おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第31話

 

最近風呂屋で女湯を覗く人影があり、客が怖がっているためその不審者を捕まえてほしいという依頼が出ていたのをマダラは引き受けた。

マダラが引き受けたというよりは、たまたま風呂好きの監視役が同行している日で、彼の目に留まったのがその依頼だったと言ったところだ。

そこの経営者とは親しいそうで、知っている人が困っているのを無視はできなかったのだろう。

任務を受理し風呂屋に向かえば、大まかに店の間取りを説明された。

入り口から向かって右側が女湯らしく、客が感じる人の気配とは女湯の向こう側、隣の男湯ではなく林の方から視線を感じることが多いらしい。

女湯の裏は店が管理している通路以外の他の道はない筈だが、たびたびそこから視線を感じたり物音が聞こえるということがあったそうだ。店の人間が立ち入るとしても、清掃の時くらいである。苦情が出るほどの頻度で立ち入ることはない。

手分けして風呂屋の周りの見張りを行うことになり、マダラは例の女湯の裏で待機することとなった。

何故俺が女湯の裏にと言いたげな表情を浮かべながらも、マダラは客に気づかれぬ様、なるべく静かに過ごす。

背後からは湯水の跳ねる音と、楽しげな会話がかすかに聞こえてきた。

早くこの場を立ち去りたく、マダラは来るならとっとと来いと、見つけ次第覗き魔を完膚なきまでに叩きのめすことを誓った。

 

 

 

監視を始めてから程なくしてのこと、人の気配を感じたマダラは店の掃除用具が入った物置の影に急いで隠れると、足音の聞こえる方に耳をすませた。

 

(二人だな……)

 

聞こえてくる足音は二人分で、一つは大人だがもう一つは音が軽く子どもの様であった。

何となくマダラは近づいて来るチャクラに覚えがあり眉間に皺を寄せると、彼らに気づかれぬ様ひっそりと息を潜め女湯の側に近づいて来るのを今か今かと待った。

 

(あの石畳から先に入ったら捕まえる……さっさと終わらせて帰るぞ)

 

可能な限り呼吸も静かにし気配を殺し、近づいて来ていた気配がマダラの近くを通り過ぎ女湯の壁に近づいた瞬間、マダラは物置の影から飛び出た。

見えたのは白髪の男とオレンジのつなぎを着た少年で、チャクラからして誰かは想像は付いていたものの、子どもの方を実際に捕まえ小脇に抱えてみると呆れと情けなさが込み上げて来るのだった。

 

「なんでおっちゃんがここに⁉︎ エ、エロ仙人!」

「誰か潜んでおったとは、んん? お前さんはナルトんとこの」

 

この場所に現れたのはナルトと自来也であった。

 

「……………お前らか、覗き魔は」

「覗き? あ゛、ああーもう、エロ仙人がこんなとこ来るからこうなっちまったんだろーがー‼︎ ああ! 逃げんなってば、エロ仙人‼︎」

「ナルトお前な、自分が何してっかわかってんだろうなァ!」

「ヒィッ、おっちゃん俺は誤解だってばァ……」

 

あっさりとマダラに捕まったナルトは抱えられがっちりと身動きを封じられると、両手足をマダラの脇でぶらぶらとさせる。振り解けないことはわかっているため、ただぶらぶらさせているだけである。抵抗するだけ無駄なのだ、無理に振り解こうとすれば身体からミシミシと変な音を立てることとなるだろう。

因みに自来也だが、捕まったナルトを見捨て一人何処かへと姿を消した。

誤解だと言い続けるナルトにマダラは一応言い訳は聞いてやると、抱えたままこの場を移動し店の入り口付近を見張っていた監視役と合流した。

店主に裏部屋を借りると、マダラはナルトをパイプ椅子に座らせ問いただす。

 

「それで? お前はどうしてあそこに来た。どんな理由であれ、一応は聞いてやろうじゃないか」

「お、おっちゃん、そ、その、エロ仙人があそこに用事があるって言ってて、それで付いて行っただけっていうか」

 

ナルトの声は震えている。

マダラはナルトの言い訳に、ならば自来也の方は何をしに来たのかと尋ねた。

 

「え、エロ仙人は……そ、そのォ……たぶん取材で」

「取材? 誰もいなかった筈だが、誰に取材をしようとしていたんだろうな。ああ、あの先は女湯があったはずだが」

「そ、その……」

 

