おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第20話

 

「衰えましたね、猿飛先生」

「……大蛇丸」

 

中央の観覧席、物見やぐらの屋根の上で、火影の衣装を脱ぎ去り忍び装束となったヒルゼンが大蛇丸と相対している。

結界の中に囚われている彼らは、互いに忍術を使い攻撃をしあっていたが、それぞれとどめを刺すというにはいまいち決定打にかけるような威力で戦っていた。

術の攻防は止み、互いに距離を取る。

ヒルゼンは苦そうな表情で大蛇丸を見据えている。

ヒルゼンの危機に駆け付けていた暗部らは、音忍達が作った結界を破ることができず、彼らの戦いをただ眺めていることしかできなかった。

大蛇丸は楽しみを抑え切れないと言った様子で肩を振るわせ、口寄せの印を結ぶ。

屋根が揺れ、大蛇丸の足元から現れた二つの棺にヒルゼンは僅かに焦りを見せた。

棺には「一」と「二」の数字が振られている。

 

(あの術はーー⁉︎ いかん!)

 

口寄せ 穢土転生

 

ヒルゼンは大蛇丸が使った術が何の術か瞬時に理解し、阻止するべく手裏剣を投げようと忍ばせていたところに手を入れた時であった。

突如、二度も鳴り響く爆発したような音と熱い突風が辺りに吹いた。

ヒルゼンの目の前で、四紫炎陣の結界を発動していた音忍の一人と大蛇丸が順々に起爆札で爆破されたかのように吹き飛ばされていく。

始めの衝撃で大蛇丸が振り返った時には、黒い影が既に目の前に迫っていた。

吹き飛ばされる直前、大蛇丸の目に見えたのは『だんご』と言う文字であった。

 

「ん? ……グハッ」

「大蛇丸様! 次郎坊⁉︎ なぜ結界は破られたんぜよ⁉︎」

「多由也、そこから見えたか!」

「暗部は動いてねー! 一体誰が!」

「爆発か⁉︎ 火影様ぁ!ご無事ですか!」

「ワシは大丈夫じゃ」

 

四隅の一人が倒れたことにより、結界が解かれる。

大蛇丸は上手く屋根にへばりついたようだが、飛ばされた音忍は倒れたまま動かなかった。

衝撃のせいで大蛇丸が呼び出した棺は二つとも倒れ、一と書かれていた棺の中にいた男は外に投げ出され長い髪をしなやかに揺らしながら屋根に転がり、二の棺にいた男もまた衝撃で棺ごとうつ伏せに倒れてしまっていた。うつ伏せになった二の棺からは、伏せられた棺と蓋の間から白い髪の毛と青い防具をはめた肩が一部はみ出している。

大蛇丸は吹き飛ばされた衝撃で付着した口元の汚れを拭うと、ゆっくりと立ち上がり、散らばっている穢土転生の術の残骸と衝撃があった場所に現れた人物を睨んだ。

 

「けほっ、まさか結界を破るなんてね。あら貴方はうずまきナルトくんの……フフフ、おじさんのタジマさんじゃないですか」

「……お前が大蛇丸か?」

 

ガラガラと崩れた屋根の一部が、下の競技場に落ちる音が聞こえる。

立ち上がった土煙が晴れると、大蛇丸やヒルゼン達の前に団子屋ののぼりを担いだマダラが姿を現した。

ナルトの名前が聞こえたマダラは、すっと目を細めると薄気味悪い笑みを浮かべる大蛇丸を見据えた。

人の周りをコソコソと嗅ぎ回るなど、不愉快極まりないとマダラは大蛇丸を睨む。

大蛇丸はマダラのことを調べていた様だが、この数年間ヒルゼンによる情報の統制により、ごく一部の忍以外には存在を知らせなかったこともあり、マダラの正体には辿り着いてはいない様ではある。

マダラは鼻で小さく笑うと、視線をヒルゼンへと移した。

 

「ナルトがサスケだけじゃなくあんたも狙われてると言ってな。あまりにも心配するもんだから、わざわざ出向いてやったが……いらん世話だったか?」

「ワシが? そうなのか、大蛇丸。そうだったのか……だがしかしのう、ううむ」

「ちょっと、誰がおいぼれの体なんて狙うと思ってるんです猿飛先生、そんなわけないでしょ」

 

ヒルゼンはナルトが心配していたと聞くなり眉尻を下げ大蛇丸を見遣り、何とも言えないようなしょっぱい顔をするが、大蛇丸はマダラから発せられた言葉に声を張って否定した。

マダラは足元に転がる屋根や棺の残骸に視線を落とすと、棺からはみ出た手がぴくりと動いたのが見えた瞬間、はみ出ている側とは反対の方へ回りさりげなく足で棺をずらし中身を収めた。

ガコンと蓋がはまる音がした。

 

「う、ううむ……なんぞ」

 

屋根の上に投げ出された男が、モゾモゾと動き始める。

発せられた声にマダラはぴくりと肩を振るわせ、棺から視線を動かし男の声がした方を振り返ると目を見張った。

屋根に転がっている男は、どう見てもマダラがよく知っている人物にしか見えなかった。

千手柱間、この時代では既に死んでいるはずの男だ。

 

(あれ、は……妙だな、柱間か? 何故ここに柱間がいる?)

