おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第40話

 

「ぜんっぜん釣れねぇってばよォ……」

 

カカシ達と合流し夜が明けた後、ナルトはサスケと共に川で釣りをしていた。

ナルトは長い木の枝に紐をくくりつけた簡易的な釣り竿で川魚が釣れないか試していたが、一向に魚が釣れる気配はなかった。

川のほとり、岩の上から糸を垂らし続ける。

 

「やっぱ移動した方が良いと思わねぇ? なあサスケェ?」

「仕方ねぇだろ。おっさんがここより遠くには行くなって言ってんだし、どこで敵と鉢合わせするかもわからない」

「でもちょっとだけさ場所変えね? こっちまで魚こねェんだってば」

 

ナルトとサスケが話している時だ、腹の奥から空腹を知らせる音が鳴った。音の主はサスケである。

 

「……」

「そーいや、サスケ達はなんも食ってないんだっけ」

「敵に出されたモン素直に食ってるお前はどうかと思うけどな」

 

木ノ葉の里を出る際に作ってきていた弁当はとっくに消費済みであり、サスケは二日近くまともな食事にありつけていなかった。それはサクラもカカシも同然だ。ナルトだけはなぜか捕まっていた時に出された握り飯を食べているため、他の三人よりは体力に余裕がある。

サスケも他に携行食で腹を満たすなどしてはいたものの、育ち盛りの体には物足りなかった。

マダラの予想でこの辺りであれば戦に巻き込まれることはないだろうということで、どうせすることもなく暇だろうと二人に釣りでもして食料でも確保してろと任されていた。

二人の釣り糸が、ゆらゆらと水の流れに合わせ動く。

戦が起こっているらしいが、二人の目の前には陽の光を反射する水流と深い緑が生い茂った穏やかな景色が広がっており、喧騒とは程遠い空気が流れている。

黙ってまた釣り糸を眺めているのもつまらないと、ナルトはサスケとの会話を再開する。

 

「なぁサスケ、ここどこなんだろ」

「さあな。カカシとおっさんの予想じゃ、昔の時代らしい」

「へぇ、そうなんだ」

「昨日の」

「んー?」

「追って来た奴」

「追ってきた人 ……あ! そういえば!あの兄ちゃん、俺が牢の中にいる時に一回来てた。なんか人に呼ばれて急いで俺を見に来たとかなんとか」

「あの男は元々あそこにいなかったのか?」

「たぶん。うずまき一族がどうとか? なんの目的で来たかーとか? カカシ先生達のことも聞かれたっけ。せ……せー、せん……なんだっけ。どこの回しモンだーとかも」

「お前、答えてないだろうな」

「あの兄ちゃんが何聞きたいのかわかんなかったし、そもそもうずまき一族? とか言われても俺一族とか知んねぇし、なんも答えらんねぇって」

 

ナルトは牢にいた時のことを振り返る。

こちらを探る青年の目は、ただナルトが何者なのかを確かめに来ただけだったように思えた。ナルトが答えられず返答に悩めば悩むほど、そして青年の質問の意図がわからず聞き返しているうちに、彼は眉間に皺を寄せたかと思えばため息をつきどんどん呆れた表情になっていった。

 

「俺のこと延々と質問攻めしてきた後、あの兄ちゃん名前呼ばれてどっか行ってさ。その後気付いたらサスケとおっちゃんが来てて」

「名前、聞いたのか」

「聞いた聞いた。なんだっけ、なんか呼ばれてた時ちょっと偉そうだったんだよな……あ、確かイズナ様って呼ばれて……ん? なんかどっかで聞いたことがあるような……あ」

「イズナ? ……イズナって」

「え、サスケ知って……ハッ! ちょ、ちょいまちサスケ! やっぱ聞き間違えかも! イー……イナリだったかも!」

「イナリは波の国の奴だろ」

 

ナルトは青年の名前に聞き覚えがあるような気がし口に出してみると、サスケの反応にサッと顔色を変え慌てて聞き間違えだったかもしれないと繰り返した。

思い出すのが遅かったが、イズナといえばマダラの弟の名前だ。サスケの様子からして、もしかしたらマダラから聞いているのかもしれないと気付いたナルトはどうにか別の名前を上げ誤魔化そうとするが、ぱっと良い物が思い付かずかえって怪しさが増してしまう。

