おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第38話

 

「おい、お前の息子に金を貸せとせびられたぞ。今の上忍はそんなに金が無いのか」

「アスマがスマンかったの……」

 

マダラは焼肉屋での出来事をヒルゼンに事細やかに伝えた。

アスマが受け持つ班員の中に秋道家の子どもがいるが、秋道家はその体質から食事量がとんでもなく、店側から食べ放題プランの利用を断られているとのことで通常メニューで注文をしていたそうだ。

何かめでたいことでもあったのかは知らぬが、アスマ曰く班員の子どもらが調子良く食べていたのを止められないでいたところ会計がとんでもない金額に跳ね上がっていたと。ぎりぎり払えない金額ではなかったが、本当にギリギリのようであり、明日の生活費も危ういとのことで、たまたま同じ店にいた知り合いであるマダラを頼ったそうだ。

 

「おかげで予想外の出費だ、こっちは」

 

マダラは焼肉屋の領収書をヒルゼンの眼前に突きつける。

昨日の会計だが、店の前で土下座するアスマにマダラはサスケから貰った割引券を渡し、最終的に定価で食べ放題料金を支払った。割引券には通常メニューで利用する場合は合計額から三割引きになる旨記載があり、少し現金も貸しつつアスマは何とか支払いが出来たのだった。

領収書をヒルゼンは受け取ると火影服の裏から財布を取り出し、中から現金をいくつかつまんで出すと、マダラの手の平に包み込むようにして置き握らせた。

 

「貸した分は後で本人から返して貰うんじゃぞ」

 

ヒルゼンの手がどかされると、マダラは手を開き金額を確かめる。ぱっと見だけでも多い。間違っている、そう言おうとするとヒルゼンが先に口を開いた。

 

「サスケが暫く泊まるそうだからの。残りで足りないものでも買いに行くといい」

 

ヒルゼンは全てわかっているかのように、口の端を上げ笑ったのだった。

 

 

 

 

 

サスケがマダラたちの元に来て数日が経った頃のこと、夜中にリビングの方から聞こえた物音でマダラは目を覚ました。

ナルトは気付いていないのか、心地よさそうな寝息を立てている。ナルトの向こう側で寝ているはずのサスケの姿が見えず、どうやら聞こえたのはサスケが立てた音のようであった。

ナルトを起こさないよう、布団からするりと抜け出すとマダラはリビングの方へ向かった。

明りも点けず、サスケが椅子に座りながらぼんやりとしているのが見える。寝室とリビングの境目に立ちながら、マダラは小声でサスケに声をかけた。

 

「サスケ、寝ないのか」

「っ、なんだ、おっさんかよ」

 

驚いた様子で、サスケはマダラの方を振り向く。

外からの光で照らされたサスケの表情は、明るいとは言えない。

 

「一人で何してる」

「……何でもいいだろ」

「そうか。まあ、お前が寝不足になろうが俺には関係ないしな」

 

マダラがそう言い放つと、サスケは床の方へと目線を落とした。

程なくして、サスケはぽつりぽつりと話し始める。

 

「……おっさん、どうしたら強くなれる。兄さんはこの歳で、もっと強かった。こんな迷い猫の保護とか、んな任務ばっかやってるようじゃ、いつまで経っても俺は……追いつけねぇ」

 

サスケがぎゅっと拳を握る。

 

「こんなんじゃ、兄さんを連れ戻せない」

「……」

「程度の低い任務なんかしてる場合じゃねぇんだよ……ッ」

 

この数日サスケの様子は至って普通ではあったが、そういう風に見えるよう繕っていただけなのだろう。

第七班での任務は担当上忍であるカカシを除き、下忍しかいないため受けられる任務のランクは低いものばかりだ。里外任務についてはカカシの方の都合もあり殆ど受けておらず、基本的に日中すぐに終わるような簡単な任務ばかりを受けていた。

一刻も早くイタチを連れ戻したいサスケからすれば、生ぬるい今の環境に焦りの気持ちが湧いているのだろう。

 

