おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第51話

 

「俺と二人きりで話がしたいって?」

「ああ。うちはイズナ、あんたに聞きたいことがある」

 

サスケとイズナがダイニングテーブル越しに向かい合う。

ナルトとマダラを追い出したサスケは、すまし顔でいるイズナとは反対に険しい表情をしていた。

さて何を聞かれるのだろうと、イズナは少しばかり期待していた。どうやらこの時代には殆ど残っていないらしいうちは一族の少年は、自身に何を聞きたいのだろうと。

 

「うちはイズナ。アンタとおっさん、どういう関係だ」

「……何を聞かれるかと思えば、そんなこと。何の関係もないに決まっているだろう?」

「ちゃんと答えろ。初めて会った時から思っていた。アンタはおっさんのことを初めから知っている……そうだろ?」

「それを確かめてサスケは何がしたいのさ」

「俺はただ……」

 

ここでサスケは口籠る。イズナはサスケから次の言葉が続くのを待つ。残念だが、サスケの問いにはいと頷くことはできない。イズナがマダラを兄ではないのかと問いただした時、兄ではないとマダラが否定したようにイズナもそう答えるつもりだ。マダラとイズナの間だけで知っていればいいことである。実際イズナの兄は今も戦乱の過去の時代におり、この里にいるマダラではないためマダラの否定も誤りではない。

 

「……おっさんの、兄弟の名前とアンタが同じだった」

「そう。その人もイズナっていうわけ。珍しい名前でもないよ」

「アンタと遭遇した時のおっさん、やりづらそうにしてた。アンタの反応もおっさんの顔を知ってる反応だった。アンタ本当はおっさんのーー」

 

弟なんじゃないのか。

サスケの口からそんな言葉が紡がれた。二人の間にほんのわずかな間沈黙が流れるが、イズナは考える素振りも見せずすぐに口を開いた。

 

「俺とあの人が兄弟? おかしなことを言うな、サスケは。ありえないよ。わかってるだろう? 俺がどこから来たかなんて」

「わかってる。わかってんだよ。でもおっさんのアンタを見る目が……ーーっ」

「何どうしたのサスケ」

「…………あいつに似てる」

「……あいつって?」

 

サスケは顔を伏せ再び黙り込んだ。

イズナの問いにも答えず、サスケから返答が来るのを静かに待ち続けた。だが今回のはなかなかサスケも答えてくれず、イズナはマダラ達をまたせているのもあり急かすように再び尋ねた。

 

「サスケが言ってるあいつって、親しい人間だったりするのか? ああもしかして父親とかー……サスケ?」

「……に」

「?」

「俺の……兄の目に似てる」

「サスケの……?」

 

絞り出すように出たサスケからの答えは、イズナをハッとさせた。詳しいことは聞いていないが、マダラからサスケには兄弟がいることは聞いている。そこに複雑な事情があることも。普段家族からの目など気にしたことはないが、サスケはそれに気付いている。

 

「なるほどね……ああうん……そうか」

「おっさんがこの里に来た事情を俺は知らない。何でナルトと一緒にいるのかも知らねぇ。けど、アンタとおっさんが他人じゃないのはわかる」

「目付きが君のお兄さんと似てると言うわけか。悪いけどサスケ、俺に兄弟はいるけどこの時代じゃない。『ここ』には俺の兄はいないよ」

「じゃあなんでアンタらは昔から知ってるかのように息があってんだよ。おかしいだろ」

「俺たちそんなに合ってる?」

「ナルトはともかく、アンタとおっさんの会話が自然すぎる。他人同士にしてはおっさんはアンタをやけに気にかけてるし、アンタもおっさんのことをもう疑ってない」

「……なるほどなぁ」

 

サスケはマダラのことはその辺のおっさんとは思っているかもしれないが、観察眼は悪くはないらしい。

イズナは今頃屋根の上にいるマダラのことを恨めしく思った。兄弟関連のことになると弱いのはここでも変わらないようだと。

あまり根掘り葉掘り聞かれて誤魔化しては、矛盾も生じよう。イズナは話の主導権を握ることに決めた。

 

「いつまでもいがみあってもだろう? それで、あのタジマがサスケのお兄さんの目に似てるって話だけど……どんな奴なんだ? というか、サスケも弟だったんだ、知らなかったよ」

 

イズナはあくまでも今日初めて聞いたというフリをする。

 

「兄さ、いやアイツは……」

(なんだ、仲でも悪いのか?)

 

イズナは訝しげにサスケを見る。

 

「サスケの兄弟、今は何してるの? ここにはいないんだろう?」

「イタチは……今……」

 

声音だけでなく、表情や雰囲気からしてもサスケの気落ちしている様子が見て取れた。先程までイズナとマダラの関係を調べてやろうと意気込んでいる様子であったのに、兄弟のことを尋ねた途端何か思い出したのか顔色が変わった。

 

「へーサスケの兄弟、うちはイタチって言うのか」

「イタチは……アイツは、今はここにはいねぇ」

「それはどうして?」

「わからねぇよ……アイツが何考えてんのか……あと抱えてるもんも。任務らしいが、一人で全部勝手にやって、俺のことなんか何も…なんも考えてねぇ」

「 ……」

 

イズナはしまったと渋い顔をする。これは大喧嘩をしていそうだと。実際大喧嘩どころではないのだが、イズナが知る由もない。

 

(あまり深く聞かないほうがいいか……? 兄さんが話さなかった内容に踏み込んでく気がする。でもなぁ……)

 

