おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第13話

 

マダラはナルトが向かった橋の建設現場へと向かっていた。

 

ガトー一味による襲撃にあったツナミとイナリを見ていたのだが、ナルトが出て行った後、イナリが橋が狙われていると周囲の大人達を呼びかけに回った。

イナリの勇気に心を動かされた島民が集まり、島民同士で何があっても波の国は守り抜くと、先にナルト達と合流して欲しいとマダラはイナリ達に背中を押されたため、橋に向かうこととなったのだ。

再不斬のような手練れが現れた場合、カカシ一人では対処しきれない可能性もある。

マダラはチャクラを集中させ周囲を警戒しながら、建設現場へと向かった。

再不斬だが、彼の遺体を回収した忍は霧隠れの追い忍だとカカシは言っていたが、やけに手早く遺体の回収をしていたものだ。

遺体の処理を見せないための、ナルト達への配慮のための可能性もなくはないが、赤の他人にそこまでする義理もないだろう。

そんなことを考えながら橋の近くまで着くと、視界の先では不自然に霧が発生しており、嫌な予感というのは当たるものだとマダラは眉間に皺を寄せた。

再不斬が生きている。

チャクラ切れを起こした日からカカシも殆ど回復したと言って良いが、再不斬を倒すのに少しばかり決定打に欠ける印象があった。

いくら一度戦った相手でカカシが写輪眼を持っていようが、守りの手薄な子ども達の方へ狙いを定められればカカシもそう簡単に首を取りに行くこともできまい。

互角の相手と戦いながら後方を守るのは、かなり気が張るものだ。

 

カカシ達と合流しよう、そう思い橋に近づいている時だ。

マダラは禍々しいチャクラの気配を察知した。

 

(⁉︎ こ、れは)

 

今までに感じたことのない、周囲を圧するようなチャクラである。

到底人のものとは思えないようなそれに、マダラはハッとすると急いで霧の立ち込める橋の上へと飛び込んで行った。

 

(……九尾だな。まさか封印が解かれたか)

 

四代目火影が封印術でナルトの中に九尾を収めたが、何かの拍子で緩んでしまったのだろうか。

九尾の方からナルトに何か接触があった可能性も考えられる。

ナルトに九尾を制御する力があれば良いが、この二年暮らしてみて尾獣のチャクラが漏れ出すようなこともなければナルトが九尾の存在を気にするような素振りもなかった。

ナルトに期待するのは少しばかり酷であろう。

カカシはともかくサクラやタズナがいるのであれば、早く封印し直さなければ周囲への被害は甚大なものとなりかねない。

マダラは再不斬と交戦しているカカシの側に降り立つと、奥から感じる禍々しいチャクラに目を細めた。

 

「っ、タジマさん」

「これは一体どうなっている」

 

「ゔぅぅ……」

 

霧の向こうから赤いチャクラが見え、ナルトの呻き声が聞こえた。

その声はどこか苦しげでもある。

 

(ナルトの身体にあのチャクラは負担が大きい……やるしかないか)

 

九尾を万華鏡写輪眼で操れることは知っている。

今のマダラでもそれはできるだろうと、この万華鏡写輪眼の力は通常の写輪眼とは違うことはよく理解していた。

九尾を幻術に掛け、ナルトの体から溢れ出しているチャクラの流出を止める。

マダラはナルトの元に駆け出すと、瞳を切り替えた。

ナルトは自身の元へ走りくるマダラの姿を認めると、両方の眼が赤くなっているのに気がついた。

 

(おっちゃんの写輪眼だ)

 

だがカカシとは形が違う。

どうしてマダラは写輪眼で見つめてくるのだろうか、ナルトは理解が追いつかなかった。

ナルトの足元には、身体中を武器の千本で刺され倒れているサスケがいる。早くサスケの治療をしないと、おっちゃんに頼めばーー、そうナルトが思った時だった。

ドクリ胸の音が鳴った。

ナルトは喪失感ややるせなさで胸を埋めていた感情が、動悸と共に激しい怒りに変わっていくのを感じた。

恐れや怒り、不安が大きく心を塗りつぶしていく感覚がする。

だがこれは自身の感情ではない。一体誰の。

 

『その目は⁉︎ やはり貴様ァ……マダラァァア!!!』

 

