おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第19話

試合の進行は概ね時間通りと言ったところだろうか、このまま行けば日が沈むまでには決勝まで終わりそうであった。

 

ナルトが風の国のテマリとの試合を終えたシカマルと共に、観覧席にやってくる。

ナルトは座っているマダラを見つけると親指を立てた拳を前に突き出し、ニシシと白い歯を見せ笑った。

マダラの代わりに、何故かガイがナルトに笑顔を返した。

 

 

 

競技場の中では、次の対戦者らが降り立っていた。

次は最終戦の、サスケ対我愛羅の試合である。

 

「サスケェ! 負けるなってばよォ‼︎」

「サスケくん、頑張ってー!」

 

観覧席から、ナルトとサクラがサスケに応援の声を張り上げる。

うちは一族最後の一人として元々注目を浴びていたサスケだが、競技場に降り立った瞬間会場内は先ほどまでの試合よりも大きな歓声に包まれた。

マダラは近頃サスケの修行は見ていないものの、時々会うカカシからイチャパラの感想を求められるついでにサスケの進捗は聞かされていたため、新術を覚えたことは知っている。術のことを聞けば、カカシがサスケの面倒を見たがったのも納得出来るものであった。

ナルトには内緒であると口止めされていたため、ナルトや恐らくサクラもカカシから何を教わっていたのかは知らないだろう。ここで初披露目となる。

 

試合が始まる合図が響く。

サスケも伊達にマダラとの修行について来れているわけではない。忍耐力に関してはナルトの方があるとはいえ、二人とも比べられない程根性はある方だ。意地の張り合いなら自身にも負けてないだろうなと、若い彼らにマダラは過去を懐かしんだものだ。

サスケの対戦相手の我愛羅は砂の国の忍で、ヒルゼンから聞かされた情報によれば風影の子であるそうだ。砂の国は一尾を所有しているらしく、ヒルゼンから我愛羅が人柱力であることも聞かされた。

ナルトに境遇は近いだろうが、纏う雰囲気からして他人を寄せ付けず威圧する様は、ナルトとは全く違う印象を持つ子どもであった。

マダラは静かにサスケを見守る。

 

(さて、どちらから動く)

 

我愛羅の周りには、彼が背負った瓢箪から溢れでた小さな砂の粒が無数に舞っている。

長い睨み合いの後、先に仕掛けたのはサスケだった。

サスケは一瞬で間合いに入る。あまりの動きの速さに我愛羅が一瞬顔色を変えた。

サスケの繰り出した拳や蹴りは全て砂に弾かれるが、攻撃が本体に当たらずともサスケは表情を崩すことなく一旦我愛羅から距離を取ると、攻撃の手を止める。

どうやら砂の動きを確かめていたようだ。

我愛羅の反応からして、砂の守りは硬いが、砂さえどうにかしてしまえばサスケが勝つのは難しくないだろう。

 

「サスケくん……頑張ってッ」

 

サクラの祈るような声が、隣から聞こえる。

また暫くサスケと我愛羅の睨み合いは続いた。

今度は我愛羅が先に動き、砂分身を作りながらサスケに向かい砂の塊をぶつけるが、サスケは写輪眼で見切り攻撃を避けるとどんどん間合いを詰めていった。

砂分身がサスケを掴もうとするが追いつかず、サスケの素早い拳の突きが我愛羅の顔面に迫る。

我愛羅は慌てて顔の横を砂で覆い攻撃を防ぐが、サスケはくるりと体勢を変えると地面を踏み締め、我愛羅の顎に向かい力強く蹴りを繰り出した。

会場からはどよめきと、歓声が上がる。

ナルトが先の試合で勝利を収めているのもあり、サスケも負けるまいとかなり本気のようだ。

この試合も、そう時間はかからずに終わるだろう。

 

(カカシにも体術を教えられていたようだしな。サスケには悪いが、そろそろ移動するか)

 