「今の任務が嫌ならカカシにでも頼むことだな。アイツも考えはするだろう。悩み終わったらさっさと寝ろ、ナルトより遅く起きたら暫くからかわれるぞ」

「……おっさん」

「?」

「……おっさんがもっと早く里にいれば良かったのに」

「……」

 

サスケが言うもっと早くとは、イタチの件が起こるよりも前にだろうか。それはそれでうちは側に付き里が壊滅的な状況に陥っていそうだが、一族の人間ではないと思っているサスケにはわかるまい。

椅子を静かに引きサスケは降りると寝室へと向かう。マダラはヒタヒタと床を歩く音を聞きながらサスケとは反対のリビングの奥へと進み、窓の方へ行き開けると夜の空気を部屋の中に送り込んだ。

窓の外に少し顔を出し横を見れば、しゃがみながら握り飯を食べている若い方の監視役と目があった。

まだサスケが起きているのもあり言葉を交わすわけにもいかず、マダラは見なかったことにするとすぐに窓を閉めたのだった。

 

 

 


 

 

 

 

 

「というわけですので、俺たちは隣町まで行ってきますね」

「久しぶりの里外任務だってばよ! いつぶりだっけなァ!」

「今度は忘れ物してないだろうな」

 

八つ時に団子屋まで第七班の面々が現れたかと思うと、近くの町まで荷物を届けに行く任務を受けたとかでこれから里を出るとカカシから報告された。

マダラは昨晩サスケに言ったことを思い出し、早速要望を聞いたカカシが簡単に終わりそうな任務を選んだのだと推測する。

着替えを入れているのか小さなリュックを各々背負い、いってきますと手を振りながらナルト達は旅立って行った。

隣町くらいであればサスケの息抜きにもちょうどいいだろうと、マダラはナルト達の姿が見えなくなるまで見送ると仕事に戻ったのだった。

 

 

 

何の心配もせずナルトたちを送り出してから、二回日が昇った。

マダラがカカシから聞いた話では、近くの町にいる忍に荷物を届けるだけの任務であるはずなのだが、手間取っているのか知らないが昨日ナルトたちが里に帰って来ることはなかった。

ヒルゼンもカカシたちが受け持った任務はすぐに終わると見込んでいたのか何かトラブルに巻き込まれた可能性があると考え、朝早くからマダラと監視役たちを火影室へ呼び出した。

入れ違いになっているだけであれば良いのだが、荷物を受け取るはずの忍からいつ届くのかと早朝に連絡が来たそうだ。

ヒルゼンは机に肘を置き両手を顔の前で組むと、難しい表情をしながら額に組んだ手を当て悩む様子を見せる。

 

「……」

「火影様、カカシ班とは連絡が取れないということでしょうか」

「何かあればカカシの方からワシへ報せがあるはずじゃ。それも無いとなると……ううむ」

 

監視役の一人が問いかけると、なにか心当たりがあるのかヒルゼンは話を続けた。

 

「カカシ達じゃが、本来受ける筈の任務と違うものを受託してもうておるかもしれん。実は似た任務が数件あっての。どれも物の受け渡しだけじゃが、受付時に担当者が間違った任務を伝えていた場合……」

「間違ったかどうかはどうでもいい。早く続きを話せ」

 

渋い表情を浮かべるヒルゼンをマダラは見下ろす。

他里の忍による襲撃にあったのか、それとも単なる事故かどうか現状では断定できない今、必要なのは反省会を開くことではない。

 

「……ワシが忍をその町に向かわせておったのは、ある不可解なことがその近辺で起きていたからじゃ」

 

不可解なこととは何なのだと、マダラ達はヒルゼンをじっと見据え次の言葉を待つ。

 

「人が行方不明になったかと思えば、ある時突然帰ってくるのだそうじゃ。ある者は家に帰ろうとして、同じ場所をぐるぐると回っていたこともあったと。その報告が数か月前にいくつかのぼっておった」

 

ヒルゼンは静かに息を吐き出すと立ち上がり、マダラたちを真剣な表情で見返した。ここに呼び出した目的を告げるために。

 

「他にさける人員がおらん。里外に出ることになるが……おぬしらに緊急任務を与える。カカシ班の捜索に向かうのじゃーー」

 

監視役の忍の一人を隊長に、マダラ達はナルトたちが向かったとされる町まで行くことが決まった。

 

