おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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第56話

 

イズナが団子屋で贅沢稲荷セットを待っている頃、マダラとカカシはナルトがいる場所へと急いでいた。

川の向こう岸に渡り、感じるチャクラを辿れば里の端に着く。里の外と内側を隔てる壁の前でマダラとカカシは立ち止まった。

 

「……まさか里の外へ?」

「どうやらそのようだぞ。ここまで来ればお前も感じるだろう」

「ええ……行きましょうか」

 

無断で里を出ることなど平時であれば許されないが、さらわれた人柱力の奪還のほうが最優先である。

よくマダラたちを水晶玉で監視しているヒルゼンから何の反応もないということは、たまたま運悪く立て込んでいるからなのか。

 

マダラとカカシは里を出る。

しばらく木々を伝い森の中を駆けていると、片膝を黒い装いの男の姿と明るい髪色の少年の姿を見つけた。ボルトとサスケだ。サスケは苦悶の表情を浮かべながら片膝を付き、ボルトは寄り添うように立っていた。

マダラとカカシは彼らのそばに降り立つと二人を見下ろす。

ボルトの顔が勢いよく上がった。

 

「! おっちゃん⁉︎」

「おい、そこで何をしている」

「もしかしておっちゃんたちも父ちゃんのこと追って⁉ 今あっちの方に「ボルト! それ以上話すな」 でもよ、師匠ォ!」

「……なんだなんだ、ここで仲間割れ? それで、質問にまだ答えてないよね君ら。もう一回俺も聞くけど、こんなところで何してたの」

「お、俺達は……うずまきナルトってやつが連れて行かれたから助けようとしてて。でもあいつは俺達が前に倒したはずのやつで! 早く行かなきゃいけねぇんだってばさ!」

「だってばさ? ……タジマさん」

「……ああ。おい、ボルト。それから……うちはサスケ、嘘偽りなく話せ」

「! ……アンタはとっくのとうに俺の正体に気づいていたわけか」

「えっと……あの、タジマさん」

「それで、ナルトは誰にさらわれた?」

「あの」

「……全身白い風貌をした…………異星人だ」

「異星人? 今はふざけていい状況ではないことくらい「ほ、本当だってばさ!」」

「あのォ……タジマさん」

「はぁ、なんだカカシ」

「え、あの、サスケですか……この方」

「「あ」」

「ハッ⁉︎ そういえばカカシさんは俺たちの事知らないんだったァ‼︎」

 

ボルトが頬を抑えて叫ぶ。

マダラもサスケも同じ表情で固まりカカシの方を見やった。

カカシは眉を下げながらサスケを見下ろしている。

 

「えっと、サスケ? ……サスケなの?」

「……あ、ああ」

「そう……大きくなったなァ。その感じじゃ……色々あったんだろうな、お前も」

「まあ……」

 

カカシは始め怪しげに見ていたが、サスケが自身の問いに応えると疑いの眼差しを潜めいつもの七班の子らを見る目つきに戻った。なんとなくボルトのことも察していそうだ。なぜ片腕なのかと聞きたいことはあるだろうが、今はいなくなったナルトを見つけるのが先だ。

カカシはマダラに代わり、再び彼らに尋ねた。

 

「さっき言ってた異星人ってやつ、一度倒したとか言っていたがどういうことだ?」

「ああ。カカシ、もう気付いているだろうが、俺達は違う時代からやってきた。この里に来る前にも、俺達はここと同じくらいの時代に来ている。そこで俺達はその異星人を倒し、自分たちの時代に戻ろうとしていたんだが……何かの異変が起きてこの里にたどり着いた。やつは倒したはずだ……なぜ蘇ったのかは俺にもわからない」

「なるほどね……」

「ほう……そうか。仮定の話だが、もしその異星人とやらが蘇っていないのだとすれば……」

「なんだ団子屋」

「……」

 

団子屋と呼ばれたことに話していたマダラが口を閉じる。

団子屋に高頻度でいることにはいるが、いくら名を呼び辛いとはいえその呼び方を選ぶとは。

マダラの脳裏にイタチの姿がチラついた。

 

「…………他にも違う時代から来た人間がいる。それも異なる木ノ葉の里からな。ただの繋がった過去や未来からとかではなく……うちはサスケ、お前もそうなのだろう? ならばその異星人とやらも、お前らの時と同じようになにかの手違いでここにたどり着いた……そうだとは考えられないか」

「繋がった過去や未来ではない……? 信じられないが、それならば辻褄も合う……のか? お前がこの里にいることも納得できなくはない」

「話が早くて助かるな。奴も同じく巻き込まれたのだろうよ……さて、俺達はこのままナルトの元へ向かうが」

「ま、待つってばさ!」

「なんだ」

 

先へ向かおうとしたマダラをボルトが止める。

少し強めの口調でマダラが尋ねれば、ボルトは萎縮し寄り添っていたサスケの服の裾を思わず掴んだ。

 

