おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第27話

ヒソヒソと小声で話す声と、いくつかの視線がマダラを刺す。

団子屋に訪れた忍の客が、注文した団子が届くまでの間何度もチラチラとマダラを見ていた。

共に団子屋の任務を受けている監視役が空にもなっていないのに茶のおかわりはいるかと彼らの前に行けば話し声は止んだが、視線だけはまだ何度か向けられ続けた。

いくらヒルゼンが噂話を広めるなと言ったところとて、一度広まった物が綺麗さっぱりと無くなるものでもない。だが噂を知る者たちから視線を向けられてはいるものの、その視線や話し声はマダラを怪しんだり蔑んだりするものではなく、あの人がそうなのかと珍しそうな人を見るかのような反応であった。

怪談話や迷信を楽しんでいるようなものだ。

そのためマダラも監視役も、ある程度は適当に聞き流すのだった。

客が去った後、噂話が耳に入ったのか店主が小首を傾げながら「また懐かしい名前が出たねぇ……次の肝試しのテーマかしら」と呟いていたのに監視役が吹き出したのを、マダラは客が使ったテーブルを拭きながら聞いていた。

 

 

 

 

 

 

「カカシが体調不良だと?」

「うう……そーなんだってばよ」

 

任務の無かったマダラはゆっくりと朝食を摂っていると、ナルトがいつまでもベッドで寝ているため起こしに行ってみれば、眠そうな声でカカシが体調を悪くしているため今日は休みなのだと言う声が返ってきた。

大蛇丸の一件もあり、カカシは第七班の担当上忍としてだけでなく、個人でも任務を受けるようになっており、何度かナルト達の任務に同行しない日があった。ヒルゼンにも度々呼ばれているそうで、多忙な日々を送っているようである。

飼い猫の捜索等の任務であればナルト達だけでもこなして問題ないため、簡単な任務だけ子どもら三人で受けているそうだが、体調に響く程彼が単独で受け持った任務で何かあったのだろうか。

モゾモゾと布団の中で動くナルトに、天気も良く雲ひとつない空にマダラは布団を干そうと思っていたため、寝ぼけ眼のナルトから容赦なく布団を引き剥がすと外の手すりに布団を掛けに行った。

家の中に戻るとナルトがぼうっとした表情でリビングにおり、冷蔵庫から牛乳パックを取り出すところであった。

牛乳パックを置きコップを取りに行った後、ナルトは椅子に座り牛乳を注ぎながらマダラに尋ねる。

 

「あれ? そういや、おっちゃんも休み?」

「ああ。今日は任務に出るのに人数が足りなくてな」

 

ナルトが白い髭を作りながら牛乳を飲み干すのを、マダラはナルトの向かいの椅子に座りながら眺めた。

 

(……体調不良か。コイツらを見ながら他の任務もこなしてるのなら、仕方ないか)

 

空になったコップを机に置いたナルトが、マダラにいるかと牛乳パックを差し出しながらあることを聞く。

 

「サスケ達と後でお見舞いにでも行こうかなって思ってっけど、おっちゃんも行く? あ、飲む?」

「いらん。なんだ、見舞いに行く程悪いのか」

「チャクラの使いすぎじゃないかって、サクラちゃんが」

 

ナルト曰く数日は動けなさそうだという。

全く動けないということは無いようだが、任務に出られる程の体力の余裕もないのだろう。食事の用意も出来ているのか疑問である。

 

「お前らカカシの家は知ってるのか」

「サスケが知ってるらしいってばよ」

「ならいいが。見舞いに行くのに家も知らなかったら意味がないからな」

 

集合は何時か尋ねると時計の方を見やりナルトが大きく口を開け固まる。

 

「げぇ! 三十分くらいしかねぇってばよ‼︎」

「はあ……いつまでも寝てるからだろうが」

 

箪笥から着替えを急いで引っ張り出すナルトに、マダラもやれやれとため息をつきながら身支度を整えたのだった。

 

 

 

サスケの先導でカカシの家に辿り着くと、呼び鈴を鳴らされた顔色の悪いカカシが家の中から現れた。

いつものように口元を隠し、普段は額当てで隠れている左目は長い前髪の下で閉じられた瞼と共に隠されている。

見舞いに行くことは事前に伝えていたようだが、カカシはまさかマダラがいるとは思わず目を瞬かせた。

カカシはフラフラな状態でナルト達を居間に通し、キッチンを使いたいと言う彼らに簡単に調理器具の説明をし座卓の前に座って見守っていると、ナルトやサクラから先生は休んでいろと強く言われ渋々寝室へ向かって行った。

ナルト達だが、ここに来る前に三人でカカシにご飯を作るのだと言い、早めに集合し食材の買い出しに行っていた。

作るぞと拳を握りながら張り切る子どもらを尻目に、マダラはカカシが引っ込んで行った方の部屋に向かうと扉越しに声をかける。カカシから重い声音でどうぞと返答があると、扉を開け中に入った。マダラの想像よりも部屋の中は片付いており、居間の状態もであるが遅刻魔な彼とは結びつかない程に整っていた。部屋の片側に置かれた寝台には、カカシが横になっている。起き上がろうとするカカシを制止しながら、マダラは近くに歩み寄った。

 