 

 

大人の足で急いで向かえば町まではそう時間はかからず、昼過ぎには着くことができた。

カカシ達が会うはずであった木ノ葉の忍とも落ち合い、第七班が来ていないことを確認すると町での聞き込み調査を始める。

四人とも特徴はある面々だ、固まって歩いていれば誰かしら見ていて印象には残っていよう。だが町の出入口付近で聞き込みを行っても、見かけた人間は誰一人としていなかった。

そうなると、四人とも町にたどり着いていないことが考えられる。

 

「タジマとお前はもう一度来た道を戻り、カカシ班の痕跡がないか探してくれ」

 

隊長の男はそう言うと、マダラ達とは反対方向へと向かった。

監視役の中でも若めの男が、マダラと二人町の入口に残される。

町に着いた時はよく晴れていた空だが、気がつけば分厚い雲に覆われており、町の周囲を生い茂る草木をどんよりと重く照らしていた。湿った土の匂いもし、今にも雨が振り出しそうであった。

 

「……タジマ、行くか」

「……」

 

里から町に向かっていた際、特に異常は見られなかったがナルト達は一体どこへ消えたというのか。

先日ナルトを狙う体で暁が里に現れたが、他にも人柱力を狙う人物でもいたのか。だが戦闘があったとすればどこかにその痕跡があるはずだ。

マダラと監視役は来た道をゆっくりと戻り始める。

マダラは木々の高い位置を、監視役は足元の方に注視しながら歩みを進めていった。

 

町から離れ三十分ほど経った頃、マダラは周囲の景色にふと何かを思い出し監視役の方を振り返った。

茂みをかき分けながら探している監視役に声をかける。

 

「なんだタジマ、何か見つけたのか?」

「いや、思い出したことがあってな。過去にこの辺りに来たことがある」

「来たことってそれって昔の、お前がいたとこの……こっちに来る前か?」

「ああ、今回と似たようなことがあってな。迷いやすい森があるとかなんとかで、確か近くに洞窟があったんだが……柱間にそこを見てきて欲しいと頼まれた」

「柱間……初代様か」

 

監視役はへぇと頷きながら捜索を続けるが、木々の向こうを探そうと顔を少し上げた時、急にぴたりと動きを止めるとある一点を指差した。マダラがその先を見据える。

 

「な、なぁ、その洞窟ってあそこのことだったりしないか?」

 

監査役が指差す先には、崖の下にぽっかりと空いた穴があった。

 

「ああ、ちょうどあんな感じのだっ、たーー?」

 

マダラがそうそうと頷こうとした時、目の前にいた監視役が忽然と姿を消した。思わず後ろを振り返るが誰もいない。わけもわからず口からは、は?と声が漏れる。

確かに目の前に監視役はいた。つい先ほどまで言葉を交わしていたのだ。地面に倒れているわけでもなく、誰かに奇襲された様子もない。

ポツポツと、大粒の雨が降り始めた。

いきなりのことに呆然と立ち尽くすが、このままでは濡れてしまうと一先ず洞窟の方へ向かう。

洞窟の入り口に差し掛かった時、人の気配を感じ取ったマダラは腰に巻いているポーチにそっと手を添えた。中にはクナイが入っている。

本降りになった雨が木々の葉を打ちつける音が大きく響く。

 

(ーー誰だ。姿を見せないとなると、向こうも忍か?)

 

潜んでいる相手が木ノ葉の同盟国でなく敵国の間者であった場合、奥の暗闇から武器が飛んでくる可能性もある。とはいえ避ければいい話だが。

緊迫した空気が漂うが、暗闇の中からほんのりと影が動くのが見えると同時に聞き馴染みのある少女の声が聞こえ、マダラはポーチから手を離し警戒を解いた。

 

「もしかして、タジマさん⁉︎ タジマさんですか!」

「この声は……サクラか?」

 

ジャリと洞窟内の砂を踏む音が聞こえると、マダラの側まで駆け寄る桜色の少女の姿が見えた。

サクラはマダラにぶつかる手前まで走り寄り、安心し切った表情を見せる。

 

