おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第50話

 

カカシがナルトのアパートに来る前、マダラが出掛けていたのには理由があった。

幸いイズナが増えたこと以外にはいつもと変わりのない朝を迎えたマダラは、歯磨きやら洗顔やらを済ませた後窓の外に一羽の鴉が溜まっているのを見つけた。鴉やらスズメやら野鳥が家の周りにいるのはよくあることだが、その鴉はイズナやナルト達が起床した後も同じところに留まり続け、明らかにマダラ達の様子を窺っていた。

鴉といえばサスケの兄のイタチだ。

 

(そういえば適宜様子は見に来るとか言っていたか。あの鴉は……イタチのだろうな)

 

飛び立つ気配もなくずっとこちらを見ているため、てっきり呼ばれているのかと思ったマダラは用事があると言ってアパートを出たのだった。

控えていた監視役も鴉には気付いており、近場で話を聞いてくると言ったら渋々だが頷いた。マダラよりもイズナの監視を優先するらしい。イズナも言っているが、仮に里から逃げ出したとして行く当てはない。マダラもである。それは事実だ。

以前イタチが言っていたうちはマダラが生きているという話については信憑性を確かめたいところではあるが、今はそれよりも重要なことがあり、まずはイズナの件を片付けるのが先決だ。

 

マダラがアパートの下に降りれば鴉は目の前に降り立った。じっとマダラを片目で見上げた後、ひょこひょこと路地の奥へと進んでいった。

 

(飛ばないのか……)

 

時々マダラを振り返る鴉にそんなことを思いながら後ろをついて行く。

しばらくついていけば行き止まりになり、鴉の瞳が赤く光ったかと思えば見覚えのある模様にマダラは素直にその瞳術を受け入れた。

 

「……屋さん、団子屋さん」

「……やはりイタチか」

 

聞こえた声に目を開けば、真っ白な景色の中にイタチの姿が見えた。

黒と赤の重い色合いをしたマントは、イタチの体をすっぽりと覆っている。

呼びかけからして、やはりイタチにとってマダラは団子屋の人という認識らしい。受けている任務も団子屋の仕事ばかりなため間違ってはいないが、一応この時代の木ノ葉の里でも本職は忍である。

 

「団子屋さん、忙しそうですね」

「まあ、それなりにな」

 

相手の幻術に返事をしたところで意味はないが、イタチはマダラの返答に頷き返した。

イタチはまっすぐにマダラを見据える。

 

「一つ、急ぎで報告が」

「……」

「例の男があなたを疑っています」

「例の……ああ、以前言っていた『うちはマダラが生きている』とか。そいつか?」

 

イタチはしっかりとマダラを見据えたまま頷く。

 

「近頃里に来るかも知れません。様子を伺うだけかも知れませんが、念のため用心を」

 

マダラはイタチの言葉に腕を組むと考え込んだ。なぜうちはマダラを名乗る男に疑われなければならないのか。里内でも一時期正体を疑われたことがあったが、疑ったところで何だと言うのか。マダラ自身はまだ何もやらかしていないはずだ。噂通りであると認めたところで、多少騒がれはするだろうがマダラ自身がいまの里をどうこうするつもりはなく、基本的にほぼ全てヒルゼンら現代の世代の者らにぶん投げている状態だ。

 

(里に来て何をするつもりだ……大体そもそもだ)

 

本当に何をしにくるつもりなのか。様子を伺われても、団子屋で働いてる情報しか得られないだろう。何もしていない、とマダラは自覚している。

 

(目立つことはしていないはずだ。中忍試験の件は猿飛の援護に回っただけ。最近は基本団子屋にいる……だけのはずだ。……おかしい、俺自身も不思議なくらい団子屋の仕事をしている記憶しかない)

 

里に来ても、接触はしないのであろう。関わろうという意思があるのならば、この数年いつだってその存在を匂わせることができたのだから。つまりはそもそもマダラがタジマを名乗り里で生活していることを知らなかったか。

しかし、マダラは自身のことはともかく男が里に現れるに当たり、現在の木ノ葉の里の状態が非常に気掛かりであった。

 

(イズナの件だ……いや、イズナだけではない。今はうずまきボルトに一応仮だがあのサスケもいる……この状況が外部の者に漏れ広まれば事は里内だけでは片付かなくなるぞ)

 

それぞれ過去からはうちはイズナが、未来からはナルトの息子を名乗る子どもと保護者らしいサスケ(仮) が現れ里内に存在している。

過去やら未来やらが入り混じり時空間の乱れたこの状況、その例の男にしろ何にしろ、これ以上知る者が増えればいずれ他里に情報が漏れ、更に時空間を歪め過去を弄ろうと目論む輩が現れてもおかしくない。

未来の知識を以てすれば、過去の木ノ葉の歴史を改竄し弱体化を図ることも可能だろう。

マダラの目はいつのまにか厳しいものとなっていた。

 

「……団子屋さん。聞きたいことがあるので後で鴉に伝言を仕込んでください」

 

マダラはイタチの言葉にん?と首を傾げる。

 

「サスケやナルトくんの側にいる男について……あの人は誰ですか」

 

 

 

 

 

 

