おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第37話

朝目が覚めたマダラはカーテンを開けると、向かいの家の屋根に留まっていた鴉と目があった。

 

(あの鴉……イタチか?見にくるとは言っていたがいくらなんでも早過ぎないか、昨日の今日だぞ)

 

定期的に鴉を送ると言っていたが、それは昨日の出来事である。何か伝えたい事でもあるのかとマダラはしばらくカーテンを開けた時の状態のまま鴉を眺めていたが、何も起きなかった。ただ様子を見ているだけなのか。

 

「おっちゃん、なにしてっの? ふぁあ〜」

「起きたか。さっさと顔洗って着替えてこい。サスケの家に行くんだろ」

「そうそう、今日はサスケんとこに……あのさ、おっちゃん? サスケ一人で大丈夫なんかな」

「どうだかな」

「おっちゃん、その、サスケのことなんだけどさ、うちに呼ぶのはどうかなって。 一人だとアイツも心細いんじゃねーかな。ちょっと狭いけど、くっ付ければ三人で寝れるし。こうサスケ真ん中で、あ、俺でもおっちゃんでもいいけど」

「川の字で寝ると。俺が真ん中は無理があるだろ」

「かわの……うん。俺も昔は一人だったし、なんかこう落ち込んでる時ってさ、一人でいるとすげぇ寂しいじゃん」

「……サスケがいいならな。まあ、何度かうちにも泊まりに来てるから、アイツも勝手は知ってるか」

 

ナルトとマダラがそれぞれ使っている寝台を付ければ並んで寝れないこともなく、狭ければ来客用の布団もあるため誰かが下で眠ればいいだけだ。

ナルトもサスケのことをずっと見てきていただけのことはあり、昨日の様子が只事ではないとよくわかっている様であった。

 

「ぼさっとするな、起きたならさっさと顔を洗いに行け。人と合流するから遅れられないぞ」

「サクラちゃん怒るとこえぇからな……おっちゃんの方こそ、遅れるなってばよ! よっと」

 

マダラの言葉にサクラの姿を想像したのか震えると、ナルトは飛び跳ねるように寝台から降り洗面所まで小走りで向かうのだった。

ナルトが寝室からいなくなると、マダラは再び窓の外の方を向く。先程までいた鴉はいない。鴉がイタチの使いだったのか分からないが、暁の一員としてイタチが里に来た理由は九尾の居場所を突き止めるためだと言っていた。

実際イタチの方は里の様子を見に来ただけであるようだが、暁はナルトを探しているのだ。

相方の方に合わせなければならないイタチだ、イタチに奪う気はなくともナルトに大なり小なり危害が加えられる可能性はある。今は撤退しているはずの彼らだが、まだ里の近くにいるということも考えられる。

 

(まだ里の中にいたりしてな……)

 

カカシだが昨日の騒ぎで写輪眼を使い、以前のように倒れるほどでは無いが疲労で休んでいるのを監視役から聞いている。昨日は自来也がそばに居たが、ナルトもこれからマダラと共にサスケの家に行くことから今日一日ナルトの警護に当たるのはマダラの役目となるだろう。

 

(ゆくゆくは一人で対処できるように仕込んでおくか)

 

ナルトが飛び出していったままの状態の布団を軽く畳むと、マダラも支度を始めるのであった。

 

 

 

 

 

サスケの家に行くと、先にカカシが来ていた。

インターホンを鳴らされたサスケが開けると、部屋の奥からカカシがマダラ達によっと片手を上げていた。

 

「カカシ先生も来てたなんて、こんな偶然もあるのね」

「なんかさ、俺たちって考えること一緒なんだな、ニシシッ」

「お前らってよく一緒にいるとは思ってたけど、自然と集まるほど仲良いのねェ。タジマさんを倒そうの会だっけ? 普段から一緒にいるだけあるヨネ」

 

ナルトとサクラ、カカシの笑い声が部屋に響いた。

ソファに備え付けていたローテーブルをサスケが部屋の真ん中に持ってくると、大きな包みを背負っていたサクラがその上にヨイショと置く。

包みを開けば中からはお重が現れた。料理を作ると言っていたが、この量を見るにかなり頑張って作ってきたようだ。

 

「サスケくん良かったら食べて。お母さんといっぱい作りすぎちゃったから、先生もいてちょうど良かったかも。ねえナルト、あんた広げるの手伝ってよ」

「いいってばよ。サスケ、場所足んないんだけど他に台ねぇ?」

「この前カカシが置いていった折りたたみの机なら……ちょっと待ってろ」

「ワリィ、サスケ!」

 

手伝わせてしまったことをナルトが両手を顔の前で合わせ謝るが、サスケは表情を変えず台所にある隙間にしまっていた机を引っ張り出すと、ナルトの目の前に置いた。

三人がせっせと弁当を広げていくのを大人二人は部屋の隅で見守っていると、カカシが少しいいかとマダラを呼びベランダの方へと連れ出した。

 