 

「確かおっさんの弟の名前と同じ」

「ソ、ソダナー」

 

ナルトは釣竿を握り締め、どうにかこの話題を逸らせないかと頭を全速力で回転させる。ぶわりと全身から汗が湧き出し、変に心臓も脈打つ。

 

「偶然か? 夜アイツが来た時のおっさんの様子がいつもと違う気がした」

「そ、そうかな? 俺はいつもと変わらなそうに見えたけどなぁ……」

「おっさんが追手一人倒せないはずないだろ。どうしてすぐ動かなかった」

(うっ、それもそうかも……おっちゃん、ごめんだってばよォ!おっちゃんが強すぎてごまかせねェーー!)

 

ナルトは胸の内で叫んだ。

確かにサスケの言う通り、普段のマダラならば追手一人に追いつかれたくらい、どうということはないだろう。そんなことはナルトもわかっているつもりだ。

マダラが過去の人間であることを知っているのは、第七班の中ではナルトとカカシだけであり、サスケとサクラは知らないとナルトは認識している。マダラが良しと判断した相手にだけ正体を明かしているはずだ。ナルトが勝手に言いふらして良いものではない。

ナルトは一旦握っていた釣り竿から手を離し足元に置くと、親指と人差し指で枠を作り、囲うようにして両手を顔の前に持っていった。

 

「……ホ、ホラ、サスケ! 似てる人間て、二、三人いるって言うじゃん? おっちゃんの知り合いに顔似てたからビックリした……とかじゃないかなとかなんとか」

「……」

 

これ以上の例え話はもう思い浮かばないと、ナルトは渋い物でも食べたかのような表情でサスケに返した。なんとか言い訳を捻り出したナルトであるが、サスケはナルトの苦労も知らずに川面を眺めている。

 

「おっさんの知り合いか……そういやおっさん、どこに行くって言ってた」

「えっと、確かあっちの方に偵察って」

「俺達には遠くに行くなって言っといて自分は行ってんのかよ」

「まあまあ、その辺見に行って大丈夫そうなのも今おっちゃんくらいしかいないし」

「あとナルト、お前カカシの目見たか」

「え? カカシ先生の?」

「ああ」

「俺ってば捕まっちまったからなぁ……」

「カカシの言う通りならあの集落にいたのは俺と同じうちは一族の人間だ。そいつらがカカシを見て血相変えて追っかけて来たくらいだ、俺もちゃんと見えたわけじゃないが、あの夜のカカシの目は前と模様が違った」

「そ、そうなんだ」

 

ナルトはサスケにそう言われ、脳裏にカカシではなくマダラの顔が浮かんだ。何度かマダラの写輪眼は見たことがあったが、サスケやカカシの左目にあるのとは違う模様であった。

カカシのチャクラの消耗具合は波の国にいた頃よりも酷いようにも思える。マダラが夜間カカシの修行を見ていた時があったが、カカシの左目に関わることなのだろうか。サスケが見た違う模様の写輪眼は、かなりカカシの身体に負担がかかるようである。マダラとの夜間修行は、左目の能力を使うためにカカシの基礎体力やチャクラの底上げをしようとしていたのではないかと、ナルトは今になって思い至った。

 

「あの集落の人間に聞くわけにもいかないしな、帰ったら調べる。……もしかしたらイタチも」

「ん? なんか言った最後? うーん、直接カカシ先生に聞いてみんのは? 案外教えてくれるかもしんねぇよ」

「……」

 

サスケは反射する陽の光の眩しさに目を細めながら川面を睨む。

イタチが里に現れたあの日、サスケが青い光に捕まった際彼は見たことのない黒い炎をマダラの足元に放っていた。集落でカカシが使った術は逃走しながらであったためよく見えなかったが、空間がかすかに歪んで見えた気がした。

 

(そういや、何でカカシは写輪眼を持ってるんだ?)

