おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第18話

中忍試験、第三の試験本戦の三日前のこと。

火影邸の一室で、ヒルゼンは会議に向かうための支度を整えていた。

姿見で被った笠の傾きを確認していると、控えていた忍の男にヒルゼンは尋ねられた。

男はつい先日マダラが単独行動をした際に、監視についていた忍である。

 

「火影様、本当にタジマを呼ぶおつもりですか」

「うむ。他里の忍が一番多く集まる日じゃ。大蛇丸の画策であらば、サスケにも関わることだと言えば、彼奴も断れんじゃろうて」

「ですがもし事が起き、タジマのことを他の重役達に知られれば貴方は」

「備えあれば憂いなし。ワシのことより里の心配をせい。それに、今までの彼奴を見てきておるじゃろう」

「それは、そうですが。火影様が仰るのなら……ですが、本当に良いのですね。依頼しますよ」

 

団子屋の出張販売をーー。

 

ヒルゼンは男の確認を求める眼差しに、静かにゆっくりと頷いたのだった。

 

 

 

 

 

中忍試験本戦の日、マダラは店主らと共に団子屋の出張販売を会場の入り口付近で行っていた。

営業は試合が始まるまでである。

試合の開始時刻が迫りマダラがチラチラと会場の方へ目を向けていると、店主にどうせもう閉めるのだから応援に行ってこいと背中を押された。

片付けくらいはやっていこうとのぼりを外していたら、早く行きなさいと、グイグイ物理的にも背中を押されてしまった。

 

「気にしないで、応援行っておいでなさいな。頃合いを見て、火影様への差し入れもお願いねえ」

 

店主は残りは監視役の一人と片付けをするからと言い、マダラに差し入れ用の団子を持たせると、とても微笑ましそうな表情でマダラを見送ったのであった。

 

マダラは中に入ると、観覧席に向かい階段を早歩きで登った。

急いで来たのもあり、エプロン姿のまま片手にはのぼりを持った状態で観覧席まで来てしまった。

席はほとんど埋まっており、なるべく人の集中していないところはないかと探していると視界の横でひらひらと何かが舞うのが映り、チラリと見ればカカシがマダラに向かって手を振っているのが見えた。

側にはカカシと同年代の男がおり、サクラも近くに座っている。

 

「タジマさーん、こっちこっち。一緒に見ましょうよ」

「カカシ、あの人はどちら様だ」

 

カカシの隣にいる眉毛の濃い男が尋ねる。

その濃い男の側には親子かと見間違える程見た目の似た少年が、松葉杖をそばに置きながら席に着いている。

カカシが男を見ながら答えた。

 

「ああガイ、あの人はねイチャパラ仲「タジマだ」」

 

カカシからイチャパラの単語が聞こえた瞬間に、マダラは瞬身かと見紛うかの如く動きでカカシ達の元まで移動した。

近くにいるサクラが二度見するくらいには、必死な動きに見えた様だ。

カカシからイチャイチャパラダイスの上巻と中巻を渡されてはいるが、先日の尋問といい普段の通常任務といいあまり時間もなく、全てに目を通しているわけではない。

カカシが言い切る前で良かったとマダラが胸を撫で下ろすと、ガイと呼ばれた男と目が合いニカっと歯が輝く程の笑顔を向けられた。マダラは太陽かと思う程のあまりの眩しさに目を細めた。

 

(この男、濃いな。只者ではなさそうだ)

 

マダラから困っている様子を感じ取ったサクラはカカシ達とのやりとりを見計らい、マダラに空いていた自身の隣席を勧めた。

 

「タジマさんお久しぶりです。良かったら隣どうぞ」

 

マダラはガイとカカシから目を逸らすと、サクラの声がした方を振り返った。

ナルトからサクラが第二の試験中に髪を切ったことは聞いていたが、マダラが彼女に会うのは今日が久々で、実際に見ると長かった髪は肩につく程の長さまでに切り揃えられていた。

サクラが勧める空いている席の反対側には、金髪の長い髪を高い位置で結えた少女がおり、その少女はタジマを見て誰かと首を傾げる。

 

「サクラだぁれ?この人」

「前に言ってたナルトのおじさん。あのお団子屋によくいる人」

「ああ! この人がそうなの!」

 