 

マダラは転がる柱間らしき男に、眉間に皺を寄せ訝しんだ。

チャクラは柱間の物であるがいささか見知っている物よりは弱く、そして顔色も土気色で悪く、所々肌に線のようなものも見えた。

マダラが考え込んでいると、柱間と思われる男の身体の動きはより大きくなっていった。

ゆっくりではあるが倒れた体を起こし、フラフラと、ぼんやりした表情でマダラと向かい合わせに立ち上がる。

 

「いきなり視界が反転したんぞ……お?」

 

表情は色が落ちたように無であるが、声だけはマダラも聞き慣れた温度感を宿しており、近年マダラの平和に毒されていた脳を刺激する。

 

「は、しらま……」

 

マダラの呟く小さな声に、柱間が虚な目で見つめ返す。

柱間の表情は変わらないが、目が合うなり心なしかワッと気分が高まっていくようなそんな気配を柱間から感じ、マダラは無意識にのぼりを握る手に力を込めた。

 

「マダ」

「初代様!」

「……おお! 猿飛か? 久しいのぉ、随分と歳をとったな。里は健在ぞ? ところでマダ」

「お久しぶりでございます!」

「うむ、久しぶりだな! で、マダ」

「初代様! 貴方様方はそこな大蛇丸の穢土転生の術で、この世に呼び出されたのです」

「穢土転生とな! 扉間に封印するよう言ったはずなんだが、それでマ」

「初代様!」

「……猿飛。オレも話ができて嬉しいが、もうちと喋らせて欲しいぞ…………」

 

柱間の頭がガクリと下に垂れる。

目線だけはマダラの方に向けているが。

ここまで話を途切れさせられることも早々ないだろう。表情は変わらずとも、声色だけで柱間が落ち込んでいるのがよくわかる。

その顔でこちらを見ないで欲しいと、マダラは目を逸らした。

 

(こんな状況でじめじめと落ち込めるやつは柱間で違いない。柱間にベラベラ喋られるとこちらの正体をバラされ兼ねんな。猿飛のガキがお前にそれをしている意図に気付けるか……いや柱間だ、期待する方が酷だ。それにしても穢土転生か? この時代に来る以前に、死者の魂がなんとかと言って扉間が何か開発してたと思うが、これか? ……いずれにせよ用心するに越したことはないな)

 

「フフフ……感動の再会もここまでですよ。もうお一方もそろそろ出してあげませんとね。さっきから何か言ってますし」

「……に者……兄者! ここ……なぜ……ラが……にいる! サル……いるのか、穢土て……といい里は……どう……っている!」

 

棺をガタガタと揺らしながら、中の人物が騒いでいる。

幸い蓋をしっかりとはめられたことと、揺れて屋根とぶつかる音のおかげで扉間らしき人の声は外にははっきりとは聞こえていない。

柱間が立ち上がった時の様子やすぐに棺から出てこないのを見るに、穢土転生で呼び出された直後は身体の動きが安定しないのだろう。

すぐに飛び出してきてもおかしくないはずだが、身体の自由が効かず上手く動けないのであれば納得だ。

マダラは柱間と棺の中にまだ閉じ込められている扉間を交互に見遣った。

 

(こっちは扉間で違い無さそうだな。俺の顔はコイツらには割れている。柱間や感知タイプの扉間にはもう気付かれている……が)

 

この場で他にマダラを知る人物はヒルゼンくらいであろう。

他の者達は、ただの団子屋の男が突如戦場に割り込んできたという認識でしかないはずだ。

理解力の高い扉間はともかく、柱間が余計なことを話す前にせめて口だけでも封じなければ。

すると屋根に一人の暗部が現れた。

暗部は吹き飛ばされた音忍が立っていた場所に移動すると印を組み始める。

他の隅に立っていた音忍達は暗部に気がつくと、同じ様に印を組んだ。

 

ーー四紫炎陣

 

薄く赤紫色の結界が、マダラやヒルゼン達を囲んだ。

 

「助かったわカブト。さあ、仕切り直しといきましょうか……?」

 

再び張られた結界の中、大蛇丸は愉快そうに笑みを浮かべた。

ガタンと音を立て、マダラが一度はめなおした棺が開く。

中から青い甲冑を身に纏った、白髪の男が現れる。

片膝を立て棺の中から出ようとしていた男ーー扉間は、棺をどかしながら外を見上げると目に入った文字にピタリと動きを止めた。

 

(…………だんご?)

 

マダラの持つのぼりは、風に吹かれはためいていた。

 

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