「お、おっちゃん達だけじゃ危ねえってばさ! 俺たちならアイツがどんな奴でどんな術を使ってくるのかとかわかってっから!」

「なら手短に話せ」

 

ボルトはごくりと喉を鳴らした。いつぞやの夜に連れ攫われた日のことを思い出す。

 

「アレは「ボルト、まて。話す前に確かめたい事がある」」

 

サスケがボルトの肩を掴む。マダラを少しばかり睨むと、サスケは恐る恐る問いを口にした。

 

「お前は……夢の世界に希望を抱いているか?」

「夢の世界? なんの話だ」

「……いや、何でもない。変なことを聞いて悪かった……それならいいんだ」

 

問の意味がわからないとマダラはサスケを睨み返すが、マダラの返答にサスケは緊張を少しばかり緩めるとボルトの代わりに敵の情報を話し始めた。

 

「本来俺たちだけでどうにかしなければいけない相手だ。話せる限りのことは話す……ナルトをさらった敵だがーー」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「はぁい……おまちどうさま。お兄さんタジマさんに似てるねぇ、もしかしてご家族の方? あまりお家の話はしてくれなかったから……会えて嬉しいわ。今日はサクラちゃんとサスケくんだけなのね、いつもお世話になってます。おまけしておいたわ」

「い、いえ「えぇ?」…… そ、そんなところです? まあいいか……て、え、こんなに? え」

「サクラちゃんは良かったら……コレね。今度の新作なの」

「おばあちゃんありがとう。これってもしかして苺大福ですか!」

「そうよ。サスケくんは良かったらおかきお食べね。ふふ、お茶のおかわり必要だったら言ってくださいねぇ」

「え、あの待って……待って……」

 

店主と共に配膳しにきた男が持ってきた皿には、稲荷寿司が想定の倍は盛られていた。

 

(ヤバい……これ、え、俺が食べるの?)

 

去っていく店主を見ていたイズナはサクラをばっと振り返る。サクラは新作だと紹介された苺大福に夢中だ。

中身は白餡なのか、薄皮の透明感が大福のみずみずしさを引き立てている。配膳しにきた男がチラチラとサクラの様子を見ている。彼が作ったのだろう。セットメニューを考案しているマダラもそうだが、そのうち彼らの本業は忍ではなく和菓子職人とかになりそうだ。

イズナは冷や汗を流しながらサクラに助け船を求めた。

 

「サ、サクラ? ちょっと稲荷寿司も食べないかな……?」

「私は大丈夫ですよ、イズナさんゆっくり食べててください」

「いやぁ、流石にこの量は……じゃあサスケは? 一個くらい食べられるでしょ」

「俺はコレがあるからいい。それに甘いのは苦手だ」

「ソ、ソウデスカ」

 

(まずい、誰も手伝ってくれない)

 

昼にご飯屋に行ったイズナが食べたのは定食、量は多くかなり満足度の高い物だった。定食屋を出てから時間もそんなに経っていない。

皿に乗っている稲荷寿司と団子は五つずつ。甘いものは別腹だと言う人もいるが、それにも限度があるだろう。

 

(五個って……分けて食べる前提だろこの量‼︎ サスケが食べないの知ってるからサクラと俺の分なんだろうけど……だからって五個‼︎ くそ……食べないわけにはいかない。頼むサクラ、半分とは言わないから一個からでも手伝ってくれ……重い……ご飯と団子は重い……兄さんなんで稲荷寿司と団子をセットにしたんだよ!)

 

イズナは深く息を吸うと稲荷寿司を忌々しそうに見下ろす。

 

(……しかもデカいし)

 

そんなに大食らいに見えただろうか。そうでなくとも店で働いている人間の知り合いが来たのだ、おせっかいからつい盛りすぎてしまっただけだろうか。

イズナは店主とは初対面だが、サスケとサクラと店主の仲は良いらしい。口ぶりからして何度も訪れているのだろう。一緒にいることでこんなに盛られてしまったのかもしれない。

 

「…………いただきます」

 

イズナは諦めの表情で箸を持つと、稲荷寿司を一つ摘んだ。ふと斜め向かいにいる仮面の男がイズナの方を見ている気がし目線を上げる。

 

(こいつまた食うのかって思われてそうだな……。もうお前でもいいから手伝え誰か)

 

明らかに男とは目が合っているが赤の他人同士、簡単に声をかけられるものではない。やはり頼みの綱はサクラだけなのだが、苺大福を用意されている手前追加で稲荷寿司を食べたりしないだろう。

 

(サスケが食べればッ、サスケが食べればサクラも食べただろうに! 甘くなければな……いや、甘くない稲荷寿司ってなんだ。とりあえず食べるか……美味いな! チクショウッ)

 

時間はかかりそうだがとりあえず一個ずつ片付けるしかない。そう思いひと齧りした稲荷寿司だが、イズナにとって懐かしく馴染みある味付けであった。

 

