おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第55話

 

サスケ達に付き従いナルトのアパートへと戻る道を辿りながら、イズナは背後に例の人物の気配を感じ取っていた。

 

(川を渡って行った兄さん達の方は追えなかったか。で、こっちに来たわけだ……)

 

このまま歩き続ければナルトの住居は突き止められ、また後日家の近くに現れたなんてことにでもなれば迷惑極まりない。いつも通りマダラについていた監視役の忍がイズナ達の側にはいるが、三人で集まっていた時にマダラ以外気付かなかったような相手だ。何かあった際、相手をするには彼一人では心許ないだろう。

イズナは両脇を歩く子どもらに声をかける。

 

「ねぇ、……サスケとサクラ」

「は、はい。どうしたんですかイズナさん。もう少しで着きますよ」

「ちょっと二人とも耳貸して」

「は? なんかあんのかよ。何もしないよな」

「しないって。ほら」

 

サスケには怪しまれたが手招きすれば二人とも近寄り、イズナは少しかがむと二人にだけ聞こえるよう耳打ちする。

 

「……俺たちの後を尾けている奴がいる。気をつけて。アパートにはすぐ戻らない方がいい。別に俺の家ではないけど、拠点の一つがバレるのは良くない」

「え……!」

「な! そんな奴どこにいんだよ……」

「俺たちの後ろ……ああ振り向くなよ? 三軒くらい奥の赤い屋根の家らへんにいる」

「そんな……どうしよう、サスケくん」

「どうって……そいつを捕まえればいいだろ」

「カカシ達といた時からそいつはいた。最初俺と君達の先生は気付かなかったよ。可能ならば接触はしない方がいい」

「でも、帰らないってなるとどこに行ったら」

「適当に連れ回してよ。気配がなくなってから戻ればいいだろう?」

 

不安そうな表情を浮かべるサクラにイズナはサラッと言う。

 

(この人、私たちから逃げたり……。そんな感じはしないけど、でももしも私たちがイズナさんを見失ったら)

 

イズナは過去からこの時代に連れてきてしまった最重要人物である。最近里の中を出歩いてはいるが、未来の情報はなるべく入らないに越したことはないのだ。

 

「サスケくん」

「おい、イズナ。行ってみたいとことかあんのか」

「俺が?」

 

まさか聞かれるとはと思わなかったイズナは目が点になる。

 

「連れて行ってくれるんだ。無理難題ふっかけるかも知れないよ」

「無理も何も、アンタ大して里の中をしらねぇだろ」

「そういやそうだね。じゃあ……」

 

イズナは少しばかり空を仰ぐと考えた。先程マダラに借りた金を返しにカカシの友人が現れたことを思い出す。

 

(アスマって呼ばれてた奴……兄さんのこと団子屋の旦那って言ってような……団子屋で働いてるのは本当らしいけど、そこってどこなんだ?)

 

あのうちは一族宗家の当主にもなったうちはマダラが団子屋の旦那と呼ばれているのだ。本人からも聞いてはいるが、誰かの元で働く兄の姿など想像できず、どんな店なのかと興味を持った。

 

「……そうだなぁ、タジマが働いてる団子屋が見たいかな」

「タジマさんの?」

「おっさんの?」

 

サクラとサスケの声が重なった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

時は少しばかり遡る。

 

マダラ達の後を追っていた男は、川辺で談笑を始めた彼らに悟られぬよう近くの茂みに身を潜めていた。

劇場から尾行しているが勘付かれている様子はなく、飯屋に移動した後も三人でこうしてぶらぶら歩いていた。

距離があるため会話は聞こえないが、男が知りたいのは彼らの談笑の内容ではないためこの尾行に差し障りなかった。

 

(……似ている。似過ぎだ。いや、…………ほんと似過ぎだろ‼︎)

 

男は地面に拳を叩きつけたくなった。

男だが、イタチに対して自身を『うちはマダラ』と名乗っていた。

イタチから立ち寄った団子屋のみたらし団子が美味かったと報告があったが、その団子屋で働いている人物に妙な噂が付いていたのだ。

抜忍の大蛇丸が木ノ葉の里を襲撃した際に火影と一緒に戦っていただとか、人柱力の少年の側にいるだとか、一瞬だがうちはマダラが生きているという噂が里内に流れた(どこかは知らないが町内会の肝試しのテーマだったらしい)とか、里の住民であればなんだそれ? と笑い流してしまうなんてことない噂話が男にとっては何でもないものとして処理するにはなんてことなくなかった。