 

ふとサスケは、カカシの左目の出どころが気になった。

初めてカカシが写輪眼を見せたときも疑問に思ったが、なぜうちは一族の人間でもないカカシがあの目を持っているのか。

初めは人から奪った物なのかと色々と考えたりしたが、カカシの性格からしてそうで無いことは考えつく。無理やり埋め込まれでもしたのだろうか。誰かから使用することを強要されているわけでもなさそうだが、あの左目のきっかけは何だったのだろうか。

サスケが物思いにふけっていると、突如ナルトが身を寄せ顔を覗き込んできた。

 

「……サスケ、もしかして恥ずかしい? 一緒に聞きにいこっか?」

「……は? 恥ずかしいとかじゃ、あ、おい、糸引いてんぞ! 早く拾えウスラトンカチ!」

「え?あ、ほんとだ! わ、やべ⁉」

「あ! バカ!」

 

岩の上をズルズルゆっくりと滑っていく釣り竿に気づいたナルトは慌てて掴もうとするが、釣り竿は掴むことはできず、身を乗り出しすぎてしまっていたせいでバランスを崩す。川に向かって倒れていくナルトの上着を掴もうとサスケが手を伸ばすが、悲しきかな、岩の上という足場も良くない場所では支えきれずサスケはナルトと共に宙に浮いた。

 

「「げ」」

 

きれいな水面が見えたかと思うと、二人は仲良く水中に落ちていったのだった。

落ちた衝撃で水が跳ね上がり、水分を含んだ服が重く体に絡まるようにまとわりつく。

 

「ちゃんと見てろウスラトンカチが!」

「冷た! わりぃサスケェ!」

 

二人は急いで川から上がると、上着を脱ぎ水を吸い重くなってしまった服を絞った。

昨日とは違い、晴れているのが救いである。

 

「うう、風が吹くと寒いなあ……なぁ、火遁かなんかで一発で乾かせねぇ?」

「できっかよ、おっさんじゃあるまいし」

「逆におっちゃんの火力じゃ丸焼きになっちまうって!」

 

「おい、なんでお前ら濡れてんだ」

 

絞った服をバサバサと広げ、ナルトがべったりと濡れた髪の水滴を飛ばそうと片手でわしゃわしゃと掻き上げた時、二人の後ろから声が聞こえてきた。

マダラである。

偵察が終わったのか、マダラが二人の様子を見に戻って来たようだ。

 

「あ、噂をすればなんとやら!」

「おっさん、ここ全然釣れねぇ。もっと他の場所ないのか」

「そうそう、場所変えたいんだけどさー」

「お前ら、聞かれたことに答えてくれ」

 

川から上がったばかりだというのもあるが、二人の足元の砂利には水が滴り落ち続け黒いシミを作っている。

ナルトが釣り竿が落ちそうになり取りに行こうとしそのまま二人で落ちたことを伝えると、マダラはため息をついて首を横に振った。

 

「あとで水の上を歩いて取りに行きゃいいだろうに……」

「ぶえっくし! うう、間に合うと思って。……あのさ、おっちゃーん。火遁で一気に乾かせたりしない?」

「自分でどうにかしろ。お前も風遁なら使えるだろ、自分でやれ」

「寒いじゃん。サスケもさみいよな」

「……」

 

二人の髪からは雫が落ち続けている。

ナルトとサスケの目がマダラをじっと見据える。

 

「……ったく、そこに並べ」

「よっしゃァ!」

 

ナルトはマダラの言葉に歓喜の声を上げると上着を掴んだ。そして腕を前に出しそれを広げると、サスケと二人でマダラの前に距離を取りつつ並ぶ。

まだかまだかと腕を伸ばし服を持っているナルトとは対照的に、サスケは少し不安そうに体のすぐ前に服を抱えた。一瞬で濡れた服を乾かせる程の火遁だ、焚き火を付けるような優しい術ではあるまい。

案の定サスケが思案する通り、印を結んだマダラが放った炎はナルト達のすぐ手前で止まってはいるものの、目の前から来る熱風の圧に前髪は逆立ち、思わず後退りしてしまうような暑さにナルトは叫び、サスケは眉間に皺を寄せた。

 