「寝ていろ。ナルト達に聞いたが、チャクラの使いすぎだとな」

「あ、はは……ちょっと久々に、ですね」

「写輪眼でも使ったか。使う必要があるような任務を受けているのなら、第七班での任務を減らすか調整した方がいい」

「あ、いえ、任務は問題ないんですよ。サスケ達に追い越されないように、俺も修行しないとと思いまして。任務の合間にですね」

 

マダラが横たわるカカシを見下ろしてみると、思案するような表情で目を閉じていた。

カカシだが、マダラの視線が落とされる中一人であることを考えていた。

 

(タジマさんに話すべきか……)

 

カカシはマダラの変わった模様の写輪眼を見て以来、その目が通常の写輪眼とは違う物であることは考え付いていた。大蛇丸が木ノ葉崩しを企てたあの日のこと、蘇り操られていた過去の火影二人を相手にその瞳を使っていたということは、ただの写輪眼ではあの二人に通用しないと思ったからなのであろう。

 

(里の中じゃ、写輪眼についてはきっとタジマさんが一番詳しい。火影様もタジマさんのことは信用している)

 

カカシが目を開けると、先程とは違いマダラの目線はカカシの顔よりも上の方に向けられているのに気付いた。

カカシはその視線の先を少しだけ辿ると、彼が見ているものが何かわかった。寝台の上に置いていた集合写真だ。ナルト達七班で撮った物の隣には、かつてカカシが所属していた班の写真が並んでいる。

 

「……あの、タジマさん」

 

呼ばれたマダラはカカシの方に視線を戻す。

 

「聞きたいことがありまして」

「なんだ」

「写輪眼についてなんですけど」

「写輪眼?」

 

マダラがカカシの問いに片眉を上げながら言葉を繰り返す。何を尋ねようとしているのかと、マダラは続きの言葉を待った。

 

「見てもらった方が早いかなと……でも、いきなり見せるのも何かと思いますので」

「左目に異常でもあったか? 医療忍術には明るくないが……まあいい、見せてみろ」

「助かります。実は……」

 

他人の写輪眼を覗き込むのはあまり気乗りしないものだが、戸惑いの色を滲ませながら助けを求めるようなカカシの声音にマダラは頷くと、見やすいようにとベッドの脇にしゃがみ込んだ。

マダラの返答を聞くとカカシはゆっくりと布団から手を出し左目を覆い、少ししてそこから離すと赤い瞳が現れた。

三つ巴の模様が現れると思っていたマダラは息を呑む。

カカシの左目には、鋭く円を描くような特殊な模様が浮かんでいた。

 

「ーー! それは、その目はどうした」

「あの時タジマさんの目を見て、もしかしたら写輪眼には更に上の力を持つ形態があるんじゃ無いかと思ったんです。あれから色々とチャクラを練ったり集中させたりと試してましたら、ついにできまして」

「出来るか」

「え」

「……いや、何でもない」

 

どういうことだとマダラは目をぎゅっと閉じて俯いた。

カカシがマダラに見せた左目は、万華鏡写輪眼と呼ばれるもので違いない。カカシの様子から、存在もそれの開眼理由も詳しくは知らなそうであるが。

マダラの知る範囲でカカシの身の回りで何か事件や、愛する者や友との離別といったような出来事はなかったはずだが、知らないだけで最近受けた任務等で重い心的ストレスを受けているのかもしれないと、カカシが開眼に至った経緯を考える。

 

「……カカシ、最近何かなかったか」

「無い、と思いますけど……」

「本当か?」

「え、はい。たぶん」

 

マダラが食い入るようにもう一度尋ねると、戸惑いの表情を浮かべつつカカシは左目を閉じながら頷いた。

 

(何も無いのに開眼する訳があるか。なら、元々開眼条件が満たされていたことになる。左目はオビトとかいう奴の物だったか。譲り受けた時に既に万華鏡まで至っていたとでも?)

 

そうだとして、すでに開眼されていたのなら今に至るまでカカシが気付かなかったとは考えられにくい。そもそも一族以外の人間に移植された後で、万華鏡写輪眼にまで開花するのかというのも疑問であった。

カカシが知らないということは、目が移植された時点ではただの写輪眼であったのだろう。

マダラが考え込んでいると、反応を見たカカシが恐る恐るマダラを呼んだ。

 

「タジマさん、これ結構まずいヤツです?」

「まずくはない……まずくはないんだが、まあお前に何も無かったのならいいか、いやいいのか? 駄目だろ」

「だ、駄目ですか」

「とりあえずだ、その目は今のお前が使うにはリスクが大きすぎる。チャクラ量も足りないお前では尚更な。その目はまだ開くだけにとどめておけ。一人でいる時に無闇に扱うな、絶対にだ。火影にこの事は?」

「昨日話してはいますが、タジマさんに聞いた方がいいだろうとのことで」

「俺に丸投げか。その瞳になってから術は使っていないだろうな」

 

カカシはこくりと頷いた。

研究の末元々開眼していた万華鏡写輪眼の力を引き出せたというところか。マダラは見舞いに来ただけのつもりがこんな事実を知ることになろうとは思わず腕を組み思案する。

 

(……ここじゃサスケもいる。写輪眼の話は後日改めてした方がいいか)

 

居間の方からナルト達の騒がしい声が聞こえてくるのを聞きながら、マダラは明日訪ねてもいいかとカカシに確認する。

改めて話をする場を設けたいと言うマダラに、ナルト達には聞かせにくい内容なのだとカカシは悟ると、明日も一日休みをもらっている為いつでも訪ねて構わないと了承したのだった。

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