「タジマさん、昨日は大丈夫……だとは思ってましたけどサスケ、イタチから何を聞いたんです?」

「そっちは大変だったようだな、後で聞いたが」

「まあ、なんとかなりましたが。イタチがすぐ戻ってきてもう一人の男を回収してどこかに消えましたから。それで、サスケは?」

「サスケから聞いていないのか? 先にここに来ていただろうが」

「聞いてはいますが……俺がここに来るなりイタチの話をせがまれましてね。あんまり聞かせてやれる話も無かったですけど」

「ああ、カカシは知り合いだったか」

「暗部にいた頃の事ですけどね。アカデミーを卒業した頃までは殺すつもりでいたサスケが、今じゃあのイタチを連れ戻すとか言ってるんで……これはただ事じゃ無いと思いませんか? タジマさん」

「……」

 

カカシの隠されていない方の目がマダラに向けられる。

それからと、今思い出したようにカカシは鳩尾の辺りをさすると、黒い布の下の口を開いた。

 

「あと昨日の、痛かったですよ。殴るならもうちょっと分かりやすく言ってくださいよね、殴るなら」

 

ああ痛い痛いとカカシは腹をさする。

確かにあの時カカシが倒れたのは演技ではない。うめき声も本物であり、痛みと驚きでカカシも戸惑った事だろう。

 

「悪かった。俺としては避けると思っていたんだが」

「無茶言わないでください、いきなりあんな行動取るなんて思わないデショ」

 

カカシからの苦情をマダラはしっかりと受け取ると、次からはカカシにだけでも伝わるような合図を出すかと考えるのであった。

 

「殴られた事はさておき、サスケの行動には常に気を張っていたほうが良さそうです」

「なぜそう思う」

「サスケもかなりの行動派ですからね、そうだと思い込んだら止まらないタイプだ」

「否定はしないな。だが一人でイタチを探しに行くとでも?」

「可能性はなくは無いかと」

「……お前もよく見ておけ、カカシ」

 

流石に手も目も足らんと、マダラはため息をつく。

イタチからサスケに伝えられた内容は多く無い。だがイタチが望んであの悲劇を起こしたのでは無いのだと、それだけはサスケも理解しているはずだ。

里の裏側を探り始めるのが先か、危険な任務先に身を置いている兄を探しに行くのが先か。いずれにせよ、何かしら行動を起こすことは考えられる。

 

(イタチを連れ戻す事自体は難しくは無いが、あの組織の情報を得るのにイタチの存在はかなり大きい。損得だけで考えれば、イタチには暫く里には戻らないでいて貰いたいところだが)

 

厳しげな表情を浮かべるマダラとカカシの頬を、柔らかな風が撫でる。

二人がベランダで話をしている間、サクラの料理を広げ終わったナルト達だが、テーブルを囲むように床に座りながらベランダにいる二人の方を見ていた。

 

「カカシ先生とタジマさん、なかなか話し終わらないわね」

「ナルト、おっさん二人呼んでこいよ」

「えー、俺ェ? なら、サスケも行こうぜ。腹減ってるのサスケだろ?」

「別に減ってな」

 

弁当の中を見て食欲が湧いたのか、サスケの腹の虫が鳴る。

その音にニヤつくナルトに、サスケは耳を赤くさせながら立ち上がった。舌打ちしながら窓の方へと向かうと、サスケは軽く手の甲でガラスを叩き二人の気を引きつける。

ガラスが叩かれた音に気付いたマダラとカカシが振り向くと、窓の向こうには二人をきつく睨み付けるサスケがいたのだった。

 

「えっ、ナンカ俺達怒られてる……?」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「今更部屋の説明とかいらないとは思うが」

「サスケ結構うち泊まってんもんな」

 

その日の夕方、着替えやらを詰めた大きめのリュックを背負ったサスケがナルトの家を訪れた。ナルトがとりあえず荷物はこっちだと、サスケが来てもいいように空けておいたクローゼットのスペースを見せに行く。

 

(本当に来るとはな)

 

サスケの家を訪れた際に、一人でいるのを心配したナルトが暫くうちに泊まることを提案した。突然のナルトからの誘いに、サスケは悩んだ末に頷いたのだった。

マダラはてっきり一人でいたいと言って断るかと思っていたのだが、ナルト達が帰った後のことを想像したのだろうか、カカシ達の顔をチラリと見た後にサスケは頷いていた。

荷物をしまっていくサスケにナルトが時々声を掛ける。

 

「あ、そっちはおっちゃんが使ってる引き出しだから、イチャパラ入ってるかもしんねーからそっとしとこうぜ」

「おっさんのか、だな」

「別に俺たちしか居ないんだし、隠さなくてもいーのにな。なあ、サスケ?」

「おっさんの、唯一のカカシとの楽しみだ。ヒッソリ楽しみたいんだろ」

「そっか」

「お ま え ら な」

 

ナルト達と話す事で調子を取り戻したのか、サスケの様子は昨日とは比べ物にならないくらいに普段通りに戻っている。

 

(カカシの心配も、杞憂に終わるならそれでいいが)

