おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第12話

 

穏やかな波の音と、小さな寝息が鼓膜をくすぐる。

晴れた空を写し青を反射する水面は、外を明るく照り返していた。

マダラは窓の外を眺めていると、背後で布団の動く音がして振り向いた。

寝癖を付けたナルトが寝ぼけ眼でマダラを見上げている。

 

「あ、れ……みんなは?」

「もうとっくに出てるぞ」

「え……えー!?」

 

ナルトは慌てて布団から飛び出した。

ワーと叫びながら慌ただしく身支度を整えていく。

 

「なんでみんな起こしてくれなかったんだってばよー!」

「ゾロゾロ橋を見に行っても仕方ないだろ。どうせ寝てるなら、起こさなかっただけだ」

「でもでもでも、俺だけだってば! おっちゃん! みんなのとこ行くってばよ!」

 

今日は七班総出で、タズナ達が建築中の橋の工事現場を見に行く予定であった。

だがナルトは昨晩遅くまでサスケと何やら話し込んでいたようで、睡眠時間が足りていなかったのか寝坊してしまった。

マダラも夜更かしは程々にしておけと注意はしていたが、二人とも桟橋の上で座り込み話が盛り上がっていたため、無理に寝かしつけることはしなかった。

『打倒! おっちゃん計画!』なるものを企てているようで、おっちゃんは後ろが弱いとか不意打ちを狙うしかないだとか、マダラはやるならもう少し小声でやれと思いながら、二人に背を向け寝支度を整えたのだった。

ナルトは寝る時はかなりぐっすりと眠る。そのせいか、出発予定時刻を過ぎても目覚めることなく、そして人手的にもタズナの護衛に四人も五人もついて行く必要はないだろうとカカシとマダラが判断し、起きるまで放置したのだ。

サスケはというと問題なく起きており、カカシ達と出発している。

マダラは袖に上手く腕が通らずブンブン振り回しながら着替えるナルトを見ながらはいはいと返事をすると、様子を窺っていたツナミに自分達も行ってくると伝えた。

 

家を出る時に、イナリがひょっこりと家の戸から顔を出し、ナルトのことを見送った。

マダラには威圧感があるのかあまり近寄ってこないが、いつのまにかナルトとは仲良くなっていたらしい。

まだイナリの表情に固さは残るが、初日に比べればナルト達の前に姿を見せるようになっていた。

マダラは早歩きで向かうナルトについて行き、建築中の橋へと向かうべく整備された道を歩く。

途中、眼帯をした上裸の男と帽子を被った、刀を持った浮浪者のような身なりの男二人とすれ違った。

男たちは何やらニヤニヤしながら、今しがたマダラたちが歩いてきた道の先へと向かっている。

奥には桟橋があり、その先はタズナの家くらいしかないのだが。

マダラは不審がられないようナルトの後をついて歩きながら、男達と距離が出来たのを確認すると、小声でナルトに話しかけた。

 

「…………今の二人組、武装していたな。家に戻るぞ」

「……おう、おっちゃん」

 

ナルトが頷くと、二人は同時に踵を返し、タズナの家へと走り出した。

家に着くなり目に入ったのは、鋭利なもので切り刻まれ風穴を開けられた玄関扉と、座り込むツナミを庇うように両手を広げ男達に立ち向かっているイナリの姿であった。

イナリがツナミを守ろうと一人の男に体当たりし、その男が気を取られているうちにナルトが蹴りを入れ男を転ばせる。

その間にマダラがもう一人の男の腕を捻り上げ、片手間に倒れた男の肩を強く踏みつけ床から動けなくさせ、男どもが抵抗を諦めたところで縄でぐるぐる巻きに縛っていった。

マダラは男達を縄でキツく締め上げると、ナルトにイナリとツナミを違う部屋に連れて行くよう促した。

家のドアは無惨な状態で、もしかするとツナミもイナリもどこか怪我を負っているかもしれない。もし怪我をしていたら、手当ての必要があるだろう。

そして男達が素直に答えてくれればいいが、もしすんなりとここにきた目的とやらを話さなければ、これから行う尋問も手荒くなる可能性がある。

そうなれば幼いイナリには見せない方が良いだろう。

ナルトが二人を上の階へ連れて行ったのを確認すると、マダラは男二人を無表情で見下ろした。

 

「ここに来た目的は何だ、全て吐け」

「へっ……今更聞いたところで手遅れだぜ?」

 

眼帯をした男が答える。

いまいち的を射ていない回答に、マダラは訝しげに尋ねた。

 

