おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第23話

 

「……なあ、サスケ聞いた? 中忍試験の結果」

「……ああ」

 

気落ちしたような声が二つ、演習場にこだました。

 

「もう二人共、今回はしょうがないわよ」

 

サクラは少し落ち込んだ様子のナルトとサスケを励ますように、明るい声音で次があると言った。

ナルトとサスケ、サクラであるが、第七班が結成された演習場に集まっていた。今日は任務はなかったのだが、三人はどうしてか集まりたくなったのだ。

大蛇丸による襲撃から数日が過ぎ、里中は破壊された箇所の修復や警備強化にてんやわんやとしていた。カカシ含め里の上忍たちは火影の元に集められ、捕らえた音忍達の処理や今後の砂隠れとの関係についての協議が行われている。

サクラが演習場の木にもたれかかっているナルトを見遣る。

 

「ナルト、今日タジマさんもお休み?」

「んー、おっちゃん朝はじーちゃんとこだったけど、たぶん今は団子屋かな」

「そっか。タジマさんもなんか忙しそうよね」

「そーなんだってばよ。昨日も一昨日もずうっとじーちゃんとこでさ」

「おっさん、三代目のところに行ったんだろ試験の日」

「うん。じーちゃんが大蛇丸に狙われてるから、行ってもらった」

「タジマさん、何かあったのかしらその時に。ナルトは聞いてないの?」

「聞きたかったけど、おっちゃん最近帰ってくるのも夜中だから。朝もすぐ出てっちゃうし」

「じゃあナルト、全然タジマさんと話してないわけ?」

 

ナルトの言葉に、サクラもサスケも目を瞬かせた。

あの日ヒルゼンの援護に行って貰えないかと頼んで以来、ナルトはマダラとあまり会話できないでいた。マダラがヒルゼンの元に行っている間、ナルト達はサスケを追いかけ合流した後、試合会場から離れた我愛羅と色々とすったもんだがあったのだが、ナルト達が我愛羅を説得している間にマダラやヒルゼンの方で何があったのかは、ナルト達は知らないでいた。

 

「じゃあナルト、タジマさんのところ行ってみる?」

「団子屋? おっちゃん邪魔しに行ったら怒ると思うってばよ。おっちゃん怒った時のグリグリ攻撃、あれスゲェ痛いんだぜ?」

「それ、あんたが何かやらかしてるからでしょ。ちゃんとお客として行ったら大丈夫なんじゃない? サスケ君はお団子大丈夫そう?」

「行くなら、俺は適当に食える物頼む」

 

家で話ができないのなら外にいる時に話せばいいのだと、サクラの提案で三人は団子屋に向かうことに決めた。

 

 

 

 

 

ナルト達が団子屋に着くと客は帰った後だったのか空いており、ナルトが店内を覗くとテーブルを拭いていたマダラと目があった。

 

「あ、おっちゃん」

「ナルトか? なんだお前ら揃いも揃って。流石にカカシはいないか」

「カカシ先生は今日も無理なんだってさ。おっちゃん、いまから入っていい?」

「あら、もしかしてタジマさんのところの……? まあ、サクラちゃんじゃない。こんにちは、みんな奥までお入りなさいな」

 

マダラと話していると店主が厨房から顔を出し、ナルト達を見るなり嬉しそうに一番奥の席に案内した。

奥に移動する際、ナルトは突き当りの扉が薄く開いているのに気付きちらりと見ると、中は倉庫になっているのかダンボール箱を積み下している男の姿を見た。ナルトはその男を知っており、マダラの監視役の一人であるのに気づいたが見ていないふりをし席に着く。

テーブルに置かれていたお品書きを眺めていると、マダラが三人分の湯呑を置きに現れた。出された湯呑からは温かそうな湯気が出ている。マダラが茶を並べると、彼の横に店主の老女がゆっくりと近づきナルト達に微笑んだ。

 

「うふふ、ようこそ。今お客さんも他にいないし、タジマさん子どもたちとゆっくりしてなさい。忙しかったんでしょう?」

 

店主はそう言うと追加で茶を置いた。

断ろうとするマダラに店主はただ無言でしばらく暖かな笑みを向け、圧に負けたマダラが言い返さなくなるなりナルト達の茶を出すのに使っていた盆をそっと奪うと厨房に戻っていった。

渋々マダラは、空いていたナルトの横の席に座った。

 

「タジマさん、お疲れさまです」

「おつかれ、おっさん」

 

サクラとサスケの労いの言葉を受けとめると、マダラは同じ様に返した。

マダラがエプロンを外しながら三人に今日は任務でもあったのかと尋ねると、ナルトがそれに答える。

 

「任務はないけど集まったんだ俺ら。俺がおっちゃんと最近家で話してないって言ったら、団子屋に行こうってなってさ」

「そういうことか。サスケは甘いもん苦手だつってたからな、来るとは思わなかったぞ」

「タジマさん、今日はこのあとは家に帰るんですか?」

「いや、やる事がある」

「え、おっちゃん今日も? またじーちゃんとこ?」

「まあそうだが。そんな顔で見られても、別に俺も行きたくて行ってるわけじゃない」

「おっちゃん……あの時なんかあった?」

 

ナルトは中忍試験の日のことを尋ねる。

マダラのサスケと同じ黒い瞳の視線が、テーブルの方に落とされた。少し疲れた様な顔色に、ナルトだけでなく他の二人もマダラを窺い見る。

 

「……あ! じーちゃんだけじゃなくておっちゃんも大蛇丸に何かされたんじゃ⁉︎」

「それだけはないから安心しろ、ナルト。三代目も無事だ」

「……でも大蛇丸なら何かやりそうよね」

「……ああは言ってるが、実は何かあったんじゃないのかおっさん」

「……火影様のところに行くくらいだもの」

「おい、何もないからコソコソ話さなくていいぞ、そこの二人」

 