「……」

「はぁい、今行きますね」

 

イズナが無心で稲荷寿司を腹に詰め込んでいると、仮面の男の手がスッと上がった。店主は見逃さずに伝票を手に取ると男の席に向かう。

イズナは男の声を聴こうと耳をそば立てた。

 

「……おすすめの団子セットを一つ」

「おすすめの団子セットね。かしこまりました、焼けたらすぐお持ちしますねぇ。ゆっくりしていてくださいねぇ」

「……」

 

案外普通の声をしているものだとイズナの期待外れであった。人の後を尾けるような奴であり、変な面もつけており、てっきりただの変人かと思ったのだが話し方は至って普通らしい。

 

(……兄さんのところは行けないとはいえ、俺なんか追っかけても何にもないのにな。……はぁ、美味いけどまだ二個残ってるし団子もある……はぁ)

 

「……ふぅ」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃない」

「えっ」

「残すんじゃねぇぞ。せっかく連れてきてやったんだから」

「この量が一人前に見えるのかな君は」

 

そろそろ味を変えよう、そう思いイズナは団子の方に切り替えた。

食べやすい一口大の団子は程よい弾力と絶妙な噛みごたえで、また炭の香りもよく、飲み込む際の喉の通りも滑らかであった。

 

(美味い……けどどうせだったらお腹が空いてる時に食べたかった。元の時代に帰る前に兄さんに買ってきてもらおう……美味いけど今日は詰め込むので一杯一杯だ)

 

行儀が良くないとはわかっているが、まだ半分も残っている稲荷寿司と団子にイズナは頭を悩ませ、額を抑えながらじっくりと咀嚼した。

団子を噛んでいると視線を感じる。

 

「……」

「……」

「……何、二人とも」

「えっと、そうしてると似てるなって……ごめんなさい、食べ辛かったですよね」

「ちなみに聞くけど……誰に?」

「サスケくんと」

「おっさんと」

「……タジマの方はわかるけど、サスケに? 前にも言われたことあるんだけど」

「誰がこんな奴と」

「ちょっとサスケ、そんな嫌そうな顔しないでよ」

 

うちは一族同士顔が似ることもあるだろう。大体の顔つきなど、個人差はあれどあの一族特有の雰囲気というのはあるものだ。

サスケの顰めっ面にイズナは少しばかり心が傷ついた。

 

「俺の兄弟はアイツだけだ」

「サスケくん……」

「……俺も、弟は……うん」

「イズナさん?」

 

イズナはもうずっと幼い頃に亡くなった兄弟を思い出す。サスケやサクラ達よりも幼かった頃だ。幼い子どもも戦に駆り出された時代。

 

「…………いや、なんでもないよ。あまり兄弟のことは覚えてないなと思ってね」

 

沈んだ空気に、イズナは茶を啜ると団子をまた齧った。

 

(うーん、お腹いっぱいだ。食べても食べても減らない)

 

もちもちと弾力を感じながらイズナはチラリと隣の男を見る。男の視線は厨房の方を向いていた。

カタカタと物を運ぶ音が聞こえてくる。

出来上がったのか店主が盆に男の頼んだ団子を乗せ持って来たが、イズナが視界の端にとらえた限り聞こえてきた注文の内容よりも多い気がした。

 

「はぁい、おまちどうさまぁ」

「⁉︎ まて、何かおかしくないか⁉︎」

「おすすめのお団子と、試食の大福。それからおはぎが余ってしまったから食べてねぇ」

 

「⁉︎」

 

イズナはテーブルに乗せられた皿を見て吹き出しかけた。

 

(おはぎ⁉︎ おはぎ二個も盛られてるんだけどこの人⁉︎ しかもおはぎでかい‼︎)

 

イズナの稲荷寿司セットも様子がおかしいが、男のおまけのおはぎも様子がおかしい。いくらおまけでも二個も付けるだろうか。サクラと同じ苺大福もある。

 

「……あはは、おばあちゃん最近おまけ多いから」

 

サクラも隣席のおまけの存在に気がついたのだろう。

利益は大丈夫なのかと心配になるが、店主も歳で半ば趣味で店を切り盛りしている所もあるのだろう。だからと言っておまけが多いのだが。

 

「タジマさんいる時はそんなにじゃないんだけど……私がこの前買いに来た時もたくさん持たせてくれたな」

 

仮面越しであっても男の驚きようが伝わってくる。元々店に入る予定はなかった男だ、ほんの少しだけ食べるつもりだったろうに。

 

(さて……流石にこの量、一度くらい仮面の下を拝めるだろ。さあ外せ、その変な仮面を!)

 

イズナは写輪眼に切り替えたい気持ちを抑えつつ、団子を食べながらいつでも顔が見えるようさりげなく座り直し男を視界に収めた。

 

男の手が仮面の下にかかったーー。

 

 

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