「良かったタジマさんで。カカシ先生もサスケくんも今動けなくて……私一人でどうしようかと……」

「カカシとサスケが? ナルトはどうした」

「ナルトは……捕まって」

「捕まった? どういう事だ。そもそもお前達は町にいる忍に物を受け渡すのが任務だっただろう、なぜここにいる。町はすぐそこだが、奇襲にでもあったのか」

「奇襲……ううん違う、違うんです。私たち町に向かってたんですけど辿り着けなくて、気が付いたら知らない集落に出てしまって。それで大騒ぎになって、ナルトが捕まって……」

「集落?」

 

マダラが聞き返すと、奥から足音が聞こえフラフラとした足取りでカカシが現れた。カカシの消耗具合から、チャクラ切れによる不調であるとすぐに悟る。

 

「タジマさん、俺が説明します。サクラはサスケのそばに行っておいで」

「カカシ先生……はい」

 

サクラはマダラに軽く頭を下げると、洞窟の奥へと戻って行った。

カカシは入り口側にある岩に寄りかかると、深呼吸をした後マダラの方へ困った表情を浮かべながら話し始めた。

 

「タジマさん、俺達が任務を遂行できない理由とナルトが捕まった訳ですがーー」

 

カカシが疲れた様子で語るのを、マダラは静かに聞いた。

中々町に辿り着けず探し歩いているうちに集落に辿り着き、そこにいた人々にナルトが名乗った途端に敵と見なされ襲われたのだと。集落の人間に囲まれ、女で一番弱いと思われたのか先に一人捕まったサクラを逃すためにナルトが身代わりになったそうだ。

カカシは逃げる際に初めて左目の写輪眼の新しい能力を使った事、それにより相手の動揺を誘い逃げ切れた事、サスケは逃げる際に腕を掠めたクナイに毒が塗られていた為にその影響で熱を出し休んでいる事など、今まで第七班に起こったことを一通りカカシは説明した。

幸いにもサスケの毒は忍の間ではよく用いられている類の物であったようで、普段から持ち歩いている解毒薬で対処出来たそうだ。今はもう落ち着いているらしい。

 

「その集落……いや、思えば集落では無いですね。まるで陣地だ、戦のための。それにあの空気感は、余所者を排除しようとかいう物でもなかった」

「戦のためだと?」

「信じられないと思いますが、いや、でもタジマさんの実例もあるからな」

「……なんだ」

「その人たち……うちは一族の家紋を付けていたんです。服も前にタジマさんが俺に幻術を掛けた時に着ていた物によく似た物でした」

「一族の家紋?」

「ええ、それから写輪眼を向けられました。タジマさん、突拍子もない話ですが、もしかしたら俺たちは過去に遡ってしまっていると……そう考えてもおかしくないかなと」

 

話し疲れたのだろうか、カカシは何度か大きめの呼吸を繰り返す。

マダラは腕を組み思案する。

カカシの話が間違っていなければ、存在しない筈のうちはの人間がいて一箇所に集まっている。それも時代にそぐわない服を着てだ。

そしてマダラはヒルゼンの話を思い出した。町の近くで不可思議な現象が起こっていたという事を。

周辺で起こっていた謎の現象だが、何が原因かはわからないが、時空間の歪みが発生していたのだとすれば説明できなくもない。

 

(時空間忍術の類か……人為的な物だった場合、過去を改変しようと目論む奴でもいるのか)

 

その歪みは一体誰が起こしたというのか。里に戻るなり、急ぎヒルゼンに話をする必要があるだろう。この近辺を通った人間が巻き込まれているあたり制御できていないと見える。術者が制御できるようになった時、何の目的で過去へ行こうとしているのか、その目的次第ではどんな手段を使ってでも止めねばなるまい。

過去から未来にいつのまにか来ていたマダラであるが、過去に逆戻りさせられるのも二度とない経験だ。遡っている過去が、カカシの話から想像するに厄介な時代であることは確かだが。

 

「過去に遡っている……なるほどな。俺は行方が知れなくなったお前たちを探しにこの辺りまで来たが、共に行動していた男が目の前で消えたのを見ている。カカシ、お前の話もあながち間違っていないのかもしれないな」

