おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第46話

 

サスケは目の前のうちは装束の青年の瞳に注意しながら周囲の気配を探ると、こちら側に向かってくる気配をいくつか察知した。

青年の追手だろうか、サスケも見つかれば厄介なことになるに違いない。今すぐ姿をくらませるべきであろう。

だがもうすぐ側というところまでボルトのいる場所にたどり着いている。一刻も早くマダラの手からボルトを回収し合流したいところであった。どうにかして青年を撒き、施設に向かいたい。ただしこの青年を野放しにしても良いものかとも考える。

当時のサスケは里抜けをした頃だろうが、それでもこの青年に関してはイレギュラーな存在であることは察しがついていた。過去には存在しなかったであろうこの青年を放置しても良いのだろうか。

 

(捕まった後、コイツはどうなる?)

 

サスケは青年の追手がどんな奴かを見極めるため、ギリギリまでこの場に留まることに決めた。

睨み合いを続けた後、一度二人同時に拳を交えるとすぐに間合いを取った。

青年の赤い目がサスケを鋭く捉える。

 

「……防御するだけか。さっきからずっと何を持ってるんだい、右手のそれ」

「俺にはあんたと戦う理由はないからな。これは……捨てそこねた」

 

サスケは青年の方に少しだけカップを傾けた。中身は空で、残念ながら先程マダラの影分身にやったように中身をぶちまけることはできない。

青年の容姿だが見れば見るほどどこか懐かしさを覚え、そして装束がかつての大戦で見たカカシの友人だった男が身にまとっていた物と似ていることに気付くとわずかに眉間にシワを寄せた。

 

(あの装束……あれは当時うちはオビトが着ていたものに似ている。俺が幼かった頃にはもう着る者も見なくなった古い装束だ。団子屋のマダラといいこの時代何かがおかしい。どうなっている。それから……来たか!)

 

気配は更に近づき、そして一つの影が勢いを付けると真っ先にサスケと青年の間に飛び込んだ。そして少し遅れて金髪の小さな影がサスケの前に躍り出る。

サスケの前に現れたのはボルトだ。

 

「師匠ォ‼︎」

 

木の葉を数枚、髪の毛に絡ませたボルトがサスケを呼んだ。

 

「無事だったかボルト。何もされてないか?」

「俺は大丈夫だってばさ! でもちょっと報告しなきゃなんねぇことあんだけどさ!」

 

ボルトはサスケに両手を合わせると、謝るようにして背中を折った。ボルトの後ろで、背中合わせにして立っているのはサスケに影分身を送ったマダラだ。マダラの方は青年の方と静かに向かい合っていた。

マダラと向かい合う青年の瞳が不安気に揺れる。

 

「……兄さん」

「……イズナ、施設に戻れ」

 

マダラと青年、イズナは互いを呼び合う。

マダラが否定しなかったことに、イズナはかすかに瞳を輝かせた。

 

「やっぱり、兄さんなんでしょ。どうして名前を変えてるのか知らないけど、こんなところで何をやってるんだよ」

「……」

 

サスケは青年の名前にぴくりと反応する。聞き覚えのある名前であった。

 

「……イズナ? まさか、うちはイズナか?」

「師匠?」

 

ボルトの呼びかけを無視し、サスケはマダラとイズナを見据えた。

青年、イズナの方は戸惑う表情を見せている。

 

(イズナ……うちはイズナはマダラの弟の名前だったはずだ。だがマダラの弟は皆死んだはず。穢土転生の術とかでないならば、あのイズナも俺たちのように時空間忍術か何かに巻き込まれてこの里にいるとでもいうのか)

 

サスケはボルトをその背中に隠すと、イズナとマダラのやり取りを見守った。

 

「どうして……どうして何も答えないんだ、兄さん」

「いいから今すぐに戻れ。それから俺は……お前の兄では……ない」

「……なんだよ、じゃあそいつらの仲間ってことか。兄さんじゃないっていうなら、それならどうして父の名を語る? 誰のつもりなんだ」

「……」

「兄さんだと認めないなら、確かめる方法は幾つだってある!」

「え、おっちゃん達、何? 兄弟? どういうことだってばさ?」

 

ボルトが戸惑った様子で、えっと声を上げる。

イズナという青年はマダラを見て兄だと言うではないか。まさかの存在にボルトはサスケのそばで固唾を呑んだ。

柔らかな風がマダラの長い髪を優しくさらった。

 

「……ッ」

「……」

 