 

イタチ達がまだ里の中か近くにいるのだとすれば、夜間のカカシの修行は暫く見送った方がいいだろう。

二人を連れて行けば同時に見れないこともないが、カカシの写輪眼のことをサスケはまだ知らない。そろそろ試しに使って貰おうかとも考えてはいるが、さすがにサスケの前でいきなり披露するのも考えものだ。

どうやったら開眼するのだとか、そもそも写輪眼のことについてなぜ持っているカカシはともかくマダラが詳しいのかと疑問を持つに違いない。昨日のイタチとの戦いでは写輪眼を使ったがサスケからは見えない位置であり、イタチも何も言わなかったことからマダラが写輪眼を使っていたなどとは微塵も思っていないだろう。

 

(気付かれても困るが、気付かなすぎても心配になるな。ああいやでも、コイツもナルトと同じで結構単純だからな……無理か)

 

おかげで正体がバレずに済んでいる。

頭は良いのだろうが、サスケのそれはサクラとは違う頭の良さだ。地頭だけはいいというのか。

ナルトがまた違う場所を案内し、棚のこの段とこの段、そしてタンスの上の方はマダラが使用していることを簡単にサスケに説明していく。この中のどこかにイチャパラがあるかもしれないことを付け加えて。イチャパラは余計である。

家の中にサスケに見られて困るものはそうない。あるとすればこの時代に来た際に着ていた服くらいであるが、何重にも袋でくるんでしまっており、わざわざ開かなければ背中にある家紋が目に入ることはない。

 

「お前ら片付けが終わったら何処か食べに行くぞ。今日は作る気がしない」

「え、ラーメン?」

「お前はラーメンばっかりだな」

「……そうだ、おっさんこれ」

 

サスケがズボンのポケットから紙切れを一枚取り出しマダラに手渡した。サスケから受け取り紙に書かれた文字を見ると、マダラは読み上げる。

 

「『肉の日祭り 焼肉食べ放題半額』……サスケ、肉がいいのか」

「べ、別に。今月末までだったの思い出しただけだ」

 

食べ放題を三人でとなるとそこそこ金はかかるが、半額になるのなら行けないこともない。

この割引券をどこで手に入れたのかサスケに聞くと、以前カカシから貰ったものらしい。カカシも一体どこでこんな割引券を手に入れてきたのだか。サスケに手渡したのはカカシに連れて行く時間がなく、よく集まる三人で行って来たら良いだろうと思ってのことだろう。

 

「それじゃ、今日はここに行くとするか」

「焼肉⁉︎ じゃあ混む前に早く行こうぜ、おっちゃん! あとおっちゃんの奢りで! だよな!」

「サスケの片付けが終わったらすぐ出るぞ」

「もういい。殆んどしまい終わってる」

 

サスケから貰った割引券をマダラは財布にしまいながら、手持ちの残金を確認する。

 

(明日から夕飯だけでも当番制にするか……)

 

サスケ一人増えたところで負担はたかが知れているが、さすがに毎日外食とはいかない。ナルトやサスケも、マダラも全員下忍である。一度の任務で得る報酬の金額は多くない。

 

はしゃぐナルトと少し楽しみにしていそうなサスケの様子を後ろから眺めながら、マダラは二人の後について焼肉屋を目指した。

 

 

 

 

焼肉屋に向かうと、試験会場でサクラに友人だと紹介された山中いのと、彼女のいる班のメンバーであるシカマルや秋道一族の少年、そして彼らの担当上忍である猿飛アスマの姿があった。

マダラ達は彼らの隣席に案内され、店内を通る際に互いの存在に気付いたナルトやシカマル達が軽く挨拶を交わす。

アスマの目がどこか遠くを見ているような気がしたのは気のせいか。

マダラ達も席に着くなりさっさと注文をしていく。ナルトとサスケは何度か訪れた事があるのか、注文の手際が良かった。

注文した肉とサラダが届けられると、ナルトは真っ先にトングに手を伸ばし金網にタレが染みた肉を敷いて行く。

 

「お前ら野菜も食え」

「俺たちはおっちゃんみたいに歳じゃないから、食わなくてもイモタレしないし」

「言ったな、ナルト」

 

肉を焼きながらそう言ったナルトに、マダラは容赦なく二人の小皿にサラダを盛り付けて行くと聞こえた悲鳴に満足気に鼻で笑うのであった。

 

 

 

 

 

(な、なんだ)

 

食べ放題の時間制限が終わる頃、マダラは隣席にいたアスマに店の外に呼び出された。

あまりにも真剣な表情に昨日の事で何かあったのかとマダラは考えるも、突如土下座を始めたアスマに思わず半歩後ろに下がる。

 

「……お金を、貸してください」

「………………」

 

いきなり金をせびられた。

夜の冷たい風が店のある通りに吹き、宙を舞っている枯れ葉が二人の横を通り過ぎて行く。

アスマの切実な声が、店内から聞こえてくる賑やかな笑い声とは対照的で酷く悲し気であった。

 

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