「そうでしたか。向こうからすればタジマさんが消えた事になる。早く戻らないとですね」

「だな。三代目から聞いたが、この辺りで行方不明になる人間がいたらしい。同じ場所を回っていた奴もいたそうだ。幸いにも、どの人間も長くても数日以内には戻っていることは確かなようだが。このままこの辺りにいればいずれ戻れるだろうが……」

「ナルトがまだ」

「ああ、早く救出に行った方が良いだろうな。置いていく事になりかねない」

「それだけはなんとかして避けなければ」

 

マダラは洞窟の外の、降り続ける雨の景色を眺めた。

この本降りの雨では地面がぬかるみ、足跡が残る。

一度カカシ達が近付き騒ぎになったのもあり、あちらもそれなりの警戒体制を敷いていることが予想できる。ナルトの救出は慎重に行う必要があるだろう。

カカシ達が団子屋に現れ里を出た時間からして、この辺りに着いたのは夕方頃である事は推測できる。マダラがこの現象に巻き込まれたのも、曇っていてよく見えなかったが日が沈む前だ。

 

(時間は夕方頃か? 明日のこの時間までにナルトを救出しこの付近に戻る必要がある……明日でなくとも時間は重要になるな。動くなら今夜すぐにでも……)

 

 

里外任務には厄介事しかないのかと、波の国でのことを思い出しながらマダラは外の暗い景色を睨んだ。

どう集落に潜り込むか考えながら、若干雨に打たれているのもあり、一先ずサスケの様子も見るべくカカシの後について洞窟の奥へと入った。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「おーい。おーいってばァ、誰かぁ……てやっぱいねぇか。カカシ先生達逃げれたかなぁ」

 

集落の端、岩場を切り取り作られた牢の中にナルトはいた。

雨のせいで湿気がひどく、腕をさわればベタベタと不快な感触が肌の上で踊った。

牢の鉄格子に触れないようにしつつ外を覗いては声を出してみるが、人がいないのか特に反応はない。

見張りがいないのであれば脱走するチャンスではあるが、鉄格子や周りの壁には札が貼り付けてありうかつに触れないほうがいいのだけは確かであった。

岩の床の上に、ナルトはヨイショと腰を下ろす。

 

(にしても、何が起こったんだってばよ……)

 

雨が地面を打つ音を、ナルトは鉄格子の外を眺めながら聞き流した。

任務で行く筈だった町にはたどり着けず、やっと見つけた集落でまさかの戦闘となってしまった。

 

「うーん、なんか名前言ったら、おかしな事になったような……ナンデ?」

 

部外者を警戒するのはわからなくもないが、それにしてもいきなり捕まえようとすることもないだろうに。突如戦闘態勢を取り始めた集落の人間達に、ナルト達も応戦せざるを得なかった。

そして戦いになった時だが、不思議なことがあったのを思い出す。

 

(みんなおっちゃんとサスケと同じ目持ってたな……どういうことだってばよ)

 

あの特徴的な目を見間違えることはない。

サクラを逃がそうと捕まったナルトは写輪眼で幻術を掛けられ眠らされると、気付いた時にはここにいた。

眠らされる直前に聞こえた、サクラとサスケがナルトの名を叫んだ声がまだ耳に残っている。

 

「……どうにかしてこっから出て、早くみんなのとこに行かねぇと」

 

「どこへ行くつもりかな」

「うわァ⁉︎」

 

独り言に返事があると思わなかったナルトは、思い切り声を出しながら肩を震わせた。

足音もなく、牢の前に傘を差した青年が現れる。どこかマダラにもサスケにも似た雰囲気の青年は薄暗い牢の中を覗き見ると、ナルトの全身をまじまじと眺めた。

 

「コイツがうずまき姓を名乗る子ども、か」

「に、兄ちゃん、誰だってばよ……」

 

ナルトの問いに、答えが返ってくることはない。

ナルトはいつのまにか口の中に溜まっていた唾を飲み込んだ。

青年の黒い瞳がナルトを見下ろす。その見下ろし方にどうしてか覚えがあり、ナルトの頭にはマダラの顔が浮かんだのだった。

 

 

 

 

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