試合を観戦しながらマダラはそう思い、足元に置いていたのぼりに目を落としつつ隣に置いていた団子の包みを手に取ると、観覧席から立ちあがろうとする。

だがその時、競技場から鋭いチャクラの反応とチチチと鳥の鳴くような音が聞こえ、チラリと見れば我愛羅の砂の塊に向かい、サスケが攻撃を仕掛けるところであった。サスケの構えられた左手は、雷の性質を帯びたチャクラが覆っている。

 

「……あれか、覚えが早いな」

「あれってカカシ先生の、って、タジマさんは聞いてたんですか?」

「まあな」

 

この一ヶ月で、サスケは見事カカシから教わった術を自身のものにしたようだ。

我愛羅はサスケからの攻撃を防御するために、自身を更に分厚い砂の壁で囲った。完全に守りの体制に入っているが、サスケのあの術は我愛羅の砂を突破するだろう。

これまでの攻防でも、我愛羅はなかなかサスケに決定的な一撃を喰らわすことが出来ないでいる。

防戦一方の我愛羅は、かなり厳しい状況が続いている。

いくら砂の防御が堅く我愛羅を守ろうとも、サスケに届かない現状ではどちらが先に膝をつくかなど悩む必要もない。

 

(この試合、サスケに軍配は上がったな)

 

サスケの動きは速い。中忍ですらない相手との戦いなど、写輪眼も併せ持つ今のサスケにとっては敵ではないだろう。もう波の国の頃とは違う。

鳥のさえずりのような音が会場に響く。

サスケが走り出し、左手を我愛羅を覆う砂に迷いなく突き刺した。

破られるとは思わなかったのだろう我愛羅は、砂の中から驚愕の表情を見せる。

開いた砂の隙間は塞がらない。

サスケはこのまま次の攻撃を繰り出だそうとした。

観客は皆、固唾を飲んで見守っている。

勝者はーー。

 

 

 

だがサスケの試合が山場を見せる頃、チャクラを乱されるような感覚がマダラ達を襲った。

 

 

 

(ーー幻術⁉︎)

 

がくりと観客達の頭は下に垂れていく。

マダラはかけられた幻術を即座に解除すると、すぐに解術に成功した者の数を把握した。

今この観覧席で起きている者は一部の中忍以上の忍と、元々周囲に控えていた暗部やカカシにガイ、サクラ、そしてナルトだけであった。

ただナルトはぎゅっと目を瞑りながら、ずっと解除の印を結んだままでいるが。

マダラがもういいと、ナルトの頭を軽く叩く。

 

「解除したならさっさと起きろ」

「あいて。ビックリしたってばよ……」

「ナルト……! あんたも幻術だって気付いたのね。それにしてもなんでこんな」

 

ナルトとサクラは不安そうに辺りを見渡す。

すると突然、競技場の内側から風を切る音が聞こえ、マダラは床に寝かせていた団子屋ののぼりを手に取ると、飛んで来ていたクナイを弾き飛ばした。

カランとクナイの落ちる金属音が観覧席に響く。

 

「⁉︎ おっちゃん、助かったってばよ! なあ今、何が起こってんだ? なんでみんな寝て」

「ごたごた喋るのは後にしろ。ナルトお前はサクラの側に付け」

 

マダラはナルトにサクラの側から離れないよう言い付けた。

ナルトはクナイを構えながらサクラを背に守るようにして立つが、急に目を見開きヒルゼンがいる方の建物を指差すと大きく口を開いた。

 

「おっちゃん! アレ! あそこ! 大蛇丸だってばよ!」

「ナルト、大蛇丸って! サスケくんのこと狙ってたアイツ⁉︎」

「大蛇丸のヤロー、サスケだけじゃなくてじいちゃんのことまで狙ってんのか!」

「大蛇丸?」

 

マダラがナルトの指を差す方向を見ると、ヒルゼンの背後には風影の衣装を身に纏った長髪の人物が立っているのが見えた。

だが距離があり、その人物の顔までは見えそうにない。

マダラが目を凝らそうとした時、音の忍が観覧席に乗り込んだ。

音忍達が続々と現れ、マダラ達の前に立ち塞がっていく。

マダラは音隠れについては新しくできた里であること以外の仔細は知らないが、現状からして木ノ葉の味方でないことは明らかであった。

カカシ達も臨戦体制となり音忍の出方を伺っているが、どう見ても戦いになるのは避けられそうにない。

 