「アチッアチッ、ギブ! おっちゃん無理! もういい、あんがと‼︎ 止めて! おっちゃん! ありがとうございました! ……止めてー!」

(あっつ……)

 

腕を前に伸ばしていたナルトは引っ込め、声を張ってマダラに訴える。

サスケは熱さに耐えながら程なくして服が乾いているのに気付くと、叫ぶナルトを尻目に熱風がマシなところまで下がった。

マダラの炎はすぐに止められ、目の前から赤い眩しさが消えるとナルトはへなへなと地面に座り込む。

 

「やべぇ……死ぬかと思った」

「お前がやれって言ったんだろうが。ほら、全部乾いただろ」

「ほんとだ……乾いてる。やっぱおっちゃん慣れてんなぁ」

「火遁で直接服を乾かしたのは初めてだがな。さっさと着ろ、一旦カカシ達のところに帰るぞ」

「え? カカシ先生とこ戻るの?」

「周囲の状況を共有しておきたいからな」

 

マダラは二人に早く着替えろと促す。

ナルトとサスケはまだ釣れてないとマダラに話すが、手元に残った兵糧丸で数日はどうにかなると言い、釣り始めてから時間も経っているため夕刻までにはまだ余裕はあれど、早めにカカシ達に合流しておいた方が良いだろうと撤収させることに決めた。

マダラはナルト達の身支度が終わるまでの間、偵察に行っていた方を向く。

 

(今、戦の気配は感じない。休戦に入ったようだが、遠くからでも感じた体の奥まで痺れるようなあのチャクラ……間違いない、柱間だ。中忍試験の時とは桁違いだな、懐かしい)

 

マダラの偵察だが、戦場に紛れ込んだわけではなくあくまでチャクラを感知できる範囲まで近づいただけだ。

柱間がいるとなれば感知タイプの扉間も戦場にいるはずだが、柱間の相手は基本的にマダラが担っており、体術だけでなく術のぶつかり合いもそれなりに多い。いくら感知タイプの扉間といえど、戦いの最中で周囲の大人数のチャクラと柱間のチャクラに当てられては感覚が鈍り、離れた場所にいる方のマダラのチャクラには気付きもしないだろう。

 

「おっちゃん、お待たせ!」

「……終わったか。お前ら走れるな? 行くぞ」

 

マダラが走り出すと、ナルトとサスケは驚いたものの置いて行かれまいと全力でマダラの後をついて行った。

 

 

 

 

 

洞窟の方に戻ったマダラ達を出迎えたのは、想像だにしていなかった光景であった。

外で気を失い倒れているサクラと、そのすぐ側で脂汗を滲ませながら膝を付くカカシ。カカシの背後には昨晩マダラ達を追った青年が瞳に赤い三つ巴の模様を浮かべながら、カカシの首にクナイを突きつけ立っていた。

 

「ぐっ」

「……どうやら戻ってきたみたいだ。お前に居場所を吐かせるまでもなかったな」

 

青年ーーイズナがマダラ達の方を振り返る。

 

(……なぜイズナがここにいる)

 

マダラは胸の内で呟いた。

今日は千手との戦の日、てっきりイズナも出陣しているものと思い込んでいたが違ったようだ。いくら今は休戦している状態とはいえ、戦に出ていたとすればカカシ達の居場所を知らないはずのイズナが短時間で戦場からここに辿り着くことは出来ないはずだ。

 

(ああそうか、なるほど。ここの『俺』が行かせなかったか)

 

昨晩イズナが何者かにやられ倒れたことは、この時代に元々いるマダラの耳にも入ったことだろう。記憶にある限りでもイズナが不調をきたし戦場に赴かなかった覚えはなく、一大事だと判断したこの時代のマダラが同行を拒否し待機でもさせた可能性がある。

 

(だとしたら、大人しく待機命令を守っていれば良いものを)

 

イズナの目は、真っ直ぐにマダラの方を見据えている。

 

「ここでコソコソとやり過ごしていた辺り、単純に千手側の人間だと言うわけでもなさそうだ。そこの子はわからなかったけど、うずまき一族を名乗る子どもに写輪眼を持ったコイツ。後ろにいるのはうちはの子だな。報告を聞いた時はふざけてるのかと疑ったよ、見れば見るほど妙な集まりだ、本当に」