噂の真相を確かめるためこうして里を訪れたが……。

 

(……あんな瓜二つの人間がいてたまるか。まずジジイとは別人だとして……イタチからは団子が美味いとしか報告がなかったが、ただの下忍ではないだろうな。あの身体つき……経験の浅い忍ではない。あのイタチを無力化できる奴だ。カカシといるのは気になるが……いや、あれはあいつらの趣味なだけか……勝手に蘇ったわけでもあるまいし……大体マダラは蘇った後あんなモノを楽しむような奴でもないだろう……ガキがいた話も聞いていない。いるとも思えないしそもそもカカシと俺と変わらんくらいか? そんな奴いたか? いや本当に誰なんだ)

 

団子屋の男の名前はタジマと言うらしい。カカシとは映画を一緒に観に行くような仲で、同じ趣味を持っているらしいと。そして彼らの会話から微かに聞こえてくる言葉によると、タジマという男と少し似ている髪の短い青年はイズナというらしい。兄と呼んでいる様子から兄弟のようだ。

 

(俺たちの周りにそんな奴いなかっただろうが……ッ)

 

タジマもイズナも、身体的特徴からして明らかにうちは一族である。ほんの一部の人間を除いて、もう存在していないはずの人間の見た目をしている。

 

「…………はぁ。ただの団子屋、なのか……?」

 

男は『うちはマダラ』がどう言う人物であるのかを知っていた。知っているからこそ、今日尾行している間の目標の行動が、男が想定していた人物とは結びつかなかったのだ。

 

(しかも弟の名がイズナだとは……それも偶然か? それにしてもカカシの墓参りが長すぎる)

 

まず団子屋の男の居場所を突き止めるためにカカシが現れそうな墓地に訪れた男は、尾行早々なかなか終わらない墓参りに付き合わされた。

日が照り日差しが頭皮を焼こうともカカシは動かず、物音を立てられない男はカカシが移動するまでそっと物陰に潜み続けるしかなかった。

やっと動いたかと思えば、男が知る人物にそれはもうそのままそっくりな奴と合流しだし、そしてまあ過激な恋愛映画を見させられた。

 

(勝手に蘇ったとして、あの計画を企てる以上交友関係を広げるような人間性があるとは思わん。他人の空似……だといいんだが顔だけじゃなくチャクラそのものがあのクソジジイ……なんだよな……)

 

男の目が遠くを見る。

後を尾けていても、ただあの男ら三人の趣味に付き合わされるだけでこれ以上の収穫はなさそうだった。

 

(気付かれる前に帰るとするか……)

 

つい先日イタチや鬼鮫が里に乗り込んだのもあり、里内の警戒度は上がっている。暗部やらに気付かれては面倒だ、今日のところはここまでにしよう。そう思った男は一旦深呼吸をした。今朝から屈んだ状態が続きカカシの墓参りにも付き合い続けたせいで腰は重く、直後とんでもない映画を見たというのもあり感情は乱気流に巻き込まれたかのごとく上下し気分は良くない。

こんな悪夢のような一日、帰って身も心も休めた方が良さそうだ。

 

「……スケ、…………け…………ろ」

「…、……」

 

「…………ん、……しょう」

「おい、行……ぞ」

「そ……ね。行こうか」

 

(……どこへ行く気だ?)

 

撤収しようとしていた男の耳に、先ほどよりもよく聞こえるようになった話し声が届く。

いつのまにか合流した子ども達と弟の方が、『うちはマダラ』に似た男とカカシから離れていく。その直後、カカシ達の方は川の向こうへと走り出した。

 

(……ちょうどいい、ここまでだ。だが弟の方はどこへ行く? 合流したガキは……あれはうちはサスケだ。サスケとも顔見知りか。どことなくサスケとも顔が似ている……イタチには他に兄弟は居なかったと思うが……うちはサスケに似た男……名はイズナ、か)

 

撤収する気であったが、弟の名前にも引っ掛かりを覚えた男はもう少し後を尾けてみることにしたのであった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

団子屋のテーブル席の一つにイズナ達はいた。向かいに座るサクラとサスケにイズナはこれでいいとメニュー表にある文字を指差した。

 

