しつつも暖かな色をしていた。

マダラが弟の名を紡いだ時、サスケは優しかった頃のイタチの顔が浮かんだ。

そして同時に、惨劇の日に会った、最後に見たイタチの姿が思い出される。

 

(どっちを信じたら良い、俺は。なんで、イタチは)

 

そういえばあの事件の日以来、初めてサスケは兄のことを他人と話したかもしれないと思った。

火影や事情聴取に来た里の忍には当事者として話をした覚えはあるが、こうして自身の思いに向き合ったことはなかったかもしれないと。

よく考えてみれば、イタチが突発的にあの事件を起こしたとは考えられ難かった。

イタチも所謂天才と呼ばれていた部類であるが、そうだとしてサスケの父であるフガクが易々とイタチの手にかかるとも思えない。

もしかすると、殺された父と母は何か知っていたのかもしれない。

 

(俺に復讐させるためなら、なぜアンタはあの日泣いていたんだ……クソッ)

 

サスケはマダラを見上げた。

先程の憎しみのこもった目ではなく、いつものサスケの表情である。

 

「おっさん……協力しろ」

「何をだ」

「イタチを、あの野郎をとっ捕まえて話を聞きたい。だからこの任務が終わった後も、修行を付けてくれ」

「……何か考えるところがあったんだな。別に良いが、カカシには言っておけよ」

 

話を聞いたとしてイタチのことを許せるかはわからないが、幼かったサスケにとってはあの事件はあまりにもいきなりの事すぎた。

復讐するのは、イタチの話を聞いてからでも遅くはないだろう。

サスケは足元にある石を一つ拾い上げる。

先程マダラが投げたのを真似し、水面へと投げた。

石は一度だけ水の上を跳ねると、音を立てて沈んでいった。

 

「……コツがいる、コツが。気持ち上に投げろ」

「今のは、適当に投げただけだ! 本気を出せば届くんだよ」

 

サスケの言い訳にマダラが口角を僅かに上げ、静かに鼻で笑った。

マダラの反応が気に入らず、サスケは足元にある石を再び拾うと少し上向きに投げた。

先程よりは跳ねたが、石は向こう岸に届く前に沈んだ。

 

 

 

 

 

夕方タズナの家に戻ると、先に帰っていたカカシにどんな修行をしていたのか二人は尋ねられた。

マダラと一瞬顔を見合わせたサスケが、カカシの問いに答える。

 

「水切りだ」

 

 

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