サクラの横にいた少女は驚いた顔をすると、すぐにどうもと頭を下げた。

山中いのと言うそうだ。山中一族といえば、心転身の術の使い手である。

マダラはこの席に混ざっても良いのだろうかと思うが、誘われてしまったのもあり、今更場所を変えることもできまい。

のぼりを軽くたたみサクラの示す席の足元に置くと、ゆっくりと腰を下ろした。

観覧席から競技場内を見下ろしてみるとナルトもサスケも既におり、予選を突破した参加者らが横一列に並んでいる。

見下ろしているとナルトの顔が観覧席の方へと上がり、左右を見渡した後マダラと目が合い手を振りだした。

ナルトの隣に立っていたサスケが、ナルトの動きになんだとその視線の先を辿る。

マダラは二人に見上げられる形となった。

 

「あ、二人ともこっち見てるよサクラ」

「ほんとね」

(全く二人して、集中しろ)

 

マダラは手を振り返すことはせず、前を向けと払い除けるような仕草をした。二人とも伝わったのかは知らないが、マダラから視線を逸らすと試験官の方をまっすぐ見始める。もしかすると、向こうでも何か言われたのかもしれない。

 

観客はまだかまだかと、試合の開始を待ち侘びている。

この競技場の観覧席は主に三つに分かれており、中央の一番上の席には火影のヒルゼンと風影が座している。

ざわざわと話し声のしていた会場であったが、ヒルゼンが立ち上がり開始の宣言を始めると一気に静まり返った。

 

『みなさま、よくぞお集まりいただきました。この時を長く待ち侘びていた事でしょう。ーーこれより、中忍試験 本戦を開始する!』

 

ヒルゼンの号令により、大きな歓声が会場内に轟く。

マダラは席に戻るヒルゼンをじっと見据えた。

 

(そういや、『最終戦の後でもだんごの差し入れを持ってきてもらえないか』だとはな。風影との茶請けにでもするつもりなのか。それに)

 

サスケを狙う人物が会場内に紛れ込んでいる可能性があると、ヒルゼンはマダラに言っていた。

団子を持って来させるのも、試験中に何かあった際にマダラがヒルゼンと連絡を取りやすくするためであろう。元々来させる予定があれば、疑わずに近寄れるというものだ。

マダラは団子が潰れぬよう、そっとサクラの座る席との間に置いた。

ナルトは一試合目だが、サスケが最終戦に控えている。

全ての試合が終わればヒルゼンは別の場所に移動するだろう。その前に団子を渡すとなると、サスケの試合は移動しながらの観覧となるだろうか。

 

会場内に、司会役の声が響き渡る。

 

『第一の試合 うずまきナルト対日向ネジ。両者前へ!』

 

第三の試験本戦の幕が上がった。

 

 

 


 

 

ナルトとネジの試合は、体術の技術比べであればネジの優勢であった。

ナルトがネジの拳をくらい、殴り飛ばされる度にサクラが小さく悲鳴を上げる。

不安そうに見守るサクラの傍では、マダラが腕を組みながらネジとナルトの動きを冷静に目で追っていた。

 

(日向ネジ、ナルト達より一年先にアカデミーを卒業している。動きはさすがあの日向一族か。やはり真っ向からの体術勝負じゃ、ナルトに分が悪いか)

 

影分身で一斉に攻撃を仕掛けたところで、ネジの白眼の視野からは逃れることはできず。どこから狙っているのか全て割れてしまう。

忍術をぶつけようと考えたとて、ネジの繰り出す回天という技の前には無効化された。

白眼の視野でナルトの点穴が狙われ、かろうじて避けてはいたものの何度かネジの突きをくらってしまい、ナルトのチャクラの流れはいくらか止められてしまっているようだ。

余裕そうなネジとは対照的に、少しずつであるがナルトの息は上がってきていた。

ネジは何やらナルトに話をしているようで、マダラは声こそは聞き取れぬが唇の動きや状況から会話の内容を予測する。

話しているうちにネジが額当てを外し、その下からは呪印のような紋様が見てとれた。

 

(大方、身の上話か。本家と分家の問題は、どこも然して変わらんな)

 

「ナルトッ……」

「サクラ、何あんたが不安がってるのよ。 あのナルトがここまでネジ相手に立ち回ってんのよ、あんたが諦めてどうすんの!」

「! そうね、いの。うん、ナルトは頑張ってる!」

 

サクラはぎゅっと膝の上で拳を握ると、声を張り上げる。

 