だが聞いてしまったものは仕方ない。このまま尋ねれば、この時代でのうちは一族の情報を得ることとなるだろう。聞くべきではないとわかっているが、聞かずしてうちはイタチの人物像については知ることはできない。最悪聞いてしまった後考えればいいのだ。どうせ元の時代に戻る頃にはここでの記憶はまっさらに消されているはずである。

 

「……色々あるようだけど、サスケにとってのイタチは? どんな人?」

「俺にとっての?」

「そう。俺も兄さんには言いたいこと色々ある。兄さんてさ、いつまで経っても弟扱いしてくるっていうか。俺も大人だよ?」

「見ればわかる」

「ああ、真面目な返事をありがとう。突き放そうとしてもそうしきれてなかったり」

「……アンタの兄弟は」

「俺は五人兄弟だった。兄さん残して他はいない。だからかな、兄さんはちょっと俺に関しては神経質というか……ああまあ珍しい話じゃないよ、あの時代なら」

「五人兄弟?」

 

下を向きかけていたサスケの顔が上がる。

 

「そう五人。兄を残してみんな幼い頃にやられちゃったけど」

「……五人」

 

サスケの顔色が曇る。アカデミーで習った忍の歴史を思い出した。幼い子どもも戦に駆り出されていたと。

最近までサスケの兄のイタチのように優秀な成績を持つ子どもらが戦場に駆り出される事例はあったが、実力の有無に関わらず一定の年齢を越せば強制的に戦に出されていた時代だ。

 

「だ、誰に」

「殆ど千手が相手だった。うちはが千手と争っているのは……争ってたことはわかるかい? うん、そうそう。でもサスケはその辺はあまり知らないんだっけ、親からは……聞かされることもないか。君らが俺のところに来た時も戦の最中だった。だからいきなり現れた君らにみんな大騒ぎだったわけだ」

「千手……初代と二代目の里長がそんな名前だった気がする」

「ああ、だろうな。サスケ、お前はどう思ってるんだ? この木ノ葉隠れの里を」

「里は……好きでも嫌いでもない。生まれた時から俺はこの里にいた。それだけだし、んなもん考えたって……」

 

里が好きかどうか、そう問われたサスケはすぐに答えを出せなかった。里のせいで一族が滅ぶことになった。里のせいでイタチがそうせざるを得なかった。全部里が悪い、そうやって決めつけて嫌えたらどんなに楽だろうか。イタチが里を選んだ理由を知りたい。

 

(……イタチ、アンタは今どこで何をしてるんだ。あの日イタチは何しに里に来た? 目的もなしに来るはずがない)

 

一番話を聞きたい人間はサスケのそばにはいてくれない。

 

「なあ、アンタの兄弟の名前……なんて言うんだ」

「え、兄さんの名前?」

 

思いがけないサスケからの質問にイズナはたじろぐ。答えてもいいものだろうか。

 

(兄さんはタジマって名乗ってるし……嘘をついても思いついた名前なんてすぐ忘れるしな。そもそもサスケは兄さんのことはタジマだって思ってるだろうから)

 

「……ダラ」

「?」

「マダラ。うちはマダラ……俺の兄の名前だ」

「うちはマダラ、だと……?」

 

サスケの目が見開かれた。

サスケの反応にイズナは小首を傾げる。

 

「聞いたことがある。その名前は、ボツになった町内会の肝試しの……⁉︎」

「肝試しの題材になってるの⁉︎」

 

予期せぬ言葉にイズナも心の底から突っ込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

半袖でいるには少し肌寒い夜空の下、屋根の上でサスケ達の話が終わるのを待っていたマダラは突如くしゃみをかました。

 

「おっちゃん大丈夫?」

 

サスケ達の話がどれくらいかかるのかもわからず、ナルトはマダラと共に屋根の上で星を数えていた。とはいえナルトも星座には詳しくないため、たくさんある星の中でもどれが輝きが強いだの色が違うだのを比べるくらいしかしていないのだが。

 

「なぁ、おっちゃん」

 

星を数えるのに飽きたナルトがマダラに尋ねる。

 

「本当にあの兄ちゃんのこと元の時代に帰すの?」

「……当たり前のことを聞くな」

「俺もわかってっけど、でもあの兄ちゃん帰ったらさ、おっちゃんの話だと……」

 

そう遠くない将来、その命を終えるだろう。ナルトの言葉は途中で止まったが、マダラには何が言いたいのかはっきりとわかっていた。

 

「元のところに帰したほうがいい。他にも異常が起きているようだからな」

「え、それってどんな!」

「今のところ猿飛達との間でこの里に関する大きな認識の違いはないが、他の時間からもやって来てる奴らがいる」

「いつのまにそんなことになってたのかよ! でも、それでも、わかってて帰すなんて」

「ナルト」

「でも」

「余計なことはするな。あるべきところに戻る、それだけだ」

「おっちゃん」

「イズナは死んだ。アイツの目は俺と共にある。それは変わらん」

「おっちゃんと一緒……」

 

ナルトに何と言われようと、マダラのイズナを元の時代に戻すという意思は変わらない。マダラとて変えたい過去はあり、そんなものは一つや二つどころではない。だがそれをしないのは、この時代の里に流れつき未来を知ったからだ。

マダラも戻る日が来た時、記憶を消されることに異論はない。

過去を変えたとて、今以上に良くなる保証はどこにもないのだ。

 

「じゃあ帰すって、それってつまりさ……」

 

ナルトの声が沈んでいく。

 

「おっちゃんも帰るってこと?」

 

イズナを元の時代に帰す手段があるのならば、マダラも共に帰るのだろうか。

ナルトの声が星空の下に落ちた。

 

 

 

 

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