ナルトはマダラから目を逸らしながら、あの場所に現れた理由を話した。

自来也と会う約束をしていたそうなのだが、合流するなり風呂屋の裏に移動を始めたのだとか。

ナルトは何をしに行くのかは聞いてはいなかったが、中忍試験の頃にも似た様なことを自来也はしていたそうで、執筆中の小説の参考のために、取材と称し女性の裸体を覗き見に来たのだろうとのことだ。

いつもの様にかは知らぬが風呂屋の裏を訪れた自来也はマダラに見つかり、ナルトが捕まっている間に一人逃げたのだと。

 

「てっきりお前お得意のお色気の術とやらの為とでも言うのかと疑ったが」

「いくら俺でも覗きなんてしねぇってばよ! ちゃんと本とかで」

「本とかで?」

「あ」

「はぁ……家中ひっくり返してまで探したりはしないが」

「探しても無駄だってばよ、おっちゃんのイチャパラみたいに隠したりしてないし」

「何か言ったか」

「いいえ、いいえ」

 

ナルトは高速で首を横に振った。

ナルトが自ら進んで覗きをしていないことはわかってはいるものの、いつどこで女の裸体を参考にしているのか。

どの変化の術の中でも、飛び抜けてお色気の術の精度は高い。マダラが口を出すまでも無く、ナルトのあの術は理想の中の理想を突き詰めている。

 

(まあ、ガキの頃の想像力もあってのものだろうしな、あの術は。とはいえあのエロ親爺め、どこに行きやがった)

 

いくら伝説の三忍と呼ばれていようとも、女湯を覗き客の安全を脅かすなど営業妨害も甚だしい。

ましてや連れがおり片方が捕まっている間に逃走するなど。

 

「一人でそそくさ逃げるとはな……ナルト、自来也の奴を捕まえるぞ。まだ里内にはいるはずだ、チャクラは覚えている。絶対に捕まえてやる」

「……うわぁ、エロ仙人。おっちゃんが本気だ、死んだな」

 

マダラはナルトを椅子から立たせ、まだ遠くへは行っていない筈だと言いながら店の外に出ると、自来也の姿を見た者が居ないか聞き込みを始めることにした。

 

 

 

 

 

聞き込みを続け探し回ること数十分、自来也が里の外の方へ向かっているという情報があり、マダラは風呂屋から離れ自来也が向かうであろう里の門前で待ち構えることに決めた。

マダラが覗き魔を捕まえようとしているのは自来也には先程の件で知られている為、真正面に立ったのでは再び逃げられる可能性があり、できる限り近くの店の壁に沿って身を潜める等して待ち伏せる。

ナルトと共に門に一番近い店の壁に隠れながら門の外に出る人影はないか、そして周囲を歩く人間の中に自来也のチャクラの気配がないかを神経を研ぎ澄ませていた。

 

「……おっちゃん、もうエロ仙人出てったんじゃねェの」

「いいやまだだ。俺の勘が正しければ、まだ出てない」

「そうかなー……」

「いいから黙ってろ、気付かれ……! 来たぞ」

「え、マジ?」

 

マダラは小さく頷きながらほんの僅か端から顔を出すと、自来也の姿を確認する。

ゆっくりとした足取りであり、落ち着いた様子からマダラ達が待ち伏せしている事には気づいていない様だ。

この辺りは里外に出る門の近くということもあり、人通りもそれなりで気配も混ざり、マダラ達が隠れているとは思わない自来也は余計に二人の存在には気付かないだろう。

 

「アイツの姿が見えたら行くぞ」

「……おう」

 

ナルトが小声で返す。

自来也の様子からして里外へ逃亡しようという雰囲気は感じられないが、そう見えないだけかもしれない。里内にいればマダラが自来也を捕えることは可能だが、里外に出られると許可なく門を越えられないマダラでは自来也を捕まえることは困難を極める。門から一歩でも出ようものならヒルゼン辺りがすっ飛んでくるだろう。

ヒルゼンと監視役らでマダラをどうにかできるものでも無いが、勝手に里の外に出たことについてはネチネチ言われ続けるに違いない。

自来也の姿が、マダラ達が隠れている建物を通り過ぎて行く。門の方へ片手を上げ何やら声をかけようとする素振りを始めた自来也を、マダラは建物の影から飛び出すと後ろから羽交締めにした。ナルトは身動きを封じられた自来也の前に躍り出ると、びしりと指を突き立てた。