「お、俺達怪しいモンじゃないってばよ! 本当だって! 兄ちゃんからしたら信じにくいかもだけど、説明すると難しくて……でもあの時は道を聞こうと思っただけで、敵意とかそんなん無かったんだって」

「そう。じゃあ、君はどうして逃げたのかな」

「え。そ、それはぁ……」

 

ナルトの目線が、助け舟を求め側にいるマダラの方へと上がる。

マダラはカカシとサクラの方へ視線を落としていた。カカシは捕えられてしまっているものの、見える範囲でサクラに外傷はない。昨晩の事があってもなおイズナがここまで追ってきたのは、カカシの左目について確かめに来たか、またはマダラの存在が気になり一人で探りに来たといったところか。

 

「それよりもーー」

 

ゾクリと肌を撫でる殺気がイズナから放たれる。

またイズナに幻術を使い眠らせることで無力化する事もできなくはないが、流石にこんな明るい場所で写輪眼でも使えばサスケに気付かれるだろう。イズナの反応で察するかも知れない。それにイズナとてもう二度と簡単に幻術にかかるまいと対策もしているはずだ。同じ術が二度通じると思える程、イズナも弱くはない。

 

「変化の術でもない。それに今頃は戦場にいるはず……その姿、そのチャクラ、一体……なんなんだ!」

「……」

 

兄の姿で何を企んでいるのだと、マダラを疑っているのだろう。

イズナからの殺気を真正面に受け止めたままマダラが答えずにいると、ナルトやサスケ、そしてイズナに捕まっているカカシからも視線が集中する。

ナルトはマダラとイズナの方を何度も交互に見ては、マダラが答えるのか否かヒヤヒヤと見守っていた。だがマダラはイズナの問いに答える気はなく黙り続けている。

答えないマダラに痺れを切らしたイズナがクナイを持つ手に力を込めカカシを使い脅しをかけようとした時だ、周囲の空気感が突如変わった。

昨日の雨で湿り濃い地面の色をしていたのが、知らぬ間にからりと乾いた土に変わっている。

落ちている枝が踏まれる音が聞こえてきたかと思うと、マダラの横にある近くの木の後ろから男が一人ひょっこりと顔を出し現れた。木ノ葉の額当てを付けた、マダラの監視役の若い方の男である。監視役はマダラの姿が目に入るなりパチクリと瞬きを繰り返した。

 

「え、あれ、あ、タジマ⁉︎ と、ハッ! 発見! 隊長ー! 第七班の子ども達とタジマを発見しました! ……ん? カカシさん⁉︎」

「なっ、仲間か⁉︎ ……! お前動けてッ」

 

膝をついていたはずのカカシが動いた。

全く気配もなくいきなり木々の中から現れた監視役の男にイズナが驚いた隙を見逃さず、カカシは力を振り絞りイズナのクナイを持った手を掴むと引いて体勢を崩させ、背中側に回り込んだ。

カカシは今までのやり取りでなんとなくであるがマダラと青年の関係を理解していた。昨晩の洞窟に戻ってきた時のマダラの様子がおかしかったのもあり、知り合いでもいたのかと尋ねた際に肯定していたのを思い出したのだ。

 

(きっとこの人はタジマさんの身内だ。だとしたら、タジマさんに傷付けさせるわけにはいかない。俺が取り押さえなければッ)

 

イズナはしまったと一瞬苦い顔をするが、カカシが弱っていることなど分かりきっており、すぐに体勢を切り替えると簡単にカカシの手を振り解き、向かい合せになるなりクナイをカカシの首元に振りかざし仕留めようとする。今の体力では避けきれないと、カカシは腹を括る。

 

(取り押さえることができれば良かったんだけどな……ダメか)

「カカシ先生ッ!」

「カカシッ!」

 

ナルトとサスケの叫びに近い声が響く。

二人ともにカカシとイズナの間に入ろうと駆け出すが、間に合いそうにない。

カカシが危ないーーそうナルトとサスケの二人が思った時、桃色の影が動いた。

 

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