「イズナさんそれだけでいいんですか?」

「だってねぇ……行きたいと言ったのは俺だけど、手持ちがないからさ」

 

団子屋に着いたイズナ達は店主に快く迎えられ、温かい茶を飲みながら団子を選んでいた。店の中には店主の他に、よくマダラといる男の一人が厨房に立っている。

サスケは食べないため注文するのはイズナの分だけだが、遠慮しているのか単品のみたらし団子しか選べていなかった。

イズナの脳内では、先ほどのマダラとアスマのやり取りが思い返されていた。上忍ですら稼ぎが少なそうなのだ、下忍のサクラ達にそんなに出費はさせられない。

 

「少しくらいなら大丈夫ですよ。後で申請して火影様からちゃんと貰いますし」

「出るかな。いやぁ……俺さ、この前窓を割っちゃってるんだよね……」

「窓⁉︎ いつそんな事してたんですか‼︎」

「まだあっちの方にいた時に」

 

サクラは苦笑しながら再度本当にそれだけで足りるのかと尋ねると、イズナはこくりと頷いた。

腹拵えもした直後であり、特に腹も減っていない。

イズナは湯呑みを持ち上げると濃いお茶を口に含んだ。

 

「せっかくだからタジマさんが考えたセットにしたらどうですか」

「おっさんが寝る間も惜しんで考えたAセット、贅沢稲荷セットだ」

「……ゴフッ、……ゲホ、ゲホッゲホ。ここ団子屋だよね⁉︎」

 

危うくお茶が違う穴に入りかけたイズナは盛大に咳き込んだ。

 

「でも人気なんですよ。特に小さい子とかに」

「ゲホッ、稲荷寿司は甘くてそりゃ……ゴホッ、子どもには食べやすいだろうけどさ」

 

マダラが考えたというメニューの詳細に目を通してみれば、稲荷寿司三個にみたらし団子が三本も付いてくる炭水化物のお祭りセットであった。

 

(あ、甘い……甘すぎるぞこのメニューは)

 

団子屋には本来なさそうなこのセットを考案したということは、稲荷寿司のレシピもマダラ好みのものとなっているのだろう。イズナが戸惑っている間にサクラは店主を呼び、笑顔でAセットを注文した。

 

「サ、サスケもサクラも食べるの手伝うよね。三個ずつあるんだから」

「俺は甘いモンは食わない」

「サスケくんは甘いもの苦手なので」

 

まさかの一人戦力外である。

サクラは食べてくれそうだが、それでも二個ずつ食べさせるわけにはいかないだろう。

 

(このサクラって子、きっと食べられるだろうけど班員の男の前で俺より多い量食べるとこなんて見られたくないだろうしな……)

 

腹は膨れているが、イズナが二個ずつ消費するしかない。幸いこの団子屋は評判がいいらしい。味は問題ない。きっと食べ切れるだろう。

冷や汗が額から伝うイズナの側を店主が通った。

店主は店の外へ顔を覗かせると、近くにいた客らしき人物に声をかけた。

 

「あら……どうかしました? 良かったらお入りなさいな。今なら空いていますよ」

「⁉︎ 何故俺に気付いて……‼︎ い、いや、俺は客ではない」

「良かったら新作の試食もあるの。お入りなさいな」

「いや、だから客では」

「お代は大丈夫よ、こちらの席にどうぞ?」

「いや…………」

「いらっしゃい。あちらの方の隣に座って待っててくださいねぇ」

「いや……あ、ああ」

 

店主にぐいぐいと押され入店してきたのは、謎の仮面を被った男であった。

これから来るAセットに困り顔を浮かべていたイズナは出入口側を向いており、現れた仮面の男に茶を飲もうと持っていた湯呑みを危うく取り落とすところであった。イズナも忍であり表情には出さないが、内心驚きで一杯である。

 

(⁉︎ コイツあの気配の奴ーー‼︎ どうして⁉︎ サスケもサクラも気付かなかったのに、このお婆さん……何者なんだ)

 

仮面の男がイズナとはほぼ向かいの位置に座る。

後ろ向きになっているサクラ達が、追跡者がこの男であることに気付いていないのが救いか。

 

(ジロジロ見たら怪しまれるな……仮面で隠されているが、その顔を拝んでやる)

 

イズナは不自然に思われないよう、ゆっくりとまた茶に口をつけるのであった。

 

 

 

 

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