頭の中に誰かの声が響き渡った。

ナルトは突然沸いた大きな憤りの波に意識が飲まれ、闇へと落とされていった。

意識が落ちる寸前、マダラがナルトの目の前に辿り着き、赤い瞳と交差する。

ナルトはその瞳をじっと見た。

 

「あ……おっちゃ……」

 

マダラが来たことによる安心感と、同時に大きな恐怖心が胸の内に沸いた感覚を最後に、ナルトは意識を手放した。

ナルトの身体から溢れ出てていたおぞましい気配をしたチャクラは徐々に収束し、ナルトがふらりと後ろに倒れそうになるのをマダラが抱き止める。

マダラは同時に足元にいるサスケに気付き、ナルトを支えながら姿勢を低くしサスケの首元に手を当て、脈があることを確認する。

直に目覚めることだろう。

ナルトの様子が落ち着き、皆状況を窺い静まっている中、マダラはカカシに向かって声を張り上げた。

 

「ガトーらがここに向かっている! カカシ! お前は再不斬の足止めを、サクラはタズナを連れて早く橋から離れろ!」

「なんだと、聞いてないぞ」

「……?」

 

マダラの言葉に一番大きな反応を示したのは再不斬であった。

マダラは再不斬に目を向ける。

 

「ガトーが? おい、誰から聞いた」

「タズナの家にガトーの仲間が現れた。そいつらから聞き出した」

「……どうなってやがる。おい、白」

「はい、再不斬さん」

 

再不斬はナルトの近くに立っていた少年に声をかけた。

少年は額を切っているのか顔から血を流しており、足元には割れた面が散らばっている。

白と呼ばれた少年はマダラが抱えているナルトと倒れているサスケを一瞥すると、再不斬の元へと歩いて行った。

その足取りは少しばかりぎこちない。ナルトの暴走に巻き込まれた際に、足を怪我したか。

すると橋の奥の方からゾロゾロと群衆の足音が聞こえ始めた。

霧の中から大勢のならず者を引き連れた、背丈の小さな中年の男が現れる。

男は黒いスーツに、小さな丸鉢のサングラスを鼻にかけていた。

 

「まぁだ終わってねェのか、再不斬よォ」

「ガトー、何のつもりだ」

 

今し方現れた男がガトーのようだ。

再不斬がガトーに問いかける。

 

「少々作戦が変わったもんでねェ……いや? 何、始めからそうするつもりだったんだが」

 

お前らごと始末しにきた、ガトーは再不斬達に向かってそう告げた。

それには再不斬も雇い主であったガトーに怒りを込めた目を向ける。

突然の再不斬達の仲間割れに、カカシは取り出していた武器を仕舞うと、彼らのやりとりを伺った。

再不斬はガトーがベラベラと話す内容を、恐ろしい程静かに聞いていた。

 

「元々お前らに金を支払うつもりもない。ハッ、霧隠れの鬼人と聞いてたが所詮こんなもんかねェ……ただの可愛い小鬼ちゃんってとこだなァ」

「……言いたいことはそれだけか」

 

ヒュンッと風を切る音が響く。

ガトーの後ろにいる誰かが、矢を再不斬達のいる方へと放った。

再不斬は白の前に腕を広げると、その矢を受け止める。

深々と刺さる矢の先から、赤い血が滴り落ちていく。

矢は白の目の前で止まっていた。

 

「再不斬さん!」

「白、お前のその足じゃ足手纏いだ」

「ざ、再不斬さん、僕はまだ」

「おいカカシ……今の俺達にはタズナを狙う理由がない。戦いも終いだ。悪いが、コイツのことを頼めるか」

「再不斬……ああ」

 

再不斬が白をカカシの方へと押し出した。

足の痛みで踏ん張りが効かない白は、カカシの方へとよろめく。

 

「フッ……俺が小鬼かどうか確かめさせてやろうかァ?」

 

再不斬は腕の怪我を感じさせぬ動きで、首斬り包丁を構えた。

ガトーが慌てて背後の手下を振り返り、再不斬への攻撃を開始する。

だが手下達が動くよりも早く再不斬がガトーへ迫り、大きな刃がガトーの細い首に当てられ深く食い込んだ。

怯え切った瞳で命乞いをする間も無く、首元にある刃は無慈悲にも横へと引き抜かれ、ガトーはその生涯を閉じた。

ガトーの首がごとりと橋の上に転がり落ちる。

ゆらりと再不斬が群衆の方を振り返った。

再不斬の首斬り包丁には、今し方切り落としたガトーの血が滴っている。

 