ヒソヒソと話し合うサクラとサスケに、マダラは改めて何もないことを告げた。

マダラがヒルゼンの元に向かっているのも、出来れば大蛇丸を封印する前に穢土転生で呼び出された柱間と扉間をどうにか出来ないかと対処しようとした結果、あの事件の日からズルズルと日数が過ぎてしまっていただけに過ぎなかった。

子どもらに歴代火影の柱間と扉間が現代に甦り里の中にいるとは言えず、マダラは話を切り替える。

 

「お前らの方が大変だったんだろう? よくあの砂の小僧を抑えたもんだ」

「おっちゃん、我愛羅のこと? 色々あったけど、アイツも俺達と変わんねぇんだってばよ。今何してんのかなぁ、アイツら」

「確かあの二人って我愛羅と兄弟なんだったわよね、ナルト。もう砂の国には着いてるのかしら」

 

我愛羅といえば、サスケと対決していた砂隠れの少年である。

一尾の人柱力であり、あの日力を暴走させていたと後で報告を聞いたヒルゼン経由でマダラは知ったのだが、ナルト達は親しい者のことを語るかのように話している。

 

(仲良くなるタイミングがあったか……?)

 

実際にナルト達が向かった現場を見ていないマダラは、聞いた内容とナルト達の語る内容に差がありすぎいまいち話についていけないでいるのだが、終わったことをアレコレ追求する必要もないため聞き流した。

マダラは湯呑を掴み一口茶を啜る。

店主目利きの茶は渋みの中に甘みもあり、香りの強さも程々にさっぱりとした香りが口の中を満たしマダラの乾いていた喉を潤した。

 

ナルト達がどれにするかお品書きを眺めながら話し合っているのを見ていると、慌ただしく駆けて来る足音が店の外から聞こえてきた。

何事かと思い耳をそば立てていると、店ののれんをくぐり木ノ葉の忍が一人店に駆け込んだ。

 

「タ、タジマ! タジマはいるか!」

 

マダラにとって聞き覚えのある男の声であった。

今倉庫で作業している男とは別の、今日はマダラの方を離れヒルゼンに招集されていた監視役の一人である。かなり慌ててここまで来たのか息が荒い。ただならぬ様子にマダラは振り返ると、男と目が合う。男はナルトやサスケ達を見ると、迷う素振りを見せた後入口付近にマダラだけを呼んだ。

近くに来たマダラに男は素早く手招きすると、顔を寄せ耳打ちした。

 

「タジマ、大変なことになった」

「……その様子だとあまり良い知らせでは無さそうだな」

「ああ。大蛇丸が逃げ出した」

「逃げ出した? 監視の忍共は何をしていた、無能の集まりか」

 

どうやったら逃げ出せるのか。

大蛇丸は手足を縛り印も結べず術も使えない状態で牢に閉じ込めているとマダラは聞いていたのだが、動けないはずの人間がどうしたら逃げ出せるというのか。

大蛇丸の脱走については手引きした忍がいたとかで、その忍含め後を追ってはいるそうだ。

戦が激化していた時代の人間と比べるのもどうかと思うが、里の忍の実力はこんなにも落ちているのかと、呆れたマダラは肩をすくめて首を振った。

監視役の男はまだ話があるのだと、大蛇丸について話した時よりも周囲に視線を配りながらボソリとぎりぎり聞き取れる声量で続けて呟く。

 

「それから……初代様がお前の名を言い間違えて混乱が起きている」

(……柱間ァ!)

 

何のためにあの幻術を見せたというのか。里に来てからのこれまでの経緯とやらを見せたにも関わらず理解してもらえなかったとは、ナルトもマダラの名を誤って口に出すことはあるが、ナルトに劣らず歳を取っても柱間の気が抜けているところは抜けたままなのだとマダラは顔面を覆いたくなった。

大蛇丸に支配されていた柱間と扉間だが、今はその制御下から脱している。

大蛇丸が支配するべく穢土転生体の二人に埋め込んでいた札だが、白眼持ちが場所を特定し、里の中でも幻術の扱いに優れた忍が総がかりで大蛇丸の札の指示を書き換えた。そのため浄土には戻れずとも、ひとまず大蛇丸の支配からは脱することはできたとはいえよう。上書きしようにも、完全な書き換えができるほどの術者が里にはおらず、そしていつまで持つのかもわからないため、あくまで一時的ではあるのだが。

 

「……何が、どうしたら、そうなる」

「タジマ、お前初代様達と戦った時少し親し気だったんだろ」

「そうでも無かった、と思うが。そもそも会話なんざ外に聞こえてないだろうが」

「そのはずなんだけどな……初代様に話を聞きに行った暗部がお前の顔写真を持って行ったらしくてな。写真を見た初代様がポロリと……今は三代目様と、お話できるようになった二代目様でなんとか誤魔化してるんだが。初代様も誤魔化そうと混ざったのはいいが明らかに挙動がおかしくて。 二代目様にもう喋るなと怒鳴られた後、今は大人しくしてるんだが……」

 

木ノ葉崩しの後、火影の元に通うのも面倒だと思っていたマダラであるが更なる面倒ごとが舞い込んできたものだと、まだ倉庫の整理で何も知らないであろうもう一人の監視役にも疲労と哀れみのこもった目を向けた。

 

「……で、何の用でここに来た」

「お前を火影様の所に連れて行く。アイツはとりあえず閉店まで作業させておいていい。タジマ、今晩は帰れないと思った方がいいぞ」

 

どの団子を頼むかで盛り上がるナルト達の声を背中に、マダラは両腕を組み頭の痛そうな表情を浮かべるのであった。

 

 

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