「何が言いたい。手遅れだとは、何がだ」

「ふっ……へへへへへ」

 

周囲の空気が凍るような程の鋭さで、マダラは男の目をキツく睨む。

共に縛られているもう一人の男が小さく悲鳴を上げたのが聞こえた。

だがマダラに問いかけられている男は目を逸らしているからなのか、それとも余裕があるからなのかは分からぬが、この状況で笑うことが出来るほど飄々としている。

マダラはもう一度男に目的を尋ねたが、ゲラゲラ笑い声を上げるだけで欲しい答えは得られなかった。

 

(頭のネジが外れているのか、コイツは。話にならん)

 

タズナの家を襲撃するくらいである。

ガトーの一味に違いはないだろう。身なりから忍ではないことは確かだが、それぞれ武器を携えていることや家の惨状といい、素人ではなさそうだ。

一応橋にはカカシ達が向かってはいるが、もしものことがありこの護衛任務が失敗に終わった場合、イナリは祖父を失うことになりかねない。

波の国の滞在中はタズナを護衛すると約束してしまったため、任務を請け負った里の信頼のためにもそれは守らなければなるまい。

マダラは男の言う手遅れという言葉がやけに気に掛かった。

手短に終わらせようと、マダラは瞳の色を切り替える。

 

「時間もないようだしな……残念だ」

「ヒヒッ、この国はガトー様の、っ!」

 

男がマダラを見上げた時、ピタリと言葉は止んだ。

二人の男はマダラの瞳を見て目を見開くと同時に、意識がまどろんでいくのを感じた。

見たことのない、赤い瞳に意識が朦朧として行く。

 

「さあ、話してもらおうか。何を企てている」

 

まどろみの中にいるような、そして夢の中へと落ちて行くような感覚で、男たちはこれから起こる出来事を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

『ガトーが仲間を引き連れ橋に向かっている。今日タズナやその仲間を始末するつもりだ』

 

そう男達は吐いた。

今頃橋にはカカシ達が居るのだろうが、男達の口ぶりでは一時間もかからずガトー達は橋に到着するだろうと予想された。

マダラは話を聞き終えると、男達が急に暴れたりしないよう幻術で眠らせる。

マダラが眠る男達を見下ろしていると、ナルト達が階下にやってきた。

タイミングとしては申し分ない。

マダラはナルトに今し方聞いた話を伝えると、カカシへの伝令を任せた。

 

「ガトー達が向かっている可能性が高い。一刻も早く知らせに行け」

「ガトーが⁉︎ わかった! カカシ先生のとこ行ってくる。おっちゃん、イナリ達お願いしていい?」

 

ナルトはマダラの話を聞くと、急いで家を出た。

吹き曝しとなった玄関から出る時、ナルトが一瞬だけ家の中を振り返る。

 

「イナリ! さっきのすげぇカッコよかったってばよ!」

 

そう言ってナルトは颯爽と去って行った。

 

 

 

 

 

ナルトが橋に到着した頃、橋の上は霧が立ち込め再不斬と面をした一人の少年がカカシ達と対峙し既に戦闘が始まっていた。

サクラはタズナを守るためにクナイを構えながら立ち、カカシは再不斬と交戦し、サスケは奥の方にいるのか霧のせいで近づかなければ確認が難しかった。

ナルトはゆっくりとサクラとタズナの側へと歩み寄った。

 

「……! ナルト、あんた」

「待たせたってばよ、サクラちゃん! 今って、どうなってんの」

「見ればわかるでしょ、アイツが生きてたのよ」

 

サクラは恐怖心を表に出さぬよう気丈に振る舞っているが、声が強張っているのをナルトは感じ取る。

戦況は、あまり良いとは言えなさそうであった。

ふと、ナルトは微かに漂う血の匂いに顔を顰めた。

霧の中、ナルトは自身の手前側に立つカカシよりも奥にいるサスケに焦点を合わせる。

目をよく凝らしてみると、奥では何枚もの分厚い氷の板が宙に浮き、サスケを取り囲んでいた。

氷の壁の中で、サスケの身体がぐらりと傾く。

その時、側に立つサクラから悲鳴が上がった。

 

「サスケくんッ‼︎」

 

どさりと人の倒れる音。

ナルトはその音を立てた人物がサスケであると理解するのに、そう時間はかからなかった。

 

負けた?

やられた?

誰が?

サスケが。

誰に?

気がつけば、ナルトは倒れたサスケを庇うように氷の壁の中へと飛び込んでいた。

 

 

 

 

 

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