「……次はどいつからがいい」

 

海底の底から響くような再不斬の声に、群衆は慌てふためき橋から逃げ出した。

波の国を牛耳っていたガトーであるが、最後はあっけない物であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

ナルトの目が覚めたのは、その日の夜中のことであった。

タズナの家に戻っており、借りていた部屋に寝かされていた。

 

「ッ……サスケ‼︎」

 

ナルトは橋の上で倒れていたサスケの姿を思い出し、勢いよく起き上がった。

サスケはどうなったのだろう、再不斬との戦いは。

ナルトは心臓が早鐘を打っているのを不快に思いながら、ぐるぐると最悪の事態のことを考えた。

何故気を失ってしまったのか。

最後に記憶に残るのは、マダラの変わった形の写輪眼だ。

薄暗い部屋の中、ナルトは両腕を力強く抱くと瞼をギュッとつむり俯いた。

 

「……うるせーよ、ウスラトンカチ」

「! サ、スケ……?」

 

不意に聞き慣れた声が聞こえてきた。

パッと横を振り返れば、隣に敷かれていた布団で、もぞもぞと寝返りを打つサスケの姿があった。

生きている。無事だったのだ。

ナルトは暫く呆けた後、心底ホッとするのを感じた。

ゆっくりと部屋の中を見渡してみると、サスケの奥にカカシが、ナルトのもう片側にはマダラが横になっていた。

カカシが片手を上げ、ひらひらと手を振り起きていることを示す。

 

「おっちゃん、カカシ先生……」

「お、ナルトは今お目覚めか。 悪いけど夜も遅いから、話なら朝聞かせるからね、もう少しおやすみ」

「カカシ先生、サスケは、大丈夫……なのか?」

「あのお面の少年、元々サスケを殺すつもりなんてなかったらしい。しっかり休めば問題ないよ」

「そ、か……うん。よかったぁ……」

 

ナルトは布団の上に背中を倒すと、布団を被りなおした。

皆無事だ。それが何よりもナルトを安心させた。

ナルトは寝返りを打ち、同じく起きていたマダラの方を向く。

 

「おっちゃん」

「……寝れなくても目くらい閉じとけ。あまり煩くするとタズナ達が起きるぞ」

「おっちゃん、おっちゃん。あのさ、あんまし覚えてないけど、何か夢見てたんだってばよ」

 

寝る前に少しだけ、とナルトが小声で話を続ける。

 

「夢の中で俺、アカデミーにいる時でさ。帰ったらとーちゃんとかーちゃんが待ってるんだって言ってシカマル達に言って早く家に帰ろうとしてて、帰り道歩いててさ……結局とーちゃんとかーちゃんの顔はみてねぇんけど、なんか不思議な夢だったてばよ」

 

夢の中の自分は、家で親が待っていてくれることを当たり前のように考え行動していたと、ナルトはボソリと言った。

隣で寝ているため、カカシとサスケにもその話は聞こえている。

 

「なんかすげぇあったけぇ夢だった」

 

里の中を歩いていても、変な風に見られることもなかったと。

 

「そりゃ良かったな。……また見たいか?」

「うーん……いいってばよ。また見れたら楽しいかもだけど、おっちゃんも、サスケもサクラちゃんも、カカシ先生もいるから俺ってばダイジョーブ」

「……そうか」

 

ナルトは満足したのかくるりと体の向きを変えた。

その後何も喋らなくなり、暫くすると規則正しい寝息が聞こえてきたため、眠ったようだった。

先程までずっと寝ていたというのに、あまりの寝付きの良さにマダラは驚きつつ自身も再び眠ろうと目を閉じる。

静かな夜であった。

 

翌朝、マダラは困惑した表情で目が覚めた。

波の音と、うみねこの声が外から聞こえてくる。

マダラはゆっくりと起き上がると、こめかみをグッと押しため息をついた。

何故か夢に父タジマがバリカンとハサミを両手に持って現れ、髪型をお揃いにしようと迫ってくる夢を見たのだ。

久々に見た父の姿ではあるが、悪夢のような夢に喜べばいいのか悲しめばいいのかわからず、マダラは妙な目覚めの悪さを持って朝を迎えたのだった。

 

 

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