なんやかんやでイタチの鴉に伝言用の幻術をかけた後、マダラは団子屋に向かった。鴉がどこに飛んでいくのかと思い暫く付いて行ってみたところ、団子屋に辿り着いたのだ。

店主がマダラに気づくと店先に姿を現した為、マダラは彼女に土産の団子を包んでもらえないかと頼んだ。

マダラが店主と話している間に鴉は屋根の上に止まると、何か見つけたのか雨どいを突き始めた。何かあるらしいとマダラも屋根に登り見に行ってみれば、何となく見覚えのある色をした何かのかけらを見つけた。暫くそれをつまんで眺めていれば、例のカメの足だと気が付いた。

思わぬ収穫である。

亀を見つけた当時は本体にしか目がいかなかったが、近くに落ちていたらしい。

 

「……さーん、タジマさーん?」

 

暫くして、マダラの足元から店主の呼ぶ声が聞こえた。下を見れば、店主が口元に手を当てながら屋根を見上げていた。

 

「屋根になにかあったのかい?」

 

マダラは素早く屋根の下に降りると、静かに首を振った。店主はそうなのとうなずくと、マダラに小さな包みを手渡す。

 

「さっき言っていたお土産のことだけど、こんな少しでいいのかい?」

「ああ。重過ぎても運べんからな」

「あらあら、小さい子にでもあげるのかい?」

「いや……まあ、小さいかもな」

 

自分よりはと心の中で付け加える。

マダラは店主から小さな包みを受け取った。中身はみたらし団子数本だ。普段使っている串より短いものを使用しているため、中身はかなり少量である。

店主に軽く礼を伝えた後、人気のない路地へと向かった。そこには先ほど団子屋の屋根に登っていた鴉が建物の塀の上で佇んでいた。鴉はじっとマダラの包みを黒い目で凝視している。

 

(この鴉やけにおとなしい。うまく飼い慣らしている。そんなに遠くにはいないんだろうが……まあ、腐っていたら捨てて貰えばいいだけだな。流石にあのイタチだ、傷んだものを食ったりはしないだろう)

 

マダラは団子の包みの結んでいる部分を鴉に掴ませ、飛び立たせる。

この鴉とのやりとりをヒルゼンが見ているかもしれないが、イタチの件だとわかっているはずだ。ヒルゼンもいつでも帰ってこいと言っているくらいであり、お咎めはないはずである。

 

マダラは鴉を見送った後ナルト達のいるアパートに戻った。

カカシが来ていたとは思わず、そしてイズナに隠していたイチャイチャパラダイスを読まれていたとも思わずマダラは頭を悩ませる事になる。

カカシが帰り際、今度公開される映画についてイズナを誘ったとマダラに告げた。松葉杖を付いている以外病み上がりとは思えないカカシの表情は心なしか晴々としているように見えた。

 

「おっさんまたため息かよ。ため息ばっかり付いてると老けるんじゃないか」

 

カカシを見送った後のサスケからの言葉だ。

その老けるぞという言葉の前にサスケはマダラのことをおっさん扱いしているのだが。

マダラは千手との同盟を結び里が出来たばかりの慌しかった頃のことを思い返す。そしてこの時代の里に来てからのことも思い返した。マダラ自身のこと、イズナのこと、カカシの目、そしてイタチの件。これまで経験してきたことを思い出し、今が一番厄介で面倒なのではと悟った顔をする。里が問題を抱えているのか、マダラの周りでだけ問題が発生しているのか。ここまで来ればこれからは平穏な日々が続く、というようなありがたいことはないのだろう。何かしらまた発生するはずである。

アパートの遠くで鴉の鳴き声が聞こえた。

 

 

 

夜、寝る前にサスケがイズナを呼びつけた。

なにやら話がしたいらしい。

ナルトとマダラには聞かれたくないのか、イズナと二人きりになりたいようだ。

マダラがイズナと話した際にサスケのことは気にしている様子であったが、まさか二人きりで話したいといわれるとは思っていなかったようで、イズナも名指しされた時は驚いていた。

完全に二人きりにするのもと思ったが、イチャパラを呑気に読んでいるくらいだ、サスケの目から見てもイズナに抵抗する意思がないのはもう分かりきっている。だからサスケも二人きりでの対話を望んだのだろう。

 

「そういうことだから、ナルト。おっさんとどっか行っててくれ」

「え、俺んちなのに俺が追い出されるの⁉︎」

「俺がコイツ連れ回してもいいならそうするけどマズいだろ」

「う、うーん……それもそっか」

 

ナルトとマダラは顔を見合わせると、サスケ達の話が終わるまで仕方なくアパートを出て屋根の上で星を眺めているのだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

夜中の里を歩く少年と男の姿が二つ。

時空間の歪みが発生していると思われるこの時代で、ボルトと連れのサスケは他に異常はないかと里内を見回っていた。

歩き回っているうちにこの時代のうずまきナルトのアパート付近に近づいており、屋根の上に人影があるのを見つけたボルトは師匠のサスケを腕を引いてそれを知らせる。

 

「なぁサスケのおっちゃん」

「おっちゃんじゃない」

「なんか、あそこの屋根の上にいんだけど」

「…………見なかったことにしろ」

 

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