 

「エロ仙人! 捕まえたってばよ! よくも俺を置いて行きやがってェ‼︎」

「なぬ⁉︎ ナルトとタジマか!」

 

自来也はマダラの腕から抜け出そうと抵抗を試みるが、下忍とは思えない力で抑えられ抵抗するだけ無駄だと悟ると大人しくなった。

観念したようにすまんすまんと笑いながら、自来也はマダラをチラリと流し見る。

 

(こやつ訳アリだとは思っておったが、やっぱりただの下忍じゃないのォ。ちっとも振り解けん。このワシがあっさり捕まるとは)

 

マダラの黒く冷めた目が自来也を見据えている。

 

「タジマ、なかなかやるのォ、このワシを捕まえるとは。フッ……ナルト、お前は捕まらんよう、まだまだ修行が必要だの!」

「そーいうことじゃねぇってばよ!」

 

笑う自来也と怒るナルトの声に、周囲を歩いていた人々が視線を向ける。このまま注目を浴び続けるのもまずいと思い移動できるよう自来也を絞めていた力を僅かに緩めると、ふとマダラは自来也が捕らわれる直前に何処かに向かい声を掛けようとしていたことを思い出した。

門の方からは近づく気配があり、マダラは自来也から正面に顔を向けると歩いて来る人物を見た。

淡い髪色の胸元がはだけた服を着た女性と、短めの黒髪で腕に小豚を抱えた女性がこちらに向かってきている。

ワーワー自来也に怒っているナルトの後ろに二人の女性は立ち止まると、淡い髪色の方が自来也を見て盛大にため息を吐いた。

 

「ハァ、まさか迎えってあんたのことじゃ無いだろうね」

「お。久しいのォ、綱手」

(……綱手?)

 

マダラは自来也に綱手と呼ばれた方をまじまじと見た。綱手といえば、カカシから聞いた話によると柱間の孫であり、自来也とも肩を並べたという三忍の一人のはずだ。目の前の女とはいくらなんでも年齢が違いすぎやしないだろうか。

 

「……そこの男、私に何か言いたい事でも?」

 

マダラの視線に気付いた綱手が、眉を顰めながら問いかける。

間に挟まれているナルトはマダラの隣まで下がると、何事かと綱手の方を見上げた。

 

「この姉ちゃん、誰?」

「お前さんらは会うのは初めてか。紹介しよう、ワシの同期の綱手だ」

「エロ仙人、いくら綺麗な姉ちゃんが好きでも嘘はダメだってばよ?」

「嘘じゃない。コイツはこんな見た目だが、ワシと変わらんのだぞ? 術で見た目を変えとるんだ」

「えー⁉︎」

 

ナルトは綱手を見上げたまま大きな声を上げると、少しばかり後ろへ後退りする。

ナルトと自来也がそんなやり取りを交わす間も、マダラはじっと綱手の顔を見据えていた。

 

(……こいつが柱間の孫)

 

自来也に迎えに来たのかと言っていた辺り、里に来るよう呼び出されたのだろう。

先日のカカシの話からも、次の火影候補として呼ばれた可能性が高い。

 

「だから、さっきから何なんだ。人の顔をじっと見て」

「……この男の同期かと思ってな。特に意味はない」

「失礼なやつだな」

 

すこしムッとした表情で、綱手はマダラを見返す。

自来也の同期とは思えない綱手の風貌に、穢土転生体ではあれどマダラの知る頃から見た目のあまり変わらなかった柱間や扉間のように、千手一族は老いにくいのかとも思ったがそういう事ではないらしい。

気の強そうな女ではあるがこの女が次の火影になるのか、それとも今捕まえている覗き魔の自来也が火影になるのか。マダラはどちらか選べと言われたとしたら、過去の功績など知らぬマダラは綱手の方に一票を投じるだろう。

女ではあるが、伝説の三忍と謳われたことのある人物である。そこらの忍よりは強いことだけは違いない。

綱手の榛色の目とマダラの黒い瞳が交差し合う。その視線には、お互いを探るような色が含まれていた。

 

 

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