「ナルトー! まだまだこんなもんじゃないでしょアンタは‼︎」

 

サクラの声が聞こえたのか知らないが、苦しげだったナルトの顔色が少し明るくなる。

ナルトはめげずに影分身の印を結ぶと、周囲に三体出現させネジへと一斉攻撃を仕掛けた。

全力を振り絞ったような勢いだが、ネジは無駄だと鼻で笑うような表情でナルトの影分身の攻撃をいとも簡単に避け、柔拳で一体ずつ叩き潰して行った。

影分身は消え、ほとんどの点穴を突かれたナルトは倒れそうになる。

もうナルトは戦えないだろうと、ネジは目元に集中していたチャクラを止めると通常の視界に戻した。

もう決着はついたと、観客の皆がそう思い会場内が静まる。

だがマダラは隣で絶望したように口を開き固まっているサクラや、ナルトでは無理だったかと諦めの表情を浮かべるいのとは変わり、一人だけ目を見開き気分を高揚させていた。

溢れそうになる笑みを抑えながら、マダラはナルトとサスケの修行を見ていた日々を思い出す。ナルトとサスケが、なんとか二人で一度でもマダラに触れようと攻撃の試行錯誤を繰り返していた時のことだ。ただ攻撃しに行ってもすぐに急所を取られてしまい、どうにか時間稼ぎや不意をつけないかと二人が考えた結果、マダラは一度ナルトの分身の術に騙されたことがあった。

 

(日向のガキは、あれが影分身だとまだ気付いていないようだな。サスケとナルトの両方を相手していた時にやられたが、あの時はナルトが散らかしたクナイの一つだった。上手く騙せたじゃないか)

 

 

堪えていたナルトだが、やがて地面にうつ伏せに倒れ込んだ。

ネジは倒れたナルトの元まで余裕の足取りで歩み寄ると、関心のなさそうな目で見下ろした。

ナルトがまだまだと腕を立て立ちあがろうとした瞬間、ネジはナルトに拳を叩き込み、地面に沈めた。

地面には大きな陥没ができ、動かなくなったナルトにネジが勝利を確信した、その瞬間ーー。

 

「忍者は裏の裏をかくべし! ってな。運命だとかそんなん誰が決めてんだ!」

 

突如ナルトの声が静かだった会場内に響いた。

いきなりネジの目の前にナルトが現れたのだ。

会場は一気にどよめき、そしてナルトは瞬時に踏ん張ると力一杯ネジを下顎から殴り飛ばした。

 

「おめーが無理ってんなら、そんなの、俺が火影になってから変えてやるってばよ‼︎」

 

ナルトの拳がネジに当たる音が観客の鼓膜を揺らし、そして大きく殴り飛ばされたネジは地面に背中を付けると起き上がることはなかった。

パラパラと、やがて大きな歓声と拍手と共にナルトの勝利が祝われる。

 

『勝者 うずまきナルト!』

 

ナルトは試験官から告げられた言葉を聞いた瞬間、マダラのいる方を振り返った。

誇らしげに見上げてくるナルトは、なんだか眩しく見えた。

 

 

 

 

試合後、次の対戦が始まるまでの間、マダラはサクラといのになぜナルトがネジの前に現れたのかを尋ねられた。

サクラはマダラがナルトの修行を見ていることは知っているため、何か思い当たる物はないかと思ったのだろう。

 

「タジマさん、なんであの時ナルトがネジの前に出てきたかわかりますか?」

「ああ。本体のナルトだが、最後の影分身の時に変化もしていた。影分身に戦わせている間は、本体は日向のガキの服にでも張り付いてたんだろう。あの日向でも、身近すぎて気付かなかったようだな」

「うっそ、ナルト。全然わかんなかった」

 

ナルトが黙って倒れるような人間でないことを知っているマダラだからこそ、倒れた方は影分身ではないのかと違和感に気付けたのだ。

修行時はギャーギャー言いながらも、どんなに疲れようとも喰らい付いてくるナルトなのだ。まだ意識も落ちていない段階で、喚きもせず諦めるような状況が想像できなかった。

お色気の術はさておき、分身の術や変化の術については、日に日に出来が良くなっている。

 

(あとはサスケかーー)

 

マダラは歓声の中、観客に笑顔を振り撒くナルトをじっと見下ろした。

 

 

 

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