おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第2話

トン、と木に物が打ち付けられる音が森に響いている。

 

今日はアカデミーが休みの日。

ナルトは朝ごはんを食べ終えるとTシャツに着替え、おっちゃんことマダラにしゅぎょー行ってくる!と言い家から走り出ると、いつも修行で使っている森の中で、手裏剣の的当ての練習をしていた。

 

マダラが忍らしいことは会った時に聞いているが、昼間はぶらぶらと里を歩いているか三代目火影のヒルゼンと何か話しているかで、実際は何をしている人なのかナルトはよくわかっていない。

マダラはヒルゼンの協力の下、この時代の木の葉の里に来ることになったきっかけはないかと許可された範囲内(黙って調べに行くこともあるが)をおかしな所はないか探し回っていたり時空間忍術について探れる範囲で情報収集をしていたりするのだが、ナルトには暇人と思われている。

調査はしているもののマダラ一人にあちこちを調べられる訳にはいかないため、マダラの監視に暗部が張り付いていたりしていたのだが、それも初日からあっさりと見つかり、マダラは監視についた暗部を撒いたり時には身体を動かす相手に使っていた。

マダラとしては暇つぶしにもなるため暗部らを構っていたりしたのだが、そのせいか少しずつ監視についていた暗部らが近接戦に慣らされ強くなり、修行を兼ねたような付き合いに少しずつ親交を深めつつあることに、マダラはあまり気付いていない。

マダラだが、人付き合いに関しては不器用な男なのである。

監視の任務を与えられている暗部の忍だが、マダラの方から接触してくるためヒルゼンも咎めるようなことはしていなかった。

向かってこられたら対処するしかないのだから。

 

ナルトは顎の下に溜まった汗をぬぐった。

的に刺さったクナイと、地面にバラバラに落ちたクナイを拾う。

もう一度、全部当たるまで。

ナルトは的から距離を取ると、まっすぐにクナイを投げた。だが虚しくも、クナイは的の奥の茂みへと飛んでいった。

 

「あーー……っまだまだ! 諦めねーてばよ!」

「クナイの掴みすぎだ。ムキになっても当たんねぇぞ」

「んえ?! お、おっちゃん!? なんでここにいるんだってばよ!」

「いや、いつも張り切ってんなと思ってな」

 

ナルトは突如背後から聞こえた声に振り返ると、マダラがナルトの手元と的を見比べているのが見えた。

いつからいたのかと聞いてみれば、ナルトがここでクナイ投げの練習をし始めてからずっといたらしい。

もっと早く声をかけてほしかったってばよと、ナルトは心の中で思った。

 

「クナイ貸せ。こうすんだよ、よく見てろ」

「……! すげえ、真ん中だ!」

 

タンッと軽い音が的から響いた瞬間、ナルトはキラキラと瞳を輝かせた。

マダラの投げたクナイは、吸い込まれるように的の中心に当たっていた。

 

「んじゃ、投げてみろ」

「え゛。一回じゃわかんないってばよ、もっかい! もっかい!」

「たく、しょうがねーな。ちゃんと見てろよ」

 

ナルトにせがまれマダラはクナイをもう一本手に取ると、ナルトの視線が手元に注がれているのを意識しながらそれを投げた。

先程投げたクナイのすぐ右隣に、また軽い音を立ててそれは刺さった。

ナルトは聞こえてきた的の音に、わぁと小さく声を漏らした。

 

「ほら、投げろ」

「お、おう! 俺ってば、やればできるってばよ!」

 

ナルトは半袖を着ているにも関わらず、袖をまくり上げる動作をすると的に集中した。

息を整え、そしてクナイを投げる。

だがクナイは的の真横を通り抜けた。

 

「あー!」

 

ナルトはがっくしと肩を落とすと、クナイを拾いに向かった。

マダラはとぼとぼ歩くナルトの後ろ姿を眺めながら、少しばかり懐かしさに浸っていた。

 

(弟に教えてた頃を思い出すな……見てる限り当たってない訳じゃねえんだが。もうちょっとばかし、いや、あいつらの方が感覚的なあれは良かったか)

 

拾い終えたナルトが戻ってくると、マダラは腕を組んでナルトを見下ろした。

 

「五本だ。今日は五本連続で当たるまで帰れねえと思え」

「ひい! おっちゃん顔が怖いってばよ!」

「一旦クナイを置け。今からこの石を投げる。お前もその辺の石を拾って、それを俺の投げた石に当ててみろ。そこからやる」

 

ナルトが適当な石を見つけると、マダラはすぐに手元の石ころを高く上げた。

すぐに地面に向かって落下してくるそれをナルトが狙う。

石を投げてみるが、当たる様子はなかった。

 

「休んでる暇ねぇぞ」

「おう!」

 

気がつけばマダラの片手には石がたくさん握られており、休む間もなくぽいぽいと石が投げられる。

ナルトは必死にかき集めた石で空中にあるのを狙うが、そう簡単に当たらない。

だが十数回目だろうか、カチンと石の当たる音がした。

 

(やった! この調子で!)