「ガイ、やっぱり仕掛けてきたな。タジマさんも、ちょっとお力添え願えますか」

「八人か、火影様の元にも急がねばな」

「……」

 

マダラはカカシの声掛けに返事はせず、ナルトとサクラを隠すようにして音忍達の前に立った。そしてやれやれとため息をつきながら、のぼりの端をトンと床に一度落とすと持ち直した。

マダラはめんどくさそうな面持ちで音忍達を見据える。

 

「……多少は戦えるんだろうな、お前達は」

 

マダラの気怠そうな呟きは、会場の殺伐とした雰囲気の中に溶けて消えた。

音忍達が一斉に動く。

マダラは特に身構えることなく、音忍達の攻撃を迎え撃った。

 

 

 

 

 

ナルトとサクラが頭を守りながらしゃがんでいる脇で、音忍の男がどさりと倒れ伏した。男だが、倒れたまま動きそうにない。

いつの間にか音忍達が投げていたクナイの雨が止んでおり、この観覧席に現れた音忍達は全て倒されてしまったようだ。

マダラは折り重なって倒れている音忍を見下ろすと、冷たく吐き捨てた。

 

「飛んでた虫も居なくなったか。木ノ葉も舐められたモノだな。里相手に仕掛けて来るのなら多少は骨のある奴らかと思ったが、期待外れも甚だしい」

「お、おっちゃん、言い過ぎだと思うってばよ」

 

なんの目的があり里に謀反を企てたか知らないが、もっとまともな人材は集まらなかったのか。

呆れた様子でいるマダラに、ナルトはこの場に戦いを仕掛けてきた音忍達に、少し哀れんだ目を向けたのだった。

音忍達もまさかエプロン姿の男が『だんご』と書かれたのぼりを片手に善戦どころか圧勝してくるとは思わなかっただろう。

他の忍による追撃が来ないことを確認すると、カカシとガイがナルト達の側にいるマダラの元に集まった。

カカシがナルトやサクラに怪我はないかと確認していると、ナルトがヒルゼンの方を向きながら口を開いた。

 

「カカシ先生! サスケもいねぇし、それにじいちゃんの方もなんかヤバそうだってばよ!」

「ナルト、慌てない慌てない。全ての忍術を扱えるあの火影様だ、大蛇丸相手に遅れは取らないはずだよ」

 

カカシの口調は、慌てた様子のナルトを落ち着かせようと優しげだ。

ナルトは人生で初の里の危機と呼べる状況に、若干混乱状態にあるのだろう。

マダラはヒルゼンのいる方へ視線を向けた。ヒルゼンは赤い結界の中に囚われているようだ。

その結界を作っているのは、四隅に立つ音の忍か。

ヒルゼンの側には暗部が何人か控えているようだが、手を出せていないあたり彼らには破れない程の強い代物なのだろう。暗部らが結界の四隅にいる忍にすら攻撃をする様子は見られないため、二重に張られてもいるようだ。

 

「でも、カカシ先生!」

 

ナルトの不安そうな声がマダラの鼓膜を揺さぶる。

 

「……俺が火影のところに行く。それなら良いだろう。元々団子を持っていく予定もあったしな」

「! タジマさん待ってください、向こうには大蛇丸がいるんですよ」

「大蛇丸とやらがいるからなんだ。お前らはさっさと他の奴らの援護をするなりサスケの捜索にでも行け」

 

マダラはそう言うと足元に落ちているクナイを数本拾いエプロンのポケット部分にしまうと、のぼりを持ちながら観覧席から飛び出した。

ナルトはマダラを目で追うが、カカシの声にすぐに振り返る。

 

「確かにタジマさんならどうにかなりそうだけど……ナルト、サクラ、お前達に任務を言い渡すからしっかり聞けよ」

「!」

「は、はい!」

 

カカシは一度ガイと目を合わせた。

ガイは無言で頷く。

二人の中で、これからの行動に関する考えは一致しているらしい。

カカシの口元の布が動いた。

 

「我愛羅を追ったサスケと合流し、サスケを援護しろ」

 

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