イズナの方が先に動いた。目眩しをするかのように拳をマダラの顔の前に突き出すが、簡単にいなされる。イズナの動きを止めようとマダラはその手首を掴むが、イズナはそれに怯まず身体を回転させ向きを変えるとマダラの腰元めがけて回し蹴りを繰り出した。ボルトは青年の動きのしなやかさに目を瞬かせる。

向きを変えたことによりイズナの体がねじれ、マダラはつい掴んでいた手を離した。その隙を見逃さず、イズナは間合いを取ると素早く印を結び炎を吐き出す。

 

火遁 豪火球の術

 

マダラもイズナがどの印を組んだのか瞬時に理解すると、同じ術で相殺した。

二人から発せられた炎の熱さに、ボルトはぎゅっと顔をしかめる。

 

「アッツ……兄弟喧嘩勃発ていうか、ちょっと、師匠コレどうすれば!」

「下手したらここら一帯が焼け野原になるな……おい、ボルト何を!」

「こうしちゃいられねぇ! ちょっと二人共待つってばさー!」

 

炎が消えた直後、ボルトは両手を上げ争うマダラたちの間に割って入った。突然の乱入者に二人共ピタリと動きを止めると、マダラの方はボルトの方を向き叱りつける。

 

「いきなり前に出るな、状況を見ろ。死にたいのか」

「そういうわけじゃねぇけどさ! いったん! 一旦落ち着こうってばさ!」

 

ボルトは両手をブンブン振りながらそう言うと説得を試みた。イズナの方もマダラから意識がそれたせいか、赤かった瞳は黒く落ち着いた色に戻っている。

 

「兄ちゃんとこのおっちゃんが兄弟かどうか俺にはわかんねぇことだけど、一旦聞いてほしいことがあるっていうか」

「ボルト! 自分がどんな危ないことをしたのかわかってるのか」

 

ボルトの側にサスケが駆け寄り二人から引き離す。

 

「悪いって師匠! 説教なら後でちゃんと聞くからさぁ! で、とりあえず兄ちゃんの方もさ、さっきいたところに戻ろうぜ?」

「俺が素直に戻ると思う? 君は知らないようだけど、俺はあそこで監禁されてたんだよ」

「え。えー、ま、まあ! タジマのおっちゃんもそう思うだろ! 一旦あそこに戻ったほうがいいって」

「……」

 

マダラはイズナの方を振り返る。イズナは落ち着いて見えてはいるものの、常に様子を伺っておりいつでも逃げられるよう注意を払っているようだった。

誰からも返事がなく、ボルトはとりあえず腕をばたつかせながら再び訴えた。

 

「も、戻らないとしても、兄弟喧嘩はやめるってばさ」

「おい、うずまきボルト」

 

マダラがボルトを呼ぶ。サスケはボルトの苗字が知られていることに目を見開く。

 

「! なぜボルトの名前を……まさかこの男に話したのか」

「ギクッ。ちょ、ちょっと、予想だにしてないことが……ありまして……」

 

サスケがきつくボルトに呼びかける。ボルトはサスケの厳しい声音にびくりと震えると、徐々に縮こまっていった。

サスケはこの場をどう収めるかよりも、素性が割れてしまったかもしれない事実に項垂れる。

 

「はあ……」

 

逃げる機会を伺うイズナに、元いた場所に連れ戻そうとするマダラとボルト。

そしてまた一つこの場に近づく気配があることをボルト以外が感じ取ると、三人はその方角を向いた。

イズナが逃げ出そうとするのを、マダラがすかさず前を塞ぎ足止めする。

暗い木の影の奥からゆらりと現れたのは、火影の笠を被ったヒルゼンであった。

 

「こんなところまで来ておったか。まさか監視に付けていた忍全員を無力化し窓を割って逃走するとは。今日だけで二箇所も窓を交換せねばならんくなったのう……やれやれじゃ」

「あ、火影のじいちゃん!」

 

ヒルゼンはつかつかとマダラとイズナの前まで歩いて行く。イズナは近づいてくるヒルゼンを警戒し少しずつ後ずさるが、マダラに強く腕を掴まれ身動きが取れなくなる。

 

「!」

「……」

「離せ……離してよ、兄さん」

「……」

 

イズナの懇願に、マダラの手が緩むことはない。

ヒルゼンはイズナが一旦は逃走することができなくなったのを確認すると、今度はサスケの方に向かい合った。

 

「さて、そこの者よ。このボルトという少年の連れの者とお見受けするが」

「……ああ」

「たしか旅芸人じゃったかの。里には来たばかりか?」

「……」

「そう警戒せんで良い。お前さん達にとっても悪い話をするつもりはない」

「交渉でもするつもりか」

「そんなところじゃ。さて、うずまきボルトとその連れの者よ」

 

取引をせんかーー?

 

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