 

全ての石に当てられるわけではないが、だんだんと感覚が掴めてきたのか当たる頻度が増えてきた。

だがマダラはまだ満足しないのか、延々と石を投げ続けてくる。

ナルトも負けじと石を狙い続け、二度連続で当たった時、ついにマダラが手を止めた。

何かあるのだろうかとナルトはじっとマダラを見つめる。

 

「次はクナイで石に当ててみろ」

「クナイで? でもおっちゃんに当たったらあぶなくない?」

「俺を誰だと思ってんだ」

「おっちゃんはおっちゃんだろ」

「……まあ、いいか」

 

マダラはなんの心配をしているんだコイツはと言いたげな目でナルトを見下ろすが、初めて名乗った時に反応が薄かった時点で本気でマダラのことを知らないらしいので、今更自身の経歴を話したところでナルトには大した面白話にもならないだろうと諦めた。

 

ナルトにクナイを持たせ、マダラは再び石を投げる。

タイミングという物がわかっているからか、クナイは石の近くを飛んでいる。

時折金属の音が響いた所で、マダラはナルトに的に投げるよう言った。

今なら的に全てとは言わずとも、始めた頃よりは当たるだろう。

今日のところは、真ん中に当たらなくても良い。

ナルトがクナイを投げる。

マダラの耳には的に当たる軽い音が響いた。

ナルトは、あっと少し喜んだ表情を見せると、もう一本投げた。

的のギリギリではあるが、綺麗な角度で刺さっている。

 

「見た?見た?」

「あと三本」

 

ナルトは続けて投げるが、今回は的の真横に行ってしまい外してしまった。だが、縁には触れているようでぶつかる音は聞こえた。

その後投げ続け、三本程度であれば続けて良い位置に投げることが出来るようにはなった。

集中力が切れたのだろうか、四本目を狙い投げたナルトのクナイが的の淵に弾かれくるくると回り地面に突き刺さった時、ついにマダラから止めの合図が出された。

日はすでにかなり傾いてしまっている。

 

「やめだ。ま、こんなもんだろ」

「俺、まだできるって!」

「適当に投げて当たるわけねーだろ。今日は帰るぞ」

「俺、俺、まだ」

「だめだ、明日はアカデミーだ。寝坊したらどうすんだ、今日はやめとけ。今朝見た時よりゃ、上手く投げれてんのは確かだぜ」

「え! ほんとに!?」

「嘘言ってどうすんだよ」

 

少し褒めてやれば、それがだいぶ嬉しかったのかナルトは帰ることに納得してくれた。

すると突然、二人の身体の奥から音が鳴り出した。

 

「……おっちゃん、腹へった」

「……だな」

「じゃあさ、ラーメンがいい!」

「……悪くないな」

 

せっせとクナイをかたづけ、ナルトはるんるんと町の方へと歩き出した。

いつの間にか日も落ち、空には三日月が登り始めている。

 

(ガキっつーもんは、元気なもんだな)

 

ナルトのラーメンが楽しみな様子は、後ろ姿を見ただけで伝わってくる。

修行の様子を振り返り、マダラはどこまで手出しするかと頭を悩ませた。

ナルトは火影になりたいらしい。

正直このままだと、火影になる前に忍になるのも難しいかもしれないとマダラは思ってはうーんと悩んだ。

マダラが幼かった頃と、今の時代は違う。

アカデミーの卒業生の実力がどんなものかは知らぬが、とはいえ任務がランク分けされ人によっては雑用をやらされてることや、時折手合わせする暗部のレベルからしてもマダラにとってはこの時代の忍の質は正直期待外れの出来であった。

それだけ平和に近づいているのかもしれない。

鼻歌混じりのナルトの朝から姿を見ながらマダラは思う。

体術を教えると言えば、喜んで食いついてくるだろうなと。

 

ナルトに絆されているなと